須藤憲司×伊藤羊一(1)僕はゴールキーパーみたいなもの 

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今回のインタビューはKaizen Platformのオフィスで実施しました

活躍中のリーダーたちにリーダーとして目覚めた瞬間を問い、リーダーシップの出現メカニズムを解き明かす本連載。第6回は、グロースハッカーの集合知でサイトを継続的に改善するサービスを提供し、日米で事業を拡大しているKaizen PlatformのCEO 須藤憲司さんにお話を伺いました。「社員にも聞いてもらいたい」と言うことで、オフィスのど真ん中で実施した本インタビュー、そこには須藤さんのある意図があったようです。(文: 荻島央江)

<プロフィール>
Kaizen Platform CEO 須藤憲司
1980年生まれ。2003年、早稲田大学を卒業後、リクルート入社。同社マーケティング部門などを経て、史上最年少でリクルートマーケティングパートナーズ執行役員に就任。13年にKaizen Platform を米国で創業。現在はサンフランシスコと東京の2拠点で事業を展開。ウェブサイトを容易に改善できるオンラインソフトウェアと、約2900人のウェブデザインの専門家(グロースハッカー)から改善案を集められるサービスで構成されるUI改善プラットフォーム「Kaizen Platform」を提供。エンジニアやデザイナーがいなくてもウェブサイトの継続的な改善ができると、大手企業150社、40カ国3000カスタマーに活用されている。

リーダーシップとは影響力

伊藤: 今日はいつものようにスドケンさんと呼ばせていただきますね。スドケンさんはリクルート時代、史上最年少で執行役員になり、今は創業3年で従業員100人を抱えるスタートアップのCEOです。ご自身の経験から、リーダーシップとはどんなものだと捉えていますか。

須藤: 人から教わったのですが、リーダーシップは影響力だと思っています。影響力を発揮して何か物事を前に動かしていく。みんなをぐいぐい引っ張るとか空気をつくるとか、その形は人それぞれだと思います。

伊藤: 大企業のようにある程度形ができあがっている場合は社員にある程度の裁量を持たせて任せるスタイルがよく、一方でスタートアップは「俺について来い」と、リーダーが先頭に立っていくものというイメージを持っていました。でもスドケンさんが今実際に取り組まれていることって、それとは違いますよね。みなさんが働きやすい環境をつくることに全力を傾けているように見えて、不思議な感じがしています。

須藤: 会社での僕のイメージは、ゴールキーパーです。全員が諦めても僕が最後に止めれば何か起きることがある。これが、僕が重視していることです。いいパスが出て、バンバン点を取る人は社内にたくさんいます。少しでも僕が妥協して「これでいいや」なんて思った日には、それで駄目になってしまう気がするんです。

伊藤: ゴールキーパーとして最後は俺が守るから、みんなどんどん点を取ってくれと。

須藤: 点を取ってくれと言わなくても、勝手に取ってきちゃう人たちですけど。

伊藤: そういう雰囲気をつくるために、何か具体的に取り組んでいることはありますか。

須藤: 1つは対話です。要はファシリテーションでしょうか。ファシリテーション能力はリーダーシップと密に関係すると思っています。単なる情報交換ではなく、メンバーに「そのあたりはどう?」とか適切に話を振って、議論が深まるよう心掛けています。

伊藤: ヤフーではマネジメントの人間が直属の部下と週1回、30分以上、「1on1ミーティング」を行い、対話を仕組み化しています。その時間は、事務連絡や進捗確認をするのではなく、部下が振り返りやフィードバックを受けることで仕事の経験から学び、成長させる機会であり、マネジメントと意識をすり合わせる機会でもあります。Kaizen Platformでは何か定期的に実施していることはありますか。

須藤: ワン・オン・ワンでの対話は、各チーム単位でやっています。週1もしくは隔週、月1など頻度は人それぞれです。

伊藤: 毎週火曜日の19 時から1時間、スドケンさんの話を聞く会も開催しているそうですね。

須藤: 僕自身が社員のみんなに話すほか、そのときどきでゲストを呼んだり、メンバーの誰かと対談したりしています。参加は強制ではなく、自由です。情報共有を狙ったというより、社員から「スドケンさんが何を考えているのか、話してほしい」という要望があって始めました。このほかにも、東京とサンフランシスコのメンバー全員を集めた情報共有のためのミーティングも毎週やっています。

好奇心は後天的に植え付けられない

伊藤: スドケンさんはとあるインタビューで「採用で70%が決まる」「そもそも人材育成ってできるのか」とおっしゃっていました。もちろん「この人と一緒に働きたい」という仲間を最初の入り口のところで見つけることはすごく大事なことだと思います。その先の能力開発についてどんなふうに考えていますか。

