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「PV?見ません」NewsPicks佐々木編集長が語るスマホ時代に勝つメディア6つの法則

投稿日:2015/06/12更新日:2019/08/15

スマホシフトが変えるのは「Yahoo! 一極体制」

4294photo 1「どうして東洋経済からNewsPicksに移ったの?」――昨年7月に移籍してから300回くらい聞かれました。そのたびに違う答えをいっていますが(笑)、メディア業界が100年に一度の大変化を迎えている時代に、最高にイノベーティブなメディアをつくりたいからです。

デジタル・ソーシャル・モバイル(スマホシフト)。そういった新しいテクノロジーが生まれるときには、必ず新しいメディアが生まれています。印刷技術の発明によって、新聞が生まれたように。

スマホシフトによるメディア業界の最も大きな変化は何か。それは「Yahoo!によるニュース流通の一社独占構造が終わった」ということです。(写真:NewsPicks編集長 佐々木紀彦氏)

私が東洋経済オンラインにいた頃もそうでしたが、WEBメディアはYahoo!に掲載してほしいんですね。圧倒的なポータルサイトなのでニュース流通の大部分を押さえている。タダ同然でもいいからYahoo!に載せてもらって、トラフィックを稼ぎたいわけです。PV至上主義。その戦略は短期的には合理的なのですが、中長期的には未来が見えません。それではいつまでも提供者が十分に稼げませんし、その結果、新しいコンテンツへの投資も細ります。コンテンツのつくり手にとって悲しい状況が続くわけです。

スマホシフトによって、異業種からいろんなプレイヤーが入ってきました。PCの時代は検索ありきで、ポータルサイトにみんなアクセスしますからYahoo!一強です。スマホではアプリを選べるようになり、影響力が分散します。チャンスがより開かれるようになったのです。そのため、通信キャリアやDeNA、LINEに代表されるネット企業、リクルートのような会社がメディア事業を強化し始めました。

これまでコンテンツのつくり手と流通が分断されていたのが、一社が全部できるようになってくる。KDDIによるネットメディアの買収、ドワンゴと角川の経営統合、日テレによるHuluの日本事業の買収。垂直統合が進んで、製造から流通まで全部できるプレイヤーが増えている。非常に面白い時代です。

スマホ時代に勝者になるには、2つのパターンしかないと思っています。ひとつは垂直統合。コンテンツもつくれればプラットフォームも持ち、ソーシャルメディアも持って自分たちで拡散できる。そのためのクリエイティブも技術力もある。NewsPicksが経済メディアの領域で目指しているのがこれです。

もうひとつは、製造・編集・流通などレイヤーに特化した水平統合。SmartNewsがコンテンツ流通において、日本だけでなく世界で圧倒的な存在を目指しているのがこれにあたると思います。この2つのいずれかでなければ、高い収益を永続的に稼ぐことは難しいでしょう。

クリエイティブが競争力になる時代に

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サイバーエージェントの藤田さんが最近、こう言われています。

「スマホになって、インターネット史上初めてと言っていいほど、クリエイティブが勝負どころになっていますよね。今まで、クリエイティブが競争力になったことはネットの歴史の中であんまりないんですよ」

その通りだと思います。サイバーエージェントでは、美大生の積極採用など体制を強化しているそうです。人の心に響くビジュアルやストーリーをつくれるクリエイティブの価値が高まっているのが、スマホ時代の特徴です。これがないメディアは苦しくなっていくでしょう。

良い例がカナダ発の動画メディアのViceで、現在売上5億ドル・利益率34%の高収益を実現しているメディアですが、彼らがつくる動画は、とにかくクリエイティブでジャーナリスティックなんですね。イスラム国への潜入取材が有名です。企業が新製品を出したら、コンテンツ制作をViceに頼む。いわゆるスポンサードコンテンツ収入で儲ける。自社で制作した報道映像を世界の放送局に販売するライセンス収入もある。クリエイティブが競争力になる好例です。

