NHK改革:NHK税を創設し、業務・ガバナンス改革を断行せよ! 

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初稿執筆日:2014年7月11日
第二稿執筆日:2016年6月8日

 社会現象にもなったNHK連続テレビ小説『あまちゃん』は、関連商品であるオリジナル・サウンドトラックや、ドラマの中で天野春子役の小泉今日子が歌う『潮騒のメモリー』などでも売れ行きを伸ばした。

 NHK番組の商業使用による収益はどこに還元されているのか?実は、これはNHKが子会社として持つ営利企業の収益となり、NHKグループ内に還元されることになっている。あれ?ちょっと待てよ。NHKは我々の受信料によって成り立つ「公共放送」のはずだ。

 NHKは、 2012年に数土文夫委員の御尽力により、初めて月額最大120円受信料を値下げした。とはいえ、地上波のみだと月額1310円だが、衛星放送を含めると月額2280円に及ぶ。NHKを視ていようがいまいが、衛星放送を視ていようがいまいが、この受信料だ。さらに、個人ではなく事業所の場合は、テレビの数ごとに受信契約が必要になる。オフィスにテレビを10台置いている場合は10台分、ホテルなどでは、テレビのある部屋ごとに受信契約を結ぶことになっている。

 では、携帯電話で見るワンセグはどうなっているのか?実は、ワンセグも受信契約の対象だ。ただし、受信契約は「世帯ごと」の契約となるため、家庭で既に受信契約をしている場合は不要となる。

 国民の受信料で成り立つ公共放送であるはずのNHKが最近ではお笑い番組や韓流ドラマの放映まで行い、サイドビジネスでも儲けている。さらに、1万人を超す職員は民間企業平均の約4倍の平均年収約1185万円、厚生費などを含めると1780万円の高額報酬だ。しかも関連会社での不祥事はいまだに続発している。

 受信料不払い者には、裁判を起こしてまで受信料の取り立てを行うNHKは、分かりやすく言えば「国民強制加入pay TV」と言えるだろう。だが、受信料の納付率は全国でバラバラだ。沖縄や大阪、東京などでは5-6割の世帯しか受信料を支払っておらず、全国平均でも75%という不公平な現状がある。25%にも及ぶ国民は払っていないのだ。

 携帯やスマートフォン、インターネットが発達した今の時代に即して、NHKは、公共放送の原点に返って、役割を厳格化する抜本的な改革が必要であろう。今回の「行動」では、NHKにスポットライトを当ててみた。

1. 受信料:タダ乗りを排除するためにも、「1世帯あたり1000円のNHK税」を創設せよ!

 世の中で一番不公平なのは、正直者がばかを見る仕組みだ。国民年金で問題になっているのは、払っていない人が多いことだ。NHKでも同様だ。国民の4人に1人は、タダで視ているのだ。この現状を改善しなければ、「正直者がばかを見る」ことになってしまう。

 NHKは、放送による広告収入が禁止されているため、6000億円強の予算のうち、約95%が受信料収入だ(なお、後述のように子会社による営利活動は認められている)。しかし、既述のように、受信料の納付率は全国平均で74.8%、支払率上位の、1位の秋田(94.6%)や2位の島根(93.8%)と、ワースト1位の沖縄(42.0%)、ワースト2位の大阪(59.1%)、同3位の東京(63.3%)などとの間には、大きな差がある。

 国民の約4人に1人は受信料を払っていないにも関わらず、すべての国民がNHKの放送を視聴することができる、この不公平感を無くす必要がある。

 諸外国では公共放送に広告収入を認める国もある。例えばフランスでは、政府が完全保有する持ち株会社フランス・ テレビジョンの傘下に公共放送があり、財源として、30%までの広告収入が認められている。受信料は税金の扱いで徴収される。ドイツの公共放送でも受信料以外に広告収入が認められている。

 しかし、やはり公共放送の原点に立ち返れば、後述のように民放にできることは民放に任せ、公共放送の役割を厳格化させるべきだ。その上で、NHKの業務を絞って、現在2280円(衛星契約含む)の受信料を大幅に引き下げて1世帯あたり1000円とし、それを「NHK税」として税金で国民から徴収し、税金で成り立たせる公共放送とするといった抜本的な改革が必要だ。

