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「職」「町」「人」の面で新たな東北復興ビジョンを描け!

投稿日:2014/10/10更新日:2019/04/09

初稿執筆日:2014年10月10日
第二稿執筆日:2016年7月8日

 あの忌々しい東日本大震災の発生から3年半余りが経過した。被災地では、今でも25万人以上もの方々が、仮設住宅などでの生活を余儀なくされている。1日も早い復興に向けて、引き続き政府・民間を挙げた取り組みが必要である。

 復興庁によるがれき処理、除染作業、社会インフラの再建などは徐々に成果を上げ、東北地方では数値上では雇用環境が改善されているとはいえ、依然として厳しい状況が続いているのが実態だ。

 深刻なのは、被災地からの人口流出が止まらないという事実だ。被災した東北地方は、震災前から人口流出が続く地域であったが、2010年1月を1.00とした場合の被災3県の人口は0.93まで減っており、岩手県の沿岸部では0.91まで減少している(2014年時点)。住民票ベースで人口の2割程度が減少している自治体もある。

 なぜ人口流出が止まらないのか。それは、被災地に高付加価値産業が少なく、求人者が望む職業が少ないからだ。有効求人倍率こそ、全国で宮城が1位で福島が2位となっている。だが、職のミスマッチが発生しているのが実情だ。

 今、求人が多い職種は、仙台等の都市部を除いては、主に復興に絡む建設業、除染作業(福島の場合)などが中心である。優秀な人材やUIターンで地元に戻りたいと考える人々も、東北に戻ることができず、そのために雇用が集まらず、地域の疲弊が止まらない。

 震災以前から直面していたこの課題が、震災後、一層深刻さを増しているといえよう。

 復興は、単に「震災前の町を元通りに作り直す」というようなインフラの再整備にとどまってはならない。被災地において、将来にわたって、持続可能な地域社会が構築されることこそが、真の復興である。その鍵は「職」「町」「人」だ。震災復興を、震災以前からの課題を解決するチャンスとしなければならない。

 2020年には、東京オリンピック・パラリンピックが開催される。昭和30年の東京オリンピックで、我々の先人たちは、世界に向けて見事に戦後復興した新生日本を魅せつけた。我々も2020年、世界の人々に向けて、新しい東北・新しい日本を見せつけようではないか。

1. 【職】よそ者、若者、バカ者を活用し、規制緩和による楽市楽座を実現し、東北に産業を創出せよ!

 持続可能な地域への復興に向けて鍵となるのは、産業・雇用の確立だ。経済の復興なくして真の復興はない。

 現在、被災企業・事業者の7割以上の事業者が事業を再開し、鉱工業生産(IIP)や小売販売額もほぼ震災前の水準に回復した。農業では、津波被災農地の約7割で営農再開。漁業では水揚量が震災前の約7割まで回復。観光業では、震災前の8~9割程度まで回復している(東北地域への訪日外国人旅行については、震災前の5~6割程度)といった状況だ。回復がかなり進んだともいえるが、依然として厳しい環境下にあると評価するのが妥当だろう(2014年時点)。

 そもそも、被災地域は、震災以前から人口減少、過疎化、少子・高齢化が進んでいる地域だった。現在は、復興需要による雇用や消費が東北経済を後押ししているが、復興需要は当然ながら今後縮小していく。

 復興需要縮小後も、東北発のビッグインダストリーを創出し、東北に産業集積と雇用を生み出すためには、以下の3つが鍵となる。

 それは、 

(1)よそ者、若者、バカ者の活用(ベンチャー・NPO)

(2)徹底的な規制緩和による楽市楽座(農林水産業)

(3)外部からの積極的な投資による産業の植生(工業)

である。順に説明していこう。 

(1)よそ者、若者、バカ者の活用を!(ベンチャー・NPO)

 地域や組織の成長に必要なのは、「よそ者、若者、バカ者」である、と言われる。このことは震災復興にもまさに当てはまる。

 つまり、過去の成功体験やしがらみに固執しない「若者」。地域や業界の常識に捉われない「よそ者」。そして考え過ぎずとにかく行動する「バカ者」。地元の人だけが以前と変わらないやり方で取り組んでも、何も生まれない。「よそ者」と連携し、「若者」が参加し、「バカ者」がイノベーションを起こすのだ。

