エステー会長 鈴木喬氏 「社長の仕事—危機の時代のリーダーシップ」(対談) 

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「開き直っちゃうしかない。しょうがないんだよ。社長になったら逃げられないんだから」

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堀義人(以下、敬称略):ありがとうございました。「世にないことをやる」、「常識を破る」、「社長は社長業を」等、大変示唆に富んだお話を明るい気持ちで伺えました。ここからは対談ということでいくつか質問をさせていただきたいのですが、ご著書『社長は少しバカがいい。~乱世を生き抜くリーダーの鉄則』(WAVE出版)には「経営のことが頭から離れない」という言葉がありました。これは社長になってからですか?

鈴木:社長になってからですね。それまで少しも頭にありませんでした。社長になる前は「悪いのはみんな社長だ」って言っていたんです。それで酒飲んでほらを吹いていれば良かった。でも社長になるとほらを吹く相手がいない。だからメンタル・タフネスが重要なんですよ。先生はどうですか?

堀:メンタル・タフネスもなにも、頭から離れないとどうしようもないですよね。その感覚にもだんだん慣れてきましたが。ちなみに好きな言葉として「運と勘と度胸」というお話がありました。これらはどういったお考えによるものなんでしょうか。

鈴木:もうね、「自分は運が良い」と思えば運は良いんです。色々と運の悪いことはたくさんあるけれども、そういうのは無かったことにしちゃう。で、勘は…、勘の悪いやつは勘が悪いんですよ(会場笑)。だからとにかく「自分は勘が良いんだ」と思うこと。度胸についても開き直っちゃうしかない。しょうがないんだよ。社長になったら逃げられないんだから。ただ、社長業はそれほど大した仕事じゃない。今まで一番大変だったのは企業保険のトップセールスで居続けることでしたね。1回トップになるのはそれほど大変じゃない。2~3年目もトップであり続けるというのが難しい。

次に大変だったのはアメリカで社長をやったときでした。バブルの頃、エステーの現地法人が皆で談合して「上手くいってる」と言っていたんです。だから私はそこへひとりで出向いて、アメリカの社長に「お前らクビだ」と。何人かいた日本人の社員も皆、東京に帰した。言葉が分からないってのはいいですな。度胸が決まる。本当のことを言っているかどうかは見れば分かるから。「保険のセールスをやっていればなんでも出来るようになる」と、どこかの本に書いてあったけれど、あれは本当だね。相手がイエスと言いながら内心でノーと言っているかどうか、どこの国の人間でも分かるようになります。読心術みたいなもんです。

堀:発想法についてもお伺いしたいと思います。ネーミングや商品コンセプト、あるいはプロモーションはどのように考えだしていらっしゃるのでしょうか。

鈴木:アイディアはいつも頭にあって、人と違うことやっています。それとおっちょこちょいですな。開発にはおっちょこちょいがいいんですよ。あと、あまり真面目なやつは駄目だね。ただし不真面目なやつだと会社に来なくなっちまうから、“非真面目”ぐらいがちょうど良いんですよ。

堀:あといくつか。尊敬する人物は勝海舟とのお話ですが、理由はなんでしょうか。

鈴木:勝海舟は徳川慶喜の代で幕府のトップだった訳ですよね。だから普通なら戦犯で絞首刑になるようなところなのに、明治政府でも重宝されちゃうんだね。爵位の授与を厭がるんだけど、明治政府から「どうしても貰ってくれ」と言われる。それで福沢諭吉に「汚いじゃないか」と批判される訳です。そこで勝は「俺は世間様の言うことは知らないんだよ」と開き直った。ああいうの、いいね。「足跡を残さず」というのもいい。くそ度胸もあるし、刺客が来たりしてもへっちゃらなんだよね。体は小さいんだよ。僕より小さいんじゃないかな…、ってことはないけど(会場笑)。

堀:マキャベリの『君主論』を愛読していらっしゃるとも聞きしました。著書にはリアリズムという言葉も出てきますが、経営というものは君主論的アプローチでやるのが一番良いとお考えでなんでしょうか。

