風間直樹氏×平将明氏×田村謙治氏×中西健治氏 「『ねじれ』国会にどう対応すべきか 〜あるべき選挙制度改革とは〜」 

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衆参両院の関係で見直すべきことは何か?(竹中)

竹中治堅氏(以下、敬称略):このセッションの趣旨は、「ねじれ国会にどう対応すべきか」「あるべき選挙制度改革とは」ということです。

ねじれ国会とは与党が参議院で過半数を確保していないことを指しています。日本は二院制を取っていて、衆議院が参議院に優越していることが小学校の教科書にも書いてありますが、これは憲法の建前と言うか、政治の運用の実態とはかなり乖離があります。実際に法律を作るうえでは、衆議院と参議院が実質的に同じ権限を持っていると考えたほうがいいのです。参議院で野党が過半数の議席を持っていると、内閣および与党は法案を成立させる際に非常に困ることがあるので問題になってきます。

ねじれ国会は過去にも何回かありましたが、現在のねじれは2007年7月の参議院選挙で自民党が負けたことに始まります。2009年9月に政権交代があり、ねじれはいったん解消しましたが、2010年7月の参議院選挙で民主党が負けたので、またねじれになりました。自民党政権、民主党政権ともに、このねじれに苦しむという状況に陥っています。

まず、このねじれをどう評価するか。そして、G1サミットは提案型の議論をしたいということなので、提案的質問として「衆参両院の関係で見直すべきことは何か」を問います。それから、今、議論されている衆参両院の選挙制度改革はどうあるべきなのか。もし時間があれば、せっかく国会議員の先生方がいらっしゃるので、野田内閣で問題になっている「社会保障と税の一体改革」の行方をどう見るかという話までしたいと思います。

それでは早速、1つ目の質問として、このねじれ国会をどう評価するかについて伺います。「首相が1年おきに代わることもねじれが関係している」という有識者も中にはいます。そういった意見を含めて、G1サミットは批判するばかりではなく、良いところも悪いところも含めてご発言していただきたいと思います。

今の国会には2つの社長室、「ねじれ」には良いところなし(風間)

風間直樹氏(以下、敬称略):私は今の国会には、2つの社長室があると思っています。それは衆議院と、そして参議院という社長室です。企業に2つの社長室があれば、経営方針が決まらずに迷走します。それがまさにこの国の現状です。

ですから、「ねじれ国会」には良いところがない、というのが率直な印象です。私と中西先生は参議院の本会議場に日々身を置いているのでリアルに「ねじれ」を体感しています。まさに参議院が「ねじれ」の現場で、この状態を続けていて我が国の将来はないのです。このように、国会で意思決定が全くできていないという状況を日々体感しているので、非常に危機意識を持っています。

「ねじれ国会」の意味を考えるには、1990年代に小選挙区制を導入した事実に遡らなければなりません。冷戦終焉とバブル崩壊という時代の大転換を背景に、2大政党制を目指し、衆議院選挙で勝利した政党に議席を大量に与え、速やかに物事を判断し実行していこうというのが、小選挙区制導入の目的でした。実は「ねじれ国会」を考える上で肝心なことは、この小選挙区制と、憲法59条の「衆議院で法案が通り、その後参議院で否決された場合、衆議院に戻して3分の2で再可決する」という条項が、国権の最高機関の内部で矛盾を来たし、パイプが詰まっている思想の上で全く一致していないのです。

つまり2大政党制にはなった。そして、自民党と民主党という大政党があって、それぞれの党がそれぞれの院を1つずつ支配した時に何が起きるかということを、小選挙区制度導入時に全く想定しなかった。その弊害が法案が通らないという形で今出てきているのです。この状態を変えない限り我が国の迷走は続くし、日本の国家意思は決定できないし、日本の国力は永続的に落ちていく。

この状態を変えようということで、憲法59条で衆議院議員の「3分の2」となっている再可決の条項を、過半数に変えるということを、昨日も提案させていただきました。

竹中:どうもありがとうございました。ねじれ国会に良いところは1つもないということでした。次に平さんからお願いします。

何も決められない取締役会だ(平)

平将明氏(以下、敬称略):ねじれ国会、まさに今、国会の政治の一番の問題はねじれ国会です。お話があった通り「何も決められない取締役会」という感じですね。社会の変化が激しいからそれに対応しなければいけない。グローバルな国家間の競争が激しいのでそれに対応しなければいけない。しかしながら、ねじれているので何も決まらない。というのが、今最大の問題であり悪いところだと思います。

良いところは、民主党のすっとんきょうな政策を、参議院でかなり止めることができました。例えば労働規制の強化なんて、馬鹿馬鹿しいでしょ。雇用を減らすことを平気でやりながら、格差解消だと言っているんだから。格差解消の最も実効性のある指標は失業率ですよね。失業率を上げるような政策を打って格差解消という全くもってド素人の政権の政策を止められたのは、参議院がねじれていたからこそです。CO2の削減目標にしても、バックデータがほとんどないようなものを時の総理が目をキラキラ輝かせながら国際公約しましたが、国内で通そうとする時になんとか止めることができました。

ただそれが逆に、国民やマスコミの緊張感を削いでいる面もあります。本来であれば衆議院選挙の時に国民に提示し、国民の支持を受けた政党がそれをやり切るという方が大事ですが、二院制があるから「どこかで止めてくれるだろう」というような緩んだ意識を生んでいる。だから、2009年の衆議院選挙で民主党が掲げた歳入と歳出が全く合わないマニフェストがそのまま受け入れられてしまう。マスコミは激しい批判も検証もせずにスルーするということが起きてしまう。

私は基本的に参議院はいらないと思っています。憲法を変えるなら、一院制国会にすべきです。そうすると4割ぐらい議員定数を削減できるし、ねじれはなくなるし、おかしな政権が出てきたらその責任は国民が負うので、国民の緊張感も高まる。マスコミも真剣度が高まる。

「そんなことをしたら、大変なことになるんじゃないか?」という反論もありますが、やはり国民が選んで国民が責任を取るのが本来の形です。この形は国民を信頼するということでもあるので、私はそういう意見を持っています。

竹中:ありがとうございました。参議院に対して早くも厳しい意見が次々と出ています。やはり決められないことが最大の問題であるということですね。良いところは、政権のおかしな政策を止めることができるということでした。それでは政権で、止められている側の民主党側の田村さん、お願いします。

参議院の力を弱め、衆議院で決めるようにすべき(田村)

