産学連携、大学のガバナンス改革…大学入試改革のさらなる打ち手 

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大学入試改革と中等教育[4]

藤原:さて、普通はここで質問を募るのだけれども、アクティブラーニングということで近くの3人ぐらいで組んでいただきたい。で、ここまでの話に関して、「下村さんはあんなこと言っていたけど、あれ、嘘だよね」とか(会場笑)、何かしら議論をしてもらいたい。そのあとで質問を受けよう。高校生も3人ぐらい組んでやってみて欲しい。…(2分後)はい、そこまで。盛り上がっていたから、「このまま終わっちゃってもいいかな」という感じだったけれども(会場笑)、質問を募ろう。

会場(河野太郎氏:衆議院議員):中学高校における英語教員の人件費は年間3000億という文科省の推計が、去年の概算要求後に出てきた。3000億かけて誰も英語ができないなら、もう切ってしまえばいい。英語の授業なんてコンピュータのソフトでだいたいできるし、特に小学校で教えるときはそっちのほうがいいんじゃないかと思う。それを文科省に言ったら、「英語の先生には全員、3年以内にTOEFLを受けさせて、それで80点に満たない人はクビにします」と言う。でも、TOEFL 80点なんてアメリカの大学に入るための最低点数だ。それに習った生徒が80点より低くなっちゃったらと思うと(会場笑)、もう破綻している。だから、毎年3000億の人件費をICTに切り替えるべきだと思う。今は自民党の行革本部も文科省に、来年度はその要求を削れと言っているが、御三方は英語の先生の能力についてどうお考えだろう。

藤原:こういう議論を国会でやって欲しい(会場笑)。自民党同士で戦っている感じだ(会場笑)。いくつか質問を受けてから壇上に返そうと思っていたけれど、強烈な質問が来たので、もう下村さんが先に答えちゃったほうがいい。

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下村:野党の質問より河野さんの問題提起のほうが鋭い(会場笑)。まあ、率直に言うと労働条件的に首を切ることはできない。ただ、3000億を投資する意味があるのかという問題提起で、それは素晴らしい視点だと思う。で、そこは先生の問題と、そもそもシステムの問題もあると私は考えている。だってセンター試験で先ほどお話しした4つの能力を問わないんだから。だから、1週間前にも文科省が高校生の英語力を発表していたけれど、7割が中学レベルでしかないという。「3年間、なんの勉強してきたのか」と。それは先生の問題であるかもしれないが、教育システムの問題でもある。それでしっかりと、先ほどお話しした民間の検定試験も導入しながらやっていくことで、英語教師の能力も併せて育むようにしたい。

会場(木村尚敬氏:株式会社経営共創基盤パートナー取締役マネージングディレクター):アクティブラーニングには大いに賛成だけれども、これは先生方にとっても大きな変革なので時間がかかると思う。そこで提案だが、産学連携をさらに進めてはどうか。たとえばクリティカルシンキングならグロービスとかに委託しちゃう(会場笑)。あるいはICTに関しても日進月歩なので、それこそITベンダーの人が教える。それを講演でなく授業にちゃんと組み込んで、単位が取れるようにしたらいいと思う。

会場(中林紀彦氏:日本アイ・ビー・エム株式会社 ビッグデータ & アナリティクス アーキテクト/筑波大学大学院客員准教授):ビジネス現場で我々または我々のお客さんが必要とする人材のタイプと、学生たちとのあいだのギャップは埋まるのかという疑問がある。従って、もう少しビジネスニーズを反映させた学習指導要綱みたいなものも考えていただけたらと思う。特に最近はデータ分析や統計学といった数学的な素養が必要とされるケースが多いので、その辺についてお考えをお聞きしたい。

会場(井上英明氏:株式会社パーク・コーポレーション代表取締役):今はインバウンドも大変な勢いで増えているが、海外からいらっしゃる方々は日本人の感性や美意識に魅力を感じてくれているのだと僕は思う。だから、今後は感性教育にもっと力を入れなければいけないと感じる。G1サミットは左脳的議論になりがちだし、たとえばうちの会社でも、クリエイティブであるべき人間が現場に足を運ばす、店の設計一つとってもネット上の情報を基に考えたりしている。現場から離れてしまって、生の感性に触れる機会が減っていると思う。しかし、食べるとか聴くとか、そういった泥臭い教育を増やしていくべきだと思う。その辺についてどうお考えだろう。