 僕が立ち上げた復興支援プロジェクト「KIBOW」を機に行動を起こした多くは「若者」だったし、彼らの常識外れな発想は平時では「バカ者」扱いされるものだっただろう。さらにこれらの活動に多くの「よそ者」が加わった。女川にいる小松洋介氏(特定非営利活動法人 アスヘノキボウ 代表理事)は女川と縁もゆかりもない。また、南三陸町の厨勝義氏(イノベーション東北 コーディネーター)は、九州は太宰府の出身である。数多くの「よそ者」が、被災地で活躍していることが理解できる。

 震災直後から宮城県山元町に入り、グロービス経営大学院の在校生・卒業生と復興活動を担うGRAを創設した岩佐大輝氏の事例は、100の行動44 農林水産1<「農業を成長産業に」新規参入・大規模化・効率化を促せ!>で紹介した。地元住民との協働によって被災から1年弱で山元町の特産品イチゴの栽培をIT活用農法で復活させ、「ミガキイチゴ」というブランド化をした。このGRAには、数多くのよそ者が働いている。その他にも震災後東北に入った優秀な「よそ者」「若者」「バカ者」たちは数多くいる。

 「よそ者」の参入は雇用を生み、テクノロジーやノウハウの伝播にもつながる。よそ者、若者、バカ者がうまく動ける環境を整え、新たな価値創造や販路開拓などのイノベーションを起こし、高付加価値産業を育てることが重要だ。彼らのバイタリティーによって、新たなベンチャーを創出し、新たな雇用を生み出すことが重要だ。

(2)徹底的な規制緩和による「楽市楽座」を!(農林水産業)

 東北に新たな産業を集積するには、特区などの制度を活用して思い切った規制緩和を行うことが必要だ。これを、東北版「楽市楽座」と呼ぼう。

 宮城県の村井嘉浩知事は、「水産業復興特区」構想を掲げた。漁業復興のために民間企業を参入しやすくし、漁港を5分の1まで統廃合することが目的だ。つまり、「選択と集中」を行い、漁業権を撤廃しようという構想だ。

 提案当時、漁業組合は、事前に相談がなかったことに猛反発し特区構想の撤回を訴えたが、村井知事は撤回しない意思を明確にし、被災地の漁協幹部と対立した。こうした経緯もあるが、村井知事には是非ともやり遂げて欲しい。

 漁業・水産業に関しては、復興事業の進展によって、ハード(施設)は復旧している。しかし、ソフト(販路開拓)が課題となっている。水産庁の調査では、震災前の水準まで水産加工業の売上げを戻せたのは、8%に過ぎないという。厳しい現実だ。一旦失った販路を元に戻せていないのが実情だ。

 だからこそ楽市楽座が必要なのだ。

 また、東北地方の主要産業であるもう一つの第一次産業の農業も特区による規制緩和が必要だ。震災復興4年目の現状では、施設の復旧は進み約7割が営農を再開している。復興の過程で、現在の復興交付金の活用などによって、農地の集積による経営規模拡大や農地の大区画化等が進められる事例も出てきている。だが、一部に過ぎない。

 一方、林業に関しては、被災した製材工場等木材加工・流通施設のうち8割以上が操業を再開している。だが、東北地域は大規模な木材加工施設が集中する地域であり、復興を機に、林業の成長産業化を実現することが求められる。だが、現状ではそうなっていない。

 総じて、施設の復旧は進んだものの、経営の規模化や新規参入は進んでおらず、高付加価値化は実現していないのが現状だ。今、岩手県の水産加工業の求人倍率は4.63倍という高水準だという。人員を募集しても集まらず、中国人実習生や、ようやく集まった地元従業員も60代が中心という状況だそうだ。求人倍率が高い原因は、一次産業が儲からないため、若い人は町を去って行くからだ。一次産業を成長産業化し、賃金を上げて若い人材が集まる産業に育てる必要がある。

 広大な大地を有する東北地方の農業も、三陸沖という世界最高水準の海洋資源を持つ漁業も、森林率70%という広大な資源から良質な木材を産出する林業も、やり方次第で成長産業化することは可能なはずだ。そのためには、これらの産業への参入障壁となる規制を撤廃して「参入の自由」を担保し、外から人や資本を呼び込み、合従連衡で経営を「規模化」できる制度を整備する必要がある。