スマホメディアが稼ぐために必要な6つのこと

スマホ時代のメディアがマネタイズするために必要な6つの要素は、以下の通りだと考えています。

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1. クリエイティブ
スマホの画面はPCより小さいので、一目で「これ面白そう」「読みたい」と思ってもらえなければダメです。

NewsPicksでは、2月にインフォグラフィック専門チームを立ち上げました。リーダーは、日本のインフォグラフィックの第一人者である、櫻田潤です。スマホに最適化して、情報をわかりやすく、魅力的に伝えるためのビジュアル表現に力を入れていきます。動画インフォグラフィック、スライドストーリー、マンガなどあらゆる表現にトライします。編集部ではデザイナーの権限を大きくして、クリエイティブを競争力につなげる組織にしています。

2. UI/UX
Facebookによる「Instant Articles」の発表が世界で大きなニュースになりましたが、1000分の1秒でも早くニュースを読めるかどうかで、ニュースアプリはユーザ数が激変します。外部のリンクに飛ぶと8秒かかっていたのが、Facebook内で読めるようになれば一気に早くなる。アクティブユーザーが圧倒的に増えます。この例に代表されるように、コンテンツの質と同じく、記事が表示される早さ、UIの使いやすさがメディアの競争力を左右します。

3. コミュニティ
ニコニコ超会議が良い事例ですが、強いコミュニティを持てるかどうかもメディアの収益性の大事な要素です。たとえば、ビジネスSNSとして世界標準となっているLinkedInでは最近、有名人によるコラム寄稿が増えていますが、それは、メディアに寄稿するよりもLinkedInのコミュニティに発信する方が影響力があるからだと思います。最近、チャットサービスのSnapChatも大統領選を視野に、CNNからスター政治記者を雇いました。コミュニティサイト、コミュニケーションビジネスのメディア化は、さらに進むでしょう。メディア側もコミュニティを強化する必要性が高まっています。

4. ストック
ストック記事の活用、フローとストックの連携も重要です。ニュース速報は時間が経つと腐りやすいため、価値が落ちやすい。長く読まれるものほど価値が続きます。ネットフリックスは600万人の有料会員がいますが、強いのはやはりストックがあるからでしょう。

NewsPicksは「なんで速報性のあるニュースを書かないのか」とよく言われます。しかし編集部20名体制で、日経やロイターのようなニュースをフローで追うにはリソース的に限界がありますし、独自性も出せません。我々が目指すのは、新聞より週刊誌のようなモデルです。1年経っても価値が落ちないストック系のオリジナルコンテンツをつくっていく戦略です。

NewsPicksにとって、コンテンツパートナーから提供いただく記事、そしてピッカーのみなさんのコメント自体が、最大のフローコンテンツだと考えています。たとえば先日、ソニーの記事に出井伸之さんがコメントして話題になりました。経済記事に経営者や識者がリアルなコメントをいち早くつけてくれる。毎日それを読みたいというキラーコンテンツになっています。

フローコンテンツで人を集めてストックしていく。そしてストックコンテンツで課金する。この繰り返しです。日テレとHuluの関係に近いかもしれません。日テレが番組をつくり、Huluがストックを活用してマネタイズする。フローだけでもだめですし、ストックだけでもだめです。フローコンテンツとストックコンテンツを両方持って、うまく組み合わせていくメディアが勝つと思います。

5. ビッグデータ
読者の閲覧履歴データを、コンテンツ制作、さらにリコメンドに活かせることが大事です。「ダーティハリー」を見たら、次は「バットマン」を薦められるみたいに。ネットフリックスでは視聴数の75%がリコメンドによるものです。

6. 垂直統合
BuzzFeedのCEOジョナ・ペレッティはこう言っています。"It`s not just a site, it’s a whole process."(「我々がつくり出すのはただのWEBサイトではない。プロセスすべてだ」)BuzzFeedは、単に拡散がうまいからだけでなく、コンテンツに関わるあらゆるプロセスをつくり変えるから革命的なんだと思います。流通も強い、社内にクリエイティブエージェンシーもある、カリスマエンジニアもいる、川上から川下までシームレスにつながっているからこそ、自分たちはすごい企業になるのだという意味だと理解しています。BuzzFeedの収益は、ほぼブランド広告(ネイティブ広告)収入です。読まれるコンテンツ、拡散するコンテンツを自社でつくれるから高単価で高収益を上げられるわけです。

