米大統領選(2) 「スーパーチューズデー」 

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22州の有権者が米大統領選に向け党の候補者を選ぶ「スーパーチューズデー」は過ぎ去った。しかしここ最近の傾向とは異なり、共和、民主両党共に、決定的な勝者が決まることはなかった。なぜだろうか。現状はどうなっているのか。そしてこれから何が起こるのか。この記事では、これらの疑問に答えるととともに、今後の大統領選の行方についても明らかにしていきたい。

民主党接戦、共和党マケイン氏抜け出す

まず、大局から眺めてみよう。両党の大統領候補はまだ決まっていない。どの候補者も十分な数の代議員(夏の党大会で指名候補の投票をする議員)数を獲得できていないからだ。両党の指名候補争いは、残りの州での予備選挙と党員集会までもつれこんだ。

スーパーチューズデーの結果は、各候補によって様々だった。5人の候補者それぞれが、少なくとも一つの州で勝ちを収めた。

民主党では、ニューヨーク州上院議員ヒラリー・クリントン氏がカリフォルニア、ニューヨーク、ニュージャージーなど人口の多い州で勝利を重ねた。一方イリノイ州上院議員バラク・オバマ氏も、地元イリノイ州だけではなく、ジョージア州など南部、ミズーリ、カンザス、コロラドなど中西部の州を中心に勝利した。

共和党では、アリゾナ州上院議員ジョン・マケイン氏が、ニューヨークなど北東部や地元アリゾナを含む9州で勝利。前アーカンソー州知事マイク・ハッカビー氏は南部テネシー、ジョージアなど5州で勝ち、前マサチューセッツ州知事ミット・ロムニー氏は、マサチューセッツ州を始め、中西部や西部地区の7州でトップにたった。

しかし勝利した州の数はあまり関係がない。候補者が本当に欲しいのは、各州の人口と得票率によって振り分けられる代議員数である。

CNNでの集計結果によれば、本コラム執筆時点で、クリントン氏が1,033、オバマ氏が937の代議員数を獲得している。しかし、民主党の指名獲得には2,025の代議員数が必要であるため、どちらの候補者もまだ勝利まで半ばというところだ。共和党側では、マケイン氏が714、ロムニー氏が286、そしてハッカビー氏が181の代議員数を獲得している。指名獲得に必要な1,191までには、大きくリードしたマケイン氏でさえ届かない。

共和党:マケイン氏が王手

正式に決着は付いていないが、共和党側では結果がはっきりしつつある。マケイン氏は党の主導権を握り、共和党の有権者にとって「妥当な候補者」として捉えられている。マケイン氏が軍や公務で残した功績は、常にアメリカによる武力行使の強硬な擁護者である共和党の方針に合致している。

この時点の投票結果を見る限り、マケイン以外の候補者が勝つことは奇跡に近い。ビジネスマンであるロムニー氏は自らの資産で選挙戦を行っている事から、勝ち目のない戦いと見るや早々と候補者争いから撤退した。ハッカビー氏はまだ戦いを続けるが、マケイン氏の大量リードというという事実からすると、形だけの対立候補でしかない。

しかし、共和党にはマケイン氏に反感を覚える保守派もいる。「スーパーチューズデー」でもおよそ半分の州で勝利できなかったことがそれを物語っている。保守色の強い党員は、移民問題などで民主党に歩み寄りの態度を示すマケイン氏に対して不信感を募らせているからだ。不満を抱える党員が、11月の本選挙で「投票拒否」という行動をとれば、民主党を勝利に導くことになる。

民主党:長引く候補者争い

一方の民主党だが、候補者選びは過去20年の選挙戦の中で最も長引いている。この戦いは、1984年に民主党の若き上院議員であったコロラドのゲイリー・ハート氏が、前副大統領であるベテランのウォルター・モンデール氏に挑み、6月までもつれ込んだ選挙戦に似ている。最終的にはモンデール氏が勝利したが、その8年後、ハート氏の「変化と新しい構想」という軌跡を追った、民主党の若きビル・クリントン氏が大統領選に勝利した。

若き挑戦者オバマ氏と、主流派を代表するクリントン氏——。登場人物を変えて、歴史は繰り返されている。

民主党員は、「リベラル」を代表する候補者を選ぶか、新しい風を運ぶ若き使者を選ぶか、で大きく二分される。これから先投票する人々も、「経験」か「何か新しいもの」か、どちらか一つを選ぶという難しい選択を迫られている。

クリントン氏とオバマ氏のどちらが選ばれた場合でも、11月の本選挙で勝利する候補者としては申し分ないという事はせめてもの救いである。民主党の得票率は常に共和党をリードしており、これは11月の本戦に向けて良い傾向である。

これまでの投票結果を見るかぎり、どちらの候補者も決定的なリードを奪うことは難しいだろう。実際のところ、残りの予備選挙を終えたとしても結果が出ない可能性が高い。

そうなった場合、候補者を決めるのは各党の有力者(正副大統領経験者や上下両院議員、州知事など)を含む、約800人の「特別代議員」に委ねられ、彼らは党大会において誰に投票しても良い事になっている。何人かの「特別代議員」は既に立場を明らかにしているが、それを変更することも自由である。つまり、この夏、8月の党大会まで候補者が分からないという事だ。そのような事例は数少ないが、今年に限っては現実に起こり得るだろう。

差し迫って選挙に影響する要因がある。現金だ。候補者はキャンペーンによる広告費、人件費、移動費などの資金を集め続けなければならない。

オバマ陣営は、月当たり約3,000万ドルもの募金をオンラインで集めたと報じられている。一方、クリントン陣営は500万ドルのキャンペーン費用を融資で受けねばならず、主要な選挙スタッフには無給で働くよう望んでいる。このような状態が続けば、オバマ氏は組織的に有利に立つばかりか、そのまま勝利まで駆け抜けてしまうだろう。

目が離せないデッドヒート

これからの数ヶ月で、各週での残りの投票が行われる。民主党側は、2月を通じてルイジアナ、ネブラスカ、ワシントン、メーン、ワシントンD.C.、メリーランド、バージニア、ハワイ、そしてウィスコンシンで投票が行われる。もし、どちらか片方の候補者がこれらの州で大半の代議員数を獲得できれば、勝利を盤石なものにできるだろう。刻々と代議員の総獲得数が変化するので、常に選挙結果に目を光らせておく必要がある。例え2月中に予備選を勝つことができないとしても、勝つ寸前まで行くことは可能である。

3月4日には次の山場を迎える。オハイオ、テキサス、ロードアイランド、そしてバーモントという4つの州で投票が行われる。これは、民主党候補の2人が対立候補に差をつける機会であり、マケイン氏にとっては共和党の指名獲得を決定付ける場となるだろう。

各候補者はこれから数週間、それぞれの主張を強調し続ける事が予想される。オバマ氏はポジティブな変化を唱えて若年層の得票を集め、クリントン氏は経験と強固なリーダーシップを訴えるだろう。それぞれ勝利に向けて奮闘しながらも、党内で争うことによる損害を最小限に食い止め、最終的には党を一つにまとめ上げる。ホワイトハウスを奪い返す為、共和党候補になるだろうマケイン氏との11月の決戦に挑んでいくはずだ。(英文対訳:棚原潤)

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