袁克勤さん拘束事件、LGBT新法成立への期待など|ヒューマン・ライツ・ウオッチ 土井香苗×丸山裕理【ダイバーシティニュース】

土井香苗さんのニュースピックアップ

1. 北角さん「弾圧やめるよう日本はミャンマーへ強い働きかけを」

ミャンマー軍に拘束されていたジャーナリストの北角裕樹さんがおよそ1ヶ月後に解放されたこと自体は良かったが、いまだ数多くの市民やジャーナリストが拘束されている。本件に対応して軍系企業への資金の動きを止めるなどの制裁を行う欧米諸国に対し、日本政府の対応は残念ながら手ぬるい。北角さんはじめ日本国民の意思は届いているし、一般のミャンマー国民に裨益しないODA等は停止の方向性も示されたりしているが、政府にはもっと大胆な行動を取って欲しいと思う。

2. バイデン大統領がコロナワクチン特許の一時放棄を支持

画期的な意見表明だ。アメリカに続いて日本も茂木外務大臣が「特許の放棄をブロックしない」との声明を出した。多くの国が支持する今回の特許放棄に対し、製薬企業を数多く持つ先進国が反対するという構図のなか、ある程度のメッセージを日本政府も出した姿勢は評価したい。ただ、もう1歩踏み込んで欲しい。先進国の人々だけがワクチンを接種してもコロナは終息しない。ワクチン生産には莫大な公的資金が投入されていることを考えても、今回の特殊な状況に限っては特許放棄が最善だと思う。

3. 子ども庁創設等、包括的な子ども政策を公明党が提言

自民若手議員の方々による政策提言を菅首相が受け入れたことで、春先から子ども庁創設の動きが活発になってきた。各省庁でバラバラだった子どもに関する政策を集約することは大事だが、重要なのはそれが子どもとって真に最善の利益となること。そのためにも、子どもの権利に関する基本法や、子どもの権利が守られているかをモニタリングして政府に提言等行う「子どもコミッショナー制度」とセットになる必要がある。

4. 男性に出生時育児休業を設ける改正育児法等が成立

子どもが生まれる従業員一人ひとりに対し、プロアクティブに育休取得の意思を確認するよう企業に義務づけるというもの。男性による育休取得を課していく動きは、真の男女平等に向けた大きな一歩ではないかと思う。小さな変化のように見えるが、大きな結果になることを期待したい。

5. IOCがLGBTQの包摂や差別禁止を改めて強調する声明

五輪が迫ったこの時期にIOCが声明を出した背景には日本におけるLGBT新法成立への期待があるし、「LGBT理解増進法」審議で自民党内から差別発言があったことへの危機感もあると思う。性的指向による差別禁止の法律がないのはG7で日本だけ。2週間ほど前に自民執行部が今国会への法案提出を諦めたとの報道もあったが、会期は今月16日まで。審議を続けるべきだとの声は与野党問わず出ている。本件に関して「国民との約束を果たすよう努力」とおっしゃっていた通り、ここは菅総理に判断していただき法律を通して欲しい。

【スペシャルトーク】テーマ:「袁克勤さんの拘束事件と中国の人権問題」

北海道教育大学の元教授である袁克勤(えん・こくきん)さんが現在スパイ容疑で中国に拘束されている事件について、袁克勤さんのご長男である袁成驥(えん・せいき)さんにお話を聞いた。

2019年5月末、病気で亡くなった祖母の葬儀で一時帰国していた父が日本へ戻ろうとしていた葬儀翌日、路上で国家安全部に突然身柄を拘束されたと聞いている。なぜこうなってしまったのか。家族も周囲の研究者仲間の方々もまったく身に覚えがなく、あまりにも突然で当初は拘束の情報を信じることすらできなかった。

今年5月に中国国内の弁護士が初めて父と接見するまでの2年間、誰一人として父の声を聞くことも顔を見ることもできていなかった。中国は今も「国家安全機密に関わる」との名目を盾に起訴内容をまったく公開していない。

接見時、健康状態は特に問題が見られなかったとのことだが、次に弁護士がいつ会えるのかも、今後の裁判で今回接見した弁護士が呼ばれるのかも分からない。先行きがまったく見えず不安な気持ちでいっぱいだ。

中国国籍ということで日本政府として働きかけが難しいのは重々承知している。ただ、父のケースに関しては中国政府が「日本の情報機関の要求に応じてスパイ活動を行った」と主張している。父が日本のスパイである、と。それが事実でないのなら、日本政府には明確に否定したうえで抗議をしていただきたい。

袁克勤さんご経歴:中国吉林省にある吉林大学を卒業後、一橋大大学院の博士課程を修了。その後、北海道教育大札幌校で教鞭を執りながら東アジア国際政治史の研究に従事する一方、長年にわたり日中の学術交流に尽力。日本には約30年在住し永住権も取得。

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