男性脳女性脳はもう古い。ジェンダーレスな脳の世界―心理学の研究データに見るジェンダー#1

まず、男女差が小さい、もしくはない分野としては、数学、言語能力、社交性、誠実性、報酬に対する感度、利他行動、ネガティブになりやすい気質、攻撃的な性格、断定しない話し方、自己肯定感、リーダーシップのスタイルなどが挙げられています。じつは、理系科目については、1990年代の高校生に対する調査では男性の方が得意でしたが、少なくともアメリカでは2000年代に男女差はほぼなくなっています。

次に、男女差があった分野としては、次を挙げています。空間把握能力は男性が高い。協調性は女性が高い。物への関心は男性が高く、人への関心は女性が高い。乱暴な動作は男性が高い。このようにいくつかの分野では、男女の差が認められました。

「リーダーシップ」に男女差はほとんどない

さて、ほぼ男女差がない分野として、リーダーシップのスタイルも挙げられています。この差はビジネスにおいては重要ですので、さらに詳しくみていきます。ノースウエスタン大学のイーガリーらの研究グループは、リーダーシップのスタイルに関する男女差を調べた論文45本を分析しました。その結果、リーダーシップのスタイルの男女差はそれほど大きくないが、女性の方がむしろ男性より、組織の変革を実行するのに望ましいスタイルをとる傾向があると結論づけています。

イーガリーらは、女性が男性より発揮していたスタイルとして以下を挙げています。

<女性が男性より発揮したリーダーシップスタイル>

①メンバーに尊敬と誇りの気持ちをもってもらえる資質がある

②ミッション、目的、価値観を伝える

③未来に対してポジティブでわくわくしている

④問題解決に新しい視点をもたらす

⑤個人のニーズを踏まえて、成長を促している

⑥個人のパフォーマンスに応じて、リワード(報酬)を与えている

では、逆に男性が女性より発揮していたスタイルは以下が指摘されていますが、これらのスタイルは、残念ながらあまり効果的でないとされています。

<男性が女性より発揮したリーダーシップスタイル>

①いつもメンバーを管理し、間違いや失敗をすぐに注意する

②問題が大きくなるまで放っておく

③大事なときにその場にいなかったり、関与しなかったりする

男女差は小さいものの、女性の方がむしろ今求められているリーダーシップのスタイルを発揮していることが分かります。

以上をまとめると、ジェンダーによる能力や資質にあまり差はないということです。そう、脳はジェンダーレスなのです。ジェンダーの差があったとしても、その差は大きくありませんし、リーダーシップに関してはむしろ女性に有利に働いているくらいです。

#2に続く

<参考文献>

Eagly, A. H., Johannesen-Schmidt, M. C., & Van Engen, M. L. (2003). Transformational, Transactional, and Laissez-Faire Leadership Styles: A Meta-Analysis Comparing Women and Men. Psychological Bulletin, 129(4), 569–591.

Hyde, J. S. (2014). Gender similarities and differences. Annual Review of Psychology, 65(June), 373–398.

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