日々の仕事と生活が実践道場 ―『人間を磨く 人間関係が好転する「こころの技法」』  

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競争が激化し先行きが不透明な今、難しい経営判断をして組織を牽引していける人材をどのように育成すればよいのだろうか。組織開発・人材育成コンサルタントとして企業の育成担当者のお話を日々伺っているが、最近「人間を磨く」「人間性を高める」というキーワードが増えてきたように感じる。

「人間を磨く」というと、古典・伝記の読書や様々な領域を学ぶリベラルアーツ、山に籠っての修行、非日常の修羅場体験など多くの方法が考えられるが、本書のユニークなところは、「日々の仕事や生活における人間関係の問題に向き合う」ことに着目している点である。

本書は、「人間を磨く」ための手法として、「人間関係を好転させる7つの技法」を挙げている。

1. 心の中で自分の非を認める
2. 自分から声をかけ、目を合わせる
3. 心の中の「小さなエゴ」を見つめる
4. その相手を好きになろうと思う
5. 言葉の怖さを知り、言葉の力を活かす
6. 別れても心の関係を絶たない
7. その出会いの意味を深く考える

それぞれの技法には、さらに細かく「持つべき視点、心構え」が解説されており、単なる精神論ではなく、すぐに日常で実践できることとして整理されている。

玉を磨いていくと「曇り」や「汚れ」や「傷」が消えていくように、自分の人格を磨いていくと「非」や「欠点」や「未熟さ」が消えていく。「人間を磨く」という言葉には、一人の人間として光り輝いていけるようなイメージがある。しかし、著者は、「人間を磨く」とは、自分の中に「非」や「欠点」や「未熟さ」があることを認め、自分の心の中にある「小さなエゴ」をただ静かに見つめる「もう一人の自分」を育てることであると説いているのだ。

私も対人関係ではいくつかの苦い経験をしてきたが、確かに苦手意識がある相手の長所に注目するように意識したり、衝突が生じた際の出来事に対する捉え方を見直したりすることで、関係を改善してきたように思う。本書では、心理学の要素や問題のメカニズムについても解説されており、納得感を持って読み進めることができるであろう。

また、特に印象に残った第5の技法に「言葉の怖さを知り、言葉の力を活かす」という心構えがある。

人間の「心」(心理的状態)と「身」(身体的行為)とは、実は、表裏一体のものであり、人間には、「心が動く⇒身が動く」という性質だけでなく、「身が動く⇒心が動く」という性質も、同時に存在する。

すなわち、日常で発する「言葉」や仕事や生活の場での「行動」を意識的に変えていくことで、人間関係も良好になっていくと同時に、自分自身が人間として磨かれていく。日々、自分がどのような言動をしているか、その際に自分のこころにどのような感情の動きがあったのかなどを振り返り、自己観照をする営みを積み重ねることで、人間性を高めていくことができるのだ。

自分の人間性を高め、成長していきたいと考えている人、仕事や生活での人間関係を見直したいと考えている人にとって、数多くの実践のヒントが盛り込まれた1冊としてお勧めだ。
 

『人間を磨く 人間関係が好転する「こころの技法」』
田坂 広志 (著)
株式会社光文社
740円(税込799円)

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