長寿企業に共通する「自社の強み」への深い理解 

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4427 1長寿企業の経営上の特徴を見ていくと、「これは本当に優れているな」と思うポイントがあります。それは、自分たちが提供しているもの、すなわち、自分たちのコアになる能力の価値を非常に深く理解している点です。私たちは著書の中で、これを「コア能力の認知」と呼びました。

300年企業ではないのですが、わかりやすい例として富士フイルムコダックを取り上げましょう。両社ともに、写真用のフィルムを作っていた会社です。しかし最近では、フィルムのカメラを使う人はほとんどいません。おそらくコダックは、自分たちのコア能力を「フィルムを作る技術」と考えていたのでしょう。したがって、フィルム自体が用いられなくなった場合、できることがなくなってしまいました。一方で富士フイルムは、フィルムは薄い膜を何度も何度も塗り重ねていく技術で作られることから、自分たちのコア能力を「フィルムを作る技術」ではなく、「非常に薄い膜を多層に塗布する技術」と認識しました。この技術は化粧品などに応用可能ですので、松田聖子さんのテレビCMで有名な化粧品事業を立ち上げることができました。つまり「我々の技術」「我々の製品」「我々のサービス」の本質を見定めていることが、重要なポイントとなるのです。

今度は、長寿企業の例を挙げましょう。名古屋に、岡谷鋼機という会社があります。元々は、鍬などの鉄製品を扱っていた商社ですが、インテルからICチップを輸入して日本へ広めたのが、実はこの岡谷鋼機なのです。岡谷鋼機は、自分たちのコア能力を「関係性のすり合わせ能力である」と認識しました。購買においては売り手と買い手が存在しますが、「これら二者の関係性をうまくすり合わせていくことが我々の得意技である」と認識した瞬間に、商材は鉄ではなくICであってもよくなります。もしここで、「我々の特徴は鉄を扱うことにある」と認識すれば、鉄以外のものを扱わなくなっていたでしょう。先に述べた富士フイルムと同様に、自分たちの本質的な強みがクリアになっている企業とそうでもない企業の間には、実は大きな隔たりがあるのです。

日本酒を作っている月桂冠について、考えてみましょう。月桂冠が自分たちの本質を「日本酒を製造する技術」にあると考えていたならば、それ以外のことはやれなかったでしょう。しかし月桂冠は、「勘と経験を化学する力」を自分たちのコア能力であると認識したように思います。その結果、日本人の職人が勘と経験で日本酒を作るのではなく、アメリカでアメリカ人が日本酒を作れるようにしたり、バイオの研究をしたりと、多方面に事業を展開しています。単に日本酒をつくる企業ではないところに、自分たちの存在価値を作っていくことに成功しているのです。

現時点で、300年続いている会社は西暦1700年あたりに創業したということですので、鎖国時代を経験しています。さらには、明治維新、日清日露戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦といった事柄をすべて乗り越えてきているのです。そうなると、扱っている商品やサービスも、変わってこざるを得なかったはず。その時に、自分たちの強みを深く理解して、どういう価値をつくりだせるのかといった点をきちんと考えたからこそ、300年という時間を生き抜くことができたのかなと思うのです。コア能力を認知して、コア能力をベースに新しい価値を創造していくことが、長寿の秘訣なのです。

(本記事は、FM FUKUOKAのラジオ番組「BBIQモーニングビジネススクール」で放送された内容をGLOBIS知見録用に再構成したものです)
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