LGBT理解増進法、同性婚の実現など|東京レインボープライド共同代表理事 杉山文野×丸山裕理【ダイバーシティニュース】

杉山文野さんのニュースピックアップ

1. 「東京レインボープライド2021」、総視聴者数は約160万人に

社会的注目度の高まりを改めて感じる。多彩な著名人の方々にもゲスト参加いただいた。水原希子さんは数年前、テレビ企画でレズビアンを装うドッキリをしたそうだが、「当時、それほど考えず仕事をしてしまった。本当に申し訳ない」と、ご自身の言葉で話していたのが印象的だった。誰でも知らずに間違いをおかしてしまうことはあるが、失敗に学ぶからこそ今がある。僕も含め皆がアップデートしていかなければいけないのだと思う。

2. ラグビー女子日本代表の村上愛梨選手、同性パートナーの存在を公表

現役選手のカミングアウトは大変珍しい。それほどまでに“言えない空気”が日本のスポーツ界にあるのだと思う。フェンシング女子日本代表だった僕も現役時代は言えなかった。トレーニングでへばると「お前はオカマか」なんて言葉が飛び交う世界だったので。ただ、心理的安全性が担保されていないスポーツ界だが、自分らしくいられる場所になることで、今後一層のポテンシャルが発揮される伸び代もあると思う。

3. オリパラ組織委員会の橋本会長が性的マイノリティの情報発信拠点を訪問

当事者の声を真剣に聞いてくださったし、「絶対にやるべきだ」という橋本さんの強い思いがひしひしと伝わって希望が見えた。自身も現役時代にカミングアウトした方などを身近に見てきたご経験があるそうだ。プライドハウスの取り組みが組織委員会の公認プログラムになったのは東京大会が初めて。しっかり形にして今後につなげたい。

4.「広い視野で判断を」 最高裁長官が夫婦別姓や同性婚に関し発言

特定のイシューについて最高裁長官が言及するのは異例だそうで、今後に向けた大きな一手になるとの希望がある。今は100を超える自治体が同性パートナーシップ制度を導入しているが、ゴールは同性婚。多様化した生き方や家族のあり方に則してルールをアップデートすることは、LGBTQに限らず誰にとっても大切なこと。

5. 5月17日は「国際反ホモフォビア・トランスフォビア・バイフォビアの日」

1990年5月17日、WHOの精神障害定義から同性愛が削除された。こうした記念日を設けるのは差別的な歴史を忘れないためでもあると思う。1990年というと僕は10歳頃。生まれたときは同性愛が病気だと言われていた。今後の若い世代は「同性が結婚できない時代があったの!?」と驚くようになると思うし、今もいじめや差別的扱いは完全になくなってはいないが、少しずつ理解は進んでいると思う。

【スペシャルトーク】ゲスト:松岡宗嗣さん(一般社団法人fair代表理事)

性的マイノリティに関する政策や法制度について情報発信をしているゲストの松岡宗嗣(まつおか・そうし)さんに、LGBT理解増進法などについてお話を聞いた。

日本には性的マイノリティに対する差別や偏見を禁止する法律がない。そこで当事者らが声を挙げてきたことや、「あらゆる差別を許さない」とのオリンピック憲章が後押しとなり、今はLGBT理解増進法の議論が与野党でなされている。今国会で議員立法として提出される見込みだ。

差別禁止と理解増進は対立しない。我々が求めているのは、まずは実効性ある法律として差別的取り扱いの禁止を明記すること。そのうえで知識として啓発していく必要があるのだと思う。

差別禁止というと「不適切な言葉を使うだけで罰せられるのか」と思う人がいるかもしれないが、”発言”ではなく”取り扱い”の禁止だ。また、罰則はない。障害者差別解消法等、差別的取り扱いの禁止が明記された法律は他にいくつもある。ただ、差別を禁止するとなると、異性カップルは結婚でき、同性カップルは結婚できないという点も「差別的取り扱い」にあたるため、同性婚の法制化に繋がることを恐れ、差別の禁止ではなく「理解を広げる」に留めようとする意図があるのではないかとも考える。

今はゲイやトランスジェンダーであることを理由に解雇されたりすることが現実として起きている。そうした差別を禁止したり同性カップルが結婚できる法律ができたとして、それで不利益を被る方はいない筈だ。

法案は今国会で成立の方針だが、企業や学校等に求める施策は「努力義務」の規定で法的拘束力が弱く、残念ながら骨抜きと言える。今回は多くの人々が声を挙げるなどして、法案の目的や基本理念に「差別は許されない」との文言が追加されたことは前進だと思う。ただ、差別的取り扱いをしてはいけないという実効性ある文言が必要だ。たとえば茨城県はLGBT差別禁止を全国に先駆けて条例として規定した。そうした動きが国レベルで進んで欲しい。

経歴:明治大学政治経済学部卒。政策や法制度を中心としたLGBTに関する情報を発信する一般社団法人fair代表理事。ゲイであることをオープンにしながら、HuffPostや現代ビジネス、Forbes、Yahoo!ニュース、文春オンライン等で多様なジェンダー・セクシュアリティに関する記事を執筆。教育機関や企業、自治体等での研修・講演実績多数。共著『LGBTとハラスメント』(集英社新書)

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