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子育ての節目に父子2人旅

投稿日:2016/05/13更新日:2019/04/09

※この記事は日経産業新聞で2016年4月22日に掲載されたものです。
日本経済新聞社の許諾の元、転載しています。

僕には5人の子供がいる。なぜだか男ばっかりだ。それぞれの息子と1対1で接する機会はほとんどない。多い時で5人全員、少ない時でも2~3人がいつも一緒だ。するとなかなか1人と濃密な時間をとることができない。一方で1対1の時間を取ろうとすると、他の兄弟との時間がその間取れず、不公平になる。

悩んでいた時に、ベンチャーキャピタル事業のパートナーがイスラエルから遊びに来た。彼は息子を連れてきていた。2~3週間休みを取って2人旅をしているという。僕と会うとき以外、日本では一切仕事をせずに、パソコンも見ないで子どもと向き合い、岐阜県の高山や東京の秋葉原などを巡っていた。

不思議に思い聞いてみると「息子が日本を好きなので来日した。『バル・ミツワー』という、イスラエルで13歳になった時の大人への通過儀礼のようなものがあり、父子2人旅をすることにした。普段できない1対1の濃密な時間を過ごせて、お薦めだよ」と言うのだ。聞いた瞬間に僕も父子2人旅をすると決め、我が家のルールを決めた。12年以上も前のことだ。

さすがに3週間は難しいので、小学校入学時に1日、中学校入学時に1泊2日の父子2人旅をすることにした。

小学校入学時の1日コースには全員、僕の生まれ故郷の水戸に連れて行き、母校を巡った。日本三大藩校の一つである弘道館の跡地に建った小学校、徳川光圀公が大日本史を編さんした地にある中学校、水戸城の跡地に立つ高校を見せた。日本三名園の偕楽園では咲き誇る桜を楽しみ、出店で甘い綿菓子を買い、玉を投げる遊戯をして2人の時間を目いっぱい楽しんだ。

中学校入学時の2人旅は1泊2日だ。1日目は2人で一緒に過ごし、2日目はグロービス経営大学院の入学式に参列してもらう。学長である僕が新入生に送るスピーチを息子にも聞かせ、仕事とはどういうものかを感じさせる。

今や息子5人とも小学生入学時の2人旅を終え、中学入学時の2人旅も三男まで終えていた。長男と次男は京都に行き、翌日大阪校の入学式に参列。三男は対馬で翌日が福岡校だった。今春は四男が中学校に入学したので、2人で4月9、10日に宮城県の女川に行き、翌日仙台校の入学式に参加してもらった。女川にあるギターやタイルの工房を訪れ、駅舎の「ゆぽっぽ」でお風呂に入り、夕食時には肉を焼きながら語り続け、トレーラーハウスに泊まった。

1対1で接すると、兄弟がいる時とは全く違った息子の表情を見ることができる。兄弟がいると、甘えたくても父親を独占できない。皆それぞれ遠慮しているのだ。親と対峙することよりも兄弟とのコミュニケーションを大事にしてしまう面がある。他の兄弟たちから強制的に隔離して、1人の息子と一緒の時間を過ごすのだ。

中学校入学時の2人旅では「中学生としての過ごし方」を意見交換したり、僕の中高の体験談を話したりする。中学校といえばもう反抗期に入る難しい時期だ。なるべく説教っぽくならないように、友達感覚で会話をする努力をした。

改めて思うのだが、ルールは重要だ。急に息子に「2人旅に行こうか」と誘っても、「何で?」と抵抗されてしまう。だから、「入学の節目に2人旅は必ずやるものだ」と決めると良い。その時期が来れば当然行くものだと思ってくれるからだ。

今春大学に入学した長男に、「大学入学時だから、今度は海外に2人旅でもしようか」と聞いてみた。すると、長男は「もういいんじゃない」と僕を軽くあしらい、高校の友達と卒業旅行に行ってしまった。子どもは親元を巣立っていくものだ。2年後には五男が中学に進学する。家族ルールで行く最後の2人旅だ。巣立っていく前に子供と2人で過ごせる濃密な時間を大事にし続けたい。

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