田村謙治氏(以下、敬称略):良いところというのは、基本的にはほとんど思い当たりません。それでも強いて挙げれば、私が言うのも変ですが、野党が与党を追い詰められることぐらいだと思っています。政権交代する前、我々はねじれ国会の野党側で、与党を追い詰めるために数々の法律を通さなかったわけです。

それによって自民党が追い詰められたことが、政権交代に繋がった部分があります。自民党が野党になって、当然のごとく与党を追い詰めようとしてきました。今なら1日も早く解散に追い込もうとするわけです。与党や内閣が出す法律に賛成するということは、野党にとっておよそプラスになるはずがないので、基本的にはほとんど賛成しないですよね。だから目玉になるような法律は基本的には通らない状況になってしまいます。選挙が近づいたり、解散に追い込むぞというモードに野党が入ったりすれば、常にそうなってしまうと思います。

ねじれ国会を与党が乗り切るには、世論を味方にするしかありません。例えば内閣支持率がかなり高い場合には、与党の法律に野党が反対するということになると、野党は世論を敵に回すことになるので、ある程度抑制的になります。しかし鳩山政権、菅政権がそうであったように、現在の野田政権もだんだんと支持率が下がってきています。そうなるとメディアが叩き始めて、野党もそれに乗じて与党叩きを強めて法案は一切賛成しないという悪循環が毎回起きることになってしまいます。

参議院は力を弱めて、基本的に衆議院で物事を決めるのが良いと思います。そこは風間さんの意見に近いのかもしれません。参議院のあり方として、例えばいろんな専門家を集めて有識者会議のような形にする。基本的に法律は衆議院の議決で決めるというふうにすべきではないかと思っています。

竹中:ここまでお話を伺ったお三方は、2大政党がガチンコ対決する中、ねじれ国会でそれぞれ与党と野党を経験した上でのご発言だったかと思います。それに対して中西さんはみんなの党所属で、2大政党以外の立場でねじれを見ているわけです。そういう観点を踏まえてご発言いただけますか。

将来的には憲法を改正して一院制にすべき(中西)

中西健治氏(以下、敬称略):参議院にいるからといって参議院を擁護するつもりは全然ないし、私自身は将来的には憲法を改正して一院制にすべきだと思っています。

ただ今の参議院の役回りで積極的に評価されていい部分もあります。それは小選挙区制という衆議院の選挙制度が、民意を集約するという目的の下に議席数が多くなりすぎることに由来します。小選挙区で4割しか得票していないのに議席数は7割も取れてしまうということが起こります。そういう選挙が2回続いていて、本当の民意とはやや掛け離れているのではないかと思っています。

衆議院選挙と異なる時期に行われる参議院選挙で、前回の衆議院選挙の反省を踏まえて、国民の皆さんが中間選挙的に投票を行う。その結果として参議院多数でねじれが生じるということであれば、小選挙区の弊害を参議院選挙で是正することができるという役回りがあると思います。

平さんは「すっとんきょうな法律」と言いましたけれども、やはりそういったものを抑止していかなければいけません。労働者派遣法もそうですが、郵政民営化に逆行するような法案が通りそうになった時期もありました。その時、与党が衆参両院で多数議席を持っていました。そして強行採決を何度も繰り返していたわけです。それが正しい姿かというと、私はそうではないと思います。そこはかなりポジティブに評価できる点でしょう。

逆にネガティブな点は、ねじれによる停滞を解消するために「3党協議」というものが行われることです。民主・自民・公明の3党だけで協議して、もうその翌日に国会に上程して、1日で法案を通そうとしたりする。これは国会軽視も甚だしいと思います。ねじれの弊害として出てきているのは、この水面下で協議をするということです。そして過半数議席を取れるようになったら、国会で議論もしないで通そうとする。それが非常にまずいことです。

竹中:ありがとうございました。二院制の悪いところは、この後じっくり議論したいと思いますが、もうちょっと良いところに目を向けてみます。なぜ二院制を我々が設けているかというと、立法権というのは非常に強い権力であり、立法は特に国民の権利・義務関係に影響を与えます。法律を作るということは最終的に、国民に対する国家権力の発動を認めるということなので、それを慎重にするために二院制にして、意思決定をわざと遅くさせているのだという説があります。平さんと中西さんからは、与党の政策をチェックする機能という発言がありました。「良いところはない」とおっしゃっていた風間さんは、そういうところはあまり評価できないということでしょうか。

参院が修正機能を逸脱すれば政権という飛行機は墜落する(風間)

風間:そこについては評価できると思います。ただ、それが今強く出すぎているのが問題だという認識です。だから参議院で与野党が逆転している時に、野党が政府の法案をチェックして修正させる。これは極めて大切な機能です。しかしその結果、修正や否決が強く出すぎて、政権の方針そのものを否定して“政権による飛行機の操縦”を麻痺させてしまう。これでは飛行機が墜落してしまいます。今の日本はそういう状況だと思います。

竹中:ありがとうございました。田村さんはそこを、抑制の観点からどうお考えになりますか?

田村:先程申し上げたように、今はあまり変わらないと言いたいです。イメージでいえば、参議院の比例代表選出の方々は本来、特色があってしかるべきです。ところが現状の参議院議員はいろいろな団体の候補という色合いが強いので、その良し悪しはあると思います。私はあまり抑制効果になっていないような気がします。

竹中:子ども手当て法案は抑制が効いた例でしょうね。2009年の総選挙の時に民主党は子ども手当てを掲げましたが、世論調査を見るとかなりの人は子ども手当てにあまり賛成していなかったと記憶しています。ところがその後に参議院選挙があって、民主党政権が過半数議席を失ったことによって、当初掲げたような形で子ども手当てを実施するのは非常に難しくなったため、民主党がやろうとしていた子ども手当と自民党・公明党時代に作られていた児童手当てを足して2で割ったような施策になったので、それは憲法が想定するような形で抑制が効いた例なのではないかと思います。

4人のパネリストの皆さんに共通しているのは、「ねじれで国会が停滞している」という意見です。では抽象論ではなく具体的に、これは本当にやるべきだったのに参議院で政権与党が過半数議席を持っていないせいで遅れたという例を示していただけると、今抱えている弊害がよりはっきりすると思います。いかがでしょうか。

