別れた男のことは「きれいさっぱり忘れる」女心に潜む「隠れた前提」 

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さて、女性と男性の違いを論理的に考える事になった私だが、まずは一番気になっている話題から始めたい。

それは、宴席などでよく聞く「女は一度別れた男のことはきれいさっぱり忘れ、男は未練がましい」という類の話だ。さらに、過去の恋愛について「女性は新しい恋で上書き保存。男性はフォルダ分けして永久保存にする」というのも聞いたことはないだろうか?

実は、まず何から書こうかと考えている朝に、歌手の華原朋美さんが、過去に手痛い失恋をした相手として報じられている音楽プロデューサー・小室哲哉さんと、FNS歌謡祭でついに共演した、というニュースがテレビで取り上げられていた。

このニュースを観て私の頭に生じたのが、冒頭の定説に対する疑問だ。
「華原朋美さんは昔の恋を忘れるのに、大変な年月を要しているように見える。女は“きれいさっぱり忘れ”るというのは当たっていないのではないか?或いは単に彼女が例外的なだけなのだろうか?」
「ただ何にせよ、多くの人が女性のほうが過去の恋愛を引きずらないと言うからには、そこに何らかの真実が含まれているはずだ。それは何なのだろうか?」

ある日突然嫌いになったんですよ

さらに、重なるときは重なるもので、今まさに原稿書いている時に、ラジオから流れてきたのが、歌手・槇原敬之さんの『もう恋なんてしない』だ。「もう恋なんてしない・・・なんて言わないよ絶対」と、要は男性の立場から昔の恋人を忘れられない心情を書いている。

そしてさらにその次にかかったのが、女性シンガーTaylor Swiftの歌う『We Are Never Ever Getting Back Together』だ。私たちは絶対、絶対、ヨリを戻したりしない・・・ってことは、やっぱり女性は忘れるのかな?いや、こういうのは逆に「ヨリを戻したい」って気持ちの裏返しなのか・・・?

そこで早速、グロービスの女性陣に集まってもらい、この疑問をぶつけてみた。はたして女性は一度別れた男のことはきれいさっぱり忘れるのか?

以下、インタビューの内容から興味深かった内容を抜き出してみる(ちなみにカッコ内は私の心の声)。

溜田:なぜ女性は別れた男をスパっと忘れられるのか、いや、これは、男のほうがなぜ忘れられないのか、というのと裏腹なのだけれど、まずこれが本当なのか、から教えてほしいんだけど・・・

Yさん:普段、こういうことはあまり話さないんですが、溜田さんからのご質問なので、一応、情報共有ということで言っておくと・・・(じょ、情報共有?)
・・・私、過去に付き合った人がいて、すごく長く付き合って、絶対この人と一緒にいたいと思った人がいたんですね。すごく好きだったんですけど、ある日突然嫌いになったんですよ。あんなに好きだったんですけど・・・わかります?(ぜ、全然、わかりません)
で、そんな彼から半年前ぐらいに電話がかかってきたんですよ。朝。私、声も覚えてなくて「誰?」って言って。「いや、おまえは俺を絶対に知っているはず」とかいうから、「誰ですか?朝っぱらから、いたずら電話は止めてください」って切ろうとして。

・・・・・(気の毒すぎる・・・でもやっぱり忘れるんだ)・・・・

Jさん:確かに、女性は上書きして、男性はスタンプみたいに貯めていくっていうのは、よく言いますよね。(あ、皆、頷いてる。そうなんだ)

Sさん:そうそう、男性はわざわざ名前を付けて保存する。

Jさん:でも女性は次が始まると1つ前は消去、みたいな。そういう感じは確かにあります。

溜田:(消去・・・)そういう話はJさん個人としても同意できる感じ?

