DeNA社長退任、そしてヘルスケア事業で社会を変える決意をするまで 

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「新規事業は勝手にスタートしてください」――審判は経営会議ではなく市場

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南場智子氏(以下、敬称略):グロービスさんでは時折お話をさせていただいているけれども、今日は私が今最も力を入れているヘルスケア事業のお話をしたい。まずはDeNAのことも少しご紹介したいが、今一番ノッている事業はベイスターズ(会場笑)。最近はプロ野球順位表をキャプチャするのが私の日課だ(講演時5月11日現在セ・リーグ首位にて)。まあ、シーズンは長い。心配な方もいると思うが、ここだけの話、私も心配です(会場笑)。ただ、やっぱり勝つと嬉しい。

現在、野球のほうは14億を少し下回るぐらいの赤字だ。ビジネススクールに来るとついつい数字の話をしたくなるけれども、今日のテーマではないから細かくはお話ししない。ただ、14億弱の赤字はDeNAからの広告出稿を除いたもの。私たちがTBSさんから引き継いだときは30億だった。そこで企業努力を重ね、昨年の観客動員数は引き継いだ時点から比べると42%増。さらに今年は、スタジアムだけなら1試合の平均動員数は2011年と比べて62%増となった。

もちろんチームが強くなって良いゲームをお届けすることが一番大切だけれども、私は投げることも打つこともできない。だから、経営のプロとして参画する以上、経営健全化という形できちんと貢献したい。野球は日本で最も人気のあるスポーツの一つだ。それが黒字化せずタニマチの経営に頼るような状態ではスポーツ全体の将来も暗いと思う。だからプロ野球を堂々と黒字にして、健全で持続可能な運営を行っていきたい。

さて、ほかにどんな事業をやっているかというと、一番大きいのはなんと言ってもゲームだ。今は「ファイナルファンタジー レコードキーパー」が大ヒットしているし、最近は任天堂さんと資本提携を含む大きな業務提携も発表した。やはり主力の事業ということで、ユーザーさんには喜んでいただきたいし、楽しんでいただきたい。

で、そのほか、コンテンツ事業やコミュニケーション系のサービス、そしてeコマースや旅行関連サービスも手掛けている。今は「スカイゲート」から「DeNAトラベル」という名前に変わったが、オンラインの航空券販売サービスなども行っている。それとヘルスケア。こちらは「MYCODE」に加えていくつか事業が増えていて、今日はその話をさせていただきたい。このほかにも、今は秘密だけれども開拓中の事業があるし、いろいろな事業を手掛けているという状態だ。

もちろん、ゲーム事業については楽しいゲームをお届けすることに心から誇りを感じている。ただ、なにしろゲーム事業は一つのヒット作で収益が大きく変化する、ボラティリティの高い事業だ。だから全力でヒットを狙う一方、ボラティリティがそれほど高くない事業にも我々の強みを生かして参入していく。ゲームとその他の事業を併せて成長していきたいと思っている。

また、どの事業でも共通して私たちが大事にしているのは、‘Delight’。コーポレート・アイデンティティを、‘delight in your pocket.’にしようかとも考えていた。JTさんがすでに使っていらしたのでその言葉自体は使わなかったけれども。とにかく‘Delight’という言葉は会社の隅々で一番大事にしている。ユーザーさんに喜んで欲しいし、いい驚きを届けたい。そんな気持ちで取り組んでいる。

それで現状を見てみると、まだ正式には閉じていないものの2015年3月期は通年で初の減収減益になった。従って、会社の状況は絶好調ではない。ただ、まだそれほど慌ててはいない。四半期単位なら今までにも4回ほど、すごく苦しい時期を経験している。今回は5回目ぐらいだ。通年で見ると2013年度までは大変調子が良かったように見えるけれど、経営の当事者として、実は苦しい時期を4回ほど潜り抜けてきた。だから今が一番辛いということはまったくないし、今回も面白く現状を乗り越えていきたいし、そのさまを見せていきたいぐらいの気持ちだ。

