沖縄の法人税・消費税を免除し、ヒト・モノ・情報が結集する東アジアのハブを目指せ!  

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初稿執筆日:2015年1月30日
第二稿執筆日:2016年8月17日


113の島々に140万人の人々が住む沖縄。蒼い海と蒼い空に恵まれるこの楽園には多くの人々が訪れる。沖縄への観光客数は650万人を超え(2014年)、過去最高を更新し続けている。(さらに2015年には776万人を突破している)

観光だけではない。北に韓国、南に台湾やフィリピン、東に本州、西に中国を配する地理的環境はヒトやモノが流れ行き交うアジアのハブとしての潜在的な強みを持つ。

少子高齢社会の日本では例外的に、沖縄県の出生率はズバ抜けて高い。沖縄の人口は現在142万人だが、2025年まで増え続けると予想される。

平均寿命も全国トップクラスだ。まさに日本にとって、最も大きな財産のひとつが、沖縄であるといえよう。 

政府は、毎年3000億円以上を沖縄振興予算として使っている。1972年の沖縄返還から、政府は基地負担への代償ともいえる沖縄開発政策で重点予算配分を続けながらも公共事業の積み重ねに終始したため、沖縄経済は基地と公共事業に依存する経済と言われてきた。 

今世紀に入って特区政策による沖縄優遇も追加され、1999年からの経済特区、2002年からの金融業務特区と情報通信産業(IT)特区などでさまざまな優遇策を講じている。IT特区では、雇用創出効果が出ているが、その他の特区は、ほぼ失敗に終わっている。

とびきり恵まれた自然環境を持つ沖縄は、地政学上、経済的にも安全保障的にも日本の大きな財産だ。この沖縄に惜しみない投資を行い、沖縄における経済、技術、文化、教育など、それぞれの分野の質を高めていき、ヒト、モノ、情報が集まるグローバルな「300万人自治体」まで育てるビジョンを描いてみたい。

これまで政府の沖縄政策は、毎年3000億円以上の予算を惜しみなく投資してはいたが、やり方が間違っていた。公共事業に偏重し、ヒトへの投資を怠ってきた。特区も中途半端で日本本土や世界からヒト、モノ、カネを集めるには十分ではなかったのだ。沖縄の潜在的な強みを最大限発揮させ、300万人自治体に育てるための、特区による大胆な差別化、明確なヒトへの投資、ヒトを惹きつける飛び抜けた計画について論じてみたい。

1. 法人税ゼロ・消費税ゼロの大胆でわかりやすい優遇政策で徹底的な成長を!

ヒトを集めるのに最適なのが、特区による優遇政策だ。特区となればカネが沖縄に入り、チエとノウハウが入り、ヒトが入ってくる。

実は沖縄は1990年代から、特区としての比較的古い歴史を持つ。しかし、実際にはヒト、モノ、カネが沖縄に集まっているとは言い難い。最初の特区は、1999年だった。アジアと競争できる輸出加工拠点にすることを目指し、日本初の「経済特区」として沖縄県うるま市に開かれた「特別自由貿易地域」がそれだ。しかし、この特区は、開設から10年以上経っても96区画ある分譲地に7社しか入っていないなど閑散としている。

この特区では、進出企業は法人税の課税対象になる所得から35%、その他にもさまざまな国税、地方税の減免が用意された。さらに輸入した原材料を加工して再輸出する場合の関税や消費税の免除を受ける保税制度も適用された。しかし、企業もヒトも集まらなかった。

沖縄の特区は、このほか「金融業務特区」と「情報通信産業(IT)特区」(共に2002年開始)がある。しかし、名護市の「金融特区」で、特区の法人税控除の適用を受けたのは1社のみだ。 

IT特区では、やや成果も上がっている。沖縄に進出したIT関連企業は、特区開始時の2002年の52社から2009年には202社に増え、この間に1万3000人以上の雇用を生んだ。コールセンター、ソフトウェア開発、データセンター運営など、首都圏をはじめとする国内企業のIT拠点になっている。しかしこれは、沖縄、東京、香港、シンガポールなどを結ぶ大容量の海底ケーブルが開通した理由が大きいだろう。

