宮崎太陽農園×GRA×和郷園×イオンアグリ創造「成長戦略としての農業」後編 

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「メイド・バイ・ジャパニーズは人の管理が非常に難しい」(岩佐

松本:木内さんはどうだろう。別分野からの農業参入に対する期待や懸念があれば。

木内:農業者の立場として大いに賛成だ。よく言うのだが、「農業が云々」と言うのは「工業が云々」と言うのと同じだ。農業も品目によってまったく異なる。将来性がある品目もあれば、無い品目もある。そうした細かい違いがあることを理解して欲しい。

そのうえで申しあげると、まず、農業技術はまだまだ未知の世界だ。たとえば機能性野菜に関する技術。我々は機能性野菜を10年つくってきており、今はその過程で収集した色々な技術がひとつの分野として確立してきている。また、今はマーケットを使った実験も行っている。あるトマトを年間3億円ぶん、わざとアッパーマーケットからディスカウントマーケットに至るすべてのマーケットで販売し、リサーチをしている。そうして得たノウハウは国内だけでなく海外でも展開出来ると考えている。そうした品目では農業の枠を超えた製造業としての優位性をきちんと確保出来る。

あるいは現在、蛍光灯を使って野菜をつくるというような、もう工業の領域にまで行き着いたようなことも我々はやっている。こうした分野では、特に現在は大変衛生的なライフスタイルになっているから菌感染がものすごく怖い。そうした特殊な事情を持つ人々に対する食の提供は、従来と異なった方法で行う必要性も出てきた。そんな風に考えていくと、農業というのはまだまだ可能性があると思う。むしろ他産業の進化した考え方が当たり前のように必要とされるようになるのではないか。

松本:一方、今は規制緩和が十分でない面もある。たとえば認定農業者になって補助金等の有利なファイナンスを実現しようと考えても、そこに農地法のしがらみが発生する訳だ。また、農地法の制約で出資が自由に行えないため、農業従事者の資本が過少状態になるケースもある。農家が核となって大きい事業をやろうとしても大きな資本はなかなか出せない。そうすると農家が出したお金に対してレバレッジをかけていくので、元が小さいと雪だるまも大きくならない。さらに言えば農地法における鉄板規制と言われているものとして、企業による農地取得がある。ちなみに木内さん以外で農地を買いたいという方はいらっしゃるだろうか。(岩佐氏挙手)買いたい? それは何故?

岩佐:たとえばの話だが、借りる場合は5億ほどかけて上物を建てる。ただ、仮に農業委員会に届出を行って15年の賃貸契約を結んでも、「15年後に“田んぼに戻せ”と言われたらどうなるか」と。土地を借りている農家には常にそのリスクがある。

松本:それは大いにあるが、たとえば「グロービスの『ファイナンス基礎』で習うDCF(割引キャッシュフロー)というのはなんなんだろう」と思うことはないだろうか。年間8千円で借りることが出来るものも、買うとなると40万円になってしまう。「それなりのプレミアムを支払って貰わないと始祖伝来の土地は手放したくない」という心があり、買うとなると経済的にもなかなか合わない。ただ、賃貸であっても契約終了時に上物を含めてどうするかということが大きな問題として存在してしまう訳だ。

会場:海外展開において、日本からの輸出と現地における農場展開のどちらが良いとお考えだろう。後者の場合は人の管理が難しくなると感じる。

会場:TPPについてどのように捉えていらっしゃるだろうか。また、海外展開におけるリスクマネジメントについてもお考えをお聞かせいただきたい。

会場:日本で売っている商品の価格と品質は国際競争力を持ち得るとお考えだろうか。

会場:食品自給率に関し、農業に従事する立場からのご意見を伺いたい。また、国内の農地集約で生産性を高めた場合、日本の農業はどれほどのポテンシャルを持ち得るとお考えだろうか。どれほどの集約が可能かという点も併せてお聞きしたい。

松本:TPPの議論に関して言えば、実は農村では終わっている。東京ではまだ議論になるが、現在の農村では反対する農家さんも見ない。反対しているのは農協の職員さんぐらいだ。壇上の皆さまもそれでご異論はないと思う。それと自給率についてだが、巷でよく言われているのはカロリーベース。金額ベースであれば未だ7割ほどの自給率がある。「このカロリーベース、何か意味があるのかな?」という気もする。特に今日は農業界をリードする登壇者のなかに穀物等カロリーの高いものをつくっている方もいない。従ってこの人たちにその話を聞いていても自給率はいくらも上がらないという(会場笑)。要するに少し違う観点なので…、そういうことでよろしいだろうか。

