家計管理の一歩、「ペアる」で文化をつくる――スマートバンク堀井氏インタビュー(前編)

――:以前の創業を経てまた新たに創業しようと思ったとき、なぜこの課題を解決することがベストな事業の選択だと考えたのでしょうか。

堀井:支出管理といえば家計簿アプリがあるのに、先ほどのような問題が存在しているということには何か大きなチャンスがあるのではと気になっていました。また少し違う目線で言えば、フリルが楽天に買収されたあと、フリマアプリの売り上げを楽天ペイに充当して楽天ペイ側で決済させる、といったプロジェクトに関わってから退任したんです。その経験を通じて、「決済」や「キャッシュレス」というテーマへの興味が強まっていました。
そこで退任後、世界で一番キャッシュレスが進んでる国がどういう状況なのか見てみたいと思いイギリスに3カ月滞在しました。

――:イギリスと言えばフィンテック、あるいはチャレンジャーバンクの普及が最も進んでいる国のひとつです。滞在してみて、衝撃的だったことや気づきはありましたか。

 ※ 既存銀行との提携などではなく、自ら新規に銀行免許を取得した金融機関。主に店舗を持たず、アプリから口座を開設でき、カードがもらえるというモバイルネイティブなサービスを提供する。

堀井:渡航前、最も気になっていたのは、チャレンジャーバンクはどのような課題を持ったユーザーが使っているのかということでした。

滞在した結果、気付いたことは2つあります。まず、ヘビーユーザーはそもそもイギリス国内の銀行口座を持っていない/持つのが難しい移民の方だということ。そして、ネイティブで地元の銀行かメガバンクの口座を持っている人は、普段給与が入るメインの銀行口座と別に、日々のキャッシュレス決済を引き落とす「普段使いの財布」としてチャレンジャーバンクの口座を活用しているということです。もう少し詳しく言えば、給与が入る既存銀行の口座からチャレンジャーバンクの口座に月の生活費分を移動させ、よりUIやインタラクションデザインの優れたアプリでメインの生活費を管理しているというユーザーが結構いらっしゃいました。

理由を聞くと、給与口座からデビットカードで引き落としていると給与分の全てが使えてしまうので、気付いたら結局残高ゼロになるまで使うかオーバードラフトしてしまうという課題があったと。キャッシュレスが浸透すると、いくら使っているのかは現金より把握しづらくなります。イギリスは日本で普及している画面を確認してのバーコード支払いより、ウェアラブル端末やカードでの非接触決済がより普及しているので、更に自覚しにくいかもしれません。これは面白いなと思いましたし、キャッシュレスが浸透していけばどこでもこの課題が出てくるのだという気づきがありました。

深川:私も堀井さんとほぼ同じ時期にイギリスで生活していたのですが、印象的だったのが、はじめにイギリスに到着した時、空港で現地の通貨を現金で数万円分だけ下ろしたんです。その現金が2年後に日本に帰国するときにもまだ残っていて。

堀井:全く同じ。僕も現金を一切使わなかったですね。

――:日本でもキャッシュレスは大分利用されるようになってきましたが、生活への浸透度合いに大きな差がありそうです。しかし、年々普及率が上昇していることを考えると、B/43のような「日々の生活利用のための口座」という存在が当たり前に求められるようになってきそうですね。

後編に続く)

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