「プレイングエンジェル」の活躍 

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(2014年4月3日付け日経産業新聞の記事「VB経営AtoZ」を再掲載したものです)

成長・成功、けん引役に

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多くのベンチャー企業を立ち上げて成功を積み重ねる起業家、ベンチャーに個人資金を投じ、経営指南もするエンジェル投資家――。こんな2つの顔を持つ「プレイングエンジェル」の活躍が目立ってきた。かつてエンジェルと言えば、功を成し、財を築いた成功者がパトロン的に若い起業家に資金を提供するイメージだったが、その様相は大きく変わりつつある。

プレイングエンジェルの最大の特徴は「今」という同時代におけるベンチャー経営の苦楽やリスクを知り尽くしていることだ。彼らの投資と助言を受ければ、成長スピードと成功確率が格段に高まるのもうなずける。

例えば、結婚式場の口コミサイトを運営するみんなのウェディング。ディー・エヌ・エー(DeNA)の事業部門が独立分社化し、2010年に発足した企業だ。ここにクックパッド代表執行役の穐田誉輝氏が出資し、経営にも参画。プレイングエンジェルとして、みんなのウェディングの経営陣にメディア運営とベンチャー経営のノウハウを具体的に伝授した。

みんなのウェディングの飯尾慶介社長は「要所要所で背中を押してくれるような助言をもらった」と振り返る。同社は急成長を遂げ、3月に東証マザーズに上場した。会社設立から3年半というスピード上場だ。

穐田氏はベンチャーキャピタリストとしてカカクコムに投資。その後、同事業を買収して、同社の社長に就任、株式上場に導いた。さらにエンジェルとして創業期のクックパッドにも投資、上場に導いた後、現在は代表を務めている。

みんなのウェディングには、ヤフーのコーポレートベンチャーキャピタルであるYJキャピタル(東京・港)も出資した。代表取締役の小沢隆生氏はベンチャー業界で知らない者はいない代表的なプレイングエンジェルだ。2回の起業を成功させたシリアルアントレプレナーで、事業売却で得た個人資金を元にエンジェルとしても活躍、多くの起業家を育てている。

実は、みんなのウェディングにはグロービス・キャピタル・パートナーズが立ち上げ時に出資し、ベンチャーキャピタルの視点からアドバイスをしてきた。穐田氏、小沢氏の知見から我々も多くを学ぶことができた。

当社の投資案件の多くにプレイングエンジェルが関わり始めている。弁当宅配のスターフェスティバル(東京・港)、情報サイトのnanapi(ナナピ、東京・渋谷)、オンライン教育のキラメックス(東京・渋谷)、レジャー予約のカタリズム(東京・港)などの創業者は小沢氏が育てたと言ってもいい。

ほかにもDeNA創業メンバーの川田尚吾氏やメルカリ(東京・港)の社長、山田進太郎氏ら強力なプレイングエンジェルが続々出現している。

かつては投資家と起業家の関係が分業的構図だったが、過去四半世紀に起業の連鎖が何周も回った結果、両者の距離は大幅に縮まった。プレイングエンジェルはその象徴で、日本のベンチャーエコシステムの中核的な役割を果たしつつある。

ベンチャー投資の規模を見れば、日本は総額でも個別の投資額でも米国にかなわない。だが、プレイングエンジェルの出現によって日本のベンチャー業界はこれまでにないほどのスピード感で動き始めている。

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