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麻生巌氏×間下直晃氏×守安功氏 「10年後の経済・ビジネス—今、僕らがやるべきこと」後編

投稿日:2013/11/13更新日:2021/10/19

※前編はこちら

「我々は“永久ベンチャー”。ただ若い会社だから胡散臭いと思われると色々な力学が働き潰される」(守安)

今野:守安さんはどうだろう。(33:17)

守安:10年後を見渡すのは難しいが、今、アベノミクスで目標としているのが年率2%成長だったと思う。2%成長を10年続けたら単純計算でおよそ20数%の成長になる。非常に小さい。会場にいらっしゃる経営者の方々のなかで、5〜10年後の売上が現在の20数%増でいいと思う方はほとんどいないだろう。少なくとも2〜3倍あるいは10倍というオーダーで考えているはずだ。(33:20)

そう考えると日本全体で20%成長かゼロ成長かといった話は、実はあまり関係ないと思う。マクロ経済に関係なく、新しい産業として伸びる領域と伸びない領域は当然ある。重要なのは伸びる領域に飛び出し、新しい事業をつくることだ。一方で、マクロ指標はミクロの足し合わせに過ぎない。従って、皆がそれぞれ成長し、結果として数百%オーダーで成長する会社を足し合わせたらマクロ経済も成長しているかもしれない。だから我々もマクロの動向にあまり左右されず新しい産業を生み出したい。そうした新しい産業に人がどんどん流れていくことで日本が活性化するとも思う。(34:12)

自社の話をすると、今までの十数年間、我々は基本的にはインターネットという領域に特化してサービスを展開してきた。ただ、インターネットは現地へ行かなくてもサービスを提供出来るので他産業と比較して国境を越えやすい。だから日本だけに特化してもグーグルやフェイスブックといった、特に欧米の列強が押し寄せてくる訳で、放っておくと彼らに負けてしまう。従って、その辺については国内で防衛するといった考え方でなく、外に打って出ていく。僕としてはなるべくグローバルに打って出て、ガチンコ勝負をしたうえでぎゃふんと言わせたい(笑)。これがまずひとつ。(35:14)

それともうひとつ。インターネット産業というと定義が曖昧になるので、今後は産業の定義にあまりこだわらずリアルなビジネスにも色々と生かしていきたい。教育や人材あるいは医療といった分野では活用機会が増えるだろう。インターネットサービスはリアルとの関連が薄いという風に見ていた方は多いと思う。しかし今後5〜10年はこれまでのリアルな産業にインターネットの特性を生かして新しい価値を付加していく、あるいは産業構造変えていくといったことをやっていきたい。(36:31)

今野:マーケットに合わせて事業を進化、変えてきたと感じる。そこで勝ち続ける秘訣はどの辺にあるとお考えだろうか。(37:29)

守安:負けもたくさんあるが、負けについてはあまり口に出さないので(笑)。とにかく、既存事業だけを伸ばすあるいは守るという発想では厳しいと思う。まず新しい分野へのチャレンジを増やすこと。そのうちのいくつかは当然負けると思うが、勝てるものをいくつか見つける。そしてそれが伸びると思ったときにリソースを一気にシフトし、成長させるというやり方になると思う。(37:48)

今野:現在はプロ野球球団も運営している。外から見ているとエスタブリッシュメント企業への脱皮といったことも考えていらっしゃるのかなと感じるが。(38:28)

守安:社是として「永久ベンチャー」を掲げているし、あまりエスタブリッシュな会社になろうと思っている訳ではない。ただ、それが日本だからかは分からないが、ベンチャーということで胡散臭いと思われると色々な力学が働く。それで下手をしたら潰されるといった場面も今まで何回かあった。従って会社を守るという意味でも色々な方々ときちんとお付き合いの出来る会社にならなければという思いはある。(38:50)

今野:御三方には経済分野におけるリーダーシップ発揮への期待もあると思う。ぜひ今後10年で経済人または経営者としてコミットしたいことをお伺いしたい。(39:28)

麻生:僕は、プライベートでは割と出来ないことを出来ると言う主義だが、ここはオフィシャルな場なのであまり大きな目標は掲げたくない。敢えて言うと、英語でビジネスが出来る日本人を1万人生み出す。これを今後10年間の目標にしたい。(39:50)

間下:「アジアでアメリカに勝つ」、かもしれない。こんな表現では右寄りと言われるかもしれないが、欧米からの占領でなく日本からやっていく。それに意味があるかというと特にないのだが、日本発でグローバル化したITサービスはほとんどない。だからその成功モデルをつくりたい。世界中どこででもアメリカのサービスが一番という状況でなく、アジアではアジアのサービスが使われるというのを何とか実現したい。(40:27)

守安:間下さんと似ている。僕が初めてシリコンバレーを訪れたのは2007年。そのときは高速道路沿いにYahoo!やOracleといったIT企業の自社ビルが見えた。しかも彼らは金曜日には昼の3〜4時からテニスをはじめたりしていて…、「こんな優雅な生活をしている連中に市場を牛耳られているのか」と思うと(会場笑)、絶対ぎゃふんと言わせてやりたい(笑)。以来そんなモチベーションで働いている(会場笑)。(41:12)

