トランスジェンダー選手の五輪出場、武井壮氏日本フェンシング協会の新会長に|東京レインボープライド共同代表理事 杉山文野×丸山裕理【ダイバーシティニュース】

杉山文野さんのニュースピックアップ

杉山文野:特定非営利活動法人東京レインボープライド共同代表理事/渋谷区男女平等・多様性社会推進会議委員
フェンシング元女子日本代表。トランスジェンダー。早稲田大学大学院教育学研究科修士課程終了。 日本初となる渋谷区・同性パートナーシップ条例制定に関わる。 現在は父として子育てにも奮闘中。

1. プライド月間の6月に女子サッカー起点でLGBTQ+の情報発信

6月は「プライド月間」ということで世界中でLGBTQ+関連のイベントが催されていて、最近は日本でも街中でレインボーカラーを見かける機会が増えた。まだまだとはいえ、日本でもこれほど話題になる時代が来たんだと驚いているところだ。今年は女子サッカーの試合で靴紐をレインボーにしたり、皆で理解を深めていくための催しも行われている。子どもの憧れであるスポーツ選手がLGBTQ+を応援してくれることは次世代にとっても大切なことだと思う。

2. 日本初、世田谷区が同性パートナーに遺族補償支給を検討

世田谷区は同性パートナーを持つ区職員に対する福利厚生手当等の支給もいちはやく実現した。国単位ではなかなか進まない話が多いなか、自治体で成功事例が出れば横展開も進みやすくなるし、遺族保障支給の検討も画期的だと思う。世田谷区には日本で初めてトランスジェンダーであることを公表して区議会議員になった上川あやさんもいらして、議会でそうした議論がしっかりなされている。

3. 性転換前の精子で子どもをもうけたトランス女性が認知不受理

トランスジェンダーでかつレズビアンの女性が、性転換手術前に冷凍保存した精子でパートナー女性とのあいだに子どもをもうけたら、血の繋がりはあるのに認知届が不受理になってしまった。家族の多様化に制度が追いついていない。今、2人の子育てをしているが、法的関係性を持てないので何かあったときのための同意書1つにもサインできなかったりする。福祉の観点でも問題であり、家族や子どもたちが不安定にならないようにしなければいけないと思う。

4. 「男性として」 サッカー横山久美選手がトランスジェンダー公表

アスリートのカミングアウトが増えているのは良い傾向だし、当事者として悩む子どもにも大変良いメッセージになると思う。「自分らしくありたい」と思えば競技者としての自分はなく、競技をやりたいと思えば自分らしさが失われると、その両立を選手時代に諦めていた自分としては時代が変わってきたと感じる。

5. 武井壮氏が日本フェンシング協会新会長に就任 杉山氏も理事に

選手が順繰りで監督になったりして、良くも悪くも同じ人々がい続けることの多いスポーツ界では、新しい挑戦や違いを取り入ることに柔軟でない面があった。これに対し、多様化する社会に合わせて多様な視点を取りいれるという太田雄貴前会長の強い思いがあって今回の選任になったようだ。スポーツに長けていて、かつ発信力のある武井さんが新会長になるということで楽しみにしている。

【スペシャルトーク】テーマ:「トランスジェンダー女性アスリートの五輪出場を考える」

NPO法人「東京レインボープライド」共同代表、株式会社ニューキャンバス代表として活躍している杉山文野さんに、トランスジェンダー選手の五輪出場についてお話を聞いた。

ニュージーランドのトランスジェンダー選手が女子重量挙げに出場することで賛否が起きている。スポーツ基本法もオリンピック憲章も、あらゆる差別の禁止と「誰もが競技から排除されてはならない」ということを謳っている。そうした人権尊重と競技としての公平性のあいだでどこに着地点を見出すか。一言では明確に説明できないし、一定のテストステロン値を下回る等の基準をクリアしたとして、それでも「不公平では?」という感情になってしまうことは理解できなくもない。

ただ、もともとスポーツには不公平なことが数多くある。たとえば体の大きな人も小さな人もいて、そのハンデもアドバンテージもすべて生かして競技は行われるわけだ。身長2m超の女性選手がバスケットで活躍しても批判されないのに、なぜトランス女性だけ「ずるい」と言われてしまうのか。

女性でかつトランスジェンダーという二重のマイノリティとして社会で大変不公平な環境に置かれるトランス女性が、唯一自身の優位性を発揮できるスポーツからも排除されてしまうのか。不公平か否かを議論するならトランス女性が社会で不公平に扱われていることについても語って欲しいと感じる。

特にオリンピック・パラリンピックでは単に競技として優劣を争うだけでなく、より良い社会につなげるという「オリンピック・ムーブメント」が大切になるし、そもそもスポーツは社会と切っても切り離せない。アスリートとして活躍すれば社会的地位を得ることもできるわけで、そうしたスポーツ界からの排除は社会からの排除を意味する。

IOCのルールも完璧ではないし、対話を通してルールをアップデートしていく必要はある。ただ、少なくとも現時点で出場を決めている選手はルールを守っている。その選手個人を攻めるのは差別的だし、特定の選手や属性へのバッシングを通して「男なのに女だと偽って皆が女子風呂に入ったらどうするんだ」とか、すごく偏った批判やヘイトが出るのも大変な問題だと思う。だからこそ五輪にトランスジェンダー選手が出場することで建設的な議論がなされ、正しい知識が広がっていくことが大事になるのだと思う。

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