どこかひとつのカテゴリーをやるんじゃなくて、全体をつくりかえるような、垂直統合の戦略がしっかり稼ぐために大事になってきています。2006年には15人だったBuzzFeedの社員数はいまや900人にまで拡大していると報じられています。本当に良いモデルであれば、わずか数年でメガメディアをつくれる時代です。

PVは見ない―スマホシフトが実現する「脱・PV至上主義」収益モデル

NewsPicksでは、2014年2月に月額1500円の有料購読オプションを始めました。正確な数値は申し上げられませんが、社内で掲げた目標を超えるペースで推移しており、手ごたえを感じています。オリジナルコンテンツに占める有料記事の割合は現在6割程度ですが、今後さらに比率を上げていきたいと考えています。

スマホ時代のマネタイズ方法は以下の3つだと思います。
(1)課金(有料購読)
(2)ブランド広告(ネイティブ広告)
(3)インフィード広告

PC時代には広告収入への依存がすべてだったので、どうしてもPV至上主義にならざるを得ませんでした。しかしなんでも無料で読める広告モデルは、永続的なビジネスを築くのがとても難しい。広告単価は下がるばかりで、十分な収益を稼げないからです。

とはいえ、どうしてもPVに引きずられますから、NewsPicks編集部では、PVを見るのをやめました。かわりに指標にしているのは、どの記事で有料購読者が何人増えたか、どの記事を読むために会員登録をしてくれたのか、アクティブユーザーがどれだけ記事を読んでくれたのか、などです。PVを稼ぐコンテンツと、お金まで払って読んでもらえるコンテンツは異なりますし、NewsPicksのアクティブユーザーの方に読んでもらえるコンテンツと、より幅広い読者層に読まれるコンテンツは異なります。そこをしっかり見ていこうということです。

ブランド広告にも力を入れていきます。今年4月にブランドデザインチームを立ち上げました。単なる宣伝広告ではなく、企業の価値を高める質の高い読まれるコンテンツをつくって収益性を高めていきます。

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NewsPicksの人気の高いコンテンツのひとつにIBMによる「イノベーション」というカテゴリーがありますが、これはひとつのカテゴリーをまるごとスポンサードしてもらうブランドタブという広告商品です。テレビでいう一社提供ですね。商品を宣伝するのではなく、イノベーション企業としてのIBMのブランド認知を高めていく。引き合いがとても多いので、近々カテゴリーが増える予定です。

文章の長さやストーリー、ビジュアルを組み合わせ、スマホ最適化した形でコンテンツを展開する。オラクルのブランド広告では、彼らのコンセプトに沿って、「世界を変えた15の『デジタル・ディスラプション』」をテーマにインフォグラフィック記事を制作しました。

これまでBtoB企業がビジネスパーソン向けに広告を出せるメディアが、スマホでは限られていました。BtoC広告ならAntennaやSmartNews、Gunosyが強いですが、30歳から40歳代の意識の高いビジネスパーソンにリーチできるスマホメディアはほかにはないため、多くの企業から引き合いをいただいています。

収入比率でいうと、当面はブランド広告収入が高いと思います。課金は積み重ねながら、長期的に収益ベースをつくっていければと思っています。1~2年後に課金収入と広告収入が5:5になっているのが大まかなイメージです。昔の新聞や雑誌のモデルですね。今後、インフィード広告も始める予定ですので、その比率も増えていくでしょう。

動画広告もいずれ参入したいですし、コミュニティとしてリアルなイベントも強化していきます。スマホ時代ならではのメディアのビジネスモデル、コンテンツのつくり方を確立していきたい。100年に一度の大変化の時代、とにかく最高にイノベーティブなメガメディアをつくりたいんです。

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