私たちは2004年頃まで大変小さな会社で、どれほど苦しんでいてもそれを多くの人に見てもらえていたわけではなかった。でも、会社の図体が大きくなって少し目立ってくると、営業利益でも売上高でも苦しんでいることが多くの人に分かっていただける。つまり、これまでより大きなステージを手に入れたのだと思う。だから、それをしっかりと乗り越えて、経営の確からしさを株主さんに見ていただきたい。とにかく、良いときばかりではなく悪いときも、会社が大きくなって目立つのはいいことだなと思う。

さて、新規事業を少しご紹介すると、まずは「マンガボックス」。昨日今日の数字は確認していないけれど、そろそろ800万ダウンロードはいっていると思う。まだダウンロードしていない方は…、まあ、このなかにはいらっしゃらないと思うけれども(会場笑)。万が一いらしたら今晩こっそりダウンロードしてみて欲しい。今は無料のマンガアプリはたくさんあるけれど、人気作家さんの書き下ろしが読めるアプリはなかなかない。最近はインディーズも始めたし、マンガを描くのが趣味の人も収入源になったりするからぜひトライしてみて欲しい。

「チラシル」という、むちゃくちゃいいサービスも運営している。スマホでチラシを見るためのアプリとしては首都圏で最も使っていただいているのでは?他の場所のチラシも入るけれど、とにかく自宅近くにあるスーパーのチラシはすべて入る。また、価格がデータ化されているので、たとえば卵の価格を比較できたりする。たとえば、「今日はすき焼きにしたいな」と思えば、近隣スーパーのビーフ特売情報を比較して決めることもできる。大変に便利なアプリだ。継続率は70%以上を誇っている。

「SHOWROOM」という素晴らしいサービスもある。エンターテインメントのステージみたいなアプリで、たとえばアイドルが出てきて歌ったりトークをしたりする。で、観るほうには自分のアバターが出てきて、出演者に話しかけたりもできる。それでタレントさんに、「あ、〇〇君は今日も来てくれたの。ありがとう!」なんて言ってもらえたりする。投げ銭のような応援もできる。花束のような大きなギフティングアイテムは有料だけれども、それが活動資金としてタレントさんの応援になる。それで、「〇〇君ありがとう。そんなに無理しないで」なんて言われて、「わ、たまんない」と(会場笑)。アキバに足を運びにくいという年齢層の方は多いと思うけれど、もうアキバのほうから皆さんのところに来る。最近はここでベイスターズのホームゲームも流しているし、そこでいろいろとコメントがつく。で、たとえば「最近荒波選手が出ないのはなぜ?」なんてコメントがつくと、解説者の方がそれを答えてくれたりする。

こうした新規事業はどのように生まれてくるのか。通常のフローであれば企画ができあがった次にコーポレートディシジョンがあるというか、経営会議にかかると思う。そこで、「ダメだね」と付き返されたり、「いいんじゃないかな」と言われて通ったりする。すると開発が始まって投資が少し行われ、開発が終わると再度コーポレートディシジョンがあるわけだ。でも、うちの場合は経営会議でサービスを見ることがあまりない。企画段階は見るけれども、できあがったサービスをローンチするか否かは事業部長などラインのトップが機関決定を行う。そこで「やろう」という話になればスタートする。

たとえば、経営会議で一番喋るのは社長の守安(功氏)や私だ。わあわあ言っている。でも、二人とも40歳以上だ。守安は41、だったかな。私もかなり上だ。だから、感覚がずれることがある。それで、若い人にしか見えていなかった有望なビジネスが、発言力の大きな人間に潰されてしまったことがある。それは普段なかなか証明できないし、気が付かない。でも、我々は、我々が却下したサービスとまったく同じようなものが世の中に出て大ヒットしたのを目の当たりにしたことがある。それで、「この調子でやっていたら我々に見えない世界を潰しちゃうな」と。それで、最近はそのコーポレートディシジョンを止めようということになった。「勝手にスタートしてください」と。ミニマムの法的なチェックだけ法務部だけが行う。それで、法的、そして公序良俗的に問題がなければ勝手にローンチしてもらう。