これまでの特区が精彩を欠いたのは、他地域との差別化が中途半端だったからだ。本土と比べて低賃金だと言っても、アジアの他国よりは競争力が劣る。沖縄にはもっと大胆な特区が必要だ。

安倍政権で進めようとしている国家戦略特区を見ても、 

・世界水準の観光リゾート地を整備し、ダイビング、空手などの地域の強みを活かした観光ビジネスを振興するとともに、沖縄科学技術大学院大学を中心とした国際的なイノベーション拠点の形成を図ることにより、新たなビジネスモデルを創出し、 外国人観光客などの飛躍的な増大を図る
・外国人観光客の入国の容易化(ビザ要件の緩和)
・入管手続の迅速化(民間委託など)
・外国人ダイバーの受入れ(潜水士試験の外国語対応)
・海外からの高度人材の受入れ(ビザ要件の緩和)

などとなっており、これらの政策は重要ではあるが、インパクトが極めて弱い。中途半端な優遇策では人や投資は集まらないことは、過去の特区の失敗から学ぶべきだ。

沖縄の国家戦略特区では、「法人税ゼロ、消費税ゼロ」という、大胆でわかりやすい優遇政策で他との差別化を図るべきだ。これは何も無謀な政策ではない。現在の沖縄における法人税(国税)収入は、415億円、消費税(国税)収入は409億円に過ぎない。

毎年3000億円を超える沖縄振興予算を使っている現状から考えれば、無駄なハコモノ投資をやめて、その予算を活用すれば問題ないはずだ。大胆な差別化で国内、アジアから企業、カネ、ヒトを沖縄に集めるのだ。

なお、本来、沖縄への人口流入の拡大には所得税ゼロが最も効果があるものと考えられるが、所得税に関しては個人の居住実態の把握が困難であることが考えられるため、除外した。

2. 沖縄をヒト、モノ、情報が自由に入り込む東アジアのハブにせよ!

アジアにおける沖縄の地政学上の優位性を考えれば、沖縄のアジア・ハブ化は非常に有望だ。大胆な特区やヒトへの投資で、沖縄をヒトが集まるハブにする。そうすることで、カネ、投資も集まり、知恵やノウハウも集まる。物流も活性化するという好循環が生まれる。(教育に関しては項目5. を参照)

「ヒト」の流入では、沖縄の主要産業である観光も当然ながら重要だ。沖縄への観光客は776万人に達し、過去最高を更新しているが、近隣のアジア諸国の富裕層などのニーズの増加を考えても、ポテンシャルはさらに高い。実際、外国人観光客は、55万人(2013年)、89万人(2014年)、150万人(2015年)と急速に増えている。政府の特区構想でも、「外国人観光客の入国の容易化(ビザ要件の緩和)」「 入管手続の迅速化(民間委託など)」などが検討されている。そういった施策を着実に実現するとともに、那覇空港の24時間化(現状では深夜は貨物のみ)、那覇空港の機能拡大とオープンスカイによるLCCの参入拡大など、大胆な施策を進めるべきだ。

「モノ」の流入では、既に沖縄がアジアにおける貨物の物流ハブとして機能し、存在感を高めている。たとえば沖縄ヤマト運輸は、沖縄をアジアのハブとし、沖縄の原産品、日本の良いものをアジアの食卓へ翌日に配送するサービスを始めている。また、沖縄をハブとして、東芝は世界各国の工場の間で機械の保守パーツを輸送するビジネスも手がけている。

「情報(IT)」の世界でも、先ほど述べた国際海底ケーブルの整備が、沖縄をIT産業のハブにしつつある。沖縄県の調査によると、国内企業のデータセンターとしての機能だけでなく、通信インフラを利用した沖縄への立地意向について、香港企業の45.2%、シンガポール企業の45.8%が検討しているという数字もある。

ヒト、モノ、情報が自由に流入し始め、法人税・消費税が免除されると、沖縄版「楽市・楽座」が形成されて、カネも自然と流入してくるだろう。

3. 幻の沖縄縦断鉄道・リニア構想を実現せよ!

