年金制度改革 抜本的な問題解決から逃げるな! 

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初稿執筆日:2013年9月20日
第二稿執筆日:2015年9月30日

読者の皆さんは、サザエさんに出てくる磯野波平さんの年齢をご存知だろうか。サザエさんの時代は、高度経済成長期。波平さんやマスオさんは正社員として働きに出て、お母さんは専業主婦だ。磯野家も3人姉弟妹であるように、人口ピラミッドも三角形だった。そして、肝心の波平さんの年齢は、なんと、54歳だ。あの時代の54歳は、波平さんのように年老いていて、もうすぐ定年を向かえ、60歳から年金生活に入るという時代だったのだ。しかし、今の日本の54歳はもっと若々しい。高齢者といってよいか分からないが、いずれにしても、より長く社会で活躍し、社会を支えることが可能になっているはずだ。

さて、本題に入ろう。今の年金制度は、60歳には定年になる高度経済成長期に作られたものだ。しかし、時代は変わり、今や日本の高齢者はもっと社会に貢献することが可能になっている。社会の変化は、当然ながらそれだけではない。低成長、少子高齢化、人口減少社会、非正規雇用の増加、莫大な財政赤字。社会は大きく変化している。社会が構造変化しているのに、昔の仕組みをそのまま維持しようとするところに無理がある。変化に対応して年金の仕組みも変えなければ、持続可能な制度にすることはできない。

年金政策の国際的な議論を見てみると、年金制度の持続可能性という要請は先進諸国における共通の課題となっており、年金財政問題の解決策は、
「平均年金月額の引下げ」
「支給開始年齢の引上げ」
「保険料の引上げ」
「国民総生産の増大政策」
の4つでしかなく、これらのアプローチが含まれていない年金財政改善方策はいずれも幻想にすぎないといった指摘がなされている。(IMF「世界危機後のアジアにおける財政的に持続可能かつ公平な年金制度の設計」(2013年1月)

つまり、年金財政の健全化のためには、マクロ的には国民総生産の増大が有効、あるいは長期的には、人口増をはかる政策をとることは当然だが、ミクロの年金制度に関しては、結局はシンプルに
1)なるべく多くの保険料を取る
2)なるべく少ない年金を給付する
制度をいかに作るかという視点が必要だ。

年金改革に関しては、税方式か保険料方式か、賦課方式か積立方式か、といった議論がなされてきたが、基本的に現役世代から税にせよ保険料にせよ、資金を徴収し、高齢世代に所得移転するという仕組みに変わりはない。

したがって、
1)なるべく多くの保険料を取り
2)なるべく少ない年金を給付する
という視点から、年金制度の創設時からの社会構造の変化に対応した改革を示したい。

1. 支給開始年齢を70歳に引き上げよ!

テレビの設定では54歳の波平さんの姿は、現代の日本で言えば、70歳くらいの男性に見えるのではないか。そうすると、年金支給開始は70歳ということになる。この推察は大雑把すぎるが、実際に、日本は高齢化し、平均寿命も伸びていることは周知だ。平均寿命は、1965年に男性67.74歳、女性72.92歳だったものが、直近の2014年には男性80.50歳、女性86.83歳と12~14年も伸びている。

平均寿命の伸び、年金保険の赤字体制、少子高齢化の進展を考えると、年金の支給開始年齢を引き上げることは当然必要である。現在、公的年金の支給開始年齢は、国民年金が65歳、厚生年金は段階的に65歳へと引き上げている段階だが、これを70歳、そしてゆくゆくは、70歳からとすることが必要だ。

そのためには、高齢者の就労を促進し、生涯現役で働ける社会を作る必要があろう。また、働くことができない高齢者へは生活保護(基礎年金と同額程度支給。詳細は次の「行動」で詳述予定)によるセーフティーネットが必要だ。

財務省の試算では、仮に基礎年金の支給開始年齢を1歳引き上げると、毎年約5000億円の公費負担削減効果が見込まれる。逆に引き上げないと毎年5000億円近くの年金負担が増えていくことになる。

10歳引き上げれば毎年5兆円削減となり、年金財政へのインパクトは大きい。政府は高齢者就労の促進に本気で取り組み、基礎年金支給開始年齢の引き上げを行うべきだ。

2. 歳入庁を創設して保険料の徴収を強化し、未納者を無くせ! 

