長寿企業が重視するCCV経営とは? 

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この10年から20年ほどの間に、CSR(Corporate Social Responsibility、企業の社会的責任)が、世の中で問われるようになってきました。日本においては、法令遵守や環境対策の文脈において語られることが多いものです。長寿企業も、当然のことながらCSRを意識していますが、今回の私たちの調査によって、実はそれをさらに超えた経営を行っていることが明らかになりました。私達は、それをCCV経営(Community Co-existence Value、コミュニティ共存価値を重視する経営)と名付けました。長寿企業は、その存在自体が所属コミュニティの価値となっています。すなわち、コミュニティの価値と企業の価値が、表裏一体のように完全に張り付いているのです。

例えば、京都の伏見において何百年も経営を続けている月桂冠は、場所を提供してくれている伏見に対して、深い感謝の念を抱いています。そのために歴代の社長は、地域や業界において、80を超える公職に就いてきています。他にも、地元に消防署を寄付したり、病院を寄付したり、奨学金を設置したりと、地域に対する恩返しを常に考えているのです。月桂冠は、そこに存在していることによって雇用を生み出しています。収益が上がれば、納める税金の額も増えます。月桂冠の関連施設そのものが伏見の街並みを形作っています。伏見において月桂冠は、なくてはならない存在になっているのです。企業が地域のために、あるいは、地域が企業のために、といった一方向性ではなく、両者は完全に一体となっている――。これこそが、私たちがCCV経営と呼ぶものです。

グローバル経営に必要なのはコミュニティと共存価値を作る努力

以上を念頭に置きつつ、グローバル経営に目を向けてみましょう。日本の会社はこれまで、東南アジアや中国に工場を作ってきました。単に「労働コストが安いから」「もし駄目だったら帰ってこよう」といったスタンスで進出した場合、地域からの尊敬を得ることはできるでしょうか。そうした会社に、地域の優秀な人がどれだけ就職してくれるでしょうか。実は真のグローバル化とは、進出先におけるCCV、すなわちコミュニティと共存価値を生んでいくような関係を作る努力をすることなのかもしれません。

実際、数年前にタイで大洪水があった直後、トヨタ自動車の豊田章男社長はタイへ赴き、「我々はどんなことがあってもこの地を見捨てない」と話したと言われます。都合が良い時だけ地域を利用し、都合が悪くなると地域からすぐに撤退するといったスタンスでは良い経営をできないことを、豊田社長は意識していたのです。

もちろん、コストが安いからその地域へ進出するということは多かれ少なかれあるでしょう。しかし、複雑に入り組んだ地域との縁を頑張って作っていくという姿勢が大事であることは、そのようなスタイルで成功している300年企業が多く見られることからも窺い知ることができるでしょう。現在の企業も、こうした点を学び取る必要があるのかもしれません。良い時も悪い時も継続的に、そして一貫性をもって安定的に地域に価値を提供し、地域からも恩恵を被る。これが、今考えるべきひとつの経営スタイルのように思われます。

(本記事は、FM FUKUOKAのラジオ番組「BBIQモーニングビジネススクール」で放送された内容をGLOBIS知見録用に再構成したものです)
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