 そうすれば、「4人に1人はタダ乗りだ」という不公平は改善される。現状2000円以上も支払っている受信料が1000円となれば、国民負担も軽減される。国家権力からの公共放送の独立性に関しては、別の観点で担保すれば足りるだろう。

 さらに、税として全世帯から徴収すれば、その徴収は住民税と同様に市町村に代行してもらうことが可能になる。徴収の効率化の観点でも極めて合理的だ。1世帯あたり1000円でも徴収率が100%に近ければ、直近の国勢調査による日本の総世帯数5184万世帯から5000億円強のNHK税収を見込むことができる。これは、直近のNHK受信料収入の6221億円と比べても、1000億円程度の収入減であり、以下に述べるNHKの業務スリム化と経営合理化による経費節減で吸収可能なはずだ。

 以上のように、公平性、国民負担軽減、効率性、予算確保の各点で合理的な「1世帯あたり1000円のNHK税」の創設を検討して欲しい。

2. 業務効率化・人件費圧縮:公共放送の役割に回帰し、職員の待遇は国家公務員と同じにせよ!

 公共放送の役割とは、NHKによれば「放送の自主自律を貫き、質の高い多様な番組や正確で迅速なニュースを全国で受信できるよう放送することで、民主主義社会の健全な発展と公共の福祉に寄与することです。 NHKは、市場原理だけでは律することのできない公共性を強く意識し、特定の利益や視聴率に左右されずに放送事業を行う」ことだという。

 確かに公共放送の必要性は否定しない。しかし、公共放送の必要性に比して、今のNHKの放送範囲は広すぎると言えよう。国民のすべてが支払う視聴料(NHK税)で運営する公共放送としての事業範囲は、最低限に必要不可欠なものに限定するべきであろう。

 例えば、放送内容に関しても、オリンピックやワールドカップの放映などは、民放でできるものである。NHKによる放映は民業圧迫につながっている。お笑いや韓流ドラマを放映するのであれば、民放と全く変わらないではないか?

 このため、NHKは公共放送に回帰し、大幅なリストラ・業務スリム化を行うべきだ。お笑い番組などのバラエティ分野等は、民放に任せればよいと思う。

 NHKの放映範囲の不要な拡大は、NHKのチャンネル数が多すぎることにも大きな要因があろう。現在、NHKは地上波テレビ2波、衛星波2波、ラジオ3波を持っているが、公共放送として本当に7波ものチャンネルが必要なのだろうか?明らかに、公共放送としては、多過ぎると言えよう。民放にできるものは、徹底的に民放に任せるべきであろう。

 地上波2波は、総合、教育としてそれぞれ公共放送の役割を担っているが、衛星放送については、難視聴地域対策として行う必要はあろうが、1チャンネルで十分だ。ラジオ放送についても、民間のFM放送や音楽配信サービスが普及している現代では、「多彩な音楽番組の提供」といった公共放送としてのラジオ放送のかつての役割はとっくに終わっている。NHKラジオは1波で十分だろう。これによって現行の7チャンネルは4チャンネル(地上波2、衛星波1、ラジオ波1)に削減できる。

 NHKの本来の実現すべき価値の一つは、幅広い国内外のネットワークに裏付けられた正確な報道や良質なドキュメンタリーを国民に届けることにある。海外支局の人員不足が深刻なのに対して国内では地方を含めてお釣りがくるほど手厚く、そのダブつきが結果的に無駄な仕事を生んでいる。国民の期待に応え価値を実現する観点から経営資源の再配分が必要だ。まさに、今後は海外配信を意識した展開を期待したい。

 また、NHKの職員の待遇は、一人当たり厚生費などを含めると1780万円で、民間企業の4倍という厚遇だ。能力に応じてメリハリを付けた給与体系とし、人件費の削減にもつとめるべきだ。一つのアイデアは、NHK税として賄われるのであれば、国家公務員と同等にするのが、最も説得力がある方法だ。

 これらの結果、業務がスリム化し、不要なチャンネルを廃止し、人件費削減で、予算規模の縮小が可能となり、国民負担の軽減につながることになる。そして、その分を海外に振り向けることが可能となる。

3. コンテンツの無料配信:NHKオンデマンドは無料化し、すべてのコンテンツを無料配信せよ!海外を意識したコンテンツ配信、広報活動に注力せよ!