会場(牧野正幸氏:株式会社ワークスアプリケーションズ代表取締役CEO):うちは海外で年間およそ1000人、日本で同3000人ぐらいのインターシップを毎年受け入れているけれど、両者に大きな差がある。日本の大学生はすごくレベルが低い。ただ、それは学力じゃなく、考える力が違う。うちのインターンでは最初に「結論を出せ」と言うだけであとは何も言わない。でも、日本の学生は大半がそれで止まってしまう。で、放置プレイみたいな状況になっちゃう。だから考える力を養う意味でも大学入試改革は進めて欲しいけれど、そうなると人気があるところに皆が集まってしまう。うちのインターンも大変人気がある。だから最初に恐喝する。「うちはめちゃくちゃ難しいから、もうたちどころに落とすことになるよ」って。入社するときも同じだ。「入社してからめちゃくちゃ厳しいよ」と言うと結構辞退する(会場笑)。だから入試改革をするなら、「うちの大学はこのレベルになってないやつは3割が卒業できないよ?」と明示すべきだと思う。そうしないと入試改革も結果につながらないんじゃないように感じる。

藤原:ではここで一旦切って、答えたい人に順次答えてもらおう。

漆:産学連携は大事だ。そこで下村さんにお願いがある。特別免許についてはこの4月からすごく改善されて、10年間有効になる。それで教員免許がなくても英語を教えることができたりする。ただ、今は都道府県によってその発行が厳しいので、いっそのこと、それも教科によってはなくして欲しい。社会人が授業をする際、来る人にいちいち免許を取らせるわけにもいかないので。ただ、それだと教員が横に付いて授業をしたりして二重にコストがかかる。従って、たとえば先端技術に関しては校長先生の権限で免許がなくても受け持てるようにするといった形にしてもらえたらと思う。

下村:産学官の連携は大変重要だ。それで、突破口として今やろうとしているのは土曜学習。これには大きな反応がある。去年始めて、今は8000校で導入されている状態だ。私がまず「隗より始めよ」ということで土曜に授業を行って、文科省職員もすでに500人が教えに行った。それで、今は「我こそは」という民間企業および団体が305団体が土曜日、「子どもたちに普段の授業より魅力的な授業を」ということで、最寄りの教育委員会との関係のなかで学校に行ってやっている。これを今年4月からは1万2000校の小中高に拡大したい。それなら既存の学校も反対しないので、そういったところから始めてトップレベルの感覚を子どもたちに伝えていきたい。これは希望者を募って行うものだけれど、学校によって8~9割が参加している。

それから、大学ガバナンス改革法案というものが通って、この4月から学長に権限を集中させた。今まではほとんどの既存大学で、実際には教授会がすべてを決めていたからだ。そこで、学長が最終的に決定できるようにして、大学のガバナンスがより明確になるようにした。今後は、放っておけば少子高齢化社会のなかで日本の大学も相当潰れてしまう。だから経営能力のある人がきちんとリーダーシップを発揮できるようにする。これまではニーズに合わせた教育というものが、大学教育のなかで考えられていなかったからだ。もう象牙の塔で、「社会は社会。大学は大学」となってしまっていた。だから、社会のニーズに合うような大学教育はなんなのかということで、真剣に取り組めるようなガバナンス改革を今後も進めていきたい。

あと、感性教育はその通り。やっぱり芸術に触れる実体験が必要だと思う。そういう環境のなかにいると、もしかしたら先生以上に子どものほうが、一つの絵を見て、あるいは一つの音楽を聴いて、受け取るものが大きいかもしれない。あるいは、本物に触れることで何かのきっかけになるかもしれない。そのときは意識しないかもしれないけれど、後々大きなインスパイアのきっかけになったり、感性が高まるということにもなると思う。だから本物の芸術に触れるような教育機会をつくる必要があると思う。

