楽天の年間チケット収入はいくら?身近な知識でビジネス規模を掴む 

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※2012/10/23にNumberWebに掲載された内容をGLOBIS知見録の読者向けに再掲載したものです。

 

日本一の座をかけてぶつかるプロ野球日本シリーズ。両チームの戦力や戦略の分析を楽しんでいる読者も多いのではないだろうか。一方で、戦いを終えたチームのファンは、来季への戦力強化について、思いを巡らせているかも知れない。

チームを強化するために必要なことは、有力な選手の獲得だけではない。「戦力」を確保するためには財源が必要となってくるが、各球団の売上はどれくらいの規模か想像がつくだろうか。

楽天のチケット収入は数十億? 数百億?

実際の値を知っている場合はいいのだが、売上規模についての数字が手元にない場合もある。今回は、そのようなときでも、根拠をできるだけ論理的に押さえながら概算をだす方法について考えてみたい。

日本のプロ野球の球団の収入にはチケット収入、広告・スポンサー収入、放映権収入などがある。今回は、その中でも多くを占めるチケット収入(年間)の規模を考えていきたい。

その規模は、数億円規模なのか、数十億円規模なのか、はたまた数百億円規模なのか。

今回は、楽天のチケット収入を予測してみよう。

予測をする際にまず重要なことは、チケット収入総額をひと固まりのものと見ていきなり当てに走るのではなく、チケット収入というのはどのような数字の掛け算(もしくは足し算)で書き表すことができるかを考えることである。

大まかに考えると、以下のような計算式が1例として挙げられよう。

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よって、チケット収入総額は以下のように整理できる。

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ここまで来ると、野球をよく観戦する読者は、それぞれの白色ボックスの数字の大体の予測が立ち始めるのではないだろうか。
それでは白いボックスのそれぞれの数値を個別に予測していこう。

スタジアムの収容人数は、日々のニュースで流れる観客数報告などをきいていると、30,000~45,000くらいではないだろうか。楽天の専用球場であるKスタ宮城は小さい球場なので、25,000くらいと仮定する。

座席稼働率については、球場での観戦、TV観戦をしながら、平均的にどれくらい席が埋まっている感覚を持つだろうか。もちろん球団により差があるが、ここでは筆者の感覚で平均60%~70%という数値をおいてみたい。TV中継に映る座席はかなりの確率で埋まっているが、球場全体を見渡してこれくらいだと仮置きした。

さらに年間ホームゲーム数は72試合。そしてチケット平均価格は2,500~3,000円といったところであろうか。
これらの数字を上記の数式に当てはめてみる。

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この数式から導かれる、チケット収入総額は、約32.2億円となる。
実際には、どのくらいチケット収入があったのか。

ビジネス規模を把握する「フェルミ推定」

2011年の楽天のチケット収入は約29億円(朝日新聞朝刊 2011/11/13)であったようである。

若干の誤差は生じるが、大まかには、日頃の野球ファンとしての感覚を使い、球団のチケット収入の概算がわかる。ちなみに、2011年の楽天の売上高は約88億円で、広告・スポンサー収入と放映権収入がそれぞれ約28億円、約7億円となっている(同)。

この概算を求める方法を「フェルミ推定」と呼ぶ。ビジネスの規模について実数値を把握していない際に、その規模を大まかに把握することに使用できる。したがって、自身の考えているビジネスの規模を定量的に把握をすることに非常に役に立つ。この方法では、各ボックスに入れる数値の変動によって全体の数値に誤差が生じる(上記で使った数値も実際のモノとは異なる。例えばKスタの収容人数は約23,000人である)。この誤差を縮めるには日頃から様々な規模感に注目しておく必要があろう。読者も観戦を楽しみながらも、一方でこのような数字に注目すると面白いかもしれない。

さて、ここまでみてきたようにフェルミ推定を行うときには、求めたい数値(青のボックス)を「分解(白のボックス)」して考える。推定するのに使うだけではもったいない。実はこのような方法で数値を捉えるさらなるメリットがあるのである。

売上やコストをこのように分解しておくと、現在どの数値(ボックス)が問題になっているのか、また数値を上げる(下げる)ことが必要なのはどこかということがよく理解できる。つまり、売上や収益を考える際に、どの要因がレバー(スイッチ)になるのかということを判断するのにも役立つのである。

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楽天はどうすればチケット収入が上がるのか

楽天がチケット収入を上げるためには、4つの白いボックスのどの数値を上げることに注力するのか。

例えば、収容座席数を上げるという方法は、仙台という土地柄難しい。座席数は多くせずに、1座席の価値を上げるなどしてチケット単価を上げることに注力したほうがよいのではないか、ということになる(参考:工藤健策「プロ野球 球団フロントの戦い」)。

野球ファンの聖地「フェンウェイパーク」を本拠地とするボストン・レッドソックスも、座席数を増やすことに注力せず、「手に入りにくいチケット=希少性=高価格」というロジックでチケットの価格を上げるようにしているという。その結果2008年のチケット平均価格は大リーグ球団で最も高い48.80ドル(高額シートを除く)、前年対比で10%のアップとなっている(岡田功『メジャーリーグ なぜ「儲かる」』)。

定量的視点でみるということは、規模や売上・収益を計算することだけにとどまらず、その計算の過程で考慮している数値の「構成要素」のどこに注力してどのような「戦略」を描き戦術(アクションプラン)をとるのかということにまで示唆をあたえてくれるものとなるのである。

数値的感覚をもって語ることはビジネスパーソンに不可欠

このようにある程度の数値的な感覚をもってビジネスを語ることはビジネスパーソンにとって欠かせない能力の1つであろう。どんなにビジネスコンセプトがよくても、そのビジネスがどれほどの規模になり、かつどれほどの利益を生み出す予測が立つのか、そしてビジネスの中でどの要素のレバー(スイッチ)を押す方向性を考えているのかを語れなければ理想論に終わってしまうからである(もちろん収益性を語るには、コストの計算も必要であることはいうまでもない)。

このようなものの考え方は、様々な企業の面接に組み込まれることも多く(筆者も、以前このような問題をある企業の入社面接で出されたことがある)ビジネスの基本的な考え方としてとらえられている。

今回ご紹介した内容が、素晴らしいビジネスコンセプトを作るために必要な数字に強くなるためのヒントとなれば嬉しい。

<今回のポイント>
◆ビジネスを考える際には、定性的な分析やプランニングだけではなく、定量的な視点も必要となる
◆手元にデータがない数値の概算を求める場合には、求めたい数値を構成する要素に分解して考える
◆分解して考えることは、数値を予測するためだけではなく、どの数値に問題が生じているか、どの数値の改善を求めていくのかを考えることにも使える
◆予測の精度を上げるために、日頃から様々な規模に目を向けておく必要がある

 

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