風間:最大の例は、毎年首相が変わることです。言わば飛行中に機長が交代するようなものですから、飛行機が目的地に着かないわけです。こんな国は世界のどこにもありません。これはひとえに国会がねじれ、野党が参議院の過半数を得た時、総理のクビを差し出さないと前に進めないからです。これは民主党が野党だった時もそうだったし、今もそうです。自民党が良いとか悪いとか、民主党が良いとか悪いとかじゃなくて、システムが悪いのです。だからこういう結果になる。

閣僚もそうです。最近の防衛大臣について私は全く弁護する気はありませんが、例えば前原さんが外務大臣だった時に、在日外国人の献金問題でお辞めになりました。あれは非常に残念でした。中学時代から可愛がっていただいた焼肉屋のおばちゃんが、5万円、10万円の寄付をしてくれた。相手は外国人だったので法律に抵触します。ただ、それが外務大臣を辞職する理由にはならないと私は思いますが、ねじれているからとにかく法案が通らない。野党がウンと言わない。だから辞めざるを得ない。この機長やアシスタントパーサーがしょっちゅう辞めるというのが最大の弊害だと思います。

竹中:首相がコロコロ変わる。閣僚は問責決議案が通ると変わる。でも、菅さんが首相を辞めたのはねじれというよりも、むしろ民主党内部での党内抗争が要因だったのではないかという見方もあると思いますが、いかがですか?

「ねじれ国会+党内抗争」が首相をますます弱くする(田村)

田村:菅さんが辞めた理由はまあ党内抗争もありますが、参議院でねじれていて問責決議案は通るし、衆議院でもさらに紛糾するので、ねじれを前提とした党内抗争だとさらに首相は弱くなる。それが辞任に追い込まれやすくなる要因だと思います。

より具体的には、国家公務員制度改革です。例えば、霞が関で政治主導を目指して副大臣と政務官を増やす。鳩山政権の時にはそういう法案を出していました。今も法案を出しているものとして官僚の人事の一元化があります。鳩山政権の時そういった法案をさっさと全部通せば良かったのです。しかし今振り返ってもよく分らないのは、鳩山政権でねじれてもいないのに野党にかなり配慮して法律をあまり通さなかったんですね。そしてねじれてしまった後は結局、制度改革は進んでいません。民主党のいわゆる政治主導にはいろいろ批判もありますが、そういう官僚の人事を一元化するような基本的なこともできていないのはかなり痛いところです。

公務員制度改革は完全に後退(平)

平:ねじれの一番の問題は、予算は衆議院が参議院に優先するのですが、関連法案が通らないことです。関連法案が通らないということは全体が進まないということなので、ねじれを起こした途端に参議院は野党主導になります。国会は日程を決めるのが極めて重要なので、参議院の野党が日程のシナリオを描けるということになります。一番の問題は予算関連法案です。

目玉の法案については民主党と自民党では考え方が違うので、根本的に容認できないというものは反対せざるを得ない。これはほとんど通りません。

それから総理がコロコロ変わるのは別にねじれだけが原因ではなくて、総理その人もダメなのだと思います。民主党の公務員制度改革の話がありましたが、私はシャドーキャビネット(影の内閣)の担当なので、公務員制度改革は完全に後退していることを指摘しておきます。なぜ法律を通さないかというと、閣議決定の内容を見ると官僚にいいようにやられているからです。例えば退職者基本方針です。民主党は天下りを禁止すると言いましたが、余った人材をどうするのか。現役出向ならオーケーというような自民党政権の時に出てきても「それは容認できない」というようなものを平気で閣議決定してしまう。

役人が現役出向して、定年間際にほんのわずかな期間だけ役所に帰ってきて、その後また同じ会社に再就職できる。そういうことを閣議決定で1本のパッケージとして出してはきません。いくつかに分けて閣議決定して、全部合わせて読むと何でも役人のやりたい放題という感じです。しかも、出すタイミングは参議院選挙の直前などバタバタしているときに出してきて、それをチェックする力が政治の側にないから通ってしまう。

それで政治主導の「いろは」の「い」は、ド素人を大臣にしないということです。これは自民党もそうで、お父さんが総理の時にお世話になったから息子や娘を大事にしようとか、派閥で余っているのを順番で入れようとか、そういう馬鹿馬鹿しいことをやるとそこから火を噴くのです。そうした大失敗を自民が犯し、体質が劣化したということが分かっていたのに、民主党は今回、素人大臣の後にド素人を持ってくるというあり得ないことをやっています。

政治主導を本気でやりたいなら、ド素人を大臣にしないこと。しかし、自称・玄人はその既得権益団体の代表だったりするので、そういう族議員も大臣にしてはいけない。2つ目は国家戦略スタッフみたいなわかっている人で、しっかり周りを固めなければいけません。これは安倍政権の時に作って、福田政権の時に民主党と合意してプログラム法を作って、その通りにやれば今頃、ド素人の大臣の周りでも、国家戦略スタッフなどを置けるにもかかわらず、「政治主導だ」といってド素人の大臣を増やしているだけです。副大臣を増やしたり、政務官を増やしたり。見当外れだと思います。

竹中:中西さん、具体的に問題点を指摘してください。

国会同意人事を拒否するのはやめてほしい(中西)

中西:公務員制度改革の問題もそうですが、法案以外では、国会同意人事を拒否するのはやめてほしい。例えば日銀総裁を福井さんの後、誰にするか。民主党が小沢代表の時、断固拒否して、出す人、出す人、難癖をつけて、結局、白川総裁ということになったわけです。白川総裁に対してはデフレから脱却できないじゃないかと民主党内でも激しい批判がありますが、あなたたちがそうしたからこの人になったんじゃないかということが、まざまざと脳裏に焼き付いています。

首相がコロコロ変わるということについてはねじれも一因でだと思いますが、やはり首相が国会議員の中から国会議員によって選ばれていることに起因しています。首相が国会議員の方ばかりを向いて仕事をすることがいけないので、これは憲法改正に繋がりますが、首相は民意に基づく首相公選制にしていかなければ、強い首相、長く務められる首相は生まれてこないと思います。

竹中:ありがとうございました。いくつか具体的に問題が上がりました。首相がコロコロ変わる。これはねじれが原因ではないという意見もありますけれども、関係あるのではないかという意見もあります。

それから政策が滞っている。具体的には、公務員制度改革が進まない。そして予算は通るが、関連法案が通らないことが問題だということです。この関連法案には2つあって、1つは子ども手当てのように予算には計上しているが、予算を計上したものを実行に移すためには、別に法律を通さなければならないというもの。もう1つは予算の裏付け。予算の歳入ではかなり国債を発行していますが、国債を発行するためには特例公債法案というものが通らないと最終的には執行ができません。特例公債法案は、衆議院の議決だけではなく参議院も同意しないといけないので可決されない。菅さんは自分のクビを差し出す条件の1つとして、特例公債法案を出すことを条件にお辞めになったのですが、これはやはり大きな問題としてある。

