ダイバーシティニュース 社会(7/12)駒崎弘樹【8/31までの限定公開】

駒崎弘樹(こまざき・ひろき):認定NPO法人フローレンス 代表理事
1979年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。2004年にNPO法人フローレンスを設立し、日本初となる「共済型・訪問型」の病児保育サービスを開始。2010年より内閣府政策調査員などを歴任。 現在、厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進委員会座長、内閣府「子ども・子育て会議」委員。『「社会を変える」を仕事にする 社会起業家という生き方』(英治出版)など、著書多数。公式サイトTwitter

駒崎弘樹さんのニュースピックアップ

1. 男女別制服・校則の見直しを富山の中高生が知事に要望

ルールに対する違和感を中高生が自発的に表明したことが素晴らしい。中高生は既存ルールに唯々諾々と従うよう求められることが多いなか、「自分たちでルールをつくる」という気概を感じた。これからはルールをつくっていく子どもを育てる方向に、教育自体が転換しなければいけない。まさに今回のやりとり自体が教育だと思う。知事は彼らの声をがっちり受け止めて欲しい。

2. 家庭でも懲罰的な自己責任論 追い詰められる子どもたち

自己責任というのは本当に駄目な言葉だ。自己責任の範囲は、実際にはすごく狭い。私も子供が2人いるが、もし医療的ケアが必要な子どもだったら時間等に追われて今の仕事を続けられないかもしれない。そうなっていないのは運が良いだけ。困難に陥っても「自分でなんとか頑張れるのでは?」と過剰に考えてしまい、助けを求めることができないのは大変な問題だと思う。

3. 児相への相談が大幅増 子育ての悩みや孤立が影響

女性の非正規雇用率は6割で、飲食業は64%が女性労働者。コロナ禍で最も大きな打撃を受けているのが飲食業であり、かつ非正規雇用の人々という構図を考えると、コロナ禍による女性の経済的困窮が虐待や自殺の増加につながっているとの因果関係も考えられる。「今は飲食業が大変」という程度でなく、そこで働く人々、なかんずく女性が命すら奪われる状況であることを我々はもっと知ったほうがいい。そんな状況で政府はお酒を目の敵にして飲食店を苦しめている。酒類提供停止を金融機関からも働きかけるとか、何を言っているのかと思う。

4. 2020年出生数は過去最小 人口減社会に必要な変革とは

人口減が続く今後の日本では、子ども、そして子どもを産み育てる若年層への思い切った投資が不可欠だ。誰もが保育園に行ける“国民皆保育”にしたり、「子どもを学校に合わせる教育」を「学校が子どもに合わせる教育」に変えて、すべての子供が個性を花開かせるようにしたり。人口減社会でますます希少になる労働力を1人たりとも無駄にしない変革が必要になる。我々は今、人という資源を中心に社会をつくりかえる“人間資本主義”への岐路に立っているのだと思う。

5. 学力の格差解消を目指し5歳児向け教育プログラム作成

イケていない政策だ。1人ひとりと向き合って子どものやりたいことをさせてあげている保育園に対し、小学校では皆が同じ向きに座って同じように黒板を写し、意見を言うのも憚られる教育をいまだ続けている。後者は工業時代の発想。変わるべきは小学校のほうだ。小学校に入学すると授業で座っていられない子もいたりするため教育開始を保育園の5歳児に前倒ししようという話だが、そもそも机に座っていられなくて何が悪いのか。歩きながら考えたほうがいい子はそうすればいい。子どもには考える力があるのに大人がそれを奪ってしまっていると感じる。

【スペシャルトーク】テーマ:「コロナ禍の孤独対策と居場所づくり」

24時間365日対応の無料チャット相談窓口「あなたのいばしょ」運営などを通し、社会の孤独問題の解消に尽力している大空幸星さんに、コロナ禍における孤独対策や居場所づくりについてお話を聞いた。

孤独のリスクはコロナ禍で高まっていると思う。家庭内不和等で家が安全な場所となっていない子どもにも、今までは学校の図書館のような心の拠りどころや逃げ場があった。今はそれもコロナで奪われてしまっているためだ。

現在、我々には1日600~700件の相談が来ている。そのほとんどが「命を絶ちたい」という声だ。昨年の緊急事態宣言発令時はその背景も限定的だった。一斉休校で生活が不規則になった子どもとか、育児家事のストレスを抱える母親とか。でも、今はそこに「仕事を失った」「芸能人の自死でふさぎ込んでしまった」等、多様な要因が重層的かつ連鎖的に折り重なっている。

そうした影響もあり、我々のホットラインは逼迫といったレベルでなく、今まさに限界を迎えている。相談窓口は、いわば川の最下流で濁流のように寄せられる相談をなんとか堰き止める壁のようなもの。でも、重要なのは問題の源流にアプローチすることだ。受け皿の拡充自体は必要だが、相談者のほとんどが「望まない孤独」を抱えているという個人の問題を、社会の問題として政策課題へと拡げ、国を挙げた孤独対策を設ける必要があると考えている。

孤独対策の本質は孤独に陥る状況の予防的な改善。そこで一番大切なのは、頼ることに対する社会的スティグマの軽減および破壊だと考えている。たとえばスクールカウンセラーさんの数はここ26年間で200倍に増えたが、その間、小中高生の自殺者数も3.5倍に増えた。「カウンセリングを受けていると知られるのが恥ずかしい」「頼ると負け」といった偏見の解消に取り組んでこなかった結果だと、個人的には考えている。

まずは現時点で問題を抱えている方々が、運や偶然に関係なく信頼できる人に確実にアクセスできる仕組みをつくらないといけない。併せて、大人のスティグマを軽減するため、頼ることは悪くないという空気を社会に拡げていく必要がある。SOSの出し方を含め、「誰かを頼ることは絶対に悪くないんだよ?」と、教育を通して子どもに教えていく必要もある。そうした予防と受け皿の拡大を同時に進めていくうえでも我々のようなNPOの役割は大きいと考えている。

大空幸星(おおぞら・こうき):特定NPO法人「あなたのいばしょ」理事長
1998年、愛媛県松山市出身。「信頼できる人に確実にアクセスできる社会の実現」と「望まない孤独の根絶」を目的にNPOあなたのいばしょを設立。孤独対策、若者の社会参画をテーマに活動している。慶應義塾大学総合政策学部在学中。Twitter

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