Jさん:そうですね。私は前の会社で子どもを産むまでは、しょっちゅうおじさんと飲みに行っていたんですが、上司とかが昔、付き合った女性の話とかを嬉々としてするんですよ。それ自体、なんかもう、私に対して100%油断しているなとか思っちゃうんですけど、3年ぐらい前に終わった話を何度もリフレインする。「相手は全然、覚えてないですよ」って思うんですけど。女性はそういう話をしないですよね。女性は今どうなっているかとか、今どうしようかっていう話はしますけど、3年も前の話はそんなにロマンチックに語る人はほぼ見たことない。

・・・・・(やっぱり男性って忘れないんだ。でも・・・)・・・・

Sさん:ある!ある!!仕事以外の人間関係だと、私は大体、「関係ある」「関係ない」で分けていて、「関係ある」の中に「好き」「嫌い」がいる感じ。

溜田:別れた人で「関係ある」に残った人はいました?

Sさん:いないです。(・・・即答!?)連絡も取らなくなりますし、会わなくなるので。

溜田:感情的に残るとかないの?

Sさん:もちろん別れてすぐってことはないんですけど、1年とか2年とか時間が経って忘れていって、関係ないボックスの中に入ってパーッといなくなる感じ。

・・・・・(ん?あれ?すぐ忘れるんじゃなかったの?)・・・・

Kさん:私は恋愛でもなんでも結構、引きずるので、上司とか周りの人の良いところや悪いところもわりと覚えているほうだと思います。普段は忘れているんですけどね。でも周囲の友人たちは皆さんみたいな人が過半数、というかほとんどだと思います。どんどん上書きしていく人が多い。スポーツみたい。この勝負は負け!次!!みたいな。

インタビューは、このあと延々と続いたので、またいずれご紹介するとして、ただこの短いやりとりの間にも、私の目には過去の恋愛への記憶に関する“定説”が少し違った様相に見え始めていた。というか、実は最初から違和感を持っていた点が、よりクリアになったというほうが近いかもしれない。

私には「あなた、以前に***と言ったわよね」「×××の時に、○○○○したじゃない」など、女性から過去の小さなことを掘り返されては、「よくもまぁ、女性は昔のことを、そこまで細々と覚えているものだな」と半ば感心し、半ば呆れた個人的な経験がある。この経験は恐らく、男性の多くが共有するものではないだろうか。仔細は次回以降に掘り下げたいが、かくのごとく何でもかんでも覚えている女性が、「恋」だけは都合よく忘れられるなんてことはあるのだろうか、とも思うのだ。

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「隠れた前提」を探すと解釈は少し変わってくる

冒頭の「もう恋なんてしない・・・なんて言わないよ絶対」の「もう恋なんてしない」は「これからも恋をしたい」という心情の裏返しだし、「私たちは絶対、絶対、ヨリを戻したりしない」は、「よりを戻したい」という心情の裏返しとも考えられる。人の本心が表層的に言っていることと全く異なるというのはよくある話だし、ここから先は、インタビューの内容を元に私なりの整理で解釈し、定説に対する別な仮説を打ち出してみたい。

まず、ここまでの情報を整理してみよう。

■「女は一度別れた男のことはきれいさっぱり忘れる」や「上書き保存」を裏付ける話:
・Yさんのケース。「すぐ忘れた」。その理由は「ある日突然嫌いになったから」
・Jさんの発言。「上書き」「消去」と一般論を裏書き。
・Jさんの発言。「女性は今の話はするけれど3年も前は語らない」と一般論を裏書き。
・Sさんのケース。「関係ないボックスに入ってパーッといなくなる」。ただし「1年とか2年とか経ってから」
・Kさんのケース。「普段は忘れている」けれど「自分は結構、引きずる」「わりと覚えている」

■「男は未練がましい」や「フォルダ分けして永久保存」を裏付ける話:
・Jさん、Sさんの発言。「スタンプ」「名前を付けて保存」と一般論を裏書き。
・Jさんの発言。「オジサンは3年も終わったロマンスを覚えていて語る」。

