ビールで健康&キレイになれる?キリン対サントリーの戦い 

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6月から変わる?ビールテイスト飲料の戦い

コンビニの棚を見ると、かなり「ビールテイスト飲料」がスペースを取っていることに気がつく。アルコール離れ・ビール離れといわれる昨今、この「酒ではないビール風味の飲み物」にビール各社がいかに期待を寄せているかがうかがい知れる。

そんなビールテイスト飲料のカテゴリーにおいて、6月下旬に新たな変化が起きる。「飲むとカラダにいい・キレイになれるビールテイスト飲料」とでもいうものが発売開始されるからだ。その商品を上市するキリンとサントリーにフォーカスを当ててビールテイスト飲料市場を見てみよう。

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ビールテイスト飲料市場の成り立ち

そもそも今日のビールテイスト飲料の先駆けとなったのは、キリンの「フリー」である。2007年の道路交通法改正による飲酒運転厳罰化を受けて、それまでビール各社や輸入品の「ノンアルコール」の基準であったアルコール0.5%を、運転にも支障が出ないよう、限りなく0%に近く(0.00%)したのだ。ドライバーの顕在的なニーズだけでなく、当初予想していなかった病人・妊婦などの潜在ユーザーのニーズも発掘し、初年度63万ケースを予想していたところ、400万ケースの販売に達した。2009年のことであった。

次に市場に登場したのは、サントリーの「オールフリー」だ。キリンの「フリー」が、「ビールを飲みたいけれど、飲めないときの代替飲料」としての位置づけであったのに対し、サントリーは「ビールを飲まないシーンでも、ビールを飲まない人でも飲みたくなる」という、ビールの代替という枠を外したコンセプトで「オールフリー」を世に送り出した。そのため、パッケージもおよそビール的でないシンプルなデザインに仕上げられており、例えば女性が友達と休日のランチ会で飲んでいたり、自宅のキッチンで家事の合間に一息ついて飲んでいたりしても不自然さがない。また、「3つのゼロ」として、アルコール・カロリー・糖質ゼロを実現してカロリーや糖質を忌避する人も取り込んでいる。ターゲットを広げ、飲用シーンを広げた「オールフリー」は、2010年の発売翌年から一気にビールテイスト飲料のシェアNo. 1を奪取し、2014年は740万ケースを販売し、連続4年間王座を譲っていない。

キリンのあたためてきた「カラダにいい」機能性

さて、冒頭で述べた6月下旬に発売される「飲むとカラダにいいビールテイスト飲料」だが、実はキリン「フリー」とサントリー「オールフリー」の各々の派生商品として上市される。

キリンが発売するのは、「パーフェクトフリー」。「脂肪の吸収を抑える」「糖の吸収をおだやかにする」というダブルの機能を持つ難消化性デキストリンを配合したというのがポイントだ。4月1日施行の機能性表示食品制度にも対応し、届け出・受理されている。同制度によって今後ますます、消費者の機能性食品に対する関心は高まっていくと思われるが、それに先鞭をつけた形である。

しかし、実は「カラダにいいビールテイスト飲料」ならキリンは「フリー」発売の翌年に「休む日のAlc.0.00%」という商品を上市している。ターゲットとポジショニングは40歳代から50歳代の男性に向けた休肝日向けのアルコールテイスト飲料だ。商品の特徴は、肝臓の働きを保ち飲酒によるアルコール性疲労を防ぐことが期待される成分「オルニチン」が配合されていること。1缶あたり400mg(シジミ900個分)と、よくあるテレビ通販のサプリ並みの量が投入されている。「休む日のAlc.0.00%」は発売以来年間40万ケースと安定してニッチな売り上げを確保しているようだ。

しかし、「パーフェクトフリー」は飲み過ぎが心配な中年男性の休肝日向けのニッチ商品ではない。注目すべきは「難消化性デキストリン」という成分だ。これはグループ会社であるキリンビバレッジの大ヒット商品「メッツコーラ」に配合されていたものと同じで、食事と同時に飲用すれば脂肪吸収が抑えられる=メタボ防止が期待できる成分だ。食事の時、温かいお茶や冷たい烏龍茶などを飲んでビールを飲まない人も、これなら飲んでみる理由がある。つまり、今までは「ビールを飲みたいけど飲めない」場合の代替として存在していたキリン「フリー」の弱点が、普段ビールを飲まない人が飲むというターゲット拡張によって克服されるのだ。

サントリーは「キレイになれる」で勝負?