全国で唯一、JRが走らないのが沖縄県だ。沖縄鉄道構想はこれまで検討されては立ち消え、今世紀に入ってやっと「ゆいモノレール」が市街地中心部を走るようになっただけだ。国が沖縄を本気で成長させるというメッセージは弱く、これまで実現されてこなかった、沖縄本島を南北に走る鉄道の敷設構想を実現させるビジョンを掲げるべきだと思う。

沖縄では戦前、県民から「ケービン」と呼ばれた県営の軽便鉄道が那覇~嘉手納などを結んでいたが、太平洋戦争末期の沖縄戦で破壊されてしまった。本土では戦後復興で鉄道の敷設が進んだが、1972年までアメリカの施政下にあった沖縄では鉄道は復旧せず、県内に広大な米軍基地が形成され、公共交通は衰退してしまったのだ。

この沖縄を南北に走る鉄道あるいはリニアを建設する。糸満から名護まで沖縄本島を結べば、経済効果は大きい。

沖縄県の調査で建設費は、鉄道の場合糸満~名護区間(約81キロメートル)を整備すると、総事業費8600億円と試算されている。この試算では、鉄道事業法により、鉄道線路は道路に敷設できないことから、都市部を中心とした三十数キロを地下構造としており、柔軟な規制緩和を行えばはるかに低コストでの建設も可能だろう。

肝心の採算性だが、内閣府などが行った試算では開業40年後の累積赤字額は6000億円以上と厳しい予測がなされているが、沖縄県の人口が300万人と倍増すれば、当然ながらこの数字は変わってくる。

観光客のさらなる増加も鉄道の採算性の向上に当然ながら貢献するだろう。沖縄県の試算では、1日に4万人程度が乗車すれば数年で単年度黒字化が可能とされており、コンセッション方式による鉄道敷設は、幻などではなく、十分可能なはずだ。

年間3000億円の沖縄振興予算が、わかりにくい公共投資などに消費・投資されていくよりも、象徴的な最先端の技術を使った「沖縄縦断鉄道(リニア)構想」を掲げたらどうだろうか。観光にもプラスになるであろう。

4. 普天間基地跡地を利用し、IR特区で沖縄にカジノテーマパークを!

当然のことながら、沖縄を考えるに際して、安全保障、基地の問題は避けて通れない。普天間基地移設問題に関しては、市街地のど真ん中にある普天間基地の危険性は明白だ。僕は、実際に辺野古へも現地視察に赴いた。辺野古移設はもともと米軍が使用しているキャンプシュワブ内の陸地から海上にかけて、軍用機の日航路が沖縄県内の住宅地の上空を通らないようにV字滑走路を造るという案だ。安全面、環境面などを考えても、辺野古移設以外の選択肢はない。

鳩山政権で迷走し、新たに当選した翁長沖縄県知事も辺野古移設に反対表明してしまっているが、沖縄本島北部にある辺野古への移設は、実は地元住民にとっても大きなメリットがある。沖縄は戦前から那覇のある南部を中心に開発が進んだため、南北の格差は大きい。辺野古の町も、かつて1960年代には賑やかだった飲屋街がシャッター通りと化し、まったく元気がない。

普天間基地から辺野古への移設とセットで、上述した北部への鉄道(リニア)敷設などのインフラ整備を進め、空港と那覇のある南部から北部へのアクセスを飛躍的に発展させ、北部振興の契機とすればよい。

危険極まりない普天間の固定化を避けるためにも、辺野古への移設がベストであり、それ以外に選択肢はない。

もう一方で、普天間基地の跡地利用に関しても、沖縄経済を考える上で極めて重要だ。そこで、跡地には、カジノ・IR(統合型リゾート)による一大テーマパークを作ることを提案したい。

IR法案に関しては、国会での立法作業が不透明なため、国家戦略特区で先行してIR特区として沖縄で投資を進められる環境を整備すればよい。

急激に成長するアジアの富裕層は、マカオやシンガポール、ベトナムなどのIRに集まっており、それらの都市の観光需要は急成長している。それらの需要を沖縄が奪っていくためには、IR特区が有効だ。沖縄県を特区として、普天間基地跡地を利用し、カジノを含むIRを建設する。そのカジノテーマパークで沖縄に人や投資をさらに呼び込むのだ。

