矢印・図形、引き算の美学 

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今回も前回に続いて、わかりやすく伝えるためのテクニック、特に表現方法についてみていこう。

誰でも使えるプレゼンテーションソフトが一般に流通して以降、何でもかんでも図にするという風潮がある。「本当にわかりやすい図」をビジネスの資料で目にしたことがある読者はどのくらいいるだろうか。

大量に埋め込まれた文字情報、無造作に使われる様々な種類や太さの矢印、丸や四角の中に入ったコメントなど、理解を妨げていたり、分かった気にさせられたりすることも多いかもしれない。わかりやすく伝えるための、基本的な考え方を解説していく。

1. 読み手の目の動きを一定にする

まず大切なのは1枚1枚のプレゼンテーションの資料について、見る側の目の動きを一定にすることだ。矢印の向きがこれの1番の要素で、横書きの資料であれば理想的には左から右へ、上から下に流れるように配置する。上向き・下向き、右向き・左向きの矢印の存在は、論理の流れを複雑にし、読み手の思考を妨げてしまう。

2. シンプルが一番

資料に多くの情報を詰め込みすぎるのも分かりにくさを助長する。たくさんのパーツ、たくさんの矢印が散乱している資料に分かりやすいものはほとんどない。意味のないカラーリングもやめたほうがよい。

陥りがちなワナは、作り手の労力だ。時間をかけ、手間をかけて作った資料には知らない間に愛着がわき、なかなか不必要な情報を削れなくなってしまう。

そして、その資料そのものが、プレゼンテーションの本筋と関係がなくなっても、もしくは薄くなっても、その資料を生かそうとしてしまうのである。結果、流れが崩れ、全体として分かりにくくなるのだ。

3. 図の意味を考える

資料を作る際に用いられる様々な図形。情報量が多いだけに使い方を間違えると、混乱を招きやすい。矢印ひとつとっても、太い、細い、点線、先端がとがっている、とがっていないなど種類は多い。本来、これらの違いは意味が違うはずであるが、違いは無視され、無造作に使われ読み手を混乱させる。

3つの円を重ねた図、というものが何かのコンセプトを示す際によく使われる。3つの丸を線でつないだ図、近くに配置した図などもある。こうした図の意味を本当に図から読み解くことができるだろうか。伝え手は、何を伝えたいのかという熟慮が必要なのだ。

4. グラフをクリスタライズ(結晶化)する。最適なグラフを選ぶ

一見して何が言いたいかわからない、どこに注目すればよいかわからないグラフが世の中には散乱している。グラフを作成する場合、何を最も訴求したいかを明確に意識することが大切だ。

例えば、着目してほしい部分を丸で囲むだけでも効果的だろう。カラフルな棒グラフを作るのではなく、注目してほしい部分だけを目立つ色にする。そんな基本的な工夫が大切だ。

表計算ソフトなどが高性能化し自動的にグラフができてしまう結果、自分が何を訴求したいのかが、逆に曖昧になってしまうことは避けなければならない。

図に示したのは、同じデータから作ったグラフである。上は製品ごとの売り上げをただ並べただけ、下は2年間の「差」をグラフにした。見えてくる景色はだいぶ異なるはずだ。何を言いたいのかをいま一度、熟慮し、それが最も伝わるグラフを選定する努力をしてほしい。

 

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※この記事は日本経済新聞2013年10月30日に掲載されたものです。
(Coverphoto:shutterstock/Ismagilov)

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