一方のサントリーはコラーゲン2,000mg入りの「オールフリー コラーゲン」を発売する。コラーゲンは今までにも様々な商品に各社が投入してきたが、サントリーはビールテイスト飲料に入れてきた。その狙いとして「女性を中心としたより多くのお客様にノンアルコールビールテイスト飲料の魅力を知っていただき、新たな需要を創造します」「華やかでフルーティな香りを実現し、お風呂上りや週末のごほうびにぴったりの中味に仕上げました」と言っている。サントリーの戦略はターゲットとして女性層を拡大しつつ、従来通り「ビールを飲まないシーンでも、ビールを飲まない人でも飲みたくなる」というポジションを取っているのだ。

フレームワークで考えるビールテイスト飲料市場の変化

一連のビールテイスト飲料市場の動きをフレームワークで整理してみよう。まずは、ビールテイスト飲料という商品にはどんな価値があるのかだ。フィリップ・コトラーの考案したフレームワークで「製品特性分析」というものがある。製品の持つ価値を3つの階層に分解して、その意味合いを明確化するモデルだ。

・中核=その製品を手に入れることで実現される中心的な便益(ベネフィット)
・実体=中核を実現する上で欠かすことのできない要素
・付随機能=中核の実現には直接影響を及ぼさないが、存在することで魅力を増す要素

上記をビールテイスト飲料に当てはめて考えれば、中核は「いつでも・どこでも安心してビール味が楽しめる(アルコールが0)」だ。実体は「よりおいしい味わい・カロリー0&糖質0(カラダに悪くない)」だ。そして、付随機能は「カラダにいい(健康になる):オルニチン=肝臓にいい・難消化性デキストリン=肥満抑制、キレイになる:コラーゲン」という具合だろう。

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さらに上記の製品特性分析は、普及論で有名なE. M. ロジャースの「普及曲線」と一緒に考えるとより意味合いがわかりやすい。市場の普及は導入期→成長期→成熟期→衰退期という流れを経る。その中で、導入期において求められるのは、まずは中核的便益だ。ビールテイスト飲料に関していえば、まずはビール味をアルコール0で安心して飲めることが中核的な便益として求められた。しかし、キリン「フリー」の爆発的ヒットとサントリーをはじめとした競合の登場で翌年には早くも市場は成長期入りした。そこでは、味やカラダに悪くないことが求められた。そして今、キリンもサントリーも付随機能的な要素を訴求する商品を投入してきたということは、市場の拡大と共に成熟期に入ったことがわかる。

今後のビールテイスト飲料市場の戦いの行方

今回はキリンとサントリーにフォーカスを当ててビールテイスト飲料市場を見てきた。しかし、上記の通り成熟期に入ったということは、アサヒもサッポロも付随機能に注力した商品を投入してくることが十分予想される。

アサヒに関しては、スーパードライのユーザーに対して飲めないときの代替としての「ドライゼロ」を展開している。スーパードライにいかに近いかが重要であるため、付随機能は加えにくいかもしれないが、いずれは別ブランドででも展開してくるだろう。それよりも先に、ビールテイスト飲料市場では低シェアに甘んじているサッポロが先に展開してくるかもしれない。いずれにしても、付随機能的な要素はどんなターゲットに対してどんな価値を提供するかの設計がキモとなる。その巧拙で今後の戦いの様相は大きく変わってくるだろう。

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