悔いの残らない決断のために ―『スタンフォード・マッキンゼーで学んできた熟断思考』 

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私たちが取り組むビジネス上の課題は大きく2つに分けることができる。1つは「過去」の事象に対する分析であり、もう1つは「未来」のアクションに対する意思決定である。

論理思考の書籍は数多く出版されているが、「いかに過去の事象を分析するか?」についての話が主で、未来のアクションに対する意思決定にはあまり分量が割かれていない。しかし、ビジネスの現場では分析結果を積み上げて報告しても「それで、結局どうするの?」と、アクションを求められることの方が多い。本書はこの「未来」のアクションに対する意思決定について書かれた本である。

とはいえ、未来のアクションに対する唯一の正解はない。「どれだけ未来を予測する技術が発達しても、最後はそれぞれの不確実要因について、知識と見識を持つ専門家/エキスパートの知的な読み・判断である主観的確率を用いることになる」というのが、本書のスタンスだ。

例えば、会議で声の大きい人の意見が通ってしまったり、あまりよく考えずに前例踏襲の意見に引きずられてしまったり――。いろいろな不確実要因がからんでくるビジネスの現場で、未来を読もうと最大限に努力し、それにもとづいて意思決定することで未来の可能性を最大化するための手法を、本書では「熟断思考」と名づけて解説している。

本書は章ごとに6つのステップに分かれている。

1)悩みや課題をリストアップし、全体像を把握する
リストを作成し「本当に大事な悩みや課題」が何かを考えて、取り組みを行う優先順位を決める。

2)フレームを設定する
フレーミングとは、課題をどのように定義するかという視点のこと。物事を考える際の方向性や範囲を定めることである。本書では「フレーミングは最も難しい部分であるが、まさに人間にしかできない深い洞察力を必要とする作業」と述べており、時間をとって考えるべきステップである。

3)選択肢を精査し、列挙する
選択肢を考える際は「とことんリアルに想像する」ことが大事である。「応募が通るように努力する」程度の表現ではなく、「社長が首を縦にふるような事業計画書を作るために、社内や海外ブランドとの根回しを進める」ことまで具体的に考える。そうすることで、どの程度の資源(ヒト・モノ・カネ・時間)を投入するかがイメージできる。

4)不確実性を考慮する
恐らくここでは、「どの程度情報を集めるべきか?」について迷うと思うが、「限られた時間内で、これ以上調べても不確実性の読みの質が上がることはない」と判断された上で切り上げることが大切である。

5)価値判断尺度をはっきりさせる
きれいに順序付けられず、トレードオフ判断(Aを選択すればBは手に入らない)が必要になる。だからこそ、「トータルでの嬉しさ」という主観を大事に考える必要がある。

6)意思決定する
ディシジョンツリーを活用しながら定量的に考えていく(浅田真央選手のソチ冬季五輪でトリプルアクセルに挑戦すべきか?という事例がありイメージしやすい)。

大きな投資の意思決定、転職、起業の意思決定などにはぜひ本書の考え方を活用してほしい。どのような結果になるかは時の運もあるだろうが、「悔いの残らない決断」を下すための助けになるはずだ。

最後に本書の一節を引用したい。

「不確実な未来だからこそ、熟断思考の出発点はパッション」

すべてを論理的に整理することはできない。意思決定においては、自分の気持ちにしっかり向き合うことが大切なのである。

名言

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