普天間から辺野古への移設を早期に実現し、普天間周辺の危険を取り除く。さらに、辺野古など北部は南北を結ぶ鉄道敷設などのインフラ整備で経済効果を高め、南部は普天間跡地をIR一大テーマパークにし、沖縄のリゾート地としての集客力を高める。

そうすれば、法人税ゼロ、消費税ゼロの経済特区、物流とITのハブ化と相まって、沖縄の魅力が飛躍的に高まるに違いない。

2015年3月、ユニバーサルスタジオジャパン(USJ)は、沖縄にテーマパークを造る計画を表明し、政府も沖縄振興策としてバックアップする姿勢を示していた。この計画は、沖縄における一大テーマパーク設立のスタートとなり得るものであったが、同年11月に同社を買収した米メディア大手のコムキャストが、計画に難色を示し、撤回が決まってしまった。民間企業の経営判断であり、止むを得ないが、政府も大型観光拠点推進調査費として予算を計上するなどバックアップ体制を整えていただけに残念だ。

5. ハコモノではなく、ヒトへの投資を!OIST沖縄科学技術大学院大学のハコモノに巨額の予算を使うのではなく、奨学金への予算配分を!

OIST沖縄科学技術大学院大学は、2002年、当時の小泉純一郎総理大臣が、設置構想の推進を表明し、2011年に設立されたものだ。沖縄において世界最高水準の教育研究を行うことにより、沖縄の振興と自立的発展と世界の科学技術の向上に資することを目的とすると謳われ、沖縄振興施策の柱の1つに位置付けられている。

だが、毎年200億円以上の国家予算を使いながら、「1つの研究科(科学技術研究科)、1つの専攻(科学技術専攻)の5年一貫制の博士課程のみ」「50名規模の教授陣で毎年20名の学生の受入れのみ」という極めて小規模で波及効果の見込まれない大学となっている。沖縄の立地環境としての競争力を考えれば、学生はもっと大規模に集められるはずだ。

より大規模な沖縄に将来のリーダー候補となる若者を国内外から集めることが必要だ。ヒトのネットワークが沖縄の成長に直結する。そのため、OIST沖縄科学技術大学院大学についても、1学年20人という小規模なものではなく、1000人規模で海外から学生を集める大学にすべきだ。

その際、いくら大学のハコモノに予算を投入しても意味はない。ヒトへの投資は、学生の奨学金として配分すべきだ。たとえば、沖縄県内の大学への進学の際は、政府の沖縄振興予算から沖縄県がその5~7割を負担すれば、一気に優秀な学生が集まるはずだ。大学は学生からの授業料収入で必要な投資を行えばよい。

そしてその大学には、ぜひとも観光学部を入れて欲しい。これから日本への観光客は増えていく。観光の経営、サービス、行政との連携を学ぶ学生が増えることは、日本の成長産業の1つである観光を下支えするものと考える。

このように、日本の宝である沖縄に惜しみない投資を行い、沖縄における経済、技術、文化、教育など、それぞれの分野の質を高めていき、ヒト、モノ、情報が集まるグローバルな「300万人自治体」まで育てるビジョンを描いてみたい。

やはり、分かりやすく、人々がワクワクする大胆なビジョンが必要となる。
 

京都大学工学部卒、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。住友商事株式会社を経て、1992年株式会社グロービス設立。1996年グロービス・キャピタル、1999年 エイパックス・グロービス・パートナーズ(現グロービス・キャピタル・パートナーズ)設立。2006年4月、グロービス経営大学院を開学。学長に就任する。若手起業家が集うYEO(Young Entrepreneur's Organization 現EO)日本初代会長、YEOアジア初代代表、世界経済フォーラム(WEF)が選んだNew Asian Leaders日本代表、米国ハーバード大学経営大学院アルムナイ・ボード(卒業生理事)等を歴任。現在、経済同友会幹事等を務める。2008年に日本版ダボス会議である「G1サミット」を創設。2011年3月大震災後に、復興支援プロジェクトKIBOWを立ち上げ、翌年一般財団法人KIBOWを組成し、理事長を務める。2013年6月より公益財団法人日本棋院理事。いばらき大使、水戸大使。著書に、『創造と変革の志士たちへ』(PHP研究所)、『吾人(ごじん)の任務』 (東洋経済新報社)、『人生の座標軸』(講談社)等がある。

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