で、土地の集約だが、米等をつくるのであればたしかに重要な問題だ。藤井さんのところは200haということで東京ドームのおよそ50倍にあたる訳だが、集約化について何かコメントはあるだろうか。

藤井:耕作放棄地と言われる場所は集中しているし、私は北海道から沖縄まですべて見て回ったが、荒廃した土地はたくさんある。それを開墾して元に戻すという意味であれば、集約は間違いなく出来る。福井の坂井北部丘陵であれば200haほどあると思うし、長崎の諫早も1200haほど空きそうな状況だ。我々が入ったのは河北潟や安来だが、こちらは100ha単位で抑えることが出来そうだ。実際、使っていない訳だから。127haにおよぶ安来干拓でも実際に入った農家はわずかで、県の農政部が何かの実験に使っているだけのような状態だ。河北潟も同様だが、「このアクションプランに責任を持つのは誰なのか」と聞きたくなるほど酷い状況だ。

そういうところでもう一度水田をやるのなら、直播や機械の活用によって、恐らく平均であれば22時間となる単位当たりの平均労働時間も5〜6時間は削減出来るだろう。まだ計算はしていないが、それによって米に関しては現在の半額にまで落とせると考えている。そんな風にして価格や生産コストを落とし、6000〜7000円で12〜13俵獲ることが出来たら、そしてそれを直販すれば労働時間9時間で…、100haまで持っていけば確実に数千万単位の利益が出る計算だ。小麦は1万haないと難しいということで手を出せないが、米についてはさまざまな品種改良等によって知見も蓄積されている。それによって短粒種の文化を食文化として世界に輸出することで大きなマーケットをつくりあげることは可能だ。ただし、そこで国家的政策がしっかり打たれることが大きなポイントになると思う。

松本:最後のポイントは提言に近い形で持っていけば良いと思う。ただ、耕作放棄地の解消事業として土地を集約するのは比較的容易である一方、たとえば「相続が終わっていない」といった案件も意外と多い。農地は色々な面で税の優遇措置を受けているが、その手続きがきちんとなされていないが故に書類が整わないケースもかなりある。現在はそれを行政が一旦借り上げ、参入企業に渡すという話もある。ただ、農家同士では8000円で済む土地が、中間に公社が入ると2万円になるというケースもあり、それでコストが変わってくる。この辺はやはり税の問題も絡むと感じる。誰かに転貸したり農地を転用した途端、優遇措置がなくなるから手放さないという訳だ。

たとえば植物工場については会場にもやりたいと思っていらっしゃる方がいるかもしれない。ただ、農地でやれば農地課税だから良いが、都心部等でそれをやろうとすると宅地並みに課税されるので、「それでペイ出来るのか?」という問題も出てくる。そうした税の動きも農業を語るうえでは重要なポイントかもしれない。一方、競争力や海外展開についてはどうだろう。岩佐さんは海外でもつくっていらっしゃるが。

岩佐:たとえばシンガポールや香港では、メイド・イン・ジャパンのイチゴやトマトが1パック1000円といったとんでもない高値で売られている。で、まったく同じ品種でもメイド・バイ・ジャパニーズではその半値ほどになる。日本でつくったものと日本の技術を用いながら現地でつくったものでは、同じつくり方でも評価が大きく変わる訳だ。

「それなら輸送したら良いのでは?」という話になるが、そこで輸送ロジスティクスの技術問題が出てくる。イチゴは常温で数日間置いておけばすべて腐ってしまう訳で、コールドチェーンの問題を考えると現地でつくるしかない。日本から持ってくのであれば重装備で持って行かざるを得なくなり、大変なコストがかかる。

それと海外でのメイド・バイ・ジャパニーズについてだが、人の管理がすごく難しい。宗教も絡んだ働き方の問題があるためだ。我々は日本人駐在員を派遣したうえで、半年ほどかけて現地のインド人スタッフに日本人と同じような労働スタイルを定着させているが、ここはかなり苦労するところだと思う。労働者が農場のイチゴを食べながら積んでいたりすることも普通にあるので(会場笑)。日本と同じ価格で売れるし、人件費は日本の1/5〜1/10だから儲かるコスト構造ではあるが、歩留まりの低下があるとすれば、そこにはほとんどの場合、人の問題が絡んでくる。

「日本は海外から見たら“ドラえもん”。外—外のビジネスは日本で当たり前のことをすると意外と上手くいく」(木内)