で、それだけだと学生ベンチャーと同じだけれども、そのあと、KPIの数字とともに経営会議に出てくる。そこで、ユーザーさんがそのサービスをどれほど使ってくれたかを見ていく。ローンチ後の人数について言うと、コマーシャルを打たないので、だいたいはつくった人間が学生時代の同級生や会社の仲間、あるいは親類縁者に頼み込んで使ってもらう。そこからじわじわっと広がっていったり。それから、リピート率が極めて高かったり、エンゲージメントというけれども、長い時間使ってくれたり滞在時間が長かったりすると、「有望なんじゃない?」となる。そういう数字を持って経営会議に来れば、自動的に億単位の大きい財布が出てくる。

それまで経営会議の審判に委ねていたものを、市場の審判に委ねるという方向に変えたわけだ。それが上手くいけば、あとはDeNAという大きな会社がやっているわけで、二桁億の全国CMキャンペーンを打つこともできる。あるいは世界各地にある我々の拠点を活用して世界同時展開に行ったり、大々的に進める。数字を見たうえでスケールするかどうかの意思決定を行う。これを我々はパーミッションレス型と呼んでいるけれども、すべてではないにせよ、一部の事業ではその形を取り入れている。

あと、最近はベンチャーの買収による事業展開も行っている。最近はiemo(イエモ)や、MERY(メリー)を運営するペロリ、Find Travel(ファインドトラベル)といった会社をアクイジションさせてもらった。それによってライフシーンに応じたキュレーションコンテンツのプラットフォームを提供していきたい。私たちとすれば、その構想を実現するためにキュレーションコンテンツを一つずつつくっていても、それが成功するか分からないというリスクがあるわけだ。だから、すでに成功したところに参加していただく。そのほうが成功の確率が高まる。

また、我々としては買収によって社内にアントレプレナーシップを注入し続けたい。それで引っ掻き回してもらいたいと思っている。それで、たとえばiemoの代表取締役CEOである村田マリさんにはDeNAの執行役員も務めてもらっている。「存分に暴れてちょうだい」と。それで、彼女もなかなかの暴れん坊だけれども、頑張ってもらっている。我々自身が永久ベンチャーでありたいと思うが、そういうスローガンや自己アイデンティティだけを掲げて「ベンチャーだ」と言ってみても、本当のところはどうなのか、と。やはり外から超一流のベンチャーを連れてきて、社内を若くキープしてもらいたい。

では、彼らのほうはなぜ我々に参加するのか。彼ら皆、IPOしようと思えばできるようなカテゴリリーダーだ。それぞれのジャンルでトップ中のトップ。30億の増資だってできた。ただ、彼らはお金だけに関心があるわけじゃないし、CEOというポジションにもまったく関心がない。サービスに関心がある。「このサービスで、もっともっと大きなインパクトを世の中に提供したい」と思っている。

それともう一つ、人材の採用が大変というのもある。特にエンジニア争奪戦は大変だ。「今晩、こういうスペックのエンジニアが3人欲しい」と思っても、それを自分たちで充足するのは難しい。でも、DeNAにいればその日のうちに人を送ることができる。大きなビジョン実現の一翼を担うことに加えて、採用に頭を悩ませず優秀なエンジニアを欲しいだけ手に入れるとことができる。また、IPOや増資のペーパーワークに煩わされず、100%事業に没入できるメリットも感じると言ってくれている。今はそんな風にして、新しい事業はパーミッションレス型やアクイジション先行型で展開している。

家族が病気に。そこからヘルスケア事業を立ち上げるまでの道のり

では、ここからは私が肝いりで頑張っているヘルスケア事業のお話をしたい。私たちはこの事業で三つの変化を起こしたい。まず、当然ながら毎年増加する医療費・介護費の削減に貢献したいという願いがある。それによって持続可能な社会保障制度とする必要がある。ただ、最も大きな目標は、「Sickケア」から「Healthケア」への変化だ。ヘルスケアという言葉自体は日本でもよく聞かれるけれども、本当の意味でヘルスをケアしていない。我が国の制度のほとんどは、病気になった人の「Sickケア」が中心だ。だから本当の「Healthケア」を実現したい。

