「ものづくり立国」を維持するために必要なことは? 

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日本の技術力が世界を席巻する日[4]

佐藤:もう一つお伺いしたい。「ひょっとしたら日本は今後、ものづくり立国じゃなくなるのでは?」という危惧もある。たとえば現場力であるとか、そうしたものづくり立国であることを支えている環境が少しずつ弱くなっている面も見え隠れしている感覚もあるからだ。どのようにすればそうしたものを支えることができるとお考えだろう。

青木:たとえばJIS規格というのはすごい規格力だと思うけれど、今はそれが使われず、ISO等に取って代わられている。結局、スタートラインを向こうに合わせたうえでの技術力になっている。それなら消えてしまいますわ。スポーツも同じだ。柔道は日本の国技のようなところがあったけれど、今は国際化されてルールもヨーロッパで決めている。それで日本はこてこてに負けていく。ものづくりも同じようになってきたように思う。無線の規格もすべて向こうに取られて、それに合わせて目先の技術で争っているうち、肝心な日本の「無線力」というか、幹の部分が汚染されてきたように思う。それで、今はもう小細工だけではいかんような状態になってきたという危機感はある。

佐藤:ものづくりを引き付けるためには人を惹きつけなければいけない。それをやらないと、技術もなかなかキープできない、と。

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青木:そう。だから、ある意味ではリーダーシップが大切。御二方の話を聞いていると、「やっぱりすごいな」と思う。「京都だからできるんかな。大阪はあかんな」なんて思ったり(会場笑)。大阪もいいんですよ? ただ、ついつい足の引っ張り合いする(会場笑)。僕は最近、「まいど1号」をつくったということで「講演に来い」と言われてあちこち行っているけれど、今は日本海側の中小企業が皆個性を持っている。昔の日本にあったものづくりの良さがあるというか、人を大事にしている。そういう会社は、地域ではそれぞれ名門だ。その点、東海地区はどうか。大きくて見たくれの良い企業は多いけれど、ものづくりという視点で見ると、なにかこう、「経営者がいてないんちゃうの?」という感じだ。日本海側の企業は規模で言えば50~100人だ。でも、自分たちが事業をしている分野では冠たる技術で世界に出ている。そういう企業をよく見る。

京都と大阪の違いと一緒だ。地域の環境というのもあると思う。京都の企業は東京なんかほったらかしで、「世界へ行くんや」ということでやっている。その意味で、京都の企業は日本海側の企業は似ている気がする。打って出ていくパワーがある。「負けへんで」と。言葉は優しいけれども、腹の中で何を考えとるか分からんというような(会場笑)。言い過ぎかな(笑)。とにかく僕は「ものづくりのスター」をつくっていかないとあかんと思う。つまりマイスター制度。それで技術を教えていって、若者もそれに憧れていくような環境にしないと皆崩れてしまうんじゃないかなと思う。

佐藤:技能オリンピックみたいなものでは足りない?

青木:我々が若い頃に技能オリンピックを開催していたら、日本がほとんど金メダルを獲っていたと思う。でも、たとえば旋盤ならかつて日本が獲っていたものを韓国が獲って、次は台湾が獲るようになり、今はタイの若者が獲っている。仕事のあるところで腕が上がるものだ。だからこそ、「そういう仕事をしていても大丈夫なんや」という会社の生き様というか、ものづくりの生き様を見せるのも大事だと思う。

ただ、技能オリンピックを目指して技術を磨いて、それで茶瓶をつくったとして、それが売れるかというと売れない。高くなるから。匠の技術は分かった。でも、その茶瓶が市場に出ない。で、大量生産品が選ばれる。もちろん大量生産の技術だって大変だ。改善を重ねていかなかなければいけないし、ある意味でそれは人づくりだから。僕は大野耐一先生にかんばん方式というものを習ったけれど、とにかく、ものづくりというのは人づくりなんだ。言っていること、合うてますか(笑)。

佐藤:人を惹きつけるためには、夢だけじゃなく儲けることも必要という…。

青木:そう。日本海側の会社も京都の会社も儲かるからチャレンジできる。

佐藤:あともう一つ。御三方の会社は3社ともオーナー系だ。一方で、どちらかというとサラリーマン的経営者が多い、たとえば電機業界のようなところはだんだん悪くなってきたと感じる。オーナー系の強みと弱みについてはどのように捉えていらっしゃるだろう。たとえば鈴木さんのところはオーナー系で、かつ上場している。株主からのプレッシャーがあるなかで、今はどのように経営していらっしゃるのだろうか。

鈴木:当社は私の親父が経営していた1961年に上場しているので、継いでいる立場としてしんどいことだけをやっていると思う。特に対株主となると最近はスチュワードシップ・コードの話が出てきたりして、何かと規律面を問われるようになった。その象徴のように、たとえば「社外取締役を入れなさい」といった話が話題になる。ただ、私どもとしては規律ある会社運営を目指すなかで、いい格好をするわけではなく積極的にそのトレンドを活用しようと思っている。