これだけを見ると、わずかな時間に定説が概観、裏付けられたようにも感じる。しかしここは、ビジネススクールでクリティカルシンキングを教えている者らしく「隠れた前提」を探す姿勢で考えてみたい。隠れた前提、というのは、ある説の中に明言されてはいないが、暗黙に存在と正しさが共有されているもののことだ。

そのヒントとして私が気になったのは、Yさんの「すぐ忘れた」と、Sさん、Kさんの「1年とか2年とか経ってから」「結構、引きずる」の間にある微妙な時間的な差異だ。ここに冒頭の華原朋美さんのエピソードを加味して前提を追加すると、
・女は(嫌いになって)一度別れた男のことはきれいさっぱり忘れる
・女は(好きなまま)別れた男のことは(一定時間を経てから)きれいさっぱり忘れる(或いは踏ん切りをつけられる)
という少し異なる解釈が浮かんでくる。

これを元に「一度別れた男のことはきれいさっぱり忘れ、男は未練がましい」に、もう一段、私なりの解釈を加えるとこうなる。

(1)女は、嫌いになった相手は、嫌な思い出が良い思い出を凌駕するので、思い出す必要を感じない。要は「振った相手は忘れる」
(2)女は、惚れた相手はなかなか忘れられないので、新しい恋を見つけて、昔の恋から目をそらす。要は「振られた相手を忘れるために新しい恋をする」
一方、
(3)男は、「振っても振られても、忘れない」

ここまで来ると、定説に逆らう新しい仮説も出してみたくなる。

仮説1:実は女性は恋の相手をよく覚えている。しかも、相手に紐づく良い思い出も悪い思い出も潜在的には覚えている。
仮説2:男性は恋の相手をよく覚えている。ただし覚えているのは、良い思い出の方だけ。

ここには、男性としての自分の実体験を入れてみている。先に、過去の瑣末な事象を引っ張り出され、女性に責められた経験について触れたが、例えば男性の皆さんには、パートナーとのやりとりで、こんな経験はないだろうか?

女:あなた、以前に***と言ったわよね。それに、×××の時にも、○○○○したじゃない。
男:なんで、そんな昔のことまで蒸し返すんだよ。だいたい、よくそんなこと覚えていられるよな。
女:ムカムカしたら、昔、別のことでムカムカしたことまで思い出しちゃったのよ。

こうした経験を踏まえ、私が仮説1と仮説2の前提に置いてみたのが以下のような仮説だ。

仮説3:女性は、感情と思い出(ファクト)を一緒に記憶している
仮説4:男性は、感情が希薄なため、よほど強い感情でない限り、感情と思い出を一緒に記憶することはない

つまり、だからこそ女性は「嫌な感情を思い起こさせる、悪い思い出の多い恋は忘れる」し、男性は「嫌な感情が蘇るわけではないので悪い思い出の多い恋を忘れる必要を感じない」のではないか。或いは、だからこそ女性は、「良い思い出が多い恋は、思い出とともに引き出される良い感情と現状の感情のギャップを感じやすいため、次の恋を見つけるまではなるべく見ないようにし(引きずり)」、男性は「良い思い出を語ったところで、それと感情は切り離されているため2年でも3年でも語り続けられる」のではないか——。

もしこの仮説3と4が成り立つのなら、恋愛に限らず、人間関係において、より感情を伴って豊かな世界を持っているのが女性で、ドライな世界に住んでいるのが男性、とも解釈できる。特に仮説4は、いわゆる“男性社会”において、仕事の中でも、より強化される面がある気がしており、このあたりは次回以降に掘り下げていこうと思う。

・・・と、ここまで書いたところで、頭上から妻の声が聞こえてきた。

妻:あなた、何を書いているの?
私:男と女の違い
妻:あなたにそんなのわかるわけがないじゃない。私の気持ちだってわからないんだから。
私:・・・・

そりゃそうだな。

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