鈴木:それが正解だと思います。日本の経営者は皆、甘いんだよ。だからよその国に行っては騙されて、ババを掴まされる。でも僕は人が悪いから、たとえば何かの交渉でも最後にサインをする直前で、いきなり「やっぱり止めた」とか言う。そうすると向こうのほうが泣きを入れてくるんです。悪いやつが多いんだから、その上手をいってこっちも悪くならなきゃ駄目です。

「ビジネスを通じて日本を元気にしたい。昭和なんかちっとも良くないよ。今ほど良い時代はない」

堀:では最後にひとつ。「空気を変えよう」と仰っていましたが、「こんな風に変えたい」といったお考えは何かありますでしょうか。

鈴木:ビジネスを通じて日本を元気にしたいんです。昔は酷かったんだよ。私自身は当時苦労をしたと思ってなかったけれども、それでも「昭和は良かった」なんていう話は嘘ですわ。子どもの頃も同じ。戦時の焼け跡で、ちょっと外を見れば、皆、腕が無かったり足が無かったり。そういうなかでなんとか生き延びてきた訳で、昭和なんかちっとも良くないですよ。今ほど良い時代はない。だって志を持った人たちがこんなにいる訳でしょ。ご自身のお金を払って私ごときの話を聞きに来る(会場笑)。びっくりするじゃないの。堀先生がすごいのか時代がすごいのか分からないけれども、こんな時代は今までになかった。

もう酷かったんだよ。昔の会社は…、別に日本生命の悪口じゃないけど(会場笑)、上役に「飲みに行くぞ」って言われて、嫌だと言っても飲まされる。それで「今言ったことは分かったか?」って。仕事の話なんか全然していないのに(会場笑)、「それを明日の朝までにまとめて原稿にしてこい」と言われる。たまったもんじゃないですよね。「まあ、しょうがない」と、それはそれでやるしかなかった訳ですが。

堀:そのおかげで鍛えられたということは?

鈴木:ぜんぜんないですね(会場笑)。あんな上役に比べたら、私なんてまだまだ甘っちょろいとは思うけれども。

堀:そうですか(笑)。…ではこの辺で会場の皆さんに(会場笑)、質問を受けたいと思います。いかがでしょうか。

会場:お話を伺っていて、個人的には「戦争を体験された方にはちょっと敵わないな」と思いました。底抜けに明るいお人柄を含め、もし戦争体験に基づくような面があるとすれば、それはどういったものなのかを教えていただきたいと思いました。

鈴木:私は子どもだったから戦争自体は体験していません。ただ、あんなものは役に立たんですわ。「戦争を体験した」なんていうのはハッタリです。良いことないですよね。勉強するための本もないですし。昨日まで鬼畜米英と言っていた先生が終戦後にいきなり「民主主義だ」なんて言う訳で、「なんでこんなに違っちゃうんだ」と思うし。

会場:500人で500億というお話がありました。一人当たりの生産性を高めるための、ひいては生産性の高い人を育成するための目利きや育て方について、何かお考えがあればお聞きしたいと思いました。

鈴木:それで困っているんです。教えてくださいよ(会場笑)。今度グロービスに潜り込んで受講しようと思ってる(会場笑)。ただ、聞くところによると学生さんの最高齢は、75歳? …そうですか。78だから切られちゃうんじゃないかなと(会場笑)。実際、マーケティングとか、そういうのは簡単なんだよ。一番困るのは人間。人を見抜く力を養うのは本当に難しい。人なんか育ちません。育てようがない。自分の子どもを見てごらんなさい。自分とまったく正反対になろうとしてるでしょ? 何かアイディアはないですか?(会場笑)

会場(続き):自分と反対の人を選ぶというのはどうでしょうか。

鈴木:私はだいたい自分と違う人を任命しているんです。僕みたいな暴走族ばかりだと会社が潰れてしまうからね(会場笑)。だからコントロール出来る人間や冷ややかな目の人間を組み合わせていく。貴方も僕のところの会社に来てちょっとやってよ(会場笑)。