会社がついつい仲良しクラブになり、内部の理論だけで事が運ばれていくようになると、ときには世の中の常識や規律から外れた方向に進む可能性がある。それを防ぐために社外の目をうまく利用しよう、と。私が社長に就任したのは2007年になるけれど、その瞬間から社外取締役を入れた。現在は取締役7人のうち3人が社外取締役だ。比率にして42%だから日本企業のなかでは高いほうだと思う。そのうちの一人は女性だ。できるだけ異なる意見や規律を取締役会に持ち込もうとしている。その意味では、上場していることの意味を会社に十分持ち込もうとしていると言える。

たとえば毎月の定例取締役会は午後一番に始めるのだけれど、社外取締役の方はだいたい午前中に会社へ来るから、取締役会の前に議題のブリーフィングをする。で、社内では私が言っても聞かないようなことがたまにあるのだけれど、そこで社外の方に、「先生、今日の問題はこういうことだから、こういう点について話をしてください」と言う。そうすると、「分かった。じゃあ、言おう」と。私の問題意識を社外取締役の方に言っていただくようなこともしている。私のオーナーシップに対する強烈な思いとともに、社外的な規律をうまくテコにしがら会社を運営している感じだ。

ただ、いずれにしてもここ数年はいろいろあったので、業績的にはピークのときもどん底のときもあった。ただ、オーナー系というのはそこで腹の括り方が違うと思う。悪いときは世間でもいろいろなノイズがあったけれど、「それなら、ほかにやるやつがいたら出てこい」といった感じでやってきたので。失敗もたくさんあるけれども。

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佐藤:村田さんのところは上場しようと思えばすぐにできると思うが、その辺についてはどのように捉えていらっしゃるのだろう。

村田:うちの業界は山谷が激しい。鈴木さんのところのような部品系であれば、あるいは青木社長のところみたいに絶対必要なキーコンポーネントであれば良いときも悪いときも±10%ぐらいだと思う。しかし設備となると、いらないときは「いらん」と言われて止まってしまうときがある。だから株主を継続してハッピーにさせるのが難しい。従って、儲かっているときは資本効率が悪くてもお金を貯めておいて、そのお金で不況のときに研究開発を続けるというやり方だ。だから、アメリカの会社は景気変動の課程でなくなっていった一方、欧州や日本のファミリー系企業は残った。そういうことがあるので、できれば上場はしたくないな、と。日本の場合は相続税が高いからいろいろ大変だけれども。たとえば海外でもBMWさんやグーグルさんがそうかもしれない。いろいろと工夫をしている。株の種類を分けたり財団をつくったりしつつ、一般株主と違うなんらかの意思が働く形をうまいこと残していらっしゃる。

会場には、創業者としてこれからどのようにガバナンスを効かせていくか、考えていらっしゃる方も多いと思う。日本の良さというのはやっぱりチームワークだ。ただ、それで協調や合議制といった話ばかりになると、先ほどおっしゃっていたサラリーマンの弱みが逆に出てくる。家電が失敗したのは、松下幸之助さんのような偉大な方の下、日本の良さを最大限引き出すため、「チームワークをもっと高めよう」と考え過ぎた結果なのかなと思う。それで、結局はサラリーマン的になってしまったという逆転現象があったと思う。だからそれを防ぐためのプラスアルファとして、創業者あるいはオーナーの声がなんらかの基調低音として残るようにしておく。これはメーカーだけでなく、日本企業の良さを生かし続けるためにも大事なポイントだと思う。

佐藤:オーナー系の強みは長期視点で経営ができることでもあると。サラリーマン経営者には2期4年といったような任期もあるので。また、オーナーは自分が多少なりとも株を持っているから、「儲けなきゃ」という意識にもなるように感じる。

村田:私どもの場合はお客さまにもオーナー系が比較的多く、しかも機械を1度買ったお客様とは20年ほど関係が続く。そこで、「これから先も私がずっとやりますから」と言うわけだ。そうした一貫性や長期性は特に海外へ売りにいくときに重要だ。相手としても「ミスター鈴木が来るから」という話になれば分かりやすくなると思う。

鈴木:私どもの主要顧客には、たとえば果物のマークが入った米国企業のような世界的大企業が多い。で、そうした企業から会社としてのコミットを求められたときは、誰が来るのかということも常に見られている。大きな設備投資を決定する場でも、日常的に行われる値決めの場でも、最後の最後は「腹を括ってコミットメントできる人間が出てこい」と。そういうときはすごくいい。まあ、嫌なときもあるけれども(笑)。

→ 日本の技術力が世界を席巻する日[5]は5/1公開予定

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