“狭く濃い”サービスで心をつかめ!ズムスタで学ぶ顧客満足度のカギ 

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※2013/10/24にNumberWebに掲載された内容をGLOBIS知見録の読者向けに再掲載したものです。

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楽天イーグルスの本拠地Kスタは、収容人数約25000人とかなり小さい球場であるが、より多くの観客に足を運んでもらえるよう様々な企画チケットを提供し、ファン獲得に積極的に取り組んでいるチームの1つである。
楽天についてはこのコラムでもとり上げてきたが、座席設定で面白い工夫をしている他球団の例としては、広島カープがある。

広島カープの本拠地MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島では、団体・家族向け特別席が充実していることをご存じだろうか。小さな子供連れでも安心して観戦できるようテーブル付の座席「コカ・コーラ テラスシート」「ゲートブリッジ」「ファミリーテラス」が設置されていたり、畳の座席でくつろげる「鯉桟敷」、そして、パーティー用のスペースや、バーベキューができる「エバラ黄金の味 びっくりテラス」など、野球を楽しみながら家族・友人との団欒を楽しみたい人にふさわしい座席が用意されている。

顧客と従業員の満足度向上が相乗効果をうむ

さて、楽天イーグルスやロッテマリーンズ、そして広島カープのように、従来の野球ファンのほかに、家族や友人の交流の場としてのスタジアム観戦をアピールする球団が増えている。このコラムではターゲット顧客を明確に定めることの重要性を書いてきた。ターゲットの選定は、従業員が「お客様すべてではなく、どのような顧客を満足させればよいか」を明確に意識することを可能にするため効果的なサービス提供につながる。さらに、サービスの現場では、顧客と顧客のインターラクションが発生しこれが顧客満足度にも影響するため、顧客をターゲティングすることはますます重要になる。

実は、このターゲット顧客を選定することにはもう1つ重要な側面がある。それは、従業員満足度を上げることにある。

顧客と従業員が直接接することの多い環境では、顧客の満足が従業員の満足に「ミラー(鏡面)効果」をもたらし、さらに満足した従業員は顧客の満足に影響を与えるという作用が働く。これを「サティスファクション・ミラー効果」という。

ターゲットを絞ることが満足度向上のカギ

誰が、いつ、どこで、誰に提供するかによって、その都度提供されるサービスの内容が変わってしまう可能性があるため、どの従業員も一定レベルのパフォーマンスを発揮できるような仕組みが重要なのだが、それに影響を与える1つの要素が、サティスファクション・ミラーの作用である。

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このサティスファクション・ミラーで重要なことは、すべての人を喜ばすという視点に立つのではなく、しっかりターゲット顧客を選ぶこと。すべての顧客を喜ばす方針では、顧客ニーズの把握や対応方法にさらに詳しくなることは難しいからだ。

この点に関し、前述のMAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島をはじめとした「ファミリー向け」の取り組みは、「球場に足を運びたい人全員」を相手にしているのではなく、ファミリーを満足させるということに集中している。従業員にそのニーズ対応方法を熟練させることができ、そのサービスレベルに満足したファミリーがまた足を運んだり、さらなる真摯なフィードバックをかけたりすることで、さらに提供するサービスの質が上がる。このサイクルにより観客満足度もあがり、従業員満足度も高くなる。さらに満足度の高いスタッフは自らのサービス提供の生産性を上げる。生産性が上がるとコストが低下し、観客は価格メリットなどを受けやすくなると考えることができる。

日本の球団の中には、このようにマネジメント上で重要なターゲット顧客を明確に選ぼうとしている球団が増えてきているように思う。これこそサービスマネジメントの視点から成功確率を上げる方法の1つなので、このような取り組みが加速していることは、スポーツ界の発展にも大きな影響を与えることになるのではないかと、筆者も期待している。

企業、従業員、顧客。3者の距離感をつかむ

そしてもう1つ。

ミラー効果が出てくる過程で、従業員と顧客の関係もより密接になる。両者が深い信頼に支えられたリレーションを作り上げると、スタッフが離職する際に、同時に顧客もそのスタッフと共に移動してしまうことが起こる。企業は、そのスタッフと顧客両方とのリレーションのバランスをとる必要があるとだけ付け加えておきたい。

特に、サービス企業と従業員の関係が疎遠になりすぎると、従業員の離職が起こり顧客がその従業員の一緒に離れる可能性が高くなるだけでなく、新たな人材の採用や育成にも費用がかかる。一方、親密になる過ぎると、従業員の離職率が低くなるため、雇用費用などがかかる。(以上、参考『サービス・マーケティング入門』)。

この3者のバランスをどう保つのか、その点についても考えておくべきであろう。

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<今回のポイント>
◆ターゲット顧客をしっかりと選ぶことは、結果的に従業員満足度向上にも寄与する。そして満足度の高い従業員は結果的に顧客満足度に貢献する。
◆CS(顧客満足度)とES(従業員満足度)は密接な関係があるが、一方で「サービス企業」「従業員」「顧客」の適切なバランスを保つことが必要である。

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