会場:日本生命でトップセールとして大活躍していらしたにも関わらず、日本生命よりも小規模な会社に飛び込んでいかれたのは、どのような思いがあってのことなのでしょうか。

鈴木:「思い」なんてものは全然ないんです。10歳から大学を出るまで家業をやっていたんですが、「兄貴の下にいたら兄貴より偉くなれない」と思ったんですね。それで日本生命に入った。でも生命保険会社というのは巨大な官僚組織なんですよ。はじめの頃は退屈で退屈で、もう色々なことをやっていました。たとえば「日本一の日本生命が日本一の富士山を掃除しましょう」なんて話をでっちあげて、都内のワンゲル大学生を集めたりして。水泳部長になって大阪代表監督になったりもしました。皆に「お前、今度は何して遊んでるんだ?」とか言われながら(会場笑)。

ただ、それでも退屈だから論文を書きました。「日本生命は日本一の生命保険会社でも企業保険はぜんぜん駄目だ」と。それで「私にやらせてください」と、皆をたぶらかした。ただ、それで任されたはいいけど、保険セールスなんてやったことがなかったから困っちまってね。ただ、そこで思ったんだよ。「同じ一件の契約なら日本で一番でかい会社に行くのが早い」って。で、そうなると頭数でも売上でも当時は某鉄鋼会社が日本最大だった。ただ、どうやって売ったらいいか分からないから、独学で毎日勉強しました。たとえば「財務諸表に関して、財務部長よりよく知っているようなプロになってやろう」と。人事・厚生も勉強しました。会社ってものと人脈のプロになって、その会社のことは誰よりも知っているようにしました。そんなことを2年間ぐらい続けながら、色々と質問をしに通ったりしていましたね。

で、質問に戻ると、運命に逆らわないこと。マキャベリもそう言ってる。いや、マキャベリは「運命は女性だから、はっ倒せ」と言っているだけだから違うのかな? …違うな(会場笑)。とにかくあまり無駄な抵抗をしない。まあ、50歳ぐらいなると飽きてくるんだよな。今は40歳定年制なんてことを言っている人もいるけど、僕はそれに賛成。「終身雇用で65歳まで」なんていう状態だと、出来の悪いやつほど会社にしがみついちゃう。あれ、まずいわな。互いに迷惑だよ。奥さんも2回ぐらい変えたほうが良いね(会場笑)。まあ、とにかく僕はぜんぶやり尽くしたから78歳でこれからまた再婚というのは…、会場にいる女性のなかでご希望があればまたのちほど(会場笑)。質問に対する答えとしてはどうですかね(会場笑)。
会場(続き):より楽しく働くためにエステーさんに移られたと…。

「出会い頭に“ポンッ”と行くんだよ。簡単だよ。難しいことを言ったって人生は思いのままにならないんだ」

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鈴木:そんな深い考えでやってたらくたびれて病気になっちゃう(会場笑)。出会い頭に“ポンッ”と行くんだよ。簡単だよ。「来るな」って言われたら行かなきゃいいんだ。あまり難しいことは考えないほうが良いね。マクドナルドの原田(泳幸氏:代表取締役会長兼社長兼最高経営責任者)さんも、「キャリアデベロップメントなんて考えるほうがおかしいんだ」と言っていました。どうしてMac(アップル)からMac(マクドナルド)へ行ったのかといえば、「来いと言われたから行っただけだよ」って。そういうことなんだよ。

「キャリアデベロップメントがどうしたこうした」なんて難しいことを言ったって人生は思いのままにならないんだ。僕のシナリオなんて、40歳までに大金持ちになることだった。それでヨットにスキーから自転車からすべての遊び道具を乗せて地中海をクルーズする。それで夜な夜な美女を集めて大酒を飲んで、今頃は天国で遊んでいるというシナリオだったけれども、全然その“志”には反して仕事をしている訳で(会場笑)。キャリアデベロップメントなんてものは…、学長先生だってさ、京大工学部に行って住友商事に行って何故ここにいるんですか(会場笑)。学長先生からしてキャリアデベロップメントなんてしてないんだから(会場笑)。

