電波オークションの導入により、電波社会主義から脱し、電波の民主化・市場化を促進せよ! 

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初稿執筆日:2014年7月4日
第二稿執筆日:2016年5月19日

 笑えない例え話をしよう――。日本の首都、東京。ここでは、土地の配分が政府の裁量の下で行われている!さらに、土地の転売も認められていないため、土地の流動性は極めて低く、明治時代に土地を入手した人がいまだにその土地を所有し続けている。地代は市場価値を無視し、政府の裁量で極めて安く設定されているため、ある人は東京で牛を飼い、ある人は田んぼを作り、ある人は一年に一度だけ使う別荘として使っている。地代が安いので、そこで利益を生み出していなくても、所有者にその土地を手放すインセンティブは生じない。本来なら、東京では、1年間に約85兆円という世界最大の富を生み出すことができるはずであるのに、だ。

 …もちろん、例え話である。しかし、このようなことが実際に起こっていたらどうだろうか。当然、普通の人ならこう考えるだろう、「東京の土地も自由経済の原理に従って流通させるべきだ」と。

 土地に関しては、このような市場原理を無視した権利分配制度が日本で行われるはずはない。しかし、土地資源とよく似たある財に関しては、このようなことが今でも行われているのだ。それが「電波」である。

 電波は莫大な経済的価値を生み出す国民の財産であると言ってよいだろう。しかし、日本では、つながりやすく付加価値の高いUHF帯やVHF帯においても、アマチュア無線、列車無線、消防無線、警察無線、防災行政無線など、利用頻度の低い利用者に利用させているなど、電波を無駄使いしているのが現状だ。(もちろん、防災行政無線等の重要性を否定するつもりはないが)

 ICTのコアインフラであるにも関わらず、いまだに社会主義的配分政策がなされている日本の電波の市場化を早急に実現すべきである。この行動では、ICTのコアインフラである電波に関して、執筆することにする。


1. 電波に市場原理を導入せよ!

 電波は、今や我々の生活になくてはならないものとなっている。テレビやラジオにとどまらず、携帯電話やインターネットでも、車を運転するときも、スーパーのレジで会計をするときも、電波が使われている。いまや携帯電話の契約者数は人口をはるかに超えて、大手3キャリアだけで約1億5648万人(2016年3月末)、スマホの世帯普及率も67.4%とガラケーを超えている(2016年4月発表の内閣府調査)。モバイルに加え、自動車のITSやスマートグリッドのM2M(マシンtoマシン)など、さらには最近では、モノのインターネット(Internet of Things)と言われ、体重計さらにはゴミ箱のようなICT以外の機器にも無線が使われる時代になった。今後も電波によるワイヤレスネットワークの需要は拡大していくことは確実だ。ICTは今後ますますモバイル、ワイヤレスの時代に移行する。そのコアインフラとなるのが、電波だ。

 電波は、携帯電話等の電気通信産業だけでも13.6兆円、テレビなどの放送産業だけでも3.9兆円の価値を生み出し、情報通信産業全体ではその市場規模は82.2兆円に達している(平成27年版情報通信白書)。さらに、欧州各国が3G携帯電話に用いる周波数オークションを実施した際の落札価額は、総額で1500億米ドル(15兆円)以上にも及んだことはよく知られているだろう。

 これほどの市場価値を持つ電波に関して、日本の政府が徴収している電波利用料は年間約716.5億円にとどまっている(2014年)。さらに、冒頭で述べたように、付加価値の高いUHF帯やVHF帯においても、アマチュア無線、列車無線、行政無線など、利用頻度の低い利用者に利用させている。なぜか。それは、日本の電波行政がいまだに社会主義的配分政策を行っているためだ。

 日本では、電波は、電波法によって規制され、周波数分配については、同法に基づく周波数割り当て計画によってなされる。つまり、現状では、総務省電波局による裁量行政によって、周波数の割当がなされているのだ。さらに、現行の電波利用料制度は、平成5年4月に導入されたものだが、無線局免許人から毎年徴収する手数料的なものとして、電波の市場価値をまったく無視した利用料設定がなされている。電波利用料額は、無線局の種別等に応じて10区分(放送局、基地局、人工衛星局、包括免許(携帯電話等)等)に分類し、無線局ごとに課されるため、総額約750億円の電波利用料のうち、無線局を極めて多く設置する必要がある携帯電話会社が7割以上を負担することになっている。

