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「どこ(=Where)」が問題かを 2段階の手順で効率的に特定する

投稿日:2006/12/11更新日:2020/10/23

前回は、「What→Where→Why→Howの順番で考える」という問題解決のプロセスにおける「どこが問題かを特定する(=Where)」ステップの重要性について紹介した。今回は、これ(=Where)を、効率的かつ効果的に特定する、具体的な方法論を詳説しよう。

思考のモードをスピーディーに切り換える

「どこ?」を特定する思考のゴールは、「問題があるところ」と「問題がないところ」を明確に二分する、つまり、問題を一網打尽にすることだ。

無論、一足飛びにこの状態を作り出すことは容易ではない。多くは、一つの切り口で分析し、また一つの切り口で分析し、と繰り返しているうちに時間切れになってしまう。これを回避するには、「どこ?」を考える段階をさらに二つに分け、それぞれの目的に応じた頭と時間の使い方を徹底することが効果的だ。

最初の段階は、「準備作業」だ。ここでは「問題の全体像と傾向を把握する」ことがゴールになる。ポイントは、「時間をかけず、たくさん切っては捨てていく」こと。できるだけ多くの種類の異なる切り口を用いて、どんどん状況を切ってみる。そして問題の偏在状況をザクッと把握することに注力する。

この際、留意していただきたいのが、「一つの切り口に拘泥(こうでい)しない」こと。ダメなこと(つまり、問題があちらこちらに点在して傾向が見えない)が分かったら、すばやくその切り口を捨て、別の切り口で切っていく。

「捨てる」といってもその切り口で状況を見たことはムダではない。「この切り口だけでは問題が特定できない」ということが確認できることに最大の意味がある。

この作業に時間をかけないためには、多面的な切り口をたくさん、早く考えつくことが必要だ。そのためには、「切り口の切り口」とも言えるパターンを押さえておくとよい。たとえば物事を分類する場合、「What(何が)」「Who(誰が)」「Where(どこで)」「When(いつ)」など、いくつかの視点を持っていると切り口の幅が大きく広がり、また視点を多面的にすることができる。例えば「人がやめる」という問題であれば、「どんな職種でやめる人が多いのか?」「どんな年代・性別の人がやめるのか?」「どの地域でやめる人が多いのか?」「いつごろにやめる人が多いのか?」といった具合だ。

状況を切り分け、そこから傾向を読み取るには、表やグラフなどを使って視覚的に見てみるのも効果的だ。複雑な統計解析や凝ったグラフを作る必要は全くない。棒グラフ・円グラフ・折れ線グラフ・散布図など単純なグラフにして眺める、データを単純に値が大きい順などで項目を並べかえてみる、表の中で代表値(平均など)との差が大きいところや値が悪い部分に色を塗る、二つの変数をそのまま散布図する、といった単純な手法でさっと視覚化し、眺めて傾向を読み取るほうが、かえって問題箇所が浮かび上がってくることは多い。

その際、忘れてはいけないのは、行った分析から必ず一言の「そこから言えること」をメッセージにして書き出しておくことだ。「年齢にはばらつきがない」「職種では営業が他より2倍多い」といったレベルで構わない。これが次のステップで役に立つ。再度言うが、ここのステップに時間をかけすぎないこと。おぼろげながら問題の所在が立体的なイメージとして頭に浮かべば十分だ。

仮説を持って粘り強く切り口を作りながら本質に迫る

さて、「準備作業」が終わったら、いよいよ本題に入る。ここでの目的は「問題を一網打尽にする」こと、もしくは「問題の種類を峻別する」ことだ。

「問題を一網打尽にする」とは、ある切り口で状況を切り分けると、「問題があるところ」と「問題がないところ」に、明確に二分されること。まずは一網打尽にできないか、を考えてみてほしい。そして、もし無理であれば、「問題の種類を峻別する」ことを目指す。

複雑な問題の場合、一つの原因だけではなく、複数の原因があり、それがそれぞれ別の問題を生み出しているのだが、表面的には全てが混在しており、明確には切り分けられないケースが多い。そうした場合、大きくAという種類の問題のかたまりと、Bという問題のかたまりに峻別する。

ここでは「準備作業」とは異なり、粘り強く、丁寧に考えることがポイントとなる。特に重要なのは、「仮説を持って切り口を作る」こと。物事の裏側に、どういったメカニズムがあるかを考え、事象の関係を紐解いていく。先の準備作業において見えてきたイメージ、言い換えれば、それぞれの分析から出てきたメッセージを並べ、裏に隠れた傾向やメカニズムを考える。

そのためにはまず、「いくつかの切り口を組み合わせて関係を見る」ことを意識するといい。仮に、産業向け精密機械部品の事業で競争が激化して自社の競争力が落ちている、としよう。そこで「顧客」「商品」「競合」などの切り口を組み合わせて見ていく。

例えば「商品種別」と「顧客」「自社・競合」を組み合わせて、どのような商品がどのような顧客で「競合と競争し勝てている/勝てていない」かを見ていく。たとえば「低価格の普及品では当社の商品は満遍なく勝てている一方、高品質高価格の商品群では、勝てている場合と勝てていない場合がある」ことが分かったとしよう。