「自分の売りは“夢を捨てた経営者”であること。シビアな現実に向き合い会社を強くする」(麻生)

今野:定量的な目標は何かないだろうか。(42:00)

守安:会場にはインターネット関連企業の方も多いと思う。1社だけ出て行くのでなくいくつかの会社が先鋭的に飛び出し、海外でもきちんと戦える状態をつくることが大事だと思う。定量的には海外売上比率を早い段階で半分以上に高めたい。(42:11)

今野:間下さんは海外でシェアNo.1という目標も?(42:38)

間下:アジアNo.1を獲りたい。今は2番手らしいので、なんとか1番手のアメリカを喰いたいと思う。(42:41)

今野:ありがとうございます。では会場からのQ&Aに移ろう。(42:50)

会場(三谷英弘氏・衆議院議員):政治のセッションでは「課題の解決が夢や希望に繋がる」という話があった。この場はビジネスということでぜひとも「ジャパニーズドリームとは何か」ということをお聞きしたい。(43:07)

麻生:僕は「自分の売りは“夢を捨てた経営者”であることだ」とよく言っている(会場笑)。一応、理由がある。僕は比較的お金持ちの子供が入る学校に小学生の頃から入っていた。ただ、バブル崩壊もあって、当時は破産あるいは民事再生に追い込まれた友達の親御さんもかなりいた。そこで僕が見たのは、お金を持つ人が事業に失敗すると、それをきっかけに家族や親戚の仲が皆悪くなってしまうことだった。常に母親からびびらされて生きてきたというのもある(笑)。そんな僕の目標は、夢を捨てて、とりあえず会社を強くすること。それが夢かもしれないが、ジャパニーズドリームというよりは防戦しつつ陣地を広げる感じだ。(43:54)

守安:アメリカンドリームとジャパニーズドリームに大きな違いがあるかなと思うが、日本では人と違わず踏み外さないのが正しいと教えられる。学校も会社も同じようなところへ行くような、そんな教育だ。そもそも学校や親が夢を見ないよう教育している気もする。人と違うことを推奨し、特技を伸ばすような教育に変えるべきだと思う。(45:14)

間下:たしかに変わったことを認める文化でないと難しい。ただ、お金儲けを表に出すと日本社会では叩かれる。それでお金ではないところを目指す人が最近は増えている気がしている。小泉(進次郎氏・衆議院議員)さんも仰っていたが、それ以外の領域で何か貢献をして世の中に評価されたいと思う方は増えたのではないか。僕自身としてはつくったサービスを世界中の人が使い、そこでたとえば「サービス提供を止めるぞ」と脅せるほどの環境をつくりたい。そうしたら「ごめんなさい」と、どこかの国の首相が謝るような、それほど皆が当たり前に使うようなものをつくることが出来たら自己実現や自己満足という意味でジャパニーズドリームだ。(46:13)

麻生:ジャパニーズドリームをつくるのがジャパニーズドリーム。「2020年ぐらいまでは孫正義さんやイチローさんがジャパニーズドリームだったらしいよ」みたいな(会場笑)。「いやいや、今は絶対にあいつでしょ」と。(47:34)

会場(宮澤弦氏・ヤフーマーケティングソリューションカンパニー事業推進本部長):もしご自身が今、二十歳あるいは大学卒業時に戻ったとしてその後の道を自由に選ぶことが出来るとしたら、どんな産業や企業を選ぶだろうか。会社を興すのであればどの国を設立本拠地として選ぶか、教えていただきたい。(48:00)

麻生:日本はひとつの選択肢だと思う。法律に守られているから。弱者と言われる状態からはじめるのであれば法律に自分を守って貰う前提条件は欠かせない。日本は市場も大きいのでまずは日本でスタートし、そこから外へ行くのが正しいと思う。1カ国目として日本は極めて高いポイントを持っていると感じる。(48:50)

で、事業の内容だが、ひとつ挙げるのであれば飲食。スタートのハードルが低い割に日本人というだけで「料理が上手いんだろ?」といった印象をグローバルで抱かれているから(会場笑)。強者でない限り、自分がその国の出身者というだけで得ることの出来るアドバンテージは利用したほうが良いと思う。(49:51)

間下:圧倒的に日本だと思う。法制度も揃っていて規制もなく、お金もあって人もいる。市場があり、外敵から守られたガラパゴス的要素もある。相当やりやすい国だ。アジアの人たちと話していても日本は羨ましがられている。世界で2〜3番という経済圏で、しかも皆が英語を使えないから日本語を使って文化に合わせるだけで超アドバンテージになる。絶対に日本からはじめるべきだと思う。(50:24)

ただ、やってみたいと思うのはやはりシリコンバレーだ。最近は少し変わりつつあるが、ちまちました形でしか出来ない面のある日本に比べ、アメリカでは一気にと突っ込んで大きくするようなトライが出来ると感じる。イグジットするマーケットを含め、その素地が日本に比べて大きい。(51:04)