 日本の現行制度の問題点は、 

1)分配方法に関する市場原理の欠如 - 電波を効率的に使用することが可能なユーザーに電波を分配する仕組みができていない
2)電波利用料に関する市場原理の欠如 - 電波利用料が電波の市場価値に比べて極めて低廉であるため、非効率的電波ユーザーに対して市場退出インセンティブがかからない

ことであると言えよう。

 このため、電波に対する需要は極めて大きいが、使用できる電波が足りない、という深刻な電波不足に陥っているのだ。しかし、それは電波の絶対量が不足しているのではない。非効率な電波利用者が温存されていることが原因なのだ。

 テレビ放送は4兆円産業だが、そのマーケットがたった数社のテレビ局によって寡占されていながら新規参入者は数十年出てきていない。携帯電話は市場規模が約11兆円に達し、各社とも1兆円オーダーの利益を生み出すマーケットだが、たった3社によって寡占されている。これは、市場原理に基づかない排他的な現行制度が、新規参入者を締め出し、既得権益保持者を保護してきたためであるといえよう。

 解決策は明らかだ。それは、「電波の市場化」である。電波も土地と同じように市場化すべきだということだ。「購入」を市場原理に任せる「周波数オークションの導入」、土地と同様、価値の高い帯域は高いレント(賃料)を支払う「電波利用料の差別化」である。市場原理を導入すれば、非効率ユーザーは退出せざるを得ず、電波を最も効率的に活用できるユーザーが適正な対価を支払って電波を使用することが可能となり、電波が本来持つ経済効果を発揮し、経済の活性化に大きく寄与することができるだろう。


2. 周波数再編は電波の適材適所を徹底し、国際標準に合わせよ!

 電波は極めて価値の高い財産だ。電波の詳しい性質等については参考資料に譲るが、冒頭で土地の例え話を出したように、電波は、自然界から与えられた「スペース」の使用によって経済的な便益をもたらす。使用しても減少しない。境界線を定めることができる、等の性質から「土地」と同様の「スペース資源」として捉えられる。

 土地であれば、銀座や丸の内などの都内の一等地には、高い付加価値を生み出すオフィスビルが配置され、都市郊外には住宅が、そして田舎には田んぼが、といった具合に、「適材適所」が実現している。電波でもそうあるべきだ。

 電波は一般に周波数が低いほど直進性が低いため障害物の影響を受けにくいが、情報伝送容量が小さい。逆に周波数が高いほど直進性が高く、情報伝送容量が大きいが、障害物の影響を高く受ける。このため、分かりやすく言えば「真ん中」あたりが最も使い勝手がよい。現在の技術レベルで経済的価値が高いのは、VHF帯(30MHz~300MHz)、UHF帯(300MHz~3GHz)、SHF帯(3GHz~30GHz)すなわち30MHzから30GHzまでの帯域であるということができる。

 この電波の「一等地」には、高い経済価値を生み出す電波のヘビーユーザーを配置し、周辺帯域には、生み出す経済価値は低いが必要なライトユーザーを配置する、という明確な考え方が必要だ。

 総務省も、国際的な動向等にも配慮しつつ、累次にわたる「周波数再編」を進めているが、未だ不十分だ。下図の総務省資料を見ても、いまだに、「一等地」である30MHzから30GHzまでの帯域に、FM放送、マルチメディア放送、防災行政無線、消防無線、列車無線、簡易無線、航空管制通信、無線呼び出し、アマチュア無線、コードレス電話、MCA無線、タクシー無線、などなど、雑多な「ライトユーザー」がひしめいているのが現状だ。

