ダイバーシティニュース 社会(7/4)土井香苗【8/31まで限定公開】

土井香苗(どい・かなえ):国際NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ 日本代表
1998年東京大学法学部卒業。2006年ニューヨーク大学ロースクール卒業(LL.M.)。2000年弁護士登録。2006年にヒューマン・ライツ・ウォッチのニューヨーク本部のフェロー、2008年9月から現職。紛争地や独裁国家の人権侵害を調査して知らせるとともに、世界中の人権問題を解決するため、日本を人権大国にするため活動を続ける。Twitter

土井香苗さんのニュースピックアップ

1. 子どもが意見を言う権利などを定めた「こども基本法」が成立

裏を返せば大人が子どもの意見に耳を傾けなければいけないということだ。子どもに対して「言うことを聞きなさい」と言いがちな私たち大人に意識改革が必要だし、国としても子どもの意見をしっかり反映させた施策をつくっていく必要がある。子どもが指示に従うだけでなく自分の意見を言えるようになることは、社会にとっても有益と言える。この権利を日本社会の血肉にしていくことが大事なのだと思う。

2. 札幌地裁から一転、大阪地裁は同性婚認めぬ規定に「合憲」

日本各地で起こされている同性婚訴訟だが、地裁で意見が分かれるのは予想の範囲内だ。今後数年内に最高裁で1つの判決に集約されると思うが、最高裁は時代の流れを必ず見ているので、これは国民が決める判決と言ってもいいのではないか。ご自身の家族や友人にも、カミングアウトできない当事者がいるかもしれない、と考えたうえで、それでも同性婚を許さない現在の制度で良いのか、深く考えていただきたい。

3. 米最高裁、中絶の権利認めた49年前の判例を覆す

さまざまな理由で産むことができない女性にとって中絶は重要な権利だ。その禁止は健康や生命を危険に晒すだけでなく、経済的・社会的に弱い立場の人をさらに困難な立場に追いやり、差別の拡大につながる側面がある。流産手術で中絶を疑われ刑罰を科される可能性もあるなど、医者も厳しい立場に置かれる。中絶は禁止しても減ることなく闇にもぐっていくだけ。合法的な中絶の道があることが大事なのだと思う。

4. ロシアがウクライナ中部都市の商業施設をミサイル攻撃

ショッキングなニュースだ。6月30日時点ですでに18人の死亡が確認され、36人が行方不明のままとなっている。我々ヒューマン・ライツ・ウォッチを含め、多くの人権団体やジャーナリストが現地に入り細かい状況を確認しているが、これほど一般市民が多いエリアへの攻撃は戦争犯罪に該当する可能性が高い。攻撃を指示した人々をロシア政府が裁かないのなら、国際刑事裁判所(ICC)で裁判にかけることが重要になる。

5. 中国返還から25年 香港から失われた自由

2020年の香港国家安全維持法施行で自由が奪われた香港では、多くの独立系メディアが閉鎖に追い込まれ、今も獄中にいる活動家は多い。「雨傘運動」の中心人物で、日本でも著名な周庭氏らも今は裁判を待つ身だ。私の知り合いも多くが国外に逃れた。2019年には逃亡犯条例への抗議で200万人がデモに参加した香港だが、たった3年で何もできなくなってしまった。自由を取り戻す長い戦いに向け、今後は日本の支援も重要になる。

【スペシャルトーク】人権問題と貿易・ビジネス

スペシャルトークでは、「人権問題と貿易・ビジネス。日本はどうするべきか? アメリカのウイグル強制労働防止法施行を受けて」というテーマで、土井香苗さんに掘り下げていただいた。

アメリカで6月に施行された「ウイグル強制労働防止法」は、強制労働による生産でないことが明確に証明できないかぎり、新疆ウイグル自治区からの産品輸入を禁止するというもの。大変厳しい内容だが、ウイグルにおける人権侵害に照らして必要な措置だと考えている。

現在、同自治区ではアプリや監視カメラなどの最新技術により人々が監視され、少なくとも100万人が“特殊な行動”をしたということで再教育施設、つまり収容所に入れられている。「いつも使っていた正面玄関以外の裏口から出入りをした」といった程度でも特殊な行動とみなされ、逮捕、拘束、強制労働となる実態がある。5月には「(当局に)挑む者がいればまず射殺せよ」といった幹部の発言記録や収容施設内部の写真を含めた数万件の資料が「新疆公安ファイル」として流出し、各国で大きく報道された。

こうした人権侵害を止めるための具体的行動が求められており、その1つが「ウイグル強制労働防止法」なのだと思う。日本も同様の制度をつくるべきだと考えている。先進国では企業が人権侵害に加担していないかを調査する「人権デューデリジェンス(人権DD)」が義務化されているが、日本では法制度化されていない。今は日本人の人権意識が問われているとも言える。

今夏には経済産業省が人権DDに関するガイドラインを発表する予定で、今まで何もなかったことを考えると一歩前進だが、これも内容次第。とにかく今は多くの日本人にウイグルの実態を知って欲しい。私たちが着ている服もウイグル人の強制労働でつくられたものである可能性がある。100万人が収容所に入れられるという、およそ現代とは思えない人権侵害を見逃すことがあってはならない。

自民党では人権外交プロジェクトチームが立ち上がっているが、今のところ経済安全保障の分野で人権侵害に加担するようなテクノロジーの輸出規制等が中心となっている。「ウイグル強制労働防止法」のような輸入規制も検討してほしい。立憲民主党も、人権侵害を行う責任者個人への金融制裁やビザ発給禁止といった「日本版マグニツキー法」を国会に提出しているので、こちらもすべての党で合意していただきたい。現時点では日本の人権対応が周回遅れとなっている状態だけに、現在の議論を一刻も早く形にしていただきたいと思う。

ダイバーシティニュース視聴方法

1.LuckyFM茨城放送のラジオ FM88.1/94.6MHz
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