会場:先月、マクドナルド原田さんとの対談を読ませていただいたのですが…。

鈴木:あら、まずいの読まれちゃったな(会場笑)。

会場(続き):そこで、リストラのとき何億という在庫を廃棄せよといった指示を出されたというお話を知りました。そうした決断のポイントやきっかけがあれば教えていただきたいと思います。

鈴木:とにかく在庫は駄目なんですよ。チンギス・カンの一の番頭だった耶律楚材(やりつそざい)という人は知ってる? …(会場多数挙手)さすがグロービスだね。彼は漢の人です。一方、蒙古の騎兵軍団は殺戮者ですわ。で、殺戮者のままなら蒙古帝国は長続きしなかったと思うけれども、実際には何代も続いた。漢の捕虜に大変優秀なのがいて、チンギス・カンがそのなかで耶律楚材を自分のNo.2にしたからです。それで官僚制度をつくる訳ですな。その耶律楚材は「一事を生ずるは一事を省くに如かず」と言った。「新しいことをひとつやるより悪いことを捨てたほうが良い」と。私、これに大変感銘を受けました。だから理屈抜きで耶律楚材の真似をしただけです。

それで、社員にも「余計な仕事が会社を潰すんじゃ」と言うんですよ。在庫とは何かと言えば、人、モノ、カネ、時間、そして情報です。で、人間の在庫を皆殺しにする訳にいかないけれども、商品は簡単ですよ。捨てちゃえばいいんだから。ただ、商品には皆思い入れがあって、「捨てろ」と言われても捨てられない。「今すぐに捨てろ」って言っていた訳だけど…、メーカーの営業は特にそうなんですが、モノがひとつ無くなると売るものが無くなるという脅迫観念があるんですね。

それに、その頃の私は社員の誰にも相手にされていなかったんですよ。皆、私みたいな過激派社長は1年もたないと思っていたから。男どもは「あいつは放っときゃ自業自縛で死んじまうから付いていくな」なんて談合していた。だから私は全員女性ということにしたんですけどね。それで結局3年ぐらいかかりましたが、それでも860億あったのが280億になりました。大変でしたよ。最後は「叩き殺して簀巻きにして(本社の前に流れている)神田川に流してやろうか」なんて言って(会場笑)。

向こうも向こうで手を変え品を変え抵抗してきました。たとえば支店長が「どこそこの販売店は“この品物を辞めたらお前のところと縁を切る”と言ってます」と言うから、すぐに電話をする。私はホットラインをつくっておいたんです。社長になってから外を回って、販売店の有力な社長を何人か自分の仲間にしていた。それで、電話をして「社長ね、あんなこと言ってますけどね」って。そうすると、「そんなこと言いませんよ鈴木さん。おたくの支店長のガセネタですよ」と言う。それで支店長に「この野郎!」ってね。「あいつの言うことを聞かないと酷い目に遭う」って思わせておかないとね。こういう脅しは得意ですから。「趣味:脅し」ね(会場笑)。

社長は紳士的なことをしていたって務まらないよ。「やるときはやるんだ」と言って、背の高い社員たちを脅しています。僕のとこは皆、サッカーの吉田麻也みたいにでかい社員ばかりなんだよ。あいつも俺のとこへ来りゃいいのに(会場笑)。とにかく脅かすとすぐにおとなしくなる。それでも時間はかかりますから色々と演技をしました。物流拠点にひとりで行って「ぎゃー」と騒いだり喚いたり。そんなことをやってれば評判になるんです。「あいつは頭がおかしいんだ。喧嘩しないほうがいい」って(会場笑)。

デッド品が減らない理由は責任問題になるからです。「誰がつくったんだ」と、必ずなる。だから、よく私のとこに常務が来て、「今度在庫の整理をしたいんですけど、やり方を教えてください」と言われても、「止めときな」と言います。「俺がやるなら教えるけれど、君は怪我するから止めな。絶対に出来ない」って。で、案の定、出来ませんわ。必ず後ろから鉄砲玉を撃たれますから。