 あるべき周波数配置の考え方は、以下のとおりだ。まず、 

1)国際標準への合致

 国際的な周波数の使用帯域は、国際電気通信連合(ITU)の世界無線通信会議(WRC:World Radiocommunication Conference)における各国の交渉によって決められる。はるか昔からアマチュア無線や衛星通信などで全世界共通の周波数へのニーズはあったが、最近では携帯電話やRFID、無線LANなど世界共通の規格を必要とする機器が増加してきているため、新たに割り当てられる周波数に関しては各国で共通の周波数を決定するようになってきている。

 今後、携帯電話も第5世代、第6世代と進化し、他の新たなICT機器も生み出される中で、当然国際標準を無視するわけにはいかない。今後、日本で使用する帯域も国際標準に合致させるとともに、ITUにおける交渉を有利に進められるような中心帯域の確保を行うべきだ。

2)無線でなくても代替可能なサービスは廃止

 無線でなくても代替可能なサービスには、電波利用からの撤退を促すべきだ。タクシー無線、MCA無線(業務用移動通信)や列車無線などは、現在の技術で携帯電話等の他のサービスで代替可能であろう。

3)行政系の無線は周辺帯域へ

 防災、消防、航空管制などの必要ではあるが「一等地」帯域を使う必要が必ずしもない行政無線は、周辺帯域に引っ越しを促すべきであろう。

4)民間サービスでもライトユーザーは周辺帯域へ

 ラジオ放送など、使用帯域が変わってもサービス内容に変化がない民間サービスに関しては、周辺帯域へ引っ越してもらうべきであろう。
その上で、

5)中心帯域は携帯電話へ

 VHF、UHF、SHFといった中心帯域に関しては、国際標準も勘案しつつ、最もトラヒックの高い移動体通信(携帯電話)に優先的に割り当てるべきであろう。携帯電話に割り当てる周波数が多く確保できれば、現在3社で寡占している携帯電話産業へ新規参入によって競争を促すことも可能になる。

6)地上波デジタル放送移行後の空き帯域等の一層の効率化

 デジタルテレビ放送では、アナログ放送と比べて同じ使用帯域で多くの情報量を送信できるため、地デジ化によってテレビ放送による使用周波数帯域の「節約」に成功してはいるが、これも不十分ではないか。ひとつには、地デジへの移行によってせっかく空いたVHFの帯域が、いまだ「自営通信」(公共ブロードバンド移動通信)などに割り振られていることだ。さらに、今後、4K、8Kテレビ放送などが入ってくるにせよ、技術的には、地デジに割り振られている帯域はより削減することも可能なのではないか。地デジ移行後の帯域に関しても、一層の効率化が必要である。

 もちろん、VHF、UHF、SHFのすべてを携帯電話に使わせよというわけではない。上記の基本的な考え方に基づいて、「国際標準に合わせつつ」「中心帯域をヘビーユーザーである携帯電話を中心に」「ライトユーザーは周辺帯域に」「代替可能なサービスは廃止」という周波数再編が必要だ。

3. 周波数オークションの導入を!

 周波数オークションに関しては、民主党政権時に導入を決め、これまで抵抗勢力であった総務省がやっと重い腰を上げ、法案化作業が進んでいたにも関わらず、現在は制度化が見送られているのはとても残念だ。周波数オークションの導入は国庫の財政再建への大きな貢献も期待できる。

 欧米では、電波ビジネスの発展に伴う急速な電波需要の増大とそれに伴う電波の逼迫状況の深刻化を踏まえ、電波の非有効利用者の退出を促し、電波の有効利用を推進するという観点から電波の経済的価値に着目して、1990年代から周波数オークションが実施されている。

 ITバブルの時代、周波数オークション制度導入初期の落札価格は数兆円オーダーとなった事例もある。イギリス、ドイツでは2000 年に行われた第3世代携帯電話向けのオークションで、落札総額がそれぞれ約4兆円、約5兆円に上ったし、アメリカでも、1995年から1996年に行われた第2世代携帯電話オークションは、入札資格を中小事業者に限定していたが、落札総額は約1兆円に上っている。

 こういった事例は、オークション落札価格の暴騰によってその後、落札事業者が破産したり携帯事業から撤退したりするケースがあったことから、むしろ周波数オークション導入の反対論の論拠にされることもある。だが、これらは、欧米での周波数オークション制度導入初期の事例であり、 オークションの実績が積み重ねられてきた近年では、高騰の例はあまり見られない。

