2023年の注目トピック――組織・リーダーシップ編
「リモートぼけ」を防ぐテレワーク技法を持て
舞田 竜宣

コロナ禍を機に一気に導入が進んだテレワークに、揺り戻しが起きている。
日本のように「一緒にいること」を重視するメンバーシップ型の企業だけでなく、ジョブ型の米国ですら、テレワークを早く始めた企業ほど早くこれを減らそうとしている。
「個々の役割責任が明確なジョブ型の企業になれば、テレワークは成功する」と言われていたのが、現実にはそうでもなさそうである。
実はテレワークには、組織のコミュニケーションが減るという問題だけでなく、個人の「脳力」(認知力)を低下させる心理的および生理的なリスクがある。
元々テレワークは、会社でリアル勤務するのが難しい、育児や介護などの社会的制約や、身体障がいなどの肉体的制約を持つ人が主に利用し、そういう人にとってテレワークはプラス要素ばかりでリスクはほぼ無い。
しかし、何の制約も無い人がテレワークすることは、例えるなら肉体的に健康な人が電動車椅子を使うようなものだ。
楽だし、重い荷物も運べるし、なんなら歩くより早い。
極めて合理的だが、しかし、それをすると健康な人は足腰の力が弱ってしまう。
つまり制約のない人がテレワークをすると、「仕事の足腰」ともいうべき「脳」の力が弱り、「リモートぼけ」してしまうリスクがある。
すると仕事のスピードが落ちて労働時間が長くなり、質も低下して雑になり、クリエイティブな発想が弱くもなりかねないのだ(しかも、こうした認知力の低下は、本人にはあまり自覚できない)。
これを防ぐには、マネジメントをする側もされる側も、「サイコロジカル・スキル」と「バイオロジカル・スキル」を持たなければならない。
これらについては人事専門誌「労政時報」第4046号(2022.11.25)の拙稿を参照いただきたいが、逆にこの2つのスキルを持たない場合は、もう単純にテレワークを減らすか無くすしか策がない。
コロナという「災い」を転じて福となすためには、テレワークを「過去のもの」にするのではなく、テレワークを未来につなげるマネジメント技術を持ちたい。
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