「『刺し違えてもやるんだ』という覚悟がなければ社長になんかなっちゃいけない」

やる以上は覚悟がいるんです。場合によっては「もう人殺しをしてもいい」ぐらいのことを思わなきゃ。本当に殺しちゃまずいよ?(会場笑)。そのあと「鈴木喬のせいだ」なんて言わないでね(会場笑)。ただ、覚悟のない人が社長になったら大勢の社員を路頭で迷わせることになるし、お取引先にも迷惑をかける。だから「刺し違えてもやるんだ」という覚悟がなければ社長になっちゃいけない。知識なんかいらないんだよ。覚悟があってもやれないぐらい、実際には大変ですよ。でもやらなきゃ。

カネも処理したよ。有価証券とか土地とかね。ああいうのは頭に血が上ってるときに買っちゃってるから。肝っ玉と腕がないと会社なんか救えないよね。

それから情報。この情報ってのが分かんねえんだな。ネットのメールとかだけじゃなく、夜の巷で談合政治をやってるからね。時間というのも分からない。今は親分たち一人ひとりに話を聞いて、仕分けをしています。だから僕はいつも皆と昼飯を食べてるの。用もないのに。そういうのが大事なんだよ。何かあったときに情報を集めはじめても駄目。用がなくても「奥さん元気?」とか「お子さんが今度学校に入ったね」とか、色々な話をする。浪花節が重要です。人生ほぼ浪花節だ。アメリカ企業も中西部のメーカーは同じだよ。「アメリカはドライだ」と言うけれども、あれは東部のエスタブリッシュメント。中西部の中堅企業は親子3~4代で経営しているところなんてざらにある。今はアメリカ人のほうは情が分かるね。最近の日本人は情が薄いんじゃないかと心配しています。それが厭ならこれからの人生、生きてらんないよ。世界中回って世界と戦うにはね。どう? ぜんぜん違う話になっちゃった(会場笑)。まぁ、株主総会ならこれで万雷の拍手になる(会場笑)。

会場:会社経営のなかで、「この人と危機を乗り越えよう」「この人とならずっと一緒に仕事が出来るな」と思えるような人材の基準というのはありますでしょうか。

鈴木:まったくありません(会場笑)。心配しなさんな。僕のところは中堅企業だ。そんなに優秀でぴったり合う人が来る筈がない。「うちの給料水準で働けて、本当に優秀な人」なんて要求するのは無理だよ。社長と同志になって何か出来るかと言えば、出来ないね。責任はぜんぶ社長がひっかぶって、お手柄はその人にあげなきゃいけない。なかなか難しいことを聞くね。君、俺んとこに来ないか?(会場笑)

会場:お話を伺って、やはり鈴木会長の強烈なリーダーシップで引っ張っていらっしゃるのだなと感じました。ただ、「そのあとどうしていくか」という部分はいかがでしょうか。「そんなものは育てられない」といったお話もありましたが、それでも組織として続けていかなければならないとも思いますので。

鈴木:それが今一番困っていることですね。それで3年前から「STR(エステーリフォーメーション)」というのをやりだしました。要するに「一枚岩になろう」と。今までは漫画的なリーダーシップでやってきたんですよ。ケラケラ笑いながら。「上手くいくときは上手くいくし、いかないときはいかないな」と、訳の分からんことを言いながらやってきた。でも、今は「それでは駄目だ」と自己否定しています。

それで震災後、将来の直下型地震も想定しつつ4階建ての本社ビルを建てました。で、それにSTRセンターという名前を付けた。そこでいわゆるリフォーメションをしています。「皆の心を変える」、「皆の行動を変える」、「すべてを変える」と。横、縦、そして斜めのリーダーシップもつくりたい。誰がトップなっても廻るような会社にしたいんです。

