激変の時代: SMACS、そしてその先へ(1) 

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これから十数回にわたって、新しいマーケティングや経営戦略、さらにはそれを踏まえた組織マネジメントの在り方について書いていきたいと思います。

第1回目と第2回目は、昨今のITのトレンドについて見ていきます。

さて、昨今のITの進化については様々なところで語られており、皆さんも日々実感している部分が多いと思います。ここでは、最近よく聞く「SMACS」という言葉に沿って解説していきましょう。もちろん、これ以外にもITの進化を捉える切り口はあると思いますが、SMACSで8割以上のポイントは説明できると思いますので、本稿も割り切ってこのフレームワークにそって議論していきます。

SMACSとは、Social、Mobile、Analytics、Cloud、Sensorの頭文字をとったものです。最後のSensorについてはSecurityとする場合もありますので、ここでは併せて6つの要素について見ていきます。これらはお互いに絡み合ってさらに複雑な進化をもたらすことが予想されています。今回は、最初の3つ、Social、Mobile、Analyticsについて解説します。

Social

これはソーシャルメディア、SNSのことです。FacebookやTwitter、LINEといったおなじみの顔ぶれがその中心的プレーヤーとなっています。現状では20代半ば以降の層にとっては、Facebookが「本来の」ソーシャルメディアとしては不動の地位を占めていると言っていいでしょう。「本来の」とあえて書いたのは、日本発のSNSの老舗mixiがソーシャルゲームに寄りすぎ、コミュニティサイトとしての機能がやや弱まったからです。一方で、TwitterやLineなどは若者向きのユニークなソーシャルメディアと言えそうです。Twitterは若者向きのSNSを強く意図してスタートしたわけではありませんが、最近は若者、特に女性のユーザーが増えています。その性質を短期間に変えてしまうのも、ソーシャルメディアの面白い特徴と言えるでしょう。

一時期、「SNS疲れ」という言葉も出たように、当初の興奮や期待は薄れてしまったようにも見えます。しかし、人とつながっていたいという人間の根源的な欲求は消えるものではありませんし、一度経験した「自ら情報発信する楽しさ」を手放すこともないでしょう。これからもさまざまな曲折はあるものの、ソーシャルメディアが人々のコミュニケーションにおいて果たす役割は確実に増していくものと思われます。

ソーシャルメディアの進化に目を向けてみましょう。例えば、元々ゲームなどの課金は容易でしたが、今後はSNS上でもオンライン決済がどんどん進んでいくことが予想されています。これは、何かを知ってから購入し、支払いを済ませるまでのスピードが一段と上がることを意味します。ソーシャルネットワーク上でのワンクリック購買がより身近なものになっていくのです。これは一般の企業にメリットをもたらすだけではなく、個人やベンチャー企業といったリソースに限りがある人々でもより簡単にeコマースをスタートさせられることにもつながっていきます。

「ネットワーク外部性」の効果が働くので、あるSNSがいったんインフラのザを確立すると、それを追い抜くのはなかなか難しいのですが、FacebookやTwitterを脅かすようなSNSが未来永劫生まれないかと言えば、そんなことはありません。事実、IT先進国のアメリカではニッチを狙ったSNSがどんどん生まれています。例えば匿名を売りにしたWhisperや、広告を載せないことを売りにしたElloといったサイトです。Facebookは優れたサービスでありインフラですが、実名主義に馴染まない人や広告が嫌いな人はやはりいるのです。

リーンスタートアップがしやすくなり、また「ゲームのルールは自分が決める」というのがIT業界の特徴です。人々のニーズがあるところには必ずチャレンジする人が登場します。そしてそれがクリティカルマスを超えたとき、新しいインフラが生まれる可能性があるのです。ユーザーとしては、そうした萌芽を素早く見極めることで、より便利なサービスを賢く利用することができるのです。

Mobile

これは2015年現在ではスマートフォン(以下スマホ)を指すものと考えていいでしょう。いまやスマホ無しに多くの現代人の生活は成り立たないと言っても過言ではありません。なにしろ、あの小さなパッケージの中に、携帯電話、パソコン、電子書籍リーダー、ゲーム機、デジカメ、ビデオ、音楽・動画再生プレーヤー、カーナビ、手帳、メーラーなど、ありとあらゆる機能が詰まっているのですから。かつて、通勤通学時間は多くの人が本を読んだり新聞を読んだりしていたものですが、最近ではほとんどの人がスマホを片手に記事サイトを見たりゲームをしたりしています。

昔であればPCでないと実現できなかったようなことが、演算速度の向上で、スマホで簡単にできるようになったというのは大きな進展ですし、この傾向は今後も続くでしょう。例えばYoutube動画の閲覧は以前ならPCで行うのが当たり前でしたが、今では地下鉄の中でスマホで観る方も増えました。