松本:人のマネジメントに関しては、何らかのマニュアライズやシステマチックな管理があるのか、それともフェイスtoフェイスのコミュニケーションになるのだろうか。

岩佐:たとえば「これを0.1%加えてください」と言ってもインドではほぼ通じない。従って、たとえば蛇口に「3」と書くことで3回捻るようにさせたり、バルブは「ここまで捻る」ということをテープを貼ったうえで教えたりする。日本とは異なり細部にわたるオペレーションが不可欠だ。また、本当に細かいところまでマニュアル化している。「農場に入るときはコロコロでズボンを何回転がす」といったレベルまでマニュアル化しないと、一気に病害虫の蔓延や衛生上の問題が発生したりする。

松本:木内さんはどうだろう。

木内:これも品目によると思う。我々は海外で生産だけでなく流通も手がけている。日本でもつくってから売るまでをバリューチェーンとして一括でやっているので、その各部分を進出した国に適正化させている状態だ。国にもよると思うが、メイド・バイ・ジャパニーズのブランドはかなり浸透が早いし、タイでは50haほどの直営マンゴー農場を運営している。ただし、日本でのやり方とは違ってマンゴーの木を持ったまま農場を借りる形式だ。そのうえで作業ステージごとのワーカーグループに、「こういった作業をしてください」というマニュアルを渡して契約してる。どちらかというとアメリカ型。従って農場を持って生産するという意味では日本よりもはるかにやり易い。

それともうひとつ。バナナは1年草だから毎年植え替えが発生する。そこでバナナのレバレッジを効かせるために…、暑い国では太陽光線が強すぎて柔らかい葉物が出来ないので、バナナの木が茂って出来た日陰を使いマナオ等の野菜をつくったりしている。つまりコラボレーションをしなければいけないので、バナナに関して言えば農家一軒々と契約をする形だ。それをタイでも最大級の農協にすべて統治させ、その農協がつくったバナナをすべて我々が販売するという形になる。

そんな風にした結果、現在では生産したバナナの9割をタイ国内で販売する状態になった。当初はほとんど日本に持ってきていたが、現在の日本市場はデフレでかなり厳しいため、海外から日本に持ってくるというやり方で強みを出すことはほとんど出来ない。それでどんどんシフトしてきた。今はタイ国内でおよそ300店舗にロジスティックが出来ていて、そこですべて販売している状態だ。で、今はそのプラットフォームを活用してイチゴや日本の野菜を廻している。

松本:タイ国内では「OTENTO」というブランドだったと思うが、現在、タイにおけるバナナのシェアではトップだろうか。

木内:タイ国内では1位になる。ただ、タイではバナナが自生しているので日本市場におけるドールさんのような状態にはなっていない。ローカルなものもあるなか、安心・安全といったブランドバナナとしてはうちとドールさんともう一社ぐらいという感じだ。

松本:デフレ下で元気の良かった日本の小売各社が、今は外-外のビジネスに方針転換しているのと似ている。非常に臨機応変でかつスピーディーに対応していらっしゃるなと。こんな人は農業界になかなかいない。

木内:よく言うのだが、日本というのは海外から見たら「ドラえもん」だ。つまり未来の姿。日本で当り前のことが海外で意外と上手くいく。たとえばファミリーマートさんやセブン-イレブンさんはタイにもあるが、タイでも1本売りでうちのバナナを置いていると思う。これ、日本では当り前だが、海外にはない発想だ。そういう部分を丁寧にかつスピーディーに取り組みながら進めていくことが重要だと思う。

松本:6次産業化という話とともに付加価値を高めるための議論もしておこう。現在、農水省は6次化ファンドというものをやっている。生駒さんは宮崎で色々と取り組まれていると思うが、今の6次化ファンド等は上手く回るとお考えだろうか。

生駒:NOだ。6次産業化のアドバイザーというのを昨シーズンやらせていただいたが、そこで出てくるアイディアは加工品や直売所といった程度だった。それでもコミュニティレベルでは儲かるかもしれないが、成長としての農業はないというのが結論だ。

ただ、6次化について悲観的になっている訳ではない。農業生産法人という分野の仲間は、「これから外に出て行かなければいけない」という大きな危機意識を持っている。足りないのは経営やマーケティングのスキルであって、今はそういった分野でサポートをさせていただいている。グロービスで勉強したマーケティング、企画、プロモーション、財務、そして加工のオペレーション等々…、あらゆる領域でサポートしている。

