ダイバーシティニュース 社会(7/5)土井香苗【8/31までの限定公開】

土井香苗:国際NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ 日本代表
1998年東京大学法学部卒業。2006年ニューヨーク大学ロースクール卒業(LL.M.)。2000年弁護士登録。2006年にヒューマン・ライツ・ウォッチのニューヨーク本部のフェロー、2008年9月から現職。紛争地や独裁国家の人権侵害を調査して知らせるとともに、世界中の人権問題を解決するため、日本を人権大国にするため活動を続ける。Twitter 

土井香苗さんのニュースピックアップ

1. 柔道教室で女児に強制わいせつ 69歳男に懲役1年

性的虐待はスポーツ界で相次いでいるし、最近の話ではない。ただ、我々ヒューマン・ライツ・ウォッチ(以下、HRW)が若い世代を対象に昨年行った調査では「体罰を受けた」との回答が46%にのぼった一方、性暴力被害の報告は5人だけ。少ないのでなく自ら告発できず実態が埋もれてしまっている面もある。そうした状況できちんと裁判に訴えたうえで、結果として刑事罰が下ったことには意味があると思う。

2. 改正候補者均等法成立 政治家志す女性へのセクハラ等防止を

ご存知の通り日本はジェンダーギャップ指数が国際的に大変低い水準で、なかでも足を引っ張っているのが国会議員に占める女性の数だ。ある調査によると女性議員の割合は190カ国中166位。世界3位のGDPを考えるとその低さは際立っている。もっと女性が議員にならないといけないし、そのためにも候補者や議員へのハラスメント防止策を国や自治体に求める改正候補者均等法はとても重要だと考えている。

3. 国連の人権高等弁務官が世界の人権状況悪化に深い懸念

たとえばエチオピアのティグレ紛争は約35万人が飢餓の危機にあるとされる大変深刻な問題だが、日本で知っている人がどれほどいるか。国連の行動も遅れている。こうした各国の紛争や人権問題について、メディアがもっと報道したり我々自身が声を挙げたりする必要があるのだと思う。それが、エチオピア軍等々への非難声明や人道支援といった行動を日本政府へ促すことにもつながる。

4. ユニクロ仏法人が人道に対する罪への加担疑いで当局から捜査

企業も人権問題と無縁でなく、意図はなかったとしても結果的に人権弾圧へ加担していれば世界では捜査対象になる。しかし、人権侵害に加担していないか等を調査する人権デューデリジェンスや、その関連情報開示を義務付ける法制度は今の日本に皆無だ。すべての企業が自力でそこまで対応できるわけでもないので、デューデリ等の義務化とともに、指針を明確に示したうえで国が企業を支援する政策もセットにする必要があると思う。

5. 世界の難民・避難民は2020年末時点で過去最高の8,240万人

10年前のシリアも紛争はなく、アラブの春当時もシリア人の知り合いは「問題ない。アレッポも平和」と言っていた。そのアレッポが今は瓦礫の山。世界では平和に暮らしていた人々がいきなり難民・避難民になってしまうこともある。だからこそ困ったときはお互い様で助け合うものとして、日本も難民条約に加盟している筈だ。しかし、日本が実際に受け入れている難民・避難民は8,240万人の0.01%ぐらい。難民認定数も2020年は47人で認定率は0.4%。25%のドイツや29%の米国と比べて著しく低い。難民認定の定義が厳しく、推定真実の立場をとる国際基準に従っていないためだ。ここは政治的な決断が求められているのだと思う。日本の難民政策はどうあるべきかを正面から議論して欲しい。

【スペシャルトーク】テーマ:「スポーツと体罰」

自民党参議院議員として活躍する朝日健太郎さんに、スポーツと体罰についてお話を聞いた。

私が選手だった頃のバレーボール界では指導者が選手にきつい言葉を放ったり暴力を振るったりするシーンを数多く目にしていたし、ある意味、それが当たり前の時代だった。選手だってボールを落としたくはないが手元が狂ってしまうときはある。でも、そこで「集中していないたからだ」と詰められる理不尽な世界で、結果的には体罰を恐れてプレーをする。そんな、スポーツ本来のあるべき姿とかけ離れた面があったし、選手側もそうした厳しい指導のおかげでチームが強くなると理解させられていた。

ただ、HRWの調査によると、いまだに若い世代の46%が暴力等を受けていたとの結果で、大変な衝撃を受けている。世界のスポーツシーンは進化していて、今はデータに基づいた科学的トレーニングや指導が確立している。これに対して日本の指導はいまだ精神論に頼っていたり、スキル不足で指導者側が癇癪を起こしてしまう面もある。

日本では暴力を用いて競技力の向上・強化を図ってきた歴史があり、その成功体験が残っている。勝利至上主義の弊害もある。甲子園トーナメントのように1度負けたら終わりというシステムのなか、高校3年間、正味2年半の部活生活で、指導者の評価を守るためにも即効性の高いパワハラ的指導で選手を追い込んでしまう、と。強化の一環と言われ、保護者もなかなか反論できず体罰を容認してしまっている面もある。

逆に言うと、比較的遅くにスポーツをはじめてのびのびやってきた選手のほうが20歳以降も伸びていくことは多いと感じるし、これはスポーツ界あるあるだと思う。ストレスを感じない環境のなか、仮に負けたとしても健全に結果を受け入れ、「もう1度頑張ろう」という再チャレンジの循環になるためだ。

こうした問題に対し、世界では近年、体罰を含めたスポーツにおける虐待問題を専門的に扱う「セーフスポーツセンター」などの第三者機関がつくられたりしている。この点は土井さんとも議論していて、来年度にはじまる日本の第3期スポーツ計画にも盛り込んでいきたいといった議論になっている。国の政策として、今はそうした受け皿の仕組みもつくっていく準備をしている段階だ。

朝日健太郎(あさひ・けんたろう):参議院議員
1975年、熊本県生まれ。法政大学卒。男子バレーボール及びビーチバレーボール日本代表として活躍。ビーチボールで2008年の北京オリンピック、2012年のロンドンオリンピックに出場。2012年に現役引退後、NPO活動や講演、メディア出演等を通じバレーボールの普及や青少年の育成に取り組む。早稲田大学大学院修了。熊本地震を契機に、だれもが輝ける社会を実現するため、参議院選挙への立候補を決意。2016年東京都選挙区より出馬、初当選。公式サイトTwitter

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