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私は2011年、ぶん投げるようにして社長を退任した。家族の病気が原因で仕事が続行できなくなったからだ。このことについてはいろいろな人に「潔い」とか書いてもらったりしたけれど、実際は無責任な退任だった。一部上場企業の社長が、自身の健康問題を理由に退任したという話は聞いたことがある。でも、家族の病気が理由というのは聞いたことがない。でも、それはそうした問題を抱える方がいないという意味ではない。たとえばお子さんが障害を抱えていたり、親御さんが要介護であったり、配偶者の方が病気であったり等々、何か抱えている人のほうが多い。でも、それを表に出さず、責任をまっとうされているわけだ。そういうキャパシティがおありなのだと思う。

でも、想像もしていなかったけれど、私はそのキャパシティがまったくない人間だった。もうプライベート以外のことは集中して考えられないほど、頭の大半が家族のことで一杯になってしまった。で、「DeNAのような目線が高い会社のトップがそんな状態では絶対ダメだ」と。それで突然、ぶん投げ、無茶ぶり退任をした。今でも守安には「無茶ぶりだ」といったことをよく言われる。私もすごく恥ずかしいことをしたと、いまだに思う。ただ、当時はそれが自分の身の丈というか等身大で、限界だったとも思う。

あと、自身の退任について悔しさもあった。当時の私は、いくつかの課題を解決してから次のリーダーに会社を引き継ごうと思っていたからだ。後継者のことをよくお話しになる経営者の方はいるけれど、私は自分が社長でいる限り、後継者のことは口にしないという信条があった。それで、本当にたった一人で次世代へのバトンタッチを準備していた。5年がかりで計画して、「なんとしても2012年にバトンタッチしよう」と。

当初は2011年のバトンタッチを考えていたのだけれども、当時は課題が山積していて2011年は難しいということで、1年延ばしていた。それで、「2012年には絶対に」と思って、当時特に大きな課題だった米国のオペレーションに向き合っていた。これは私がかなり強く推進して行った買収だったが、その企業の業績がまったく上がっていなかったからだ。それを立て直そうと、サンフランシスコでアパートも探して、半分は当地で直接指揮を執ろうと決めていた。それで問題を片付けてから引き継ぎたかった。

やっぱりベンチャーでは創業社長のイメージが強く、ほとんど同一視されていると思う。でも、DeNAはそういう会社にせず、なるべく業績が悪くないときにバトンタッチをしたかった。「今変わる理由はたった一つ。私より良いリーダーが見つかったからです」と言って退任したかった。そうすれば本当の意味でDeNAという会社が南場智子のものでなくなる。それで、私の能力や寿命を超えて隆々と発展していく会社だと示したかったし、次の社長にも同じ思いで退任をして欲しいと思っていた。その前例をつくることは創業者にしかできないと思っていたから、すごく張り切って準備していた。

それが実現できなかったことは今でも悔しい。ただ、あのタイミングで退任したことが会社にとってどうだったかを今振り返ると、結構良かったと思う。2011年時点では少し早いかなと思ったけれど、守安功という逸材に引き継ぐことができたので。これほどすごいやつにはなかなか会ったことがないと思うし、日本からスティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグを超える経営者が出るとしたら守安功じゃないかと思うほど、その才能を心から愛している。

「そういう人間にバトンタッチできたのだからタイミングは良かったのかな」と思う。本当にすごい経営をしてくれている。非常勤だった2年間は横で見ることができなかったけれども、端から見ていても勉強になった。で、2013年から家族の状況も落ち着いたので会社に戻ってきたけれども、社内で見ていて、「ああ、私もこんな風にすれば良かったのかな」と、日々勉強になる。もし、「いろいろな経営者の鞄持ちをしてみたい」と考えている方がいたら、守安に付けば面白いと思う。なかなかに天晴な社長だ。意思決定力や突っ込み等々、ぜひ見て欲しいと思う。

