ダイバーシティニュース 社会(6/20)杉山文野【7/31までの限定公開】

杉山文野(すぎやま・ふみの):NPO法人「東京レインボープライド」共同代表、日本オリンピック委員会理事、株式会社ニューキャンバス代表。フェンシング元女子日本代表。トランスジェンダー。早稲田大学大学院教育学研究科修士課程修了。 日本初となる渋谷区・同性パートナーシップ条例制定に関わる。 現在は父として子育てにも奮闘中。公式サイトTwitter

杉山文野さんのニュースピックアップ

1. 同性婚不受理に合憲判断 大阪地裁が原告側請求を棄却

同性カップルの婚姻届が不受理となったのは、憲法14条が定める「法の下の平等」や、24条が定める「婚姻の自由」に反するとして、全国の5つの地裁で争われていた裁判だ。昨年の札幌地裁は14条に反するとの判決だったが、今回の大阪地裁はどちらも合憲との判断。難しい判断だというのは分かってはいるが、正直に言って非常に悲しいニュースだ。今秋には東京地裁でも同様の訴訟で判決が下される。こうした裁判は世論に左右される面もある。今回の判決に疑問を持つ方がいれば、ご自身の意見を発信するなど、アクションをとっていただけたらと思う。

2. 東京都、「パートナーシップ宣誓制度」盛り込んだ条例が成立

性的マイノリティ―の方々がパートナーシップ関係であることを公的に認められるようにする「改正人権尊重条例」が都議会本会議で可決、成立した。渋谷区でパートナーシップ制度がスタートした2015年から7年もかかったが、大切な一歩だ。都議会で全会一致となったのも良かった。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に向けて(性別や性的志向などいかなる種類の差別を禁じる)オリンピック憲章に合わせる形で、開催都市としてLGBTQへの差別を禁止する条例を作ろうとした動きがあったことも影響したのではないか。都内在住者だけでなく都内在勤・在学者も申請できるほか、オンラインで申請できる点もプライバシー保護の観点で良かったと感じる。

3. 同性カップル「配偶者」で集計せず 国勢調査に改善要望

改善を求める声が当事者らから上がっている。異性同士のカップルなら婚姻届を出していなくても「配偶者」として集計されるのに、同性カップルは「他の親族」扱いとなっている。施策の基礎資料として、実態を把握する目的があるはずの国勢調査で事実が歪められるのは本末転倒だ。実態が把握できなければ政策も改善できない。一方、国勢調査における「性別申告」については、戸籍上の性別でなく性自認でよしとするというケースもあるようで、今後どんな調査が必要なのか考える必要がある。

4. 肌の露出避けたい生徒に対応 ジェンダーレス水着登場

僕も水泳は好きだったが、水着を着なければいけない授業は嫌だった。トランスジェンダーに限った話ではなく、思春期のなかにあって身体のラインが出ることを嫌がる子はいる。傷や痣を気にする子もいるだろう。その意味で今回のような水着が出てきたことは良いと思う。ただ、これも全員が着なければいけないわけではない。身体のラインが出てもいいという子はそれでいいし、選択肢が増えることが大切なのだと思う。

5. #transdadで検索すると… 「妊娠した男性」巡る偏見

女性から男性に移行したトランスジェンダーの方と、(身体の性も心の性も)もともと男性の方との同性カップルで、前者のトランス男性が子宮を摘出しておらず、妊娠をなさったというニュースがある。SNSにて「#transdad」などで検索すると海外ではよく見るケースだ。ジェンダーに関わらず、自身が持つ生殖機能をもとに出産をすることは全くおかしな話ではないものの、「男性が妊娠なんて」と、僕自身も思い込みがあったことに気付かされた。

【スペシャルトーク】プライド月間と「ピンクウォッシュ」

スペシャルトークでは、6月の「プライド月間」にあたり、杉山文野さんに関連トピックを掘り下げていただいた。

1969年6月、ニューヨークのゲイバーで起きた暴動に端を発するLGBTQの権利獲得運動が「プライドマンス」の原点だ。翌年以降、6月は世界中でパレードやイベントを通してLGBTQに関する啓発が行われるようになった。ただ日本でプライドマンスが認知されたのはつい最近だと思う。6月に合わせて新たなプライド関連商品・サービスのローンチを計画するグローバル企業からの問い合わせが、特にここ2~3年で増えてきた。

こうした動きに合わせ、東京レインボープライド(TRP)としても6月25~26日、オンラインでカンファレンスとトークライブを開催する予定だ。トークライブでは「地域における課題」「カミングアウト」「同性婚」「介護」「(LGBTQの味方を意味する)アライ」「ユース世代」「メディア」「子育て」と、LGBTQに関連して8つのテーマを設け、当事者の声にもフォーカスしながらお話を進めていく。

ところでプライド活動の認知拡大に伴って、最近は“ごまかし”を意味する「ピンクウォッシュ」という言葉も聞かれるようになってきた。たとえば東京五輪の開会式では、MISIAさんがレインボーカラーのドレスで国家を斉唱するなどして、LGBTQフレンドリーな演出をしていた。しかし、これはLGBTQの差別禁止法が制定できない国が、あたかもLGBTQフレンドリーな演出を隠れ蓑にして都合の悪いことをごまかしているという見方もできるわけだ。

企業活動でも同様のことが言える。「LGBTQの方々を応援しています」と言って商品・サービスを提供するにしても、それで儲けるだけなら単なるプロモーション。「レインボー商品」であると謳うなら、具体的な金額等は別として、たとえば関連コミュニティ活動に還元したりするような動きがないと「ピンクウォッシュでは?」と批判を受けることはある。なんでもかんでも叩くのは良くないが、やるからには「プライド活動の背景に何があるのか」といった知識はきちんと持っていただきたいと思う。

そうした点も踏まえて企業や団体はどのような活動をするべきか。TRPは企業から問い合わせを受けることも多いが、まずはしっかり研修を行うことが大事だと考えている。今は多様性がスキルとなる時代だ。「個人的にどう思うか」でなく「人前でどう振る舞い、発言するか」という知識を、ビジネスマナーとして身につけるべきなのだと思う。さらに、社内に必ずいるであろうLGBTQの社員にとって働きやすい職場のあり方を考えたり、LGBTQの顧客に最適な商品・サービスを考えたりしていくなかで、社会全体でインクルージョンが進んでいくことになるのだと思う。

ダイバーシティニュース視聴方法

1.LuckyFM茨城放送のラジオ FM88.1/94.6MHz
2. YouTubeライブ配信(アーカイブでも視聴可能です)https://www.youtube.com/channel/UCOyTwjQoiUJXxJ8IjKNORmA
3. radikoでも聴取可能です

最新情報は、Twitterでご確認ください。

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