 NHKのコンテンツには教育番組、ドラマ、ドキュメント番組など極めて質の高いものが多い。現在はそれらのコンテンツをNHKグループで囲い込んでいる。NHKオンデマンドなどで有料配信し、映画やDVDなど版権利用によるコンテンツの二次利用でも儲け、その利益をグループに滞留させているのが現状だ。

 しかし、NHKが制作したコンテンツは、政府の「オープンデータ」と同じ発想で、すべて無料で開放するべきではないか。NHK税が原資となるコンテンツであるから、国民の財産として無料開放するのだ。すると、民間がそれを二次利用し、新たなビジネスを生みだせる環境もできる。また、無料開放によって日本の情報・文化等の発信力も高まるはずだ。

 特に、公共放送の役割としては、海外への日本の広報、発信という役割が重要だ。100の行動22 外務8<コミュニケーションとネットワークパワーを強化せよ!>において、「国際放送の充実を!」と、NHKワールドTVなどの国際放送の発進力強化を提言した。いまや、NHKが海外で果たすべき役割はますます大きくなってきている。NHKは日本の対外発信戦略の一翼を担うという強い意思を持って、海外へのコンテンツ配信を戦略的・積極的に展開してくべきであろう。

4. 経営形態・子会社:NHK関連子会社はすべて売却し、必要不可欠な業務は本体に吸収し、本体は経営形態を株式会社せよ!

 NHKの連結子会社は、売上高500億円を超える最大の(株)NHKエンタープライズ(NHKの番組制作下請け)を筆頭に、(株)NHKエデュケーショナル、(株)NHKグローバルメディアサービス、(株)日本国際放送、(株)NHKプラネット、(株)NHKプロモーション、(株)NHKアート、(株)NHKメディアテクノロジー、(株)NHK出版、(株)NHKビジネスクリエイト、(株)NHKアイテック、(株)NHK文化センター、(株)NHK営業サービスの13社に上る。加えて、持ち分法適用会社に(株)放送衛星システム、その他、財団法人や学校法人などを合わせて、関連団体は合計26社に及ぶ。

 名前を列挙しただけでも、明らかに多すぎると言えよう。しかもこれらの子会社の役員をみると、ほぼすべてがNHKのOBであり、NHKにとっておいしい天下り先になっているのだ。さらに、NHKの関連会社では最近でも不祥事が続いている。子会社のNHKビジネスクリエイトの営業部長らが経理上の不正処理で2011年の売り上げを約1億4000万円水増ししていたことや、NHK出版の編集長が2003~13年に架空発注により約1350万円を不正流用していた事件など、毎年のように起こっている。

 こういった不祥事は、受信料という安定収入に甘え、グループ企業内で利益を還流させる「ぬるま湯的経営」の現れであると言えよう。

 NHKに営利企業への出資が認められたのは1980年代にさかのぼる。教育テレビの開設など業務の拡大を続けた結果、赤字体質に陥ったため、子会社による営利活動が解禁されたのだ。

 しかし、これらの子会社の現状は、番組制作を系列に外部委託し、番組コンテンツを二次利用しながらも、受信料収入で得た資金を基に収益を上げてグループ内で内部滞留させているに過ぎない様に見える。実際、2006年の会計検査院の検査で、NHKの子会社など関連33団体(当時)の利益剰余金(内部留保)が約886億円に上っている事実がある。

 そもそもNHKの赤字経営の救済措置から始まったNHKの営利子会社に存続の必然性はない。公共放送たるNHKの番組制作などは、NHKの子会社に委託せずに公正な入札を通して外注するべきだし、コンテンツ二次利用ビジネスは、既述のように無料開放することになれば、不要となる。

 したがって、NHKを冠する子会社はすべて民間に売却し、その売却益は国民に還元してはどうだろうか。どうしても必要な業務は、NHK本体に吸収することで存続すればよい。同じく、NHKを冠する財団法人、学校法人などの関連団体も、必要性をゼロベースで見直した上で、整理・統合を行うべきであろう。

 さらに、NHK本体に関しても、分かりにくいガバナンスを透明化する必要があろう。NHKには、経営に関する基本方針、内部統制に関する体制の整備をはじめ、毎年度の予算・事業計画、番組編集の基本計画などを決定し、役員の職務の執行を監督する機関として、経営委員会が設置されている。しかし、累次の改革にも関わらず、昨今のNHK会長の動向を見ても、経営委員会は実質的には諮問委員会の役割程度しか果たしていないと言わざるを得ない。