これ、稲盛和夫さんに少し似てるね。先日、稲越さんの著書をぱらぱら読んでみたんですが、やはり経営者はどうも、最後は新興宗教みたいになる。私も「“喬教”になってたかな?」ということで…、訳が分からんですがね(会場笑)。とにかく企業は永久に存続しなきゃいけないでしょ? これが一番大変だね。どこかで「一丁あがり」と出来ないから。今までは良かったんです。兄が二人いて、その次に私がいたから、「喬が悪い」と言ってりゃ良かった。でも私でどん詰まりになる。だから今は「どういうことをやるか」ともがき苦しみながら、会社を変えるために色々やっています。今までは縦組織のワンマン体制で、横のコミュニケーションがとれなかった。それで重要な情報がデッド品になっていました。そこに横串を刺して、全組織を一元化していきたいんです。

たとえば、アメリカでTEDというところがやっているスピーチがあるでしょ?あれを僕のところでもやっています。「私の仕事」ということで、皆で3~5分間ぐらい喋らせるんですよ。そこで聞いている皆も色々と質問をしたりしていくなかで、コミュニケーションが深まっていく。それから、自分の仕事や目標管理について、必ず一枚のなかで書くというトレーニングもやらせています。そうやってすべての部門について、情報の共有化をしています。ただ、そうやってもなかなか…、基本的には私が死んじゃわないと駄目だね。僕が色々言っていると、皆、どうもこっちを向いてしまう。

会場:「運と勘と度胸」についてお聞かせください。勘は経験、度胸はメンタルだと思うのですが、運を引き寄せる秘訣として何か特別なものはあるのでしょうか。

鈴木:人間好きが運を惹きつけるとは思います。人間嫌いだと運も逃げるね。皆さん、男の人でも女の人でも 、好きな人はいるでしょ? 僕なんか年中誰でもいけしゃあしゃあと好きになる。それでトラブルも起きるけど(会場笑)。

それともうひとつ、自己暗示が重要だよ。今の若い人はITも外国語も出来るし優秀なんだ。ただし、自信不足。それじゃ世界に出てもやられちゃう。「サムスンがどうしたこうした」という話は聞くけど、たいしたことはないよ。君らのほうが絶対に優秀だ。ただ、彼らのほうが、なんというか、にんにくパワーかどうか知らんけど、最後のところで違う。それが何かと言えば自信なんだよな。日本サッカーも韓国やオーストラリアにはどうも分が悪いよね。どこが違うかといったら自信だよ。本田圭佑みたいな自信を全員が持っていない。僕は本田圭佑の大ファンなんだ。ビッグマウスで自分を角番まで追い詰めて、「俺は運が強いんだ」って思っていれば運も勘も度胸もつくよ。だから皆も少しはほらを吹いたほうがいいですよ。

「社長が決めなきゃ会社は潰れる。先送りになんか出来ない。追い詰められたら丁半博打だ」

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鈴木:サッカーの話をすると、長友(佑都)の『上昇思考 幸せを感じるために大切なこと』(角川書店)。あの本は読んだほういいね。とにかく私の発想法はすべてサッカーから来てる。サッカーは英語に続く世界の共通言語だと思うね。私はどこかの国に行ったら、ホテルへ行くよりも先にサッカースタジアムへ行ってる。そうやって研鑽を積んでるんだ(会場笑)。(仙台会場に)仙台はどう?(会場笑)。

会場:会長のお話にものすごいパワーを感じます。そういったモチベーションというか、パワーの源はどこから来ているのでしょうか。

鈴木:モチベーションなんてあんまりないですよ。私、本当はすごく内気で小心者でなんです。人前に出るのがすごく苦手。だからそれを克服したくて、たとえばこの会場に来る前にも少し時間をつくって水泳をしていました。モチベーションを高めるなんていうことは、あまりしていませんな。とにかく難しく考えないことだね。なるようにしかならないから。

会場:リサイクルに関する鈴木会長のお考えをお聞かせください。

鈴木:一般の企業並みにはやっています。毎年2億個の商品を売っているし、考えてみると勝負所はその辺かもしれません。何か良い知恵ないですか?(会場笑)

会場:サッカーのマネジメントで経営に生きている部分があればぜひ教えていただきたいと思っています。また、今の日本代表に何かアドバイスがあれば(会場笑)。

鈴木:経営に役立つと思ってサッカーを見ている訳じゃないんですよ。趣味・志向の問題ですな(会場笑)。で、日本サッカーに対しては、ザッケローニさんの代わりに私を監督にしてくれたらね、先日のブラジル戦には勝った(会場笑)。