で、前置きが長くなったけれども、私は会社に戻った2013年、やっぱり何か新しい事業を立ち上げたいと思っていた。それがヘルスケアだった。旦那が病気になった当初はパニックで何も考えられなかったけれど、当時は少し落ち着くと、「なんで病気にしちゃったのかな」とばかり考えていた。自分たちは健康に良いことを一つもしていなかった。それを激しく後悔したし、今でもそれについては苦しい思いがある。何か一つでもケアしていれば良かったのに、もうまったく。冗談でなく、1週間の合計睡眠時間が一桁なんていうときも多かったし、食事はすべて外食。運動もぜんぜんしなければ、お金に少々余裕ができたらいつだってタクシー移動だった。そんな生活をしていた末に旦那が病気になっちゃったわけで、「そりゃそうだよな」と。何かケアしていたなら、何か起きていたとしてもここまで悔しくなかったと思う。

「そんな悔しい思いをする人を減らしたい」と。DeNA創業時に「ビッダーズ」というオークションサービスを立ち上げたときは、「この事業は、日本で一番乗りをすれば間違いなく大きな事業に成長するぞ」という成功を確信しての参入だった。でも、今回はそうしたビジネス上の理由より、どうしてもやりたいという思いが先にあった。「自分がやっておかなければいけないことだ」と、内から沸き起こる強い気持ちを初めて感じていた。もちろん私は事業家であって経営者だから、そこできちんと、事業として成功させなければいけない。ただ、最大のモチベーションは、「病気になる前にケアする社会をつくりたい」という個人的な強い思いだったと言える。

また、医療における情報の非対称性を解消したかった。これは私が患者としても感じたことだ。私と旦那はすごく恵まれた患者だった。私は仕事も辞めていたので、当時は夜中まで論文から何から読み漁っていた。それでチームまでつくり、マッキンゼーにいた頃のプロジェクトみたいに、「あなたは免疫療法、あなたは化学療法、あなたは放射線療法を勉強してください」と。また、今まで培ってきた営業力をフル活用し、日米の専門家に会いに行ったりしていた。それで情報収集して、なんとか味方のチームをつくって、もう「これほど恵まれた患者はいないよね」という状態だったと思う。

でも、そんな私でも主治医の先生と対峙したときは、「標準療法ではない治療法をやってください」とお願いするだけでも大変な勇気が必要だった。それですべて話せないときもある。先生は大変理解のある方だったし、素晴らしい人格者で、私が何を言っても怒ったりはしない。でも、標準療法でない治療法をやるとなれば、その先生は300ページの資料をつくって倫理審査委員会にかけなければいけない。だからすごく面倒で厄介な患者ということで嫌われちゃうんじゃないかという思いがあった。

だから、おかしな話だけれども、いろいろ勉強をしても標準療法の枠を出ることが難しかったりした。それに、どれほど付け焼刃で勉強したところで、当たり前だけれども医学会の方との差は歴然としている。こちらは命がかかっているから必死だけれど、「自分がこれまで執刀した何百ケースから言うと」なんて言われると、「あ、やっぱりそうなのかな」となる。こちらは反論するものを何も持っていない。

結局、素人だけでやっていると情報の非対称に苦しむ。これは患者さんだけの問題じゃない。健康な人だって、「自分はどんな病気にかかりやすいのか」「健康のために日頃何をしておけばいいのか」といった専門情報はなかなか入ってこない。世の中に出回っているもののなかで、どの情報に信憑性があって自分に関係があるのか、分かりにくい。結局、これほど大事な領域なのに情報の非対称性が大きい。それが問題なんじゃないかと考えた。

私は、個人がドライバーシートの真ん中に座り、自分の情報をすべて、オーナーシップを持って管理すべきだと思っている。そして、病気や疫学、あるいは運動・予防方法といった専門情報も、プロのサポートを得ながら自分に生かせるよう取り入れる。そういう生活や社会を目指したい。個人が責任ある意思決定をするということだ。それは個人にとっていい話ばかりじゃないけれども、とにかく「自分と自分が愛する人のため、自分がオールを握りましょう」と。そうした思いが事業の背景になった。

※開催日:2015年5月11日

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