津田大介が語る今週のニュース ネット誹謗中傷に関する法律と賠償金額の高額化など【ダイバーシティニュース】

津田大介さんのニュースピックアップ

津田大介 ジャーナリスト/メディア・アクティビスト 
(メディア、ジャーナリズム、IT・ネットサービス、コンテンツビジネス、著作権問題などを専門分野に執筆活動を行う。ソーシャルメディアを利用した新しいジャーナリズムをさまざまな形で実践。オンラインメディア「ポリタス」編集長を務める。Twitter )

1. 平井デジタル改革相が開発費で請負先への“脅し”を指示か

五輪向けのアプリ開発を73億で受注したNECに対し「当初予定していた機能が不要になったから」と、すでに開発中の案件費用を38億にまで減額させ、しかもその過程で大臣から「干す」等、脅しとも取れる発言が出たという。発注したのは平井さんの会社でなく政府。開発途中でも発注側都合で費用が減額されたりするなら、民間企業は国と仕事がしづらくなる。「ボッタクリだったのでは?」との擁護はあるが、その話は分けて議論すべきだ。また、今回の報道では音声流出もあった。普段から大臣のコミュニケーションについて問題だと考える人が内部にいたのかもしれない。

2. G7閉幕 新興国へのコロナ支援やインフラ投資で合意

主題は中国牽制とコロナ対策だったと思う。経済支援によって新興国が中国側につかないよう西側でまとまってインフラ投資をしよう、と。また、他国へのワクチン無償供与にあたり交換条件を設ける中国に対し、G7は“紐付き”でないことを強調しつつ、10億回分のワクチン無償提供で合意もしている。対中牽制に前のめりなアメリカと、そこに少し距離を置くヨーロッパ、そこに付いていく日本という立ち位置だと思う。

3. 内閣不信任案は否決 土地利用規制法案は6/15採決か

不信任案の背景には土地利用規制法案の問題もあった。国防上重要な施設に近い土地について、外国資本による取得を規制する法案というのが当初の説明だった筈だ。しかし、実際には土地取得に関する調査内容について条文に基準が書かれていなかったり、重要施設の近くに住んでいなくても調査対象になったり。土地を媒介にして、無制限に監視・調査の権限を警察に与える法案ではないかとの懸念がある。

4. 11月までに全希望者へワクチン接種を実施 首相が表明

予約システム等でごたごたはあったが、フタを開けてみるといい感じに接種が進んできた。大規模接種は全国に広がり対象年齢も下げられたし、職域接種もさらに進めば11月までという話も現実になりそうだ。ただ、あくまで希望者への接種。アメリカでも6~7割までは急速に接種が進んだ一方、その後は共和党支持者で頑なにワクチンを忌避する人々がいたりして接種率も上げ止まっている。日本でもHPVワクチン勧奨中止の背景等があってワクチン全体に危機感を持つ人は一定数いるし、早期の集団免疫達成については微妙だと感じる。

5. 米民主党、米巨大テック企業に新たな独占禁止法案

GAFAがあまりにも力を持ち過ぎてきたということで、独占禁止法的な観点で民主党としては相当思い切った規制法案を出してきた。具体的には、自社プラットフォームにおける自社製品・サービスの優遇禁止や、競争を阻害する買収禁止など。最近は小さなベンチャーが良いサービスを立ち上げてもGAFAMやTwitterがすぐ類似サービスをつくってユーザーを奪ってしまうため、「そうなるぐらいなら」と、巨大テック企業の買収提案を受けてしまうベンチャーも増えている。そうした問題に対して今回の規制法が成立すれば、将来的はGAFA等の強制的な分割に発展する可能性すらある。ただ、消費者にとっては望ましい方向になると考えている。

【スペシャルトーク】テーマ:「ネット上の誹謗中傷に対する賠償金額の高額化と、プロバイダ責任制限法の改正」

メディアアクティビストとして活躍するコメンテーターの津田大介さんに、ネット上の誹謗中傷に対する賠償金額高額化とプロバイダ責任制限法の改正によって、ネット上の言論が今後どう変わっていくかを聞いた。

芥川賞作家の川上未映子さんを中傷した匿名投稿者に323万円の賠償命令が下されるなど、最近はネット上の誹謗中傷に対する賠償が高額化してきた。匿名投稿者を訴えるため、今は3回の裁判が必要になる。米Twitter社等にIPアドレス開示を求める裁判、通信業者に氏名や住所の開示を求める裁判、そして本人に対する裁判だ。こうなると開示請求費用だけで70~150万もかかり、裁判に勝っても被害者が大幅な赤字になるという不条理な状況があった。しかし最近は開示費用を含め、裁判費用のほぼ全額を賠償金に上乗せする司法判断が相次いでいる。

もう1つの変化は、匿名投稿者の特定に必要な3回の裁判が今回の法改正で2回に減るかもしれない点だ。ITプラットフォーマーとプロバイダへの訴えを裁判所がまとめて進めてくれる。そうすると訴訟費用も安くなるし特定も容易になる。開示費用は、うまくいけば半額ぐらいになるのではないかと言われている。

また、今までは開示に時間がかかっているあいだに通信事業者が(個人情報保護等の観点から)ログを消してしまう問題もあった。これも今回の改正によって、開示請求を行った場合は裁判所が事業者にデータの提供および消去禁止命令を出せるようになる。さらには、海外事業者に対する開示請求裁判の面倒な手続きについても、日本で行えるようにすべく改正がなされる。

こうした一連の流れに対し「表現の自由が損なわれるのでは?」との声もある。ただ、正当な批判と中傷のボーダーについては判断が難しい面もあるため、自身の情報について裁判所が開示判断をした場合は意義申し立てをすることもできる。その辺はバランスも取れていると思う。今回の動きを通して今後2~3年でネット上の誹謗中傷に関する訴訟は増えると思うし、それはネット上の言論にも大きく影響すると感じるが、個人的には望ましい方向の改正だと考えている。

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