2011年での年金未納・未加入者は330万人にものぼる。「なるべく多くの保険料を取る」ために、保険料を支払わない未納者を減らすことも当然必要だ。

この徴収問題に関しては、2016年からスタートするマイナンバー制度を大いに活用することで解決に結びつけたい。マイナンバー制度の導入は「100の行動」の提言の実現であり、政治の行動を大いに評価する。このシステムの導入を契機に、行政の業務プロセスの改善と政府全体の情報システムの刷新を同時に進め、効率的で合理的な行政を実現する電子政府システムを作り、行政改革を進めることが必要だ。

その行政改革の核心となるのが、歳入庁の創設だ。現在、徴税業務と年金保険料徴収/年金給付業務に関してはそれぞれ、国税は国税庁、地方税は市町村、年金業務は日本年金機構が担っているが、マイナンバーシステムの導入を機に歳入庁を創設し、それらの業務を一元化すれば、国税庁の税徴収ノウハウを年金未納削減に活用できる。当然、行政コストも大幅に減るはずだ。

これまでは、「年金は自主納付が基本」という考え方であったが、「保険料」という名前であっても、実態は税と同様に国民すべてが治める必要のある金であり、税と同様に未納の場合のペナルティーを課すことが必要だ。名称も「年金保険税」と変えた方が分かりやすい。

税金では、脱税の場合は追徴課税となる。「年金保険税」でも、同様の構造にし、歳入庁で国税の業務と一体的に未納者の追徴を行えば、未納は大幅に削減されるはずだ。

3. 保険料の支払い期間を延長し、専業主婦も対象とせよ!

「なるべく多くの保険料を取る」ためには、高齢化の進展と平均寿命の伸長という変化に対して、「支給開始年齢の引き上げ」のみならず、「20歳から40年間支払えば年金がもらえる」という基本構造に関しても、変えることが必要だろう。高齢者の雇用環境を整備して生涯現役社会を作り、70歳まで保険料支払い期間を10年延ばすのだ。

諸外国を見ても、高齢化の進展に伴って、就労期間を伸ばし、国民からより長く保険料を拠出してもらうことで、年金財政を維持しようとする改革が多くの先進国で行われている。日本でも年金保険料の支払い期間の延長を行うことが必要だ。

また、対象者も広げなければならない。サラリーマンの妻である専業主婦が年金保険料を支払わない(企業が肩代わりする)第3号被保険者制度についても、現代の女性の生き方、働き方、生涯設計にいびつな影響を与える制度となっているのは確かだ。公平性の観点からも撤廃することが必要であろう。

4. 基礎年金以外の2階建て部分は原則自由化、年金を一元化せよ!

日本の社会構造の変化によって年金制度が抱えてしまっている問題は、「自営業者は国民年金、サラリーマンは厚生年金」という、年金制度スタート時に想定していた区分けがもはや崩れてしまっている現状だ。現在では、非正規雇用の増大やパートに出る主婦層の増加によって、既にこの枠組みは成り立たなくなってしまっている。

非正規ではあるが家庭の主たる収入源として働いている夫が、非正規であるがために国民年金の対象となっていたり、パートではあるがしっかりと働いている主婦が、夫がサラリーマンであるがために、第3号被保険者となり、年金保険料を支払わずに済むという、いびつな構造だ。

原因は、正規雇用の夫と専業主婦が中心の高度成長期に作られた国民年金、厚生年金、共済年金という制度が、社会構造が変化し、非正規増大、共働き夫婦増加の今の時代に合わなくなっていることにある。

そうであれば、やはり、自営、正規、非正規、公務員、専業主婦に限らず、年金を一元化し、基礎年金以外の2階建て部分は原則自由化、個人の判断で、企業年金や国民年金基金に加入する。つまり、民営化すれば良い。

働く形態に関わらず、すべての国民を一律に年金保険料支払いの対象とすることで、「なるべく多くの保険料を取る」ことができ、しかも不公平感なく、シンプルになるのだ。

5. 高所得者の基礎年金を減額せよ!

「なるべく少ない年金を給付する」という視点では、高所得者の基礎年金の減額も必要だ。高所得の高齢者への基礎年金額を減額せよというと、年金は個人の財産権であるからそれを減額することは財産権の侵害にあたるという批判が必ず出てくる。しかし、一般にはあまり知られていないが、実は今の制度では、基礎年金の半分が税金で賄われている。この現状を考えれば、年金財政の維持の観点から、基礎年金の国庫負担分に関しては、一定以上の高所得者に対して、支給額を減額することは当然必要であると認識しなければならない。

この5つの政策を行えば、年金問題はほぼ解決すると言えよう。

1. 支給開始年齢を70歳に引き上げよ!
2. 保険料の徴収を強化し、未納者を無くせ!
3. 保険料の支払い期間を延長し、専業主婦も対象とせよ!
4. 基礎年金以外の2階建て部分は原則自由化、年金を一元化せよ!
5. 高所得者の基礎年金を減額せよ!

それぞれの改革には、既得権益者がいて抵抗があろう。だが、日本の未来のためには、「既得権」という発想を放棄して、今、何が必要なのかを論じるべきであろう。

上記5つの改革を行えば、支払う年金保険料は全員同じとなり、受け取る年金額も全員同じである(ただし、一部の高額所得者は放棄することになる)。とてもシンプルで、公平だと思う。抵抗があっても、改革を断行すべきであろう。

それが、今生きている我々が、今の子供たちそしてこれから生まれてくる将来世代に対して、行うべき責務であろう。

 

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