それから同意人事ですね。同意人事の法律に関しては、3分の2の賛成多数で可決することができるという衆議院の優越が認められていますが、日銀総裁、あるいは人事院の総裁、会計検査院の院長など、いくつかの内閣や首相が行う人事は、衆議院と参議院がそれぞれ同意しないとできないというものがあります。衆議院の優越規定というものがないので参議院が同意しないと拒否できてしまう。この一番象徴的な例が、2008年3月の日銀総裁人事で3週間、日銀総裁が空席になったことです。

ここで、フロアの方からコメント、質問をいただきたいのですが。

党議拘束の方が問題ではないのか?(会場)

会場1:参議院がいるかいらないということについては憲法改正が伴うので、かなり政治的なハードルが高いと思います。次期総選挙がいつになるかわかりませんが、現在の国会の状況を打破するためにとても大切だと思っていることがあります。日本の政党政治を見ていて、党議拘束が非常に形式的に行われているように感じます。アメリカの民主党と共和党の投票行動などを見ていても、必ずしもある法案に対して党の政策に従って機械的に投票するという数合わせの論理ではないと思うのです。

間接民主主義でやっているのは、ここにいらっしゃる方のような見識のある方々の判断を期待してのものなので、衆議院と参議院がなじれているからといって、形式的な数合わせで法案が通るようなことが行われていることが、僕は日本の政治の知的な劣化をもたらしていると思います。そもそも党議拘束ということについてどうお考えになるのか。実際に皆さんがある法案に対して投票行動をする時に、どれぐらい自分の判断と責任において投票を決定されているのかについて伺いたいと思います。

竹中:ありがとうございます。党議拘束の問題はこのねじれにどう対処していくかということは、非常に多くの方が指摘される問題なので、改めてこの後、議論していきたいと思います。

今のねじれを打破するため、悪いところを修正するために、どう見直すべきかということを、既に具体的な提案を含めて冒頭にコメントしていただきました。風間さんは59条を見直すべきだとおっしゃっていました。それをもう少し詳しくご説明いただけますか。

憲法59条の再議決条項、「3分の2」を「過半数」にすれば風景が変わる(風間)

風間:イギリスとシンガポールの例を出します。ご承知のようにイギリスの場合は、実質的には一院制です。上院がありますが選挙は行われません。総選挙は5年に1度です。前回の総選挙で保守党が勝ちましたが、首相は就任直後の会見で、次回の選挙は5年後の5月の第2火曜日に行うと宣言します。その間、彼は辞任を迫る大きな障害にも直面することなく、首相として政権への舵取りができるのです。これは非常に安定した制度だと思います。

シンガポールも同様です。与党が総選挙で毎回、絶対安定多数を取るので、現在の首相はもう10年近く務めています。先日、シンガポールに行って現地の写真を見ましたけれども、新聞の1面に閣僚の集合写真が出ていました、全閣僚が本当に良い顔をしています。自分たちは政権基盤が安定している。その下で自分たちの能力を活かしきって政策運営をしているんだと、そういう自信に溢れています。非常にうらやましく思いました。

日本は戦後初めての統治機構改革を抜本的にやるべき時期に来ています。戦後、GHQの下で憲法が制定され、衆議院と参議院が現在のような体制になりました。なぜ参議院を置いたか。当時の歴史的な経緯があります。しかし当時から状況は大きく変わりました。当時は参議院が政党支配されていませんでした。かなり独立した議員が参議院にいました。しかし、今は違います。

今日の現状と様々な時代の要請に基づいて「国の仕組みを変えよう」という提案が総理大臣から出てきて当然だと思います。では、どう変えるか。憲法59条の「3分の2」の再議決条項を「過半数」にするだけで、すべての風景がガラッと変わります。総理や閣僚が年中行事のように交代することはなくなる。政党が総選挙で信を得たら、衆議院任期の4年間は、完全にその党の統治の下で政策運営ができる。ダメなら4年後の総選挙でまた変えればいい。

では、どのようにこの統治機構の変革をやるかといえば、私は“橋下方式”が参考になると思っています。去年、橋下徹大阪市長が「大阪都構想」を掲げて選挙をしました。その際に方向性を訴えて、大勝して、それが定着しました。議会において民意はすべてに勝ります。ですから、時の総理がこの問題を真剣に考えるのであれば、「憲法59条をこういう理由で変える必要がある。国民の皆さん、どうですか」と訴えるべきです。

国民は賢いですから理解します。私は参議院の全国区の議員なので、全国の支持者の皆さんと対話をして回っていますが、この話をすると皆さん、理解されます。もう機は熟しています。総選挙でこれを大きな争点にして訴えるべきです。信を得た場合には、その後に開く国会でこの憲法59条改正のための手続きを進める。

その上で、衆参両院の関係をどうするか。当然ながら参議院の権利が縮小されます。ただ、参議院の役割は2つあると思います。1つは決算の審査。もう1つは行政監視です。参議院における決算委員会と行政監視委員会の役割、機能は非常に重い。行政監視委員会の場合は、政府の施策、政府の行政をつぶさにチェックします。去年、一昨年、検察や警察の不祥事があった際、行政監視委員会の委員が最高検を訪れて検事総長とサシで会談しました。検事総長に対して、各委員は強く検察改革を迫りました。こうした行政機関に対するチェックを毎年繰り返し行うことによって、国政が確実に変わっていく姿を私は見てきました。参議院の権限を縮小する一方で、この決算と行政監視の権限を拡充する。sれにより「政権運営・統治をする衆議院」「行政府をチェックする参議院」という役割分担ができるのではないかと思っています。

竹中:ありがとうございました。では平さん、お願いします。

ベストは参議院廃止の一院制(平)

平:ベストは憲法改正して参議院廃止の一院制だと思います。参議院が全国区であることで良い部分はありますが、悪い部分もあります。例えば業界の代表がそのまま出馬します。JAの代表、医師会の代表、歯科医師会の代表が出てきます。この人たちはやはり自分の支持母体の利益を代表して出てくる。参議院というのは「良識の府」だと言いますが、そういう既得権益の代表者のような人がいっぱいいて、どうも改革を阻害しているという認識が非常に強くあります。

