それはやはり予想された事実?——確証バイアス 

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問題です

以下のA氏の考え方の問題点は何か。

「Z大学出身のやつらは、確かに頭は良いが、新しいことを試してみる勇気がない。最近、部下として配属されたB君もそんな感じだ。業務処理能力は高いが、あまりイノベーティブな意見はない。今日も、出してきたアイデアは、悪くはないが、いかにも優等生的な発想だ。先日の会議でも、やはり改善型の意見が多かった記憶があるなあ…」

B君はこう考えていた。

「どうも上司のAさんには、ステレオタイプな印象を持たれている気がするなあ。何が問題なんだろう?けっこう、大胆なアイデアは出しているつもりなのだが、いま一つ評価されていない気がする…」

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解答です

今回の落とし穴は、「確証バイアス」です。これは、いったん、ある思い込みがあると、それを支持するような情報ばかりが目につき、ますます当初の思い込みを強化してしまうというバイアスです。多くの人間にとって、最もありがちで普遍的なバイアスと言えるでしょう。確証バイアスは、言い換えると、人間には、自分の考えを変えたくない傾向がある証左とも言えます。

確証バイアスでも、最も多くの人間にとってありがちで、かつ注意が必要なのは、「カテゴリーに対するレッテル張り」、つまりステレオタイピングです。ケースで示した「Z大学出身者は…」というバイアスもこれに属します。皆さんも、普段意識しない(したくない)かもしれませんが、「△△国民は…」「これだから○○世代は…」「やはり男性(女性)は…」「文系(理系)の人間って…」というステレオタイピングを大なり小なり持っているはずです。こうした考え方は、ある意味で意思決定などを加速しますが、意思決定の質を落としてしまう可能性があることは容易に想像がつくでしょう。

そして、いったんあるステレオタイピングが生まれると、そのステレオタイプを強化する情報にばかり目が行き、その逆の情報は軽く見るようになります。今回のケースで言えば、Z大学に何かしらの屈折した感情がある人であれば、ますますその傾向は強くなるでしょう。もしZ大学出身者が何かステレオタイプに適った行動をとれば、「やはりZ大学出身者は…」となりますし、その逆の行動はほとんど目に入らない可能性が高くなります。仮に目に入ったとしても、意識的/無意識的にその情報を軽く見ようとします。A氏にも、そうした傾向が見て取れます。

確証バイアスがビジネスで大きな意味を持つ別のシーンとしては、成功に対する思い込みがあります。ある新規事業などで、「これは絶対にうまくいく!」と思い込んでしまうと、GOの指示を得るために都合のいい情報ばかりを集めてしまうというものです。

本来であれば、3C分析なり、将来キャッシュフローの分析なり、客観的かつ冷静な分析や前提に基づいて新規事業の是非を判断しなくてはいけないのですが、思い入れが強くなると、都合の良い情報しか見えなくなってしまうのです。しかも、最近は検索ツールが充実していますから、世の中にある有象無象の情報の中から、自分に都合の良い情報だけを取り出し、それなりに納得のいく資料を作成することが決して難しくはありません。

私はクラスなどでもよくこう言っています。「いまの時代、その気になれば、ある人間を聖人君子のようにみせるデータだけを集めることもできれば、逆に、極悪非道の人間に見せるデータを集めることもできる」。

このバイアスは人間心理の最も深い部分に根ざしているため、脱するのはなかなか難しいのですが、まずは、信頼できる知人の意見などを虚心坦懐に聞き、「本当に自分の世界観が世の中の世界観と一致しているか」を改めて問うことが有効です。そのためにも、サウンディングボードとなる知人をバランスよく持っておくことが重要です。特に、新規事業の提案などでは、遠慮して痛い部分を突っ込んでくれない「良い人」よりも、ピュアな視点からさまざまなアドバイスをくれる知人を、社内のみならず、社外にもたくさん持っておきたいものです。

また、何かの折に、自分自身の嗜好の癖を相対化して見る時間を設けることも有効でしょう。「自分の考え方に癖はないか?」という自問をしておくことは、癖の完全な修正とまではいかなくとも、それを意識するだけで、最終的な意思決定の質は上がるものです。

また、あえて自分と反対の意見の書籍を読むなども有効です。書籍はそれなりに読むのに時間がかかりますから、その間に、「そういう思考回路でこの著者はこういう主張をするのか?」などを考えながら読むことで、新しい物の見方に触れ、嗜好の癖を修正するのに役立つことがあります。通常の人は、自分の読みたい本しか読みませんが、それは結局「確証バイアス」を強化するだけになってしまうのです。「あえて」自分と異なる意見に強制的に触れ、考えてみることが肝要です。

ところで、確証バイアスが顔を覗かせる他のシーンとして、「自己認識」があります。つまり、いったん「自分はこういう人間なんだ」と思いこむと、それに合致した情報や経験を重く見て、ますます自己認識を強めてしまうのです。良い自己認識ならばまだしも、自分に否定的な感情を持つ人間にとって、これは望ましいことではありません。ぜひ、ネガティブではなくポジティブな自己像を思い描き、それを強化するようなスパイラルを回したいものです。

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