ダイバーシティニュース 経済(9/28)瀬尾傑さん 【10月31日までの限定公開】

瀬尾傑(せお・まさる):スマートニュースメディア研究所 所長
1965年、兵庫県生まれ。同志社大学卒業。日経マグロウヒル社(現日経BP社)に入社。経営企画室、日経ビジネス記者などを経て、講談社に転職。2019年2月、調査報道支援のための子会社スローニュースを設立し、代表に就任。新しい時代のジャーナリズムの育成と支援に取り組んでいる。Twitter

瀬尾傑さんのニュースピックアップ

1.オリンピック汚職事件において、元理事に新たな疑惑

大会組織委員会元理事の高橋治之容疑者が、大会マスコットのぬいぐるみの販売に関して東京都千代田区の玩具会社「サン・アロー」より800万円を受領した疑いがある。かつて高橋氏の弟・高橋治則氏が東京地検特捜部によって逮捕され、裁判中に死亡したことから治之氏は特捜部に恨みを抱いていた。それによって特捜部も治之氏の動きを警戒していたという対立構造があり、裁判はかなり長引くのではないかと見られる。

2.執行役員が一日スタッフを務め、通常の三倍の売り上げを記録

ドミノ・ピザで行われた「Lサイズを1枚買うとMサイズが2枚無料でもらえるキャンペーン」により現場が混乱したことを受け、キャンペーン中に最も高い評価を受けた熊本の店舗のスタッフに休暇を与えることを発表した。休暇中は執行役員や本部スタッフが店舗運営を行なった。CEOやCMOが現場に出て、さらに通常の三倍の売り上げを上げるという実行力を示した点が大切だと言えるだろう。

3.窪田製薬ホールディングスが77万円の近視矯正眼鏡を開発

「Kubota Glass」は、特殊な光で目に刺激を与え、近視になった目の焦点をずらし、自然と矯正されていくという眼鏡だ。40台限定で発売し、すぐに完売している。一方、日本で販売するのは難しい点もある。既に販売が進んでいるアメリカや台湾と違い、日本で「目の矯正」を前面に出すためには承認が必要となる。今後どういった売り方をしていくのか、どうやって規制をクリアしていくのかに注目したい。

4.98年の歴史を持つ焼き鳥の名店が閉店

東京・東日本橋にある焼き鳥の名店「江戸政」が、名物メニューである「生つくね」への批判を受けて閉店を決断した。生の鶏肉は極めて危険で、食中毒の発生率が最も高い。命に関わる症状を引き起こすこともあり、原則食べない方がいいのは確かである。一方、同店は大正13年創業の老舗だが過去に食中毒を引き起こした事例はない。また、九州にも鳥刺の文化があるため、伝統的な食文化をどのように残すかは議論が必要だと考える。

5.デジタル・ジャーナリストの育成機構が誕生

2022年7月、報道やメディアに携わる人に向けた学びの場を提供するデジタル・ジャーナリスト育成機構(D-JEDI)が設立された。新聞社やテレビ局での若手の採用が減るとともに教育の機会が減っている。新人の育成、既存ジャーナリストのデジタルメディアに関する知見指導の両方を目指すのがD-JEDIと言える。メディアの将来に繋がると考えられるチャレンジに注目したい。

【スペシャルトーク】『プランBの教科書』と、日本における「プランB」について

スペシャルトークでは、経済学者で神戸大学教授の尾崎弘之さんに、集英社インターナショナルから出版した著書『プランBの教科書』についてお話を頂いた。

「プランB」とは、アメリカではごく普通に使われており、日本でも若者が当たり前に使うようになっている言葉だ。最初に考えたプラン(オリジナルのプランA)がうまく行かない場合にバックアップで出てくるプランのことを「プランB」という。

日本においては「プランB」の必要性が強く認識されていない。「プランB」を日本語で言い換えると「代替策」であり、だめな時に出てくるプランだと考えられている。しかし、この前提は誤りであると考えている。コロナやロシアのウクライナ侵攻、凄まじいインフレといった世の中の変化に対し、「プランA」のまますんなり予定が進むことは考えにくい。つまり、だめになってから「プランB」を考えるのではなく、「プランA」を作る際に並行して「プランB」を作っていかなければならない。社会や組織がこの思考になっていないことから重要性が認識されていないと言えるだろう。

日本において「プランB」で成功した事例を挙げると、1つは富士フイルムだ。最近は化粧品マーケットで事業を拡大しているが、元々は写真のフィルムにおいて世界第2位の業績を誇っていた。90年台に高性能で安価なデジタルカメラが普及し、フィルムのニーズが減少。ここでの富士フイルムの「プランA」は、従来通りの事業を続けること。「プランB」は違うマーケットに参入することだ。富士フイルムは「プランB」を採用し、医療事業に舵を切ったことで、今では優良企業となっている。この逆を進んだのがアメリカのイーストマン・コダック社。フィルムにおいて世界一の業績を誇っていたが、事業の移行ができず倒産してしまった。ともに世界トップクラスの企業だったコダックと富士フイルムは、どこで明暗が分かれたのか。理由として、当時の社長・古森重隆氏の強力なリーダーシップが考えられる。会社自体の体制を変え、「プランB」への移行を実現した。

もう1つはトヨタのプリウス。1997年の発売当初、日本では全く売れなかったため、「プランB」であるアメリカでの注力に切り替えた。ちょうど温暖化への注目が集まり、ハリウッドセレブたちがこぞってエコカーに注目した。レオナルド・ディカプリオがプリウスでレッドカーペットに向かったことからアメリカで爆発的に売れ、日本への逆輸入を果たした。市場を変えた「プランB」である。

企業を変え、「プランB」を実現するための一番のハードルは、社内の各部署や既存の取引の声による「壁」である。富士フイルムに関わらず、良い変化を遂げた企業に共通しているのは、赤字や経営危機だ。逆に言うと、危機感がない会社はなかなか変われないのではないか。

では、ビジネスを進める中で「プランB」をどのように準備したらいいのか。「プランA」に決定する際、基本的に3つほどの選択肢の中から絞り込む場合が多いだろう。そこで残りの案を捨ててしまうのではなく、B・C案を生かしておくこと。また、Aがうまく行かなかった際に、Aを推した人の責任問題にするメカニズムを止めることが大切だ。

ローマ・カトリック教会には「悪魔の代弁者」と言う役割がある。昔は聖職者をいい加減に任命していたことから、徹底的に粗探しをするために作られた存在だ。アメリカ軍においても「プランA」を安穏とさせないための「レッドチーム」と言う機能が存在する。これは日本企業にも導入可能だろう。作るだけでなく正常に機能させること必要がある。

トヨタはかつて「プランB」を成功させたが、テスラ社の台頭などにより苦戦を強いられている。「プランB」の成功が大きかったゆえに「プランC」である電気自動車への移行が難しくなっている例だ。プランを複数持つと同時に、「捨てる勇気」も持たなければいけないと言える。

尾崎弘之さんご経歴:東京大学法学部卒業、ニューヨーク大学経営大学院、早稲田大学大学院修了。経済学者、神戸大学教授。集英社インターナショナルより新刊『プランBの教科書』を出版。

ダイバーシティニュース視聴方法

1.LuckyFM茨城放送のラジオ FM88.1/94.6MHz
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