 実際、2008年にアメリカで実施された 700MHz帯オークションや2010年にドイツで実施されたLTE等向けオークションでは高騰する事例は発生していない。むしろ、欧米における周波数オークションでは、市場原理が効果的に働き、消費者の支払う料金への落札コストの転嫁や、一部の企業への免許の集中による寡占化といった現象も起きておらず、成功裏に終わっていると評価できる。しかも、オークションを実施することによる勝者は、納税者だ。たとえ新規参入企業が倒産したとしても、リスクをとった投資家が損をするだけだ。数兆円にも上る収入を国民が得られるならば、財政悪化を食い止める一助となろう。

 日本ではむしろ、欧米における先行事例を参考にしてオークションの制度設計を行い、電波の有効利用を促進するとともに財政再建にも貢献する周波数オークションの導入を早期に実現すべきだ。


4. 帯域ごとの付加価値に応じた電波利用料の価格設定を!

 日本の現行制度では、電波利用料は、電波の市場価値をまったく無視し、設置する無線局の数などに応じて課されている。さらに、現行法における電波の使用免許の期間は5年だが、事実上更新が継続されているために、テレビ放送や携帯電話のマーケットが寡占状態にあるだけでなく、既述のように、利用頻度の低いライトユーザーが付加価値の高い帯域に滞留している現状にあるのだ。

 このため、電波の帯域ごとの利用価値や国際的な周波数利用状況などを勘案して帯域ごとの付加価値を計算し、VHF帯やUHF帯、SHF帯を中心とした付加価値の高い帯域に関しては高い電波利用料を設定し、逆に付加価値の低い周辺帯域に関しては低い電波利用料とするといった、帯域ごとに差別化した電波利用料にすべきだ。

 そうすれば、付加価値を生み出せない非効率なユーザーは高付加価値帯域からは自然と退出し、電波利用料の低い帯域に引っ越さざるを得なくなる。電波の適材適所による周波数再編に関しては前述したが、市場原理を導入すれば、合理的な周波数再編が可能となるはずだ。

(もちろん、現在でも例えば電子レンジ等に使用されている周波数帯は、免許不要で無料で使用されている。また、無線LANに使用する周波数帯等は、むしろ「無免許・無料」で電波を開放することが経済活性化に貢献する。また、その他、軍事・防犯・防災・学術等、市場原理では図れない用途も考えられる。したがって、すべての周波数において適正な対価を取るべきであると主張しているのではない。)

 この様に考えてみれば、他のあらゆる財と同様に財のひとつである電波のみが、市場経済の基本である交換すら認められていないというのは、非常に不自然な現象と言えよう(米国では電波の転売が認められている)。

 欧米諸国が周波数オークションの導入によって、「電波の市場化」を成功裏に進めている中で、日本だけが取り残されないようにするため、政策の転換による電波への市場原理の導入が必要だ。



 

京都大学工学部卒、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。住友商事株式会社を経て、1992年株式会社グロービス設立。1996年グロービス・キャピタル、1999年 エイパックス・グロービス・パートナーズ(現グロービス・キャピタル・パートナーズ)設立。2006年4月、グロービス経営大学院を開学。学長に就任する。若手起業家が集うYEO(Young Entrepreneur's Organization 現EO)日本初代会長、YEOアジア初代代表、世界経済フォーラム(WEF)が選んだNew Asian Leaders日本代表、米国ハーバード大学経営大学院アルムナイ・ボード(卒業生理事)等を歴任。現在、経済同友会幹事等を務める。2008年に日本版ダボス会議である「G1サミット」を創設。2011年3月大震災後に、復興支援プロジェクトKIBOWを立ち上げ、翌年一般財団法人KIBOWを組成し、理事長を務める。2013年6月より公益財団法人日本棋院理事。いばらき大使、水戸大使。著書に、『創造と変革の志士たちへ』(PHP研究所)、『吾人(ごじん)の任務』 (東洋経済新報社)、『人生の座標軸』(講談社)等がある。

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