そういった中でベストは一院制で、小選挙区300議席の比例復活なしと比例代表150議席ぐらい。これはどちらかというと、参議院的な要素を含めた議員からなる一院制です。そうすると国会議員は、衆議院的なところが480人から300人になって、参議院的なところが242人から150人になるので、双方を合わせて722人が450人まで減ります。

衆議院と参議院を減らしていくべきという議論がありますが、やはり議会は政府を監視しなければいけないし、ガバナンスをしなければいけないので、政治主導だということで政府に100人超えで国会議員を取られてしまうと両院とも定員を減らされたら委員会が機能しません。チェック機能が大きく落ちるという問題があるので、私は一院制が良いと思っています。

風間さんと意見が違うのは、決算と行政監視は参議院が頑張らなければいけないという理屈は何もありません。私は衆議院の決算行政監視委員会の理事をやっていて、先日「国会版事業仕分け」というものをやりました。国会議員が真面目にやっていないだけで仕組みはあるのです。我々は会計検査院や総務省の行政評価局、財務省の主計局とも意見交換を行い、現地を見て、概算要求で夏頃に上がってくる5000〜6000件の政府の事業を民主党政権が仕分けるために必要な“事業シート”の記入を閣議決定してもらいましたので、全部事業シートが揃っていて、そこからピックアップして仕分けを行い、決算行政監視委員会には議決文を採択して政府に突きつけるというやり方と、勧告するというやり方があります。その結果を今回は議決文にしましたが6カ月以内に議会に報告するよう要求しました。そしてダメならもう一度やって勧告する。どちらでやってもいい話なので、参議院がやらなければいけないという議論ではないと思っています。

とはいうものの、憲法改正はハードルが高いのでルールを変えるしかないでしょう。例えば、国会同意人事は衆議院が優先する。それと、衆議院と参議院で議決が異なった時に両院協議会を行いますが、これはほとんどセレモニーと化しているので、しっかりと機能させるべきです。

もう民主党政権は終わります。民主党が野党の時には、ねじれを利用して散々嫌がらせをしました。今は自民党がそれをモデルにして散々嫌がらせをしています。だから、次期総選挙の結果で我々が第1党になっても、また同じ嫌がらせをされる可能性が大きいので、この時期に自民党から呼びかけて、もう問責決議案を連発しないとか、半年後を見据えてわが党から国会運営のルールの話を一緒にするというのは良いタイミングだと思います。

竹中:政局の話も含めて、いろいろ出てきました。憲法改正して一院制にしたらいい。決算監視は今十分できている。国会同意人事とか、両院協議会とか、法律で変えられるものもあるのではないか。慣行でお互いに嫌がらせをするのはやめようという話し合い。憲法改正が必要なものと、法律改正でできるものと、積み重ねで何とかなるもので、3つぐらいの対応策を平さんは提言してくださいました。

では田村さん、どこをどう変えるべきかという意見をお願いします。

まず憲法94条を改正する手もある(田村)

田村:ほぼ意見は出ていると思います。憲法改正という意味では、参議院はなくてもいいかもしれないし、あってもいいのかもしれない。風間さんの提案のように、参議院が有識者のチェック機能を果たすのか。要は衆議院の補完的な役割として、あっていいかもしないと思います。

ただ、国会一院制も首相公選制と同様、いずれにしても憲法改正が必要になります。私は明日にでも変えたいですが、結局、憲法改正はできないわけです。余談ですが、今国会の中でちょっと面白い動きがあります。それは憲法94条の規定では、衆議院と参議院のそれぞれ3分の2の賛成多数で通し、その上で国民投票を行ってやっと変えられるのですが、ねじれでどうこうと言っているぐらいですから全く不可能なわけです。それで、まず衆議院と参議院の過半数で変えられるように94条を変えようという動きが出ています。

それなら、反対する議員は少ないでしょう。風間さんが先程おっしゃった59条に限らず、個別のテーマに関してはみんな意見が割れていて、おそらく100年経っても進みません、ところがこの一点突破で憲法改正と言えば、反対するのは今の憲法を頑なに守りたい人たちだけです。少しずつそういう動きを広げようとしています。

もう1つ、国会慣行に関しては、平さんがおっしゃっていたのと同じようなことが、民主党内では政権交代の1〜2年前から「良くない国会慣行は今のうちにやめやほうがいい」「ブーメランになって返ってくるから」という話は出ていました。いわゆる国会対策の慣行というものがあります。

イギリスでは事実上、一院制だからやりやすいのでしょうが、国会の日程などはすべて与党が決めます。今の日本では、まず、いつから予算委員会を開くかといった相談を野党にします。本来なら過半数議席を持っているわけですから、一方的に通告してすべて決めるのは不可能ではありませんが、野党に配慮して野党の要求をある程度受け入れてというような駆け引きをずっとやっています。そういった無駄に時間を食うような国会慣行があるので、それは長い目で党派を超えていろんな議員が議論して止めていかなきゃいけないと思います。

竹中:ありがとうございました。では中西さん、お願いします。

ねじれ解消だけを狙うなら「衆参同日選挙」が有効(中西)

中西:憲法改正まで視野に入れるということであれば、お話ししている通り一院制にすべきですが、一院制にしてしまうとチェックの機能が働きにくくなるので、首相公選制と一院制をセットにして、首相も民意に基づく形にしていくだろうと思っています。

今の二院制が前提ということであれば、これは選挙制度と不可分な部分をあるでしょうが、衆議院が選挙区で選ばれる人たち。そして参議院は比例代表で選ばれる人たち。そういった役割分担をして、党議拘束を見直していくということになるだろうと思います。

このねじれだけ解消したいということであれば、衆議院と参議院は必ず同じ日に選挙をするということにすべきでしょう。衆議院は3年ごとに選挙すると決めて、同じ日に選挙をすれば、同じような民意が出てくることになるので、ねじれ解消を目的にするのであれば有効だと思います。

竹中:ありがとうございました。憲法改正するのであれば一院制が良いのではないかとか、首相公選制も併せて導入するのがいいのではないかとか、法律で改正すべき事項、慣行でやれることという話が出ましたが、憲法改正はかなり難しくて、今差し迫ったねじれの問題に対してすぐにできることではないと思うので、慣行と法律について選挙制度改革を含めて議論を進めていきます。

慣行に関しては、民主党の国会議員の中でも、自民党と“休戦協定”を結んで、次に政権が代わるようなときにはあまりおかしなことはしないというように民主党が宣言したほうがいいという話があります。差し迫った問題として、特例公債法案をどうするのかということがありますね。赤字国債を発行するための法案をどうやって通すのかという問題もあり、この慣行を変える方法はないでしょうか?

