「目的」のもとに「目標」がある 

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多くの会社ではこの4月に新しい期を迎え、心機一転、ビジネスをスタートさせていることと思います。そんな中、個人においても、チームにおいても、1年間の目標を立てます。今回はその目標の話です。

目標は単なる「しるし」/目的は「意味」を含んだもの

さて、日ごろの仕事現場でよく口にする「目標」と「目的」。その違いは何でしょうか?

まず目標とは、単に目指すべき状態(定性的・定量的に表される)、あるいは目指すべきしるし(具体像や具体物)をいいます。そして、そこに意味(~のためにそれをする)が付加されたものが目的です。

簡単に表すと───目標+意味=目的

例えば、プロ野球選手はよく次のように抱負を語ります───「今年は打率3割を目指します」「20勝をあげて最優秀投手を狙いたい」「伝説の■■さんのような選手になりたい」など。これらは目標です。目的というのは、「野球とともにある人生を送るため」「自己の能力を証明するため」「観ている人に感動を与えるため」といった目標を包み込む意味的なものになるでしょう。

そのようにとらえると、目的のもとに目標があるという関係がみえてきます。もしくは、目標は目的に向かう手段・過程としてあることが浮かび上がってきます。

これもわかりやすくスポーツ選手の例で説明しましょう。国内の大会で優勝したある体操選手がお立ち台でヒーローインタビューに応じていました。「狙いどおりの優勝ですね」とインタビュアーからマイクを向けられると、彼は冷静な表情で「いえ、これは一つの通過点ですから」と答えました。実は彼にとっては、国内で1位になることは単に目標Aであって、その次に世界選手権で1位になる目標Bを抱いています。さらにはオリンピックで金メダルを取るという目標Cまで胸の中にあります。

そして彼の心の中に赫々と燃える目的は何かといえば、それは「強く美しい演技を通して自分もハッピーになりたい、人もハッピーにさせたい。長く人びとの記憶に残る競技者になること。それが自分の使命であり存在意義」ということです。そのおおいなる目的のもとに目標Aがあり、Bがあり、Cがある。言い換えれば、長く遠い目的成就のための手段・過程として目標A、B、Cはあるわけです。

坂の上に太陽を昇らせよう

これらのことをふまえて描いたのが下図です。

私たちは常に坂の傾斜に立っています。仕事をやるというのは、いわば坂を上っていく努力と言ってもよいでしょう。坂の傾斜角度は仕事の難度です。難しい仕事であればあるほど角度は大きくなり、自分にかかる下向きの力は大きくなります。下向きの力とは、仕事達成のために起きてくる障害やリスク、ストレスです。

私たちは坂を上っていくために、目標A、B、Cを設けます。働く個人においても、事業組織においても、目標の設定は欠かせません。目標なき仕事・事業は、惰性に陥るからです。

ただ、目標は往々にして、義務的、受動的、圧迫的になりやすいものです。また、目標管理制度と成果主義が多くの職場に導入されている昨今、数値目標をクリアしなければならないという恒常的なプレッシャーは、働き手に「目標疲れ」を生じさせます。悪くすればメンタル問題も引き起こします。「目標だから、やらなきゃしょうがない。がんばれ」だけの根性論では長続きしません。

だからこそ、私たちは「坂の上に太陽を昇らせる」ことが必要です。そう、進んでいく先で輝く目的であり、それをなぜやるかという意味です。太陽は坂道を照らし、エネルギーをくれます。意味から湧く内発的なエネルギーは強力かつ持続的です。

その数値目標は何につながっているのか

いまの職場には「数値目標は溢れるが、目的がない」ところが多いように思います。経営者のなかには、「業界シェアNo.1をとる」「売上げ●●億円企業になる」といった旗を揚げるところもあります。また単に「対前年度●%アップを達成すべし」と決めるところもあります。こうした数値的な到達点は目標であって、目的ではありません。なぜシェアや売上額をそこまで伸ばすのか、そのことが社会や働く個人にどんな意味や価値をもってつながっているのか、それが目的です。経営者はその目的を肉声で現場に語ってこそ、数値目標は生きたものになります。

目的の創出は意味・価値を問う作業です。それはロジカルな分析や綿密な計算によって答えが出るというより、何か絵を描いたり、土を掘り起こして何かを植えたりすることに似ています。答えを独自に表現する、答えを徐々に育んでいく作業です。

いずれにせよ、組織にとっても、働く個人にとっても、目的はその在り方を決めます。坂の上にどんな太陽を昇らせるのか───この5月、じっくり考えたい大切なテーマです。
 

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