 先に述べた山元町のいちご栽培の事例でも、土地の所有、株式会社の活用等で規制が多いため、資本の集約ができず苦労してきた。上場によるキャピタルゲインを享受できないために、資本が集まらないのだ。被災地に大胆な特区を導入し、無数のアグリ・ベンチャーが立ち上がることを期待したい。

 だからこそ、復興特区を活用し、復興のための「楽市楽座」として民間の力を徹底活用するのだ。

 農業については、株式会社の農地所有の完全自由化、農地の集積・大区画化にかかる規制の撤廃と耕作放棄地の集約の加速化。漁業・林業についても、漁業権にかかる規制緩和による参入の自由化、生産基盤の集約化、経営の規模化などを行う。そうすることで、新規参入者を呼び込み、規模化とイノベーションで成長産業化することができよう。

(3)外部からの積極的な投資を呼び込み、産業の植生を!(工業)

 東北経済の成長には、外部からの資本の投下を積極的に進める必要がある。外部から資本が入るということは、そこに雇用が生まれ、ノウハウと知恵が移管され、新たな価値が生まれていくことを意味する。つまり、東北に工場を作ったり、事務所を開設したりすることにより、多くのカネを呼び込み、ヒトを招き、チエを外部から注入することが可能となるのだ。

 日本経済新聞によると、震災後被災3県で工場立地が急増していると言う。経済産業省の統計では、震災前の2010年に40件だった工場立地は2012年に93件、2013年には116件に増えた。投資の呼び水になっているのが補助金だ。特に最大で投資額の4分の3を補助する「ふくしま産業復興企業立地補助金」の効果が大きい。のべ約400社が採択され、補助予定額は2000億円弱に上る。

 東北への工場立地で目立つのが自動車関連企業だ。2012年7月に発足したトヨタ自動車東日本(宮城県大衡村)を核に部品メーカーの集積が進む。デンソー福島(福島県田村市)は約87億円を投じ、カーエアコンなどの工場を拡張した。豊田合成は約29億円を投じ、宮城県栗原市にエアバッグなどの新工場を建設する。鋼材加工業のメルコジャパン(茨城県日立市)が宮城県山元町に22億円を投じ、新工場を建設する。

 福島でのもう一つのけん引役が医療産業だ。県は医療機器の開発・製造を産業復興の柱と位置付ける。これまでに「ふくしま産業復興企業立地補助金」の採択を受けた企業の1割にあたる41社が医療福祉機器関連だ。例えば、オリンパスは会津若松市と西郷村に新工場棟を建設し、内視鏡などの生産能力を高める。東北ニプロ製薬(福島県鏡石町、現ニプロファーマ株式会社)も医薬品製造設備を増強する。

 復興に一番重要なことは、東北以外の地域からヒト、カネ、チエが導入されることである。トヨタを核とした自動車産業、IHIを核とした航空機産業、さらには医療機産業、エネルギー関連産業等が、東北から多く輩出されることを願っている。

 そのためにも、補助金以外にも、より大胆に、特別控除や無税化の適用条件・期間の拡大、地方税の減免・優遇措置によって、東北地方に投資を呼び込むことが必要だ。

2. 【町】コンパクトシティを先取りした町づくりを進めよ!

 政府の復興推進委員会は2014年4月、「新しい東北の創造に向けて」と題する提言を取りまとめた。そこでは、 「復興を単なる原状復帰にとどめるのではなく、震災復興を契機として、人口減少、高齢化、産業の空洞化といった日本全国の地域社会が抱える問題を解決し、我が国や世界のモデルとなる「創造と可能性のある未来社会」としての「新しい東北」を創造する」と宣言されている。

では、具体的には、何が「未来社会」で、何が「新しい東北」なのだろうか?

 冒頭で指摘したように、復興は単なる原状回復であってはならない。集中復興期間の 5 年間で25 兆円もの巨費を投じる東北の復興事業は、将来にわたって持続可能な町・自治体を東北に新たに創るものでなければならない。

100の行動では、「新しい東北」に向けて大胆に3つほど提言したい。

(1)コンパクトシティ化

 被災地は震災以前から少子・高齢化や人口減少などに直面してきた。だからこそ100の行動61 国土交通5<発想を転換し過疎化を肯定的に捉えよ!地方都市への集住を促進し、都市化率を上げる政策を!>が、この地域にこそ必要になるのだ。

 人口減少や高齢化、産業の空洞化という日本全体が抱える諸課題を解決する先進事例として、東北の復興では、都市化率を上げるコンパクトシティ実現を進めるべきであろう。

 そのためには、震災後4年目に入った今こそ、政治や国がリーダーシップを発揮し、市町村の枠を越えた広域連携を進め、コンパクトシティの実現を目指すべきだ。

(2)防潮堤の代わりに高台移転を!