須藤: 採用で70%が決まると言っている僕の根拠は、ただ1つです。僕はリクルートのとき、新卒採用の面接を毎年やっていました。100コマとか面接が入り、吐き気がするほど人としゃべるわけです。その面接で、僕がただただ重要視していたのが、その人が好奇心を持っているかです。これは今も変わりません。好奇心は後天的に教えることが難しい才能だと思います。

これがないと、何を教えても無駄になっちゃうんです。好奇心旺盛な人はスポンジみたいに勝手に吸収していくので、成長スピードがすこぶる速い。逆に好奇心がないと、どんな教育も意味をなさないことを痛感しました。だから知的好奇心が強いというのは僕にとってマストの要件です。採用が7割と言っているのは、好奇心に乏しい人を採ってもその後の成長が見込めないからです。

伊藤: むしろ採用基準は好奇心のみですか。

須藤: 新卒採用をしていた時は、好奇心・地頭の良さ・人柄ですね。現在Kaizenでは中途採用しかしていないんですが、ここはチームメンバー全員に採用権限があり、僕には採用権限がありません。メンバー自身が一緒に働きたい人を連れてきて、自分たちで面接しランチして、全員がオーケーなら内定です。僕が入社前に会うことはほぼなくて、「この人と働きたいので、よろしく」みたいな感じで紹介されて、「どーも、どーも」と握手するのが通常パターンです。

とはいえ、僕が気にしているのはキャラです。この人がこのチームに入ったときにどんな感じになるかなというのはすごく気にしています。

伊藤: それはフィット感みたいなものですか。

須藤: うちは動物園みたいな会社なので、どんな動物が来てもだいたい対応できると思っています。ただチームで働くことが多いので、チーム内でキャラクターが確立できるか、できないか、力を発揮できるところがあるかは結構大事なポイントだと思う。そこはいつも気にしています。

投資家に「お前の会社は動物園だな。さしずめお前の仕事はズー・キーパーだ」と言われたことがあります。僕自身はジュラシックパークの管理人だと思っています。組織で大事なのは多様性です。多様性がないと組織は死んでしまう。存続を考えたら多様性がないと絶対にいけません。みんなが同じような考えで、同じことを言い、やっていたら駄目。だから猛獣、いや新しい人材を常に入れ続けているのです。

修羅場体験が人を成長させる

伊藤: 間違いのない人材を採用できれば、その先は勝手に育っていく、というイメージですか。

須藤: そこは結構、意見が分かれます。マネジメント層で議論すると、「育成はしたくない」という人もいるし、「一定程度、教育したほうがいいのではないか」という人もいます。育成の定義によっても違う。手取り足取り教えるのは本質的にはよくない。仕事を通じて自己研鑽するとか「こういうことをやりたい」というメンバーを最大限バックアップするという意味での育成はやりたいよねと言っています。

僕には「いわゆる一般的な研修プログラムがすごく勉強になった!」という経験が残念ながらありません。僕自身が一番勉強になったのは、実際の仕事を通じたしんどい経験です。修羅場をいかに乗り越えるか。非常に厳しい状況下でも、当たり前のことを当たり前にできるかという難しい問題にさらされる。そっちのほうがよほど学びは大きい。もっと言うと、座学で勉強したことは究極の場面では役に立たないとまでは言いませんが、吹っ飛んでしまいます。

伊藤: 仕事を通じて成長していくということですね。

須藤: こんなふうになりたいとか、こういうことに興味がありますという人にとっては、仕事を通じて自分で、考えて、実践して、学んでいける環境なので、一番吸収が早いし、楽しいんじゃないかと思いますけど。

伊藤: そういう意味でいうと、この会社で社員に成長の機会を提供するとしたら、「修羅場をどんどんつくっていく」ことになるのでしょうか。

須藤: あえてそうしなくても、スタートアップなので、社員にとっては毎日が修羅場だと思いますよ。僕は社員に「KAIZENで実現したい人生のテーマって何かありますか」とよく聞きます。例えばリモートワークを追求したいという人もいれば、新しい働き方に挑戦したいとか、地方創生のため地方に仕事を出すことをしたいとか、いろいろな人がいる。そういうテーマと仕事を結合できたらいいなと思います。そこから間違いなく何かが生まれるはずです。

伊藤: 僕はグロービスで講師をやり、ヤフーでも次世代のリーダーの育成を手掛けていますが、講義や研修の場だけで人を成長させることができるかというと、できないと断言しています。学ぶことはとても大事ですが、グロービスにしてもY!アカデミアにしてもきっかけにすぎない。そこで学んだことをきっかけとして、実際に成長するのは、各自が働く現場においてである、と考えています。学び、職場で修羅場体験をし、そしてまた学び、ということを繰り返すことが大事です。

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