守安:大学時代に航空宇宙工学を専攻してロケットのエンジンを研究していたが、研究はかなり地味だった。しかも「これは30年後に実用化される」と言われ、「30年間もずっとこんな研究するのか」といった感じになり(会場笑)、それで違う業界に出てきてしまったが…。ただ、20年前に戻ったら、研究者としてロケットをつくる立場でなくとも、宇宙産業をつくるという方向で進んでいたかもしれない。産業構造をどのように変えていくかといった視点で考える人も必要だと思うので。(51:39)

「起業を考えるなら日本は圧倒的に条件がいい。政治家には将来が明るいと人々に思わせてほしい」(間下)

会場(椎名毅氏・衆議院議員):多様な社会をつくりたいと思って政治家をやっているが、ドメスティックな仕事に終始してしまうことも多い。それで「思考が汲々としてしまっているのでは?」という危機感がある。そうした思考から脱却するための刺激という意味でも、ぜひビジネスの側から政治家に期待することを教えていただきたい。(52:38)

麻生:政治家は極めて大事だ。どれほど頑張っても鈴木大地さんがバサロスタートを禁止されたら極めて不利になる。前提条件を人間がつくる訳で、その制度をつくる人間は政治家だ。従って、ビジネスの面で言えば、僕らが3〜4時からテニスをしていても会社がぐんぐん大きくなるような制度でスポイルをして欲しいと(笑)。少なくとも、競争で不利になるような条項が近年は見られるが、がっつり闘ったらがっつり結果が出るような制度に整えて欲しい。で、その際は国内あるいは日本の過去と比較するのでなくグローバルに諸外国との比較とともに整備して欲しいと思う。(54:34)

間下:会社としては特にない。国際関係を壊さず、良くして欲しい。まあ、変なことをしないで欲しいというのが一番だ(会場笑)。あとは日本の将来が明るいと人々に思わせて欲しい。日本の将来についてはどうしても暗い見方をする人が多いが、これほど良い国で、国外からは大変羨ましがられている国でもある。経済について極論を言えば、日経新聞が「来年は良くなる」と毎日書いたら絶対に良くなると思う。そんなものだ。だから政治家の方々が「良くなるんだな」と、人々に思わせて欲しい。(56:06)

守安:財政赤字の一点だ。「持続可能なのか」と。歳入と歳出でバランスを取らないといけない。特に社会保障費を含めた歳出では厳しい決断が求められると思うが、民意もあってなかなか出来なくなっていると感じる。そこをなんとかして欲しい。短期的に経済が悪くなる云々といった話なら企業努力でなんとかなる。しかし国債が暴落してハイパーインフレになるといった話であれば企業ではどうしようもなくなる。(57:09)

会場(南壮一郎氏・ビズリーチ代表取締役社長):グローバル人材、特に管理職人材に特化した転職サイトを運営しているが、最近は求職者の意識も猛烈に変わり、主体的に自身のキャリアについて考える方が増えていると感じる。むしろ問題は企業側にあると思っているのだが、壇上の皆様は10年後、どういった働き方を企業として促進していこうと思っていらっしゃるだろうか。(58:11)

会場(松山大耕氏・妙心寺退蔵院副住職):650年続く禅のお寺にいるが、ラリー・エリソンさん、故スティーブ・ジョブズさん、あるいは稲盛和夫さんもうちで得度をした。寺の教えは1000年間まったく変わっていない。‘No Innovation’(会場笑)。また、誰が来てもまったく同じ話をする。それで皆さん満足して帰られる。私自身はグローバライゼーションの定義とは英語力や海外展開といったことでなく、「本質を掴む」というその一点にあると思っている。皆さんの定義をぜひお聞かせいただきたい。(59:36)

今野:では時間も迫ってきたので、最初のご質問には守安さん、次のご質問には麻生さんにお答えいただき、本セッションを締めたい。(01:00:59)

守安:企業に属して働くしかなかった状態から、個人の強みを基にしながらプロジェクト単位で集まるような働き方がシリコンバレーでは増えていると思う。少しずつそのようになる部分はあるのではないか。一方、会社のナレッジという意味では同じ人に長く勤め続けて貰うのも強みだ。特にロイヤリティの高さは欧米に比べて日本企業の良い点だと思う。その辺を上手くバランスさせながら考える必要があると思う。(01:01:09)

麻生:グローバライゼーションは、基本的にはITを中心にして情報の伝達と演算の能力が上がったことによる「情報の非対称性」解消の過程だと考えている。だからラリー・エリソンさんも、「あ、他の先輩もここで得度したんだ」と思って来るのだと思う。その意味では良いことであり、世知辛いことでもある。のんびり生きることが許されなくなってくる面がある。ただ、それでも揺るがないからこそ1000年間‘No Innovation’で良かった訳で、逆に揺るがれてしまうと…。グローバライゼーションに晒されている僕としては寄りかかることの出来る港というか、大きな芯柱がなくなってしまう。そんな訳でぜひ次の1000年も魂の救済をよろしくお願いします。(01:02:07)

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