 市町村等の復興計画では、どうしても高齢者の意見に引っ張られてしまう。つまり、高い防潮堤をつくり、以前あった通りの町の再生に引きずられてしまうのだ。高い防潮堤に囲われた町は、魅力を失い、若者は寄り付かなくなってしまう。防潮堤によって砂浜が見える風景が無くなってしまうからである。

 100の行動では、無駄なマンモス防潮堤の建設に反対している。2014年5月24日にマンモス防潮堤に関するシンポジウムでも、安倍昭恵氏を交えて議論した。高い防潮堤を立てる代わりに、津波に流された地域での居住を原則禁止し、高台移転を進めて、上述のコンパクトシティを実現する契機とするべきと考える。防潮堤に使う予算があるならば、高台移転は可能なはずだ。

 政府や首長のリーダーシップで、津波の被災地域への住居等の設置を抑えて人を住ませないようにし、都市を集約化するといったビジョンを改めて示し、意見を集約していくことが必要だ。

(3)医療、教育、行政で先端技術の活用を!

 被災地には、高齢者が多い。だからこそ、最先端の医療ネットワークを作る契機としたい。

 大病院などの中核医療施設は集約化する。その他は軽度の医療・健康相談などを提供する診療所にする。さらに、住宅をテレビ電話やネットで繋ぐなど、遠隔医療の活用を進めることが重要だ。

 そのためには、遠隔診療の適用範囲の拡大、処方箋のeメールなどによる発行・電子化などの規制緩和が必要となる。複数医療機関での電子カルテの共有やテレビ電話やネットを利用した遠隔での健康相談・診療・服薬指導など、ITを活用した遠隔医療を進める医療機関に対する支援、設備投資減税などの経済的な支援も行うべきだろう。

 当然、先端技術の活用は医療分野にとどまらず、遠隔教育や、マイナンバーを活用した行政の効率化、オンデマンドバスなどの活用による地域の足の確保など、コンパクトシティの実現を東北における復興において先進的に取り組むべきだ。

 コンパクトシティ化の推進によって、昔どおりの原状復旧のための箱モノ建設や防潮堤の再建などに国費を投資するのではなく、前述の産業構造の転換(「職」)や人材育成(「人」次に述べる)にこそ国費を投入する必要がある。

3. 【人】東北の未来を担う人材を育てよ!

 東北の未来を描く意味でも、今世界の人材育成や職の分野で何が起こっているかを論じてみたい。今、世界では、これまでには無かった3つのことが起こっている。

 1つには、人の「職」が無くなってきていることだ。コンピューターやロボットが人の代わりに働いてくれるからだ。次に、人の「職」が世界との競争にさらされてきていること。インターネットの発展や物流の進化によって、世界のボーダレス化が進み、職が海外に流出してきているのだ。最後に、「職」の中身が変わってきていることだ。アメリカでは、大学を卒業した学生の3分の2が、彼らが小学校入学時にはこの世に存在しなかった職業に就職しているというデータがある。

 こういった急激な世界の変化を考えると、復興においては、ハコモノに投資をするよりも、新たな物・仕事・価値を生み出す「人」、つまり教育に復興資源を投入していくしかない。そして教育の中身を変えざるを得ないということが改めて認識されよう。

 このため、復興4年目の今、我々は、視点をハードからヒトに移すべきであろう。これまでの3年半でインフラなどのハードの復旧は進んだが、真の課題である地域と産業の成長は、人の成長でしか成り立たない。前述した「KIBOW」からもいくつもの取り組みが生まれたが、この息吹がたくさん、かつ大きく育たないと復興にはつながらない。そのためには、教育が必要なのだ。