スマホ上で動くアプリも激増しました。2014年9月の段階でiTunes App Storeの登録アプリ数は130万との発表があり、サービス開始からの総ダウンロード数はおよそ数百億から1000億に達します。Google Playのアプリ数もほぼ同数とみられており(もちろん、両方で提供されているアプリもかなりの数に上ります)、スマホのアプリはもはや日常生活に欠かせないものになっています。

ここで問題となってくるのが、いかに企業がスマホの画面の中で存在感を示すかということです。たとえばアプリを選んでもらう競争、あるいは自社の名前を何かのアプリ上で見つけてもらうといった競争です。かつて「トリプルスクリーン」という言葉が流行った時代は、テレビ、PC、そしてスマホ上でのプレゼンスの維持・向上が重要な課題でした。しかし今は、その中でも特にスマホの重要度がどんどん上がっています。もちろんスマホに縁がないお年寄りなどもいますし、テレビを主要な情報源とする方もまだまだ少なくありません。ただ、特に若者や現役ビジネス世代を考えると、(業務時間を除くと)最も長く接しているのはスマホという方が激増しています。特にPCを持たない若者でその傾向は顕著です。企業が消費者と接点を持つ上で、スマホでのプレゼンスは今後ますます重要になるでしょう。人によっては「スマホを制する者がビジネスを制する」とまで言い切っています。

一方で、企業にとって悩ましいのは、スマホの画面の小ささです。PCであれば、画面のどこかに企業としてのプレゼンスを示すことは比較的容易でした。しかし、スマホ画面の面積は、PCの十数分の1です。iPhone6はそれまでのスマホに比べて大画面化しましたが、スマホがさらに画面を拡大し、たとえばiPhone6の倍になっとたとすると、もはやスマホではないと思います。数年も経てばスライド式で大画面にできるスマホなどが登場するでしょうが、自ずと限界があります。ある程度小さく限られたスクリーンの中でいかにユーザーの関心を引くのか、さらに、いかに行動を起こしてもらえるように導くのか――。多くの企業マーケターが頭を悩ますポイントとなるでしょう。

Analytics

いわゆるビッグデータの解析がより精緻にできるようになり、自動的に消費者に対して適切と思われるアクションをとれるようになってきました。ビッグデータの定義には様々なものがありますが、ここでは、特にWEBやそれとつながっているセンサーから取得できる、それまでは解析不可能だったおびただしい量のデータ、言い換えれば、かつては手つかずだった「宝の山」を指すものとします。

一昔前はAmazonのリコメンデーション機能(「この商品を買った人はこんな商品も買っています」)に感心していたものですが、数年前からはリターゲティング広告が流行り、人々はいつも似たようなバナー広告を見るようになりました。そして近年は、原始的な解析では差別化が難しいため、先端企業はさらに一段上のデータ分析にしのぎを削っています。すべての企業が自社でビッグデータの解析を行えるわけではありませんが、どのような解析サービスがあるか、あるいは比較的初心者でも利用できる解析ツールがあるか(例:Google Analytics)を知っておくことは、いまやあらゆる企業に必須と言っていいでしょう。

こうしたデータ解析が多用されるようになってきた背景には、デジタルならではの数値の可視化(たとえばウェブ上で誰がどのような行動をとったかがリアルタイムで定量的に捕捉できる)のしやすさという本質的な特性に加え、演算速度の向上、クラウドの発展、超並列データベース、データマイニング、分散ファイルシステムといった技術の進化、大規模記憶装置の高度化、データ収集に関わるセンサーなどのデバイスや技術の進化、そしてデータサイエンティストと呼ばれる専門家の増加などがあるとされています。

かつてはデータ分析といえば構造化されたデータを相手にした仮説検証分析が主流でした。ビッグデータの時代になって、構造化されていないデータを相手に機械学習で立ち向かえるようになり、しかも俊敏に環境変化に対応できるようになったのは、大きなパラダイムシフトと言えるでしょう。

ビッグデータ解析の利用にはさまざまなパターンが想定できますが、分かりやすいのは位置情報と連動したお勧め情報の紹介でしょう。例えば、スマホのセンサーで個人の位置情報を収集。データがたまってくると、その人が昼食や夕食でどのような店に寄ったか、どのような店舗に関心があるかなどがわかってきます。さらに店舗での購買情報と組み合わせれば、「このAさんという人はビールが大好物だ。今日はテニスクラブでテニスを楽しんでいる。車での移動ではないから、帰りに寄れるビールの安いバーを紹介しよう」といったレコメンデーションができるようになります。

そういう未来が好ましいかどうかは別にして、これが先端企業で真剣に研究されている現実だということは知っておく必要があります。

次回は、Cloud、Sensor、Security、そしてその他のいくつかの重要技術について紹介します。

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