群を抜き、差別化し、受容されよ―『競争優位を実現するファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略』 

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本書は、マーケティングの神様・コトラー氏が推薦し、星野リゾート・星野佳路社長が「教科書」として実際に自身のビジネスで活用してきたという一冊だ。

環境変化を捉え整合性のとれた戦略を立案・実行し競争優位性を築くことが重要だ、という理屈はわかるが、現実には、商品やサービスがコモディティ化し、自社が使用可能な経営資源は限られている中で、優位性を築くことはあまりにも難しい、どうすればよいか

これは、経営戦略やマーケティングの理論を学び、さて実務で実践しようとする際に誰もが抱く疑問であろう。本書はまさにこのような疑問に応える、実践的経営理論書だ。

「ファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略」は、あらゆるビジネスを構成する5つの要素は「価格」「サービス」「アクセス」「商品」「経験価値」であると定義している。そして、企業は、第一の要素を「レベルⅢ:市場支配(消費者がよそで買うことを拒絶する、市場を支配できているレベル)」、第二の要素を「レベルⅡ:差別化(企業がその要素を使って、自社の商品やサービスを好むよう消費者を説得したいと考え、差別化に成功しているレベル)」、残り3つの要素を「レベルⅠ:業界水準(企業が1つの要素によって市場競争にのりだし、消費者に受容される最低水準をクリアしているレベル)」にする必要があると説く。

すなわち、第一の要素で群を抜き、第二の要素で差別化し、残り三要素の仕事ぶりで顧客から受容されるレベルを維持することによって、競争優位を実現するということだ。

ここで重要なことは、5つの要素全てを高め続け、一流であり続ける必要はないということだ。企業は何においても一流を目指したいという誘惑に打ち克ち、どの要素で戦うか決めなくてはならない。そしてもう一つ重要なことは、第一第二の要素でどれほど成功を収めても、残り3つの要素で業界の標準を下回ってはいけない、ということ。5つの要素全体の総合点が重要なのだ。

約370ページと厚みのある書籍ではあるが、5つの要素それぞれについて実際の企業事例をとりあげながら具体的に解説がなされ、また要素毎の診断用チェックリストもついているなど、非常に読み進めやすい。ぜひ、このフレームワークを自社のビジネスにあてはめ思考いただきたい。

なお、取り上げられている事例にはスーパーマーケットをはじめとする小売業や飲食業が多いが、他の業界の方も、自社にとっての「商品」「経験価値」「サービス」とは何か、それぞれ具体的に定義して読み進めることで、多くの示唆が得られるだろう。実際、星野社長もホテル・リゾートのサービス業においては「商品=施設」「経験価値=サービス内容と質」「サービス=カスタマイゼーション」と解釈して実践されている。業界問わず広くビジネスパーソンにお薦めする。

『競争優位を実現するファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略』
フレッド・クロフォード/ライアン・マシューズ著、星野佳路監修、株式会社イースト・プレス
2,200円(税込2,376円)
 

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