朝日新聞・世紀の大誤報はなぜ起こったのか――信用回復には事実と根拠を 視聴時間

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ジャーナリスト・櫻井よしこ氏×アゴラ研究所所長・池田信夫氏×参議院議員・三宅伸吾氏× 現代ビジネス編集長・瀬尾傑氏
G1サミット2015
第10部 分科会D「朝日新聞と慰安婦問題」

2014年8月、朝日新聞は、慰安婦を強制連行したとする吉田清治氏の証言を報じた自社記事が虚偽であったことを報じ、記事を取り消した。これまで慰安婦の強制連行と軍の関与を裏付けてきた記事の影響は大きい。2015年1月には「日本の国際的評価が低下し、国民の名誉を傷つけられた」として、約8700人が朝日新聞を提訴。原告団はすでに2万人を超える規模となっている。世紀の大誤報は、なぜ起こったのか。なぜ32年間にわたって放置されたのか。メディアの信頼を回復するとともに、事実に基づいた歴史認識を形成し、国際社会における信用回復を図っていくために、必要な行動を議論する(視聴時間1時間18分01秒)。

池田 信夫氏
株式会社アゴラ研究所 所長 
経済学者
櫻井 よしこ氏
ジャーナリスト
三宅 伸吾氏
参議院議員
瀬尾 傑氏(モデレーター)
株式会社講談社 
現代2020企画部部長 兼 『現代ビジネス』編集長

【ポイント】
・慰安婦問題には、メディア全体における問題も含まれている。ジャーナリズムはつぶれてはならない。ジャーナリズムの仕事ができる感謝、本当に自分たちは正義なのかという反省、読者・取材先への敬意をもつべき(瀬尾氏)

・ジャーナリズムの基本は、思い込みやイデオロギーを排除して、何が起きているかという事実を伝えること。慰安婦問題における朝日新聞の対応からは、これが見事に排除されている。慰安婦報道に関する朝日新聞のスタートそのものがジャーナリズムではない(櫻井氏)

・元慰安婦として初めて顔と名前を出した金学順さんの記者会見について、植村隆記者は、彼女が言ったことを書かず、言わなかったことを書くという創作まがいのことを行っている(櫻井氏)

・NHK大阪放送局で、福島瑞穂弁護士から植村記者と同じ問題についての売り込みを受けた。これが特異な点は、マスコミが取材して新たな事実を発見したのではなく、売り込みであったこと。しかも、福島瑞穂・高木健一その他の弁護士が韓国でビラをまき、原告(慰安婦)募集をした結果であること(池田氏)

・97年3月、朝日新聞は、吉田証言の嘘をごまかすために「狭義の強制性」「広義の強制性」と言い出す。これは論理の摩り替え(瀬尾氏)

・この慰安婦問題は、慰安婦を強制連行したという加害者の側の枠組みが吉田清治によって提示され、強制連行されたという証人(金学順)が出てたことにより、加害者と被害者という偽の物語ができた。後押しとして92年1月11日の朝日新聞一面トップ記事が出て、「軍関与」という構図ができたところからものすごく大きな騒ぎになった。

・私に限らず日本人はみな、当時慰安婦にならざるをえなかった女性たちには同情している。だが、衛生面での軍の関与は、必要な管理。朝日新聞はそこに、「慰安婦の女性は強制連行され、8万~20万人が姓奴隷にされ、終戦間際には証拠隠滅のためその大半が殺された」と解説をつけた(櫻井氏)

・また、民間の独立検証委員会による検証では、1985年から慰安婦に関する記事がどれだけ書かれたか、そのうちのどれだけが朝日新聞の記事によるかを統計で出している。それを見ると、朝日がこの慰安婦問題に火をつけたことは紛れもない事実。海外においても1992年1月の「軍関与」の記事が出るまで、主要な新聞は一度も慰安婦問題について書いていなかった。以上から、この慰安婦問題に本当に悪い役を果たし、その上で反省していないのが朝日新聞ということになる(櫻井氏)

・調査報告書の中で岡本行夫氏が「新聞社は運動体ではない」としているが、私は運動体であっていいと考える。運動体でないジャーナリズムは、窒息する。表現行為が扇動であるのは間違いない事実。ただ、テロリスト的な表現行為をしたメディアの行為は自殺行為であったと認知されるのが健全な社会(三宅氏)