たとえば宮崎の綾町は「有機農法の町」ということで、町長まで加わって土のレベルまで有機ということを謳っている。実際、そこでつくったものはめちゃくちゃ美味しい。綾町の女性たちは「これを使って食品をつくりたい」と、情熱的にお話をなさっている。わくわくした。「あ、これは自分の持っているものをすべて費やさなきゃいけないな」と。たしかに苦しい戦いではあるが、そこに市場があるのなら力を費やしたいと思う。

「本当のレボリューションはその後ろに大義や長期展望がなければ成し遂げられない」(藤井)

木内:我々にとっての6次化は、原料にレバレッジを効かせ、川下の売上または利益を川上に持ってこようという話になる。そこで現在、ご期待に応えられるプロフェッショナルな6次化を三つやろう思っている。ひとつは流通イノベーション、ひとつが海外戦略、そしてもうひとつが教育および…、なんというか、新しい仕組みで食を提供するという付加価値の創造だ。先ほど生駒さんが仰っていたオーガニックという部分で、さらに付加価値を高めるような事業にしたい。この三本柱で6次化を考えていて、今年度の末から来年度にかけて順番にやっていく。ここで宣伝しておきたいが、その際は多くの人材が必要になるので(会場笑)、ご興味のある方はぜひ声をかけて欲しい。

松本:重要なのは、物事が簡単に運ばない領域において壇上の皆さまが一捻りも二捻りも加えているという点だ。最近は「規制緩和で農業が変わるぞ」といった話を新聞紙上でもよく見るし、実際のところ、目標としては政府が掲げているものも皆さんが掲げているものも同じだろう。ただ、そこに至るまでの道筋や方法論に関して言うと、今出てきているものはソリューションになりにくいようだ。現場の皆さんはそこで一捻り二捻りを加えつつ道を切り拓いていらっしゃることが、今日は皆さんも分かったと思う。

それでは最後に「日本の農業が成長していくために何が必要か」、「今皆さんが何をしていらっしゃるか」ということを一言ずついただて、本セッションを締めたい。

藤井:申しあげたいのは、今日出てきた意見はそれぞれ正しいと思うが、本当のレボリューションやイノベーションは、その後ろに大義と長期展望がなけばといけないという点だ。そのうえで総合的な農業のIT化も経営の見える化も必要になる。現在はグローバルGAPを見据えながら、ある面では大日本印刷さんと組んで、またある面では富士通さんと組んだりしている。で、それらを流通で繋げていく訳だ。たとえば、万が一お客さまが食べたイチゴに残留農薬があれば、そのイチゴについてトレースバック出来るICTをきちんと仕上げていく。そういうことがポイントになると思う。

木内:表題に戻ったうえで「農業は成長産業になり得るか」という問いに答えるとすれば、なり得る。どんな産業でも食が加わることで活力ある新たなコミュニティが生まれていく。これまで他産業はそれをビジネスにするという観点であまり見てこなかったが、IT産業等、他分野が食を採りいれる方法はたくさんある。我々としても新たな供給の形を実現していきたい。従来の業種に食または農業というものをミックスした形でイノベーションを起こしてしていけば、必ず新しいモデルを構築出来ると思う。

岩佐:GRAは今冬、「ミガキイチゴスパークリングワイン」を発売する(会場笑)。ぜひ皆さんもご賞味ください。ミガキイチゴも大々的に発売する。食べたことのないような美味しいイチゴだ。ということで、農業の未来は明るいのではないかと思う(会場笑)。

生駒:我々も12月に美味しいミニトマトを出す(会場笑)。僕は地域のコミュニティに経営スキルが足りないと思っている。それを補う教育が今後は必要になるのではないか。従って、皆さんのなかでもし僕のように片道切符で地域に飛び込みたいと思っている方がいたら、ぜひ行ってみたら良いと思う。暖かいコミュニティもある。ぜひそこで地域の活性化を支えていただければと思う。

松本:6次化や海外展開等、やはり巷で言われているようなところに活路があるという話だったと思う。ただ、新聞記事に出ているような方法論ではないかもしれない。その辺について皆さんから知恵を出していただければ、また色々とコラボレートしながら進めることも可能ではないだろうか。それと最後にひとつ。農業の場合は畑の面積を決めてしまうと変動費が人件費だけになる。種代、苗代、農薬代等々、殆どが固まってしまうなかかで、どこのコストが動くのかというと、実は人件費しかない訳だ。これをどうやってコントロールするかが非常に重要だ。で、その意味ではOBH(Organization Behavior)やサービスマネジメント等、会場の皆さんが普段勉強していらっしゃるようなことが農業で意外と生かされるという話にもなると思う。最後にそれをお伝えして終わりたい。ご静聴ありがとうございました(会場拍手)。

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