 このため、NHKのガバナンスを分かりやすくするためにも、100%政府出資の株式会社としてはどうだろうか。そして、現在の経営委員会を取締役会として執行部の経営監督をさせ、経営を透明化するのである。

 100%政府出資の株式会社としては、株式会社日本政策投資銀行や株式会社国際協力銀行など、多数ある。これらの特殊会社は利益が出た場合は国庫に納付することとされており、NHKの場合も、NHK税で予算を組む以上、利益は国庫納付とすべきであろう。

 

5. KPI:NHKの経営目標の明確化を!

 NHKは平成24~26年度経営計画において、以下の4つの経営目標を掲げている。

・  「公共」安全・暗視を守るなど公共放送の機能を強化
・ 「信頼」世界に通用する質の高い番組や日本、地域の発展につながる放送・サービスの充実
・  「創造・未来」放送と通信の融合時代にふさわしい、さまざまな伝送路を利用した新たなサービスの充実
・  「改革・活力」効率的な経営、営業改革、受信料制度の理解促進、活力ある職場づくり

 実に分かりづらい。もっと明確なKPIを定め、達成度合いを数値化して評価すべきだ。KPIは、定量化できないと意味が無い。

 公共放送としてのKPIは、例えば以下の4つが挙げられるだろう。

(1)視聴率とコンテンツ二次利用の活用度
 民放ほどではないにせよ、公共放送にとっても視聴率は重要な指標となろう。税金で賄われているのに、視られていないのでは何のために存在するかわからないからだ。また、無料配信によるコンテンツがどれだけ二次利用されたかも、同様に重要な指標となる。

(2)視聴者満足度とコンテンツのクオリティ
 中立・公正な報道、災害や異常気象などの際の速報性、国民にとってNHKの放映コンテンツがどれだけ満足度があったか、また、視聴率や満足度では測れない伝統芸能や教育・教養・囲碁番組などのコンテンツのクオリティに関して、定期的な世論調査やマーケットリサーチ等で測ることも必要だろう。

(3)費用削減による収益の向上
 可能な限り、費用を削減し、収益を国庫に還元する。以前の「行動」でも提言したが、生まれた収益の一部は、プロフィットシェアリングとして、職員に還元するのも一案だ。職員の努力により、国民の費用負担が減るのであれば、説明がつくと思う。

(4)海外における受容度
 海外への発信は今や公共放送の重要な役割だ。従い、海外への日本の情報・文化の発信力の指標として海外における受容度は重要な指標だ。コンテンツの海外発信により、どれだけの人が視たのかを測り、定期的にモニターし、PDCAサイクルを回し、どうすれば海外にさらに浸透するかを、考え行動して欲しい。

 こういったKPIを定め、達成度合いを数値で評価することを提案したい。こういった明確な指標でNHKの公共放送としての役割を分かりやすく示さないと、視聴料(後にNHK税)を払っている国民は、納得しないであろう。
 

 

 

 

京都大学工学部卒、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。住友商事株式会社を経て、1992年株式会社グロービス設立。1996年グロービス・キャピタル、1999年 エイパックス・グロービス・パートナーズ(現グロービス・キャピタル・パートナーズ)設立。2006年4月、グロービス経営大学院を開学。学長に就任する。若手起業家が集うYEO(Young Entrepreneur's Organization 現EO)日本初代会長、YEOアジア初代代表、世界経済フォーラム(WEF)が選んだNew Asian Leaders日本代表、米国ハーバード大学経営大学院アルムナイ・ボード(卒業生理事)等を歴任。現在、経済同友会幹事等を務める。2008年に日本版ダボス会議である「G1サミット」を創設。2011年3月大震災後に、復興支援プロジェクトKIBOWを立ち上げ、翌年一般財団法人KIBOWを組成し、理事長を務める。2013年6月より公益財団法人日本棋院理事。いばらき大使、水戸大使。著書に、『創造と変革の志士たちへ』(PHP研究所)、『吾人(ごじん)の任務』 (東洋経済新報社)、『人生の座標軸』(講談社)等がある。

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