・朝日新聞は、日本の戦後に対する極めて自虐的な史観を追求している。その思想を宣伝するための証言があったのは事実。振り返るとでたらめだったその証言を結果的に32年間放置した上で、取り消した。その意味では日本の言論のマーケットは機能したのだが、その歳月によって、立証されていない日本の不名誉や日本の信頼を失墜するようなメッセージが世界中に流布した。日本政府も朝日新聞の誤った事実に基づく報道に多大な影響を受けてミスを犯した結果、世界に今なお誤ったイメージが蔓延している(三宅氏)

・べき論の前に事実関係を。リアルタイムで同時代の人がどう考えていたかを検証しないことには、あと知恵の批判はできない。同時に取材をした立場としては、「挺身隊」という言葉を使ったのは朝日だけではない。植村記者の名が出たことも気の毒。植村記者は、今はもう亡くなった元大阪本社編集局長・鈴木氏の業務命令で韓国での取材を行っている。また、直接的には92年1月の記事によるわけだが、この記事を書かせたのも、当時東京社会部デスクに異動した鈴木氏。悪質な囲み記事も、鈴木氏が過去の朝日の資料を集めて書かせたもの。そのため、植村氏のみがクローズアップされるのはアンフェア(池田氏)

・今、日本では、女性の人権問題として慰安婦問題を扱っている。これに対して、国際社会のメディアがどう日本を批判しているのか、事実関係を見なければならない。今も同じことをやっている他の国は一切批判されず、日本だけが批判の対象になっている理由は、女性を強制連行したという最初のイメージがあるため。日本に特有の強制連行ととらえるクマラスワミ報告やマクドゥーガル報告書などがもとになり、日本が非難されている。女性の人権問題と、慰安婦問題の本質を明確にわけて考える必要がある(櫻井氏)

・こうした報告書を日本人は英文できちんと読むべき。クマラスワミ報告の中では、日本軍がどのように女性たちを扱ったかについて、おぞましいことが書かれている。後になって、1500年にわたる中国の歴史を時系列で書いた歴史書に同じ話がたくさん出てくるのを発見。こういう目にあわされたという記憶や、昔の中国の価値観から出てきていることがわかる。日本は歴史を精査し、冷静な事実として国際社会に説明していくことが大事(櫻井氏)

・アメリカには、フェアであろうとする努力と健全な精神がある。日本が事実をなげかければ、きちんと聞く耳をもっているし、持たなければいけないという価値観がある。それがアメリカのひとつの魅力。この精神に訴えることが大事。ジャーナリズムの責任は、自分の意見を加えず、事実とその根拠をボールとしてぶつけ続けること。30年40年の戦いだと思ってやっていくことが大事(櫻井氏)

・海外との間には非常に大きなギャップがある。ニューヨークタイムズは、この問題について極めて先鋭的な記事を書いている。現在、事実認識はほぼわかりきっているが、海外の人にとっては強制連行があったかなかったかはどうでもいい。セックススレイブを最大の問題として、ニューヨークタイムズもそちらに話をすりかえており、日本人が問題にしていることとはまったく違う論点になっている(池田氏)

・私の友人でもあるマーティン・ファクラー氏がニューヨークタイムズに美しくないののしり言葉を使った記事を出したところ、アメリカのメディア調査センターがこの記事を取り上げて、「中立でも何でもない、このような形容詞の多い記事を書くのはメディアの役割としては間違っている」と名指しで批判した。変な記事を正そうとする動き良識もあるところに、一筋の希望を持ち続けたいと考えている(櫻井氏)

・「慎ましくすることによって国際社会では評価されない」と総理もおっしゃっている。今まで、戦後保障で日本国を訴えた裁判では、事実関係を争わなくても裁判は勝てるので、日本政府はそうしてこなかった。しかしその結果、日本は慰安婦狩りをしたような相手の主張は判決文にのるが、その反論はない。日本政府は裁判には勝つが、社会的には負けている。そのため、日本政府は方針転換をして事実関係で争うことになったが、それだけでは不十分。河野官房長官の話を事実上訂正しなければ、間違いは正せないと確信している(三宅氏)

(肩書きは2015年3月21日登壇当時のもの)

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