突然ですが、「Start/Stop/Continue」というフレームワークをご存知でしょうか?
極めてシンプルなフレームワークですが、個人・組織を問わず、今後に向けたアクションプランを考える上で効果を発揮します。自分や組織の今後を見据えて、新しく始めること:Start、やめること:Stop、継続的に続けていくこと:Continueを記載して、議論を深めていくというものです。
私はキャリアを考える場面や企業の戦略立案の現場など、様々な場でこのフレームを使った議論をしていますが、この3つの項目が機能するかどうかを見極める上で重要なポイントが1つあります。それは「Stop」、つまり「やめるべきこと」がどれだけ具体的に書かれているか、ということです。
StartやContinueはすぐに埋まりやすい傾向にあります。特に、Startの項目については、考える段階では意気込みにあふれており、多くの勇猛果敢なチャレンジが入れられます。結果として、Startについては野心的な項目がいくつか入ります。また、Continueについては、ほぼ思考停止状態で今までやってきたことがラインナップされがちです。一方、Stopについては途端に歯切れが悪くなります。多くの場合は、何も書かれないか、極めて抽象的な「無意味な時間を減らす」といったことばかり。つまり、自分自身や組織におけるキャパシティは変わらないにも関わらず、減ることは何もなく上乗せばかり、という構図になっていくのです。
この後の結論は、おおよそ想像がつくでしょう。今まで余力があった人でない限りは、日常に戻ってしまえば、新しいチャレンジを上乗せで吸収できる余地はないのです。その結果として、起きることは2つです。1つは当初思い描いていたStartの項目がほとんど実行できなくなること。もう1つは、Startばかりに注目が行き、今までこなしていたContinueが無意識のうちにおろそかになる、ということです。
これは、企業の戦略でも同様です。中期的な戦略を考えるワークショップをすると、「こういう新たなターゲットにこういうプロダクトを売りたい」「こういう新しい手法を取り入れましょう」など、議論の結果として出てくる話は多くは「Start」項目に偏ります。一方で、「これを始める代わりに何をやめますか」や、「何の優先順位を下げますか?」という問いかけに対する議論は、恐ろしいほど盛り上がりません。やってきたことの優先順位を下げることのリスクや、現場からの反発を感じて、具体的に思考を投入することを避けてしまうのでしょう。
組織のリソースも、自分のリソースも限りがあります。1日は24時間しかありませんし、使えるパワーも無尽蔵にあるわけではありません。だからこそ、その器の限界を冷静に踏まえた上で、その限られた器の中に「何から先に入れるのか」、ということを考えることに意義があるのです。優先順位のないプランは、単なる夢物語にしかなりません。実行力を伴うプランになるかどうか・・・それは、「Stop」の項目がどれだけ具体的なのかを見ることによって明らかになるはずです。
※本記事は、FM FUKUOKAの「BBIQモーニングビジネススクール」で放送された内容を、GLOBIS知見録用に再構成したものです。 音声ファイルはこちら >>
イラスト:荒木博行
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