話し合いで解決できる状態ではない(平)

平:参議院がもう盛り上がってしまっているんですね。ここで話し合いをして、まとめるというインセンティブは野党側には全くありません。与党の側からは、「話し合いをしてやりましょう」と。その話し合いとは予算案なので、歳入・歳出の整合性の話が出てくるし、将来的なビジョンの関係も出てきて、我々の感覚からすれば歳入と歳出の全く合わないマニフェストは完全に破棄すべきだという話になります。

「わかりました。破棄します」と言って、「リアリティーのある資金繰りの相談に乗ってください」ということであれば、自民党は断れないでしょう。しかしマニフェストを破棄した以上は、この国をどちらの方向に持っていくかというものがないのだから、新たにマニフェストを出し合って衆議院選挙をしましょうというのが合理的な帰結だと思います。だからそういう中で、関連法案も予算も通しましょうという話になるでしょう。

それから先程、中西さんの言った三党協議は、やはりちょっと異常な形ですが、これがなぜ出てきたのか。それは、東日本大震災の復興関係の補正予算とか、復興庁とか、事故調査委員会の議会設置だとか、二重ローン問題とか、緊急性の高い問題があって、そういったことは速く決めなければいけない事情があるからです。三党合意というものは非公式ですよね。そこで話し合いに乗ったということなのです。

ですから今、三党協議をやるというのはやはり異常で、これは密室ですから、「密室談合」と言われてもしょうがありません。よくマスコミから「なぜ協議に乗ってやらないのか」と批判されていますが、そういう三党協議みたいな「密室談合」を止めろ!というのが、本来のマスコミの正しいスタンスです。ところがマスコミの“学力崩壊”も酷くて、一度、一方に振れるとずっとその論調で突っ走るという傾向があります。そういう意味で今は三党協議をやるべきではない。

中西:慣行という話とは全く別ですが、フロアの方から意見を伺いたいことがあります。先程の話に出ていた特例公債法案は、赤字国債をこれだけ発行できるということを認める法案ですが、昨年度の例で言うと、9月、10月までこれが通らなくても、結局のところそこまでは何とか資金繰りができました。しかし、これが通らなかったらどうなってしまうのか。

通らなかった場合、アメリカでは一部の行政機能のシャットダウンを実際にしてしまうことになります。これが日本で起こった場合、例えば不要な行政からシャットダウンされるのかもしれない。不要なサービスのところからシャットダウンされると、事業仕分けなどしないまでも、こうしたものが必要ないということが見えてくるということもあり得ると思います。ちょっと過激な意見ですが、この特例公債が通らなかったらどう思いますか? そして行政サービスが一部、シャットダウンされるということについて、どうお考えになりますか?

竹中:「“シャットダウン戦法”を取ったらどうだ?」という意見も確かにありますが、民主党政権側として、特例公債法案が通らない状況になり、脅しをかけてくるのがわかっているのであれば、予算編成の段階から自民党に共同編成を呼びかけるといった考えはないのでしょうか?

解散したからといって、ねじれが解消されるとは限らない(田村)

田村:予算は政府が作るわけですから、国会議員は最終的に政権与党として関わるものの、共同編成というのは物理的に無理だと思います。

いま“シャットダウン戦法”という言葉がありましたけれど、それは戦法ではなくて、やむを得ずそうなってしまうということです。去年も、私は最初からやむを得ないと思っていました。そこは野党側からすると、特例公債法案を止めることによって政府・民主党政権を追い込む、要は解散に追い込むということです。しかしそういう戦法を取って、それで解散したからといって、ねじれが解消されるとは限りません。

先ほどから平さんに民主党はケチョンケチョンに言われています。本題ではないので反論していないのですが、平さんみたいな人ばかりの自民党だったら素晴らしい政党だと思いますが、上にはいろいろ酷い人がたくさんいるわけで、どちらもいろいろ問題は抱えています。ただ、与党が国民の支持を失うと、メディアもまた散々与党を批判し、それに野党が乗じ、ついには行き詰る。特例国債がその典型だと思います。

しかし実際、政府の資金繰りが立ち行かなくなったとして、無駄なところを止めるといっても、そんな判別をすぐにはできません。元々無駄遣いをできるだけ削ろうとしているわけで、簡単ではないと思います。

竹中:党議拘束も散々、言われることですね。党議拘束とは、その政党に所属している人は政党の意思決定に従って国会で一致団結して投票するということですが、参議院は特に「良識の府」なのに、政党に所属している参議院議員が自分の政党の判断通りに動くから、本来は国民のためになるかもしれないような法案まで通らなくなってしまうことがあります。だから個人個人で是と思うのであれば、個人の良心に従って判断するようになれば、参議院でそんなに法案が通らないということはなくなるのではないでしょうか。これは1970年頃からずっと言われています。参議院議員の風間さんと中西さんにお伺いしたいのですが、党議拘束に捕らわれず行動するということはそんなに難しいですか?

風間:党によっても事情が違うと思いますが、例えば日本と同じ議員内閣制の国で、イギリスの場合、法案の種類ごとに3つぐらいのランクがあります。それは、絶対に議員個人の判断が許されない法案、ある程度であれば議員個人の判断が許される法案、比較的その判断は議員の自由に任される法案の3つぐらいに分かれていると聞いています。

日本の場合、これは自民党も民主党もそうですが、政策調査会の中に部門会議があって、まずその法案が出てくるときに、この部門会議ごとにその法案について議論し、審査する。そこで党所属の議員の意見は反映される。修正が必要な場合は、かなり強くその場で修正案が出される。そういうプロセスを党内で経てきています。いざ法案が国会に上程され採決された場合には、党内民主主義のプロセスからすると反対する議員は党議拘束違反だというのが、自民党と民主党の論理です。

ただ一方で先日、原発を海外に輸出するための原子力協定に関するものが国会に出ましたけれども、その時には我々の参議院でも10人程度の議員が造反して役職を解かれました。党議拘束については様々な見方ができると思いますが、お国柄というものなのか…。

竹中:中西さん、いかがですか?