藤原:時間の関係で一旦切って、もう一度会場の声を募ってみたい。

会場(水野弘道氏:年金積立金管理運用独立法人[GPIF]理事兼CIO):日本の大学入試はアプリケーションを出すときの教科が硬直的だ。自分の好きな教科だけを選んで出せない。海外であれば、たとえば理学部系なら数学はさすがに入れるが、それ以外は哲学でもなんでも好きなのを出せばいい。そのうえで、なぜそのセットになったかを論文でアピールしていく。日本でもそのようにしてはどうか。私は阪大医学部でも教員をやらせていただいているが、医学部で医師免許を取るのに数学はいらない。でも、なぜか医学部は理系の最高峰だ。あるいは文系でも「もっと数学をやらせろ」といった話が多いけれど、ハーバードの法学部でもオックスフォードの法学部でも数学を出している人間はいない。そのあたり、入試で求められる教科と実際にその学部で必要となる教科のリンクが失われていて、その辺を見直せないかと感じる。

会場(各務茂夫氏:東京大学教授/産学連携本部イノベーション推進部長):アクションラーニングの基本として、職業観を高校でもっと教えてはどうかと思う。今、学部選択というのは偏差値の選択になっているけれども、経済学部に行きたいという学生がいたとして、「どうして経済学部?」ということを考えさせる必要があると思う。

会場(冨塚優氏:株式会社リクルートマーケティングパートナーズ代表取締役社長):グローバルというテーマに関して言うと、うちの会社の若手社員ですら海外でなかなか成功しない。何より、自国のことを語れない。だから先ほどのお話もあった通り、自国のことを語れるような教育をぜひお願いしたい。

会場(女性):大学入試における一つのポイントとして、意欲というのをぜひ考慮して欲しい。先日、うちの会社には二人の求人枠に200人の応募があって、数多くの面接を行った。そこで最も強く感じたのは、能力より「ここで何をしたいか」を語ってくれた人を採りたいということだ。大学でも同じだと思う。「この大学でこの先生の下、これを学びたい」という意欲がある人は少し優先的に受け入れてあげるといいと思う。

藤原:ここまで、ほぼ質問でなく提言だったので、とりあえずは「大臣よろしくお願いします」ということで(会場笑)。あと、せっかくなので高校生からも一人だけ受け付けたい。…はい、一人いた。勇気あるね、まずは拍手だ(会場拍手)。

会場(高校生/女性):今日は私たちが受けている教育について、結構、…悪口っていうわけじゃないですけれども(会場笑)。

藤原:あ、そう受け取ったか。

会場(続き):「頑張ってきたのにな…」って。でも、実際には勉強で他の人と比べられると、今日のお話にあったような頭の良さも社会で必要なのは分かるけれど、やっぱり偏差値みたいな数字が競争しやすい。それに、「地頭じゃ勝てないな」と思えるような人が周りにいても、教科書の隅々まで覚えてやっと勝てたときの喜びとかがあったりして(会場笑)。そういうのが自分のなかにずっと根付いてきたから、「こっちがいいよ」と変えられてもすぐに意識は変えられないと思った(会場拍手)。

藤原:拍手が沸いてます。大丈夫、15年ぐらいかかるから(会場笑)。もうちょっと何か喋ってよ。面白いから(会場笑)。

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会場(続き):今年の夏、アメリカへ留学して、たとえば先生が何か言ったことに対する反応とかは日本人が負けてるとも思った。でも、あっちにも、たとえば文法がぜんぜんできない人はいる。「日本の英語教育はダメだ」っていうのはよく聞かされてたけれど、長文を読んだりしてみると、「ぜんぜん勝てんじゃん」みたいな(会場笑)。

藤原:これは拍手だ(会場拍手)。ちょっと僕の思い違いかもしれないけれど、たしか、あなたは帰国子女だよね? 違う? どこ生まれのどこ育ち?

会場:あ、この辺で生まれてこの辺で育ちました(会場歓声)。

藤原:素晴らしい(会場拍手)。地元でこれだけの人材が育つということは、今までの議論はなんだったんだという(会場笑)。というわけで、「あと6年ぐらいかけてこの改革を推し進めましょうよ」と。その頃は、彼女はもう大学に行っているから大丈夫だ。では、時間になったので終了しよう。今日はありがとうございました(会場拍手)。

※開催日:2015年3月20日~22日

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