会場:またサッカーに関することですが、レアル・マドリードで監督をしているジョゼ・モウリーニョさんのマネジメントについてはどのように考えでしょうか。また、今日はお話を伺って人間に対する愛情というものを深く感じました。まさに浪花節経営だと思うのですが、リストラの際はどういったことをお考えだったのでしょうか。「もしかすると眠れない夜もあったのでは?」という想像をしているのですが。

鈴木:夜眠れないようなことは年中ありますよ。それが怖かったら社長にならないほうが良い。社長になるなら、そのぐらいの苦しみや地獄を味わわないとね。ただ、その辺を悟られたら駄目なんだよ。「夜はぐうぐう寝ております」と言うぐらいのハッタリをかまさないといけない。レアル・マドリードについては貴方のほうが詳しいね。ちょっとレクチャーしてよ。謝礼払うから(会場笑)。

会場:「無理難題を言わなければ社長は務まらない」というお話が大変勉強になりました。そこで社員の方々がついてくるようなリーダーシップの秘訣もお伺いしたいと思っています。ひとつは自信だと思うのですが、ほかに何か必要なものはあるでしょうか。

鈴木:人がついてくるかどうかは分からないさ。けれども世間様の圧力を受けて社内で無理難題を言わない限り、会社は硬直して潰れちゃう。これは良い悪いの話じゃない。私利私欲抜きで、「俺がこれを言わない限りこの会社は潰れてしまう」という覚悟が必要なんだ。そういう風になれば強くなる。だから社長になったら、出来るだけ外に出て世間様の風を浴びに行くことですな。もうすぐ社長になるんでしょ?(会場笑)

会場:「人を好きになることが大事」というお話もありましたが、どうしても好きになれない人や苦手な人はいると思います。その際、どのように自分自身で言い聞かせているのでしょうか。それともう1点。「社長が意思決定をするんだ」というお話もありましたが、その裏には色々な逡巡もあると思います。それによって不利益を被る人ですとか、決断に至るまでの過程で色々な人の顔が浮かんでくることもあると思います。「けれども、こうしなければいけない」というとき、それをどう乗り越えているのでしょうか。

鈴木:僕だって人間だから大嫌いなやつはいますよ。それ以外の人を好きになればいいんです。好きになれる人を好きになればいいんだから、無理して好きになることはない。ただ、嫌いなやつでも商売が関わればね。僕は変わったんです。企業保険を売るようになって、「好きとか嫌いとか言ってたら飯が食えない」ということを学びました。そのぐらいの考えにならなきゃ、社長になったら駄目。僕なんて全社員の1/3ぐらいは嫌いだよ(会場笑)。ぶっ殺してやりたいよ(会場笑)。そんなことを言っていたらこっちが殺されちゃうから、おくびにも出さないけどね。だから、「好きだ」ということにしちゃう。で、家に帰ったら酒を飲みながら「あの野郎!」って(会場笑)。

あと、たしかに迷うことはあるけれど、仕方がない。迷っても決めるんだよ。最後はイエスかノーになるなら、決めるしかない。それが社長なんだ。社長が決めなきゃ会社は潰れる。先送りになんか出来ません。追い詰められたら丁半博打だね。あとで頭を抱えて「失敗したな」と、僕なんか年中言ってる。人事等、怖いよね。人の人生を左右する訳だし。でも全体最適なんて言って決めないほうが被害は大きくなるんだから、しょうがない。それが怖いのなら出来るだけそういう立場から遠ざかったほうが良いね。

堀:あと2~3分になりました。では最後に会場の皆さまへメッセージをお願いします。

鈴木:皆、頑張ってよ。君らは優秀なんだから。優秀な人は自信を失いがちだけれども、メンタル・タフネスを持ってください。メンタルが弱い日本のサッカーに成り代わって君たちが強くなってよ。頑張って(会場拍手)。

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