中西:やはり参議院と衆議院の役割を見直さないといけません。今は同じような役割になってしまっています。衆議院で党議拘束すると、参議院でも党議拘束するという結論になってしまう。選挙制度も含めて変えていく必要があると思います。

「1票の格差」に違憲判決、ならば選挙制度改革が近道では?(竹中)

竹中:なぜこのねじれ国会のパネルディスカッションで選挙制度も一緒に話しているかというと、風間さんが最初に提起されたように、1994年に政治改革して、衆議院の選挙制度を中選挙区制度から現行の小選挙区比例代表制に変えたために2大政党制になっているわけです。この政治改革を行った時に、衆参両院の関係にどういう影響を与えるかというのは全く誰も考えていなかった。政治学者、ジャーナリスト、そして国会議員の方々も。みんな衆議院のほうで2大政党化が進むだろうなということは考えていたのですが、それが参議院にどう影響を及ぼすかというのは全く考えていなかった。そして蓋を開けてみると、参議院も2大政党制になった。ところが、選挙が別の時期に行われるので、野党第1党が参議院で最大の議席を取るという現象が起きて、ねじれがきつくなった。江戸の仇を長崎で討つと言うか、衆議院では野党だけれども参議院では多数派なので、政権をガンガン追い込んで次期総選挙に向かって有利にやろうということになります。それは民主党がやった戦略であり、今自民党がやろうとしていると思います。

参議院で2大政党制が進んでいるのは、参議院に1人区と2人区が多いからなのではないかという見方があります。だからそのねじれを解消する1つの策としてはもちろん、憲法規定を変えるというのはあるのですが、それはなかなか難しいので、参議院の選挙制度をちょっと見直すということが考えられます。折りしも、今衆議院でも参議院でも選挙制度改革が行われております。これは1票の格差が激しくて、衆議院の場合は1対2.4、参議院の場合は1対5ということになっている。違憲訴訟が相次ぎ、違憲判決も下されています。ならば、参議院の選挙制度を変えたらどうかという議論があるわけです。

各党とも案を出しています。民主党と自民党は現行のやり方を維持。それに対してみんなの党や公明党は、選挙区の単位をかなり大きくして中小政党が進出しやすいような選挙制度に改めるという提案をしています。衆議院議員の方はあまり参議院の選挙制度に口を出さないのですが、参議院の選挙制度を変えることについて、今の制度改革案について、各党の案が出ていることを踏まえて、皆さんのお考えを伺います。

中西:みんなの党の案は完全に投票価値を平等化しているので、1.42も容認しないで1.00になっています。どういう形でやるかというと、ブロック単位で投票するのですが集計は全国で行い、議席数を各党に配分します。そして地域ブロックごとに、各政党内での候補者票の多い順に当選者を決める形にして完全に1対1です。1対0.5も1対0.6も合理的な説明がつきません。「2倍以内だったら良い」という学説もありますが、それでも1票に対して0.5票ですから、ウチは必ず1票ということで参議院の選挙制度改革を出しています。

私はみんなの党代表として、参議院の選挙制度協議会に毎回、出ています。ところが私が主張している案は「それはそうだけどね」というような反応で、あまり議論するような雰囲気がないのが非常に残念です。それでもこれを言い続けます。

風間:1票の格差を是正するのは大命題なので、これはやらなければならない。一方で私はもう1つの命題があると思っています。それは統治を円滑にすることです。格差を是正した結果、ねじれが広くなったのでは国が成り立ちません。ですから、統治がより円滑になる方法・制度を両立できるように考える。

そういう意味では、おそらく全国比例区のみが最も格差の是正に繋がります。大政党は比較的、組織力があって、全国比例区でもわりと票を取れる。ただし、実際これを参議院の中で議論すると、凄まじいことになる。議員の皆さんは自分の身に関わる話なので、まさに意見が噴出します。その中で、採用可能な制度をどう追求していくかということだと思います。

竹中:田村さん、平さん、いかがですか?

田村:衆議院はあまり参議院に口を挟んではいけないらしいので、実際にどういう議論の状況かということはフォローしていません。もちろん情報を取ることはできても、隔絶されていて衆議院では一切議論が行われないので、民主党の中でも参議院議員だけが集まって議論しているわけです。別に衆議院議員も一緒に集まって議論する場があってもいいような気がしますが、個人的にはみんなの党、あるいは亡くなった西岡武夫前議長の案の方が優れていると思います。

平:1票の格差の問題はしっかりと対応しなければいけないので、それを解消する理屈からすれば、みんなの党の案になると思います。ところが、要はねじれとの関係からすれば、みんなの党の案は中小政党が議席を伸ばして、野党側が多くなるので、さらにねじれが進むということにもなるでしょう。また、自民党は現状を変更しないで何ができるかという視点で立っているから、そういう案になっていると思います。

竹中:それでは、このねじれをどう解消すればいいか。あるいはこの選挙制度改革に関してでもいいのですが、フロアの方からこれは注文しておきたい、自分はこう思うという意見、質問をお願いします。

田村:問題提起というより質問の延長で、衆議院の選挙制度改革の話になってしまうのですが、先日、ある同僚議員と話をしていて「公明党が言うような比例連用制でいいじゃないか」ということになったのです。

2大政党制というものは、ねじれてしまうと維持が難しい。イギリスは2大政党で、ドイツでは併用制でたくさん政党があって連立政権を作る。日本もそういうふうになったほうがいいのではないか。自民党も民主党も分裂していくだろうというのが前提にありますが、1つの面白い問題提起だと思います。

誰が反対しているから「ねじれ」を解消できないのか?(会場)

会場2:ネット選挙解禁議論の時もそうだったのですが、衆参ともに、与野党ともに、現状の制度は変えないといけないという点で概ね方向性は合意されているようです。ネット選挙の時も「解禁してもいいじゃないか」という話で、ほとんど衆参も与野党も合意されていたにも関わらず、なかなか進まないですね。

そこで端的に伺いますが、誰が反対しているからねじれ国会解消が進まないのか、どういうボタンの押し方が現実論としてあり得るのか、この場のフロア側でご協力できることがあればお知らせいただきたいと思います。

風間:誰が反対したのかということにお答えします。これは時の野党が反対せざるを得ないというのが、システムにビルトインされてしまっているのです。この国には選挙が多すぎる。2000年から2010年までの11年間で国政選挙を7回もやっています。野党はその選挙で勝たなければいけない。そのためには与党に反対せざるを得ない。今自民党で起きていることです。つまり与党の足を引っ張る。これがシステムにビルトインされています。システムそのものを変えないと、一歩前進にはなりません。

