ダイバーシティニュース 社会(6/28)乙武洋匡【7/31までの限定公開】

乙武洋匡さんのニュースピックアップ

乙武洋匡(おとたけ・ひろただ):作家
1976年生まれ。大学在学中に出版した『五体不満足』(講談社)がベストセラーに。卒業後はスポーツライターとして活躍したのち、新宿区教育委員会非常勤職員「子どもの生き方パートナー」、杉並区立杉並第四小学校教諭を経て、2013年には東京都教育委員に就任。『だから、僕は学校へ行く!』(講談社)、『オトことば。』(文藝春秋)、『オトタケ先生の3つの授業』(講談社)など著書多数。Twitter 公式サイト

1. 小池都知事が同性パートナーシップ制度の検討を表明

もっと早く検討すべきだった同姓パートナーシップの話が今になって出てきたのはなぜか。自民党からLGBT理解増進法案が提出されなかったことに多くの方が失望しているこのタイミングを狙った、「自民と違って私たちはやります」とのメッセージではないかという見立てもある。やはり都知事の風を読む力はすごいと思うが、いずれにせよ東京でもぜひ実現して欲しい。

2. 三重の高校で廃止したはずの「ツーブロック禁止」が復活

学校側の言い分は「就職に差し障るから」。いまどきツーブロックで就職が不利になる会社があるのか。あったとして、そんな会社に行くべきなのか。何より、不利益を被るとしてもその髪型を続けるどうかは本人が決めること。大人は不利益の可能性を示唆するに留めるべきで、禁止するのは思考停止を生み出す行為であり教育ではないと思う。もう令和なのだから、こうした校則は変えていこう。

3. 最高裁、夫婦別姓認めない規定について再び「合憲」判定

思想的にも憲法解釈でも賛否両論あり、「最高裁が同姓規定を違憲とすること自体は難しいのでは?」との見方もある。いずれにせよ2015年に続く合憲判定ということで、最高裁判断による選択的夫婦別姓の実現はどうやら難しく、実現には立法府で導入を決めるしかないことが明確に示された。政治家の方々は正面から議論して、次の国会から方向性を示していただきたい。

4. 杉山文野氏が新理事に就任したJOC、一部メディアから批判も

ジェンダーの問題に向き合ってきた杉山さんの知見がJOCに生かされるのは本当に喜ばしい。ただ、今回は杉山さんを女性理事という括りで発表したJOCを毎日新聞が批判した一方、批判の意図ありきで「男なのか?女なのか?」等、彼にしつこく取材・質問してきた毎日側に杉山さん自身は不快な思いもしたという。これは根が深い問題だ。主張の仕方を指摘することで焦点がぶれてしまう「トーンポリシング」の問題点については以前も触れたが、理解を広げるためには批判一辺倒でない伝え方を模索する必要もあると思う。

5. 日本橋に「分身ロボットカフェ」の常設実験店がオープン

マイクやスピーカーを内蔵したロボットを遠隔操作することで注文を取ったりコーヒーをサーブしたりするカフェだ。病気や障害で寝たきりの方や家から出られない方、あるいは海外在住の方もロボットの“パイロット”になり働くことができる。僕はアドバイザーとして試験オープン時からお付き合いしているが、たとえば病気で10年以上家から出れなかった女性がこれで働き、「この稼ぎで家族にお寿司をご馳走します」なんて話しているのを伺ってじーんときたことがある。こうした取り組みを通じ、家を出ることができなくても働くことを通じて誰かの役に立つ喜び、社会と関わる喜びを提供できるようになったのは本当に大きなことだと思う。

【スペシャルトーク】テーマ:「アンコンシャス・バイアス」

作家として活躍する乙武洋匡さんに、「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見や思い込み)」についてお話を聞いた。

アンコンシャス・バイアスは日常生活のなかにいくらでもある。セクハラやDVというと多くの方は加害者が男性で被害者が女性という“絵”をイメージすると思う。実際には男女逆のケースもあるし同性同士でもあること。でも、男性はハラスメント加害者側というイメージが強いため、被害側になったときに言い出せないケースも多いという。

あるいは、「男性はこうあるべき」「女性はこうあるべき」といったイメージの押し付けから逸脱する行動を取った人に対し、私たちは後ろ指を指すようなことをしていないか。

ただ、これも先ほど触れたトーンポリシングの問題と同じで、「アンコンシャス・バイアスは人を傷つけるから糾弾を」という考え方もどうかと思う。減っていくに越したことはないが、一足飛びにゼロとするのは難しい。だからこそ、「我々は属性に対してアンコンシャス・バイアスを、ついつい抱いてしまう」と自覚したうえで、まずはそれを他者に押し付けることを控えようと考えるのがスタートラインなのかなと思う。私自身も昭和51年生まれのおっさん。アンコンシャス・バイアスだらけだ。

では、我々自身のバイアスに気づくため、何が必要か。非難や糾弾ではぎすぎすしてしまうが、「そういうイメージあるね。ただ、全員には当てはまらないかもね」と。仲間内でも面倒くさがらず、‘unconscious(無意識)’から‘un’を1つひとつ取り除いて、‘conscious(意識的)’にしていくことが大事だと思う。

また、20数年前に『五体不満足』という本の出版で、それを書いた乙武という生意気そうな障害者の登場で、多くの方に「こういう障害者もいるんだ」と思ってもらえた面はあると思う。同様に、それぞれの属性で我々が抱く“らしさ”に見合わない方が、今は社会に向けて発信をしていることも多い。そういう方々を見て「あ、こういう人もいるんだね」と、ある意味ではエンタメのように楽しみつつ学んでいけたら、自然と無意識のバイアスも消えていくのかなと思う。

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