さらに、では、高価格の商品群で「勝てている/勝てていない」がどういった切り口で分けられるのか?自社・競合の商品と顧客を「自社が勝てている商品・顧客/自社が負けている商品・顧客」に分類してみる。そして、顧客または商品の違いは何か?共通点を探し、どういった属性によって「勝てている/勝てていない」が切り分けられているのか?を考える。このように見ていくと、「高品質」と言っても、例えば自社が勝てているAという顧客グループは一定の環境下で極めて高い精度が持続することが購買のポイント。一方、自社が勝てていないBという顧客グループでは、加工精度の高さはあまり求められていないが、温度や湿度など大きな使用環境の変化に対応できる仕様であることが重要視されている、といった「違い」が見えてくる。そうすると、「自社の高価格帯商品では『精度』の部分には問題がないが、『使用環境への対応性』に問題がある」といった、自社の競争力低下の原因を決する明確な「切り口」が浮かび上がってくる。

こうした絞り込みを行う際には、年代別・業種別・価格別・用途別といった単純な切り口だけではなく、特異点(全体傾向から外れていて、特に目立つ部分)や変節点(傾向が分かれるポイント)に着目し、そこから何らかの特徴を推定し、それが「ある」か「ない」かによって問題を一網打尽にできることが多い。たとえば、「精度Xミクロン以下を求める顧客」「求めない顧客」また、「X部品を内製化している顧客」「そうでない顧客」といった切り口だ。
こうした「一網打尽」の切り口を見つけるのは容易ではないが、それぞれのグループに含まれている要素を見比べ、共通点は何か?を粘り強く考えていけば、導き出せる。つまり、帰納的な思考を意識することが効果的に働く。

なお、帰納的な思考とは、様々な事象の背後にある共通点を見つける思考法のこと。例えば、全世界で商品を販売しているが、日本・メキシコ・フィリピン・カナダ・イギリス・イスラエルでは特に売れているとしよう。共通点は何だろうか…。もしかしたら、それは、売れている国はアメリカの影響が強い国、といった共通点かもしれない。

こうしてグルーピングしたものから帰納的に導かれる仮説を立て、さらにその妥当性を検証していく。帰納的な共通性は「たまたま一緒」という可能性があるので、その仮説に当てはまらないものはあるか、否かをさらに検証していくわけだ。

切り口を組み合わせて関係を把握し、仮説を持って問題を一網打尽にできる切り口を探索していく。このように見ていくと、問題がある部分と、ない部分が明確になり、また問題もいくつかの特徴的な種類に峻別することができる。

プロセスでさらに原因の出発点を絞り込む

「一網打尽」を実現する上で、前述の「帰納的な仮説による切り口の発見」に加え、ぜひマスターしておきたいのが、「プロセスによる分解」だ。プロセスとは例えば、「商品の開発プロセス」「製品の生産プロセス」「顧客の購買プロセス」「社内での意思決定のプロセス」などが挙げられる。

問題がある場合、その結果には必ず、そこに至る流れがある。その流れを押さえて「プロセスのどの段階で先に進まないのか」を特定できると、問題箇所が一気に絞り込め、そこに紐づく原因を劇的に減らすことができる。

例えば商品の購入であれば、「顧客がその商品によって得られる効用を得たいと感じる」→「その効用を実現する商品の存在を知る」→「自社の商品を認知する」→「他の商品と比較して自社の商品を選びたいと思う」→「実際に商品に接する・情報を集めるなどして、自社の商品を選択することを決断する」→「入手できる方法を知る」→「入手する」といったプロセスが考えられる。その中で、どこの部分で先に進まなくなっているのかをチェックしていく。プロセスの分解は、ダイレクトにそこに紐づく原因を絞り込むことに繋がる。例えば仮に「自社の商品を認知する」段階に問題があると分かれば、そこに紐づく原因を考えていけばいい。それは「他の商品と比較して自社の商品を選びたいと思う」など他の部分に紐づく原因とは、一部重なるにしても相当に異なるものに絞られるはずだ。

ここで注意していただきたいのは、先に示したプロセスはどの商品にも当てはまるプロセスではなく、商品特性によって、また顧客によってプロセスは変わってくるということだ。例えばジュースの購買と家電の購買、ファッション品の購買ではプロセスは大きく異なる。また、新規顧客とリピートの顧客、店頭での購買とWebでの購買も大きく異なる。このため、問題箇所が絞り込まれない段階でプロセスを考えると混乱する。このためプロセスを考える前に問題箇所を絞り込んでおくことが重要だ。

繰り返しになるが、「多数の視点からの全体像の把握」→「仮説に基づく絞込み&プロセスによる発生箇所の特定」という流れで、「どこ?」を徹底的に絞り込むことが問題解決の肝である。そのためにはたくさんの「どこ?」をスピーディーに、また思考のモードを切り換えながら繰り返すことが肝要だ。「どうする?」「なぜ?」に飛びそうになる気持ちを押さえ、「どこ?を30回繰り返す」こと。ぜひこの感覚を身につけていただきたい。
次回は、「What→Where→Why→Howの順番で考える」問題解決のプロセスを、組織文化として落とし込む際の留意点などについて議論していく。

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