もう1点。日本人の頭の中には、憲法改正は難しいという思考が染みついているようですが、実際にはそうではありません。国民と話せばわかります。国民は必要があれば変えてもいいと考えています。リーダーが提案して、具体的に変えるプロセスを明示すれば私は変わると思います。そのリーダーとは総理です。

平:憲法改正についてはハードルが高いのですが、自民党のマニフェストを見ていただくと1ページ目の一番上に常に憲法改正を載せています。そもそも憲法改正をするために作った政党でもあるので、それはしっかり諦めずに訴えていきます。

もう1つは、去年の1月に発表しましたが、国会改革を目指す若手の超党派勉強会があって、党議拘束の緩和とか、党首討論の毎週開催とか、事前通告の充実や公開とか、いろいろ議論しています。これにはみんなの党、民主党、自民党の若手が入って、「このままの足の引っ張り合いでは国会が回らない」という共通認識を持っています。お互いにやったりやられたりの繰り返しなので、「そろそろ合理的なルールを作りましょう」ということで提言をまとめました。私のホームページにおそらくまだ載っていると思います。そういう時に発信のお手伝いをいただければ大変助かります。

中西:選挙制度改革に絞ると、世論の盛り上がりがどうしても必要だと思います。小選挙区制にした時も世論が相当盛り上がりました。政権交代が可能な制度にすることを多くの人が臨んだのです。我々が言っている1人1票ということについても、1人0.2票しか行使できていない人たちが一番損をしているわけですから、マスコミを含めてその辺りの議論を盛り上げてもらいたい。そうすれば、党も動かざるを得ない。大きな政党も動かざるを得ないということになる。

田村:野党が与党を解散に追い詰めるというスタンスですが、与党は追い詰められてもなかなか解散はしない。それはある意味当然で、追い詰められた時に解散したら政権を取られてしまうのですから。

自民党政権時代も、民主党は解散に追い詰めることはなかなかできませんでした。ですから本当に政権交代が可能な2大政党になると、基本的に解散時期はかなり任期満了まで近づいてくると思います。野党が解散に追い詰めるというのは当たり前なのですが、メディアにしても解散に追い詰める論調がかなりあって、野党はますますそういうモードになり、ねじれているから一切賛成しないということになるわけです。任期満了近くまでは解散がないという空気になってくると、変わってくる可能性があると思います。解散に追い詰めるぞというスタンスではなくなれば、野党がもっと賛成してくれることが出てくるということです。

竹中:ありがとうございました。ほかにいかがですか?

両院協議会の人選ルールの変更で衆院優越を実現できないか?(会場)

会場3:先程の話に出ていた両院協議会。10人ずつが集まるセレモニーになっているとおっしゃいましたが、そこの人選のルールを変えるとかして機能させることで、実質的な衆院の優越を実現してしまうという可能性はありませんか?

平:やってできないことはないと思います。与野党が「それで決めてやろうよ」となればできるんだと思います。

会場3:自民党からすれば、それをやってしまうとストッパーが外れてしまうので嫌なのでしょうが、数年経てば、政権交代可能な2大政党制に近づくとすれば、そこで合意するというのは1つの戦略なのではないかと思うのですが。

平:執行部にセンスがあれば…。今が良いタイミングだと思います。

竹中:ありがとうございました。

会場1:大変面白い議論を伺いました。党議拘束の話は大事なポイントだと思います。日本の政治全体を見ていると、現象論と対症療法的な話は出てくるのですが、そもそも間接民主主義とはどういうものであるのかという原理的な考察が少ないように思います。ねじれということを原理的考察からアプローチすると党議拘束が本質だと思います。各議員が自分の良心に従って投票するという原理に基づいて考えないと、単純な数合わせとか技術的な選挙制度改革の問題になってしまうと思います。

僕は今ツイートしながら反応を見ていたのですが、国民は政治家が語る言葉が本質論から外れて枝葉末節の技術論に走っていると強く感じていると思いますよ。僕も議員会館によく出入りしますが、永田町辺りを支配している独特の雰囲気ってあるじゃないですか。

議員の集会に行くと、ネットなど全く知らないような変なおじさん、おばさんが来ている。ああいう古い支持者と喋っていると、政治を語る言葉自体が何かアップデートされないというか、永田町の言葉はおそらく30〜40年遅れていると思うのです。なぜそうなっているのかというのは、そもそも政治は何のためあるのかという原理的考察が欠けているからだと思います。大きな危機感を持っています。

日本の政治家は何に忙しいのか?(会場)

会場4:私は27歳で、ここに来るにあたって政治に興味があって志すような周りの若者に「どういったことを知りたいのか」と話を聞いてみました。まず一番知りたいと言っていたのが、政治家の方たちが普段、何に時間を使って、何にエネルギーを使って、どういう生活をしているのか、ということです。例えば、国会の準備とか、政策立案とか、地元に帰って選挙対策とか、冠婚葬祭とか、いろんなことをやりながら後継者育成もやらなければならない。私は普段、国際社会に日本を発信していくという仕事をしていますが、「日本の政治家は何に忙しいのだ」とよく聞かれます。その辺りが全く見えてこない。永田町があまりにも透明性のない、主観的には意味のわからない存在に見えている。これは非常にもったいないことだと思うのですが、いかがでしょうか?

中西:マスコミが国会の審議、実態を報道してくれていないというストレスを、私は感じています。一方で、例えばいわゆるラリーをやろうとすると、実際のところなかなか若い方が集まらない。そういった点も、知恵を出して改善していく必要があると思います。

平:20代で政治を志す、社会を何とかしなきゃいかんと思っている人が、政治家は何をやっているかよくわからんと言う…?。取りに行けば情報は取れます。だから、まずは自分で取りに行ってください、それで終わりですよ。

竹中:「待っているな」ということですね。この二院制の問題は1時間15分では足りませんね。慣行や法律をどう変えていくのか、憲法改正するためにはどうしたらいいのか、論点は既に出尽くしていますが、なかなか進まない。そしてどんなことをやるにしても、参議院の権限を縮小させる方向に行くということですね。参議院議員の方々には非常に強い抵抗があります。両院協議会にしても改革論というのは、結局、参議院の発言権を弱めて衆議院の意見が通りやすいような形にするという話なのでなかなか進まないということが根っこにあります。しかし、考えていかなくてはならない。今日のセッションがさらに議論を深めるきっかけになれば良いと思います。パネリストの方々にもう一度拍手をお願いします。(会場拍手)

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