そこで頑張ることに意味あるの? -チキンゲーム 

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問題です

以下のAさんの問題は何か。

とあるサウナにて。

「Bと、どちらが長くサウナの中に入っていられるか、ビールを賭けて、ほぼ同じタイミングで入ったのだが、Bのやつ粘るな。こちらはそろそろ疲れてきた。しかし、今出てしまったら、しばらくはBに『根性無し』とかいろいろ言われそうだし癪(しゃく)に障る。もう少しこちらも頑張らないと・・・。それにしても暑いな。いい加減、Bのやつ、降参しないかな。うーん、まだ涼しい顔してやがる。くそー。もう少し粘るか。でもなんだか、ぼーっとしてきた感じだ・・・」

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解答です

今回の落とし穴は、「チキンゲーム」です。「弱虫ゲーム」などと呼ぶこともあります。さっさとその勝負から降りてしまった方が、失う(あるいは得られる)利得を考えればはるかに得であるにもかかわらず、つまらない見栄や意地にこだわって、時として悲劇的な結果を招くことがある状況を指します。

チキンゲームの典型は、映画でもお馴染みの次のようなシーンです。2人のバイクに乗った人間が、崖、もしくは壁に向かって疾走する。なるべく崖や壁に近いところまでブレーキを我慢できた方が勝ち(言いかえれば、先にブレーキをかけた方が負け)、というものです。

勝った方は、「臆病ではない」「根性がある」という名誉を仲間内で得ることができますが、一歩間違えれば、極めて悲劇的な結果を招くことは言うまでもありません。

今回のケースでは、ビールとちょっとした名誉をかけてサウナの我慢競争をしています。ビールはまだしも、もしこの賭けそのものが、2人しか知らないものだとしたら、名誉や不名誉は最初からたいしたものではありません。仮に勝ったとしても、そこで得られるものは微々たるものですし、負けたところで、どうというものでもないのです。

それにもかかわらず、Aさんは、意識が朦朧としてきたというのに、まだサウナを出る気はないようです。下手をすると、死にまでは至らないかもしれませんが、脱水症状で大変な騒ぎになりかねません。自身の体にかけている無理の大きさと、仮に勝ったとしてそこで得られるものとのバランスが著しく不均衡になっているのです。

このチキンゲームの構造は、ゲーム理論のテーブル図を用いて以下のように模式化できます。縦軸がAさんの選択肢、横軸がBさんの選択肢です。テーブル中の数字は、それぞれのパターンで得られる両者の利得を数値に置き換えたものです(左がAさん、右がBさん)。

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たとえば、両者が、「こんな馬鹿馬鹿しいことはさっさと止めよう」と協調してこのゲームを止めてしまえば、ビールは確かに誰も得られませんが、どちらも傷つきません(左上)。それに対して、協調せずに勝負を続け、片方が我慢して片方が降りてしまえば、勝負はつきます。ただし、その勝負で得られる(失う)利得はたかが知れています(右上あるいは左下)。

最悪のケースは、テーブルの右下、すなわち両者が突っ張りあって、2人とも倒れてしまうというケースです(実際には、両者が我慢して、先にどちらかが倒れてしまうというパターンもありますが、ここでは話を簡単にするために、そのケースは捨象しています)。バイクの例で言えば、両者が崖や壁に突っ込んでしまうケースです。

こうしたチキンゲームは、不良の抗争だけではなく、ビジネスでもしばしばおこります。「ライバルより先にこの事業を閉じてしまうのはみっともない」、「相手が撤退するまでは意地でも事業を続ける」といったケースです。

人間はメンツを重んじる動物ですから、往々にして、合理的に考えた場合の利得よりも、目の前のメンツが大事に見えてしまうものです。しかし、こうした意思決定が賢明でないことは落ち着いて考えれば、すぐに分かることでしょう。目の前のちっぽけなメンツと、最終的に得られる可能性のあるリターンを、冷静に見極めることが、ビジネスリーダーには必須なのです。

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