 震災後に、東北の大学・大学院を調べて驚愕したのが、東北地域にはリーダーを育成するMBAを発行する大学院が、何と1つも存在しないという事実だ。震災後には、多くの覚醒された人々が、社会のため、東北のため、地域のために、「流されてしまった人々に、恥ずかしくない生き方をしたい」と立ち上がった。だが、気持ちだけが空回りしてはいけない。やはり、リーダーとしての教育、経営者としての教育が必要となる。

 この現状認識に基づき、グロービスでは、教育の場を提供するためグロービス経営大学院の仙台校を震災後1年で立ち上げた。未来にわたって東北の再創造を担う覚悟と能力をもったリーダーたちが育ち、その精神が、東北の復興を支えると信じているからだ。

 ありがたいことに、そのグロービス経営大学院仙台校に2億円近くを、独ダイムラー社が寄付してくれた。この寄付金のお陰で、被災地に住む数多くの若者が学ぶことができ、東北から始まるNPOに資金が投下されることになった。この場を借りて感謝したい。

 政府としても、復興の資源を積極的に人に投資すべきであろう。その手法も、ハコモノ施設を作ったり、大学等の教育機関に補助金をどかっと渡したりするのではなく、やる気のある「人」に直接投入するのがよい。やる気のある学生に奨学金として投資すれば、その投資の価値は将来何十倍にもなって東北の復興に貢献するはずだ。

4. 官・民・NPOの役割分担を明確化し、着実な連携を!

 東北の復興に向けては、国などの官が主導するのではなく、企業やNPOなどの民間が主導していくことが重要だ。

 政府は、官民連携の基盤づくりのため、2013年12 月 に「新しい東北」官民連携推進協議会を設立 (会員数は700 団体超)し、各種の情報共有や連携基盤の構築に努めている。それ以外にも、2014年7月に「東の食の実行会議」が仙台で開催されるなど、東北の復興を進めるNPOなどを応援、支援する場は多く立ち上がっている。

 さらに、今年度NPO等が活用可能な政府の財政支援は、復興庁のまとめによると、数え方にもよるが25事業以上、予算合計は1000億円以上の財政支援措置メニューがそろえられている。(2014年時点)

これらの場とメニューによって、企業、NPO、行政の連携を強化することが課題だが、現状では必ずしも足並みが揃っていない。「場」は確かに立ち上がっているものの、実際の連携プロジェクトは生まれてこない。課題は、行政、企業、NPOの役割分担の明確化と、全体状況を把握し、NPOの力を適材適所に配置・調整する機能の強化だ。

 このため、社会におけるNPOの役割・在り方を社会的に明確に認識することとともに、セクターや地域を越えて連携を強化するコーディネーターが必要だ。民間からの政策提言によって復興庁では来年度予算で「被災者支援コーディネーター」を設立する。こういった事業をさらに進めるべきだ。なお、NPOに関しては、今後「100の行動」内閣府編において、詳述する予定だ。

 私も微力ながら、2011年3月14日にKIBOWを立ち上げた。「大自然の前では人間はちっぽけな存在かもしれない。だが、連携すれば大きなことができるのではないか」と思い、希望のかけ橋となるべく、KIBOu rainBOWを組み合わせてKIBOWと名付けた。

 1億円以上の寄付金を集めて、被災地で頑張っている「人」に焦点を当てて寄付をしている。既に、被災地を3巡、4巡した。
http://KIBOWproject.jp/

 2012年10月からは、「KIBOW方式」という方法で、被災地の人を支援している。具体的には、プロジェクトを行いたい、あるいは実施している人・組織がプレゼンをして、参加者が投票し、100万~200万円をその人達の支援に充てるのだ。その資金をもとに、新たなプロジェクトが始まり、その地域の人々が投票をすることにより地域のバックアップを得られるという手法だ。

 水戸から始まり、既に福島、女川、いわき、南三陸、陸前高田、石巻にてこのKIBOW方式でのNPO支援が実施された。2014年11月にはKIBOW総会と称して、今まで支援してきた組織を集めた会合が開催される。地道にNPOを支援し続けたい。

 御参考までに、KIBOWの動画を紹介する。 

http://youtu.be/7bPh7iUOvSw

 東日本大震災では、発生直後より世界中の人々から大きな支援を得た。2020年の東京オリンピック・パラリンピックの際には、世界に向けて、悲惨な自然災害から見事に復興した日本と東北を発信したい。そのため、「職」「町」「人」に焦点を当てた明確な復興ビジョンが、今こそ求められているのだ。
 

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