ダイバーシティニュース テクノロジー(6/10)中村友哉【7/31までの限定公開】

中村友哉(なかむら・ゆうや):株式会社アクセルスペースCEO
東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程修了。在学中より、超小型人工衛星の開発に携わる。2008年に株式会社アクセルスペースを設立。超小型人工衛星を活用した宇宙ビジネスを展開している。

中村友哉さんのニュースピックアップ

1.日米で宇宙協力を推進 「衛星コンステレーション」で観測網

日米両国が、宇宙分野や最先端半導体の供給網構築に向けた協力を強化していく。そのひとつに、多数の小型人工衛星を互いに協調させる「衛星コンステレーション」による地球観測網の構築がある。不審船を監視する海洋状況把握(MDA)が宇宙分野でのテーマとなっている。1カ国だけでの海洋モニタリングは困難なので、同盟国が分担して情報収集をしようという流れとなっているが、こうしたことが宇宙協力のテーマになること自体、非常に珍しい。日米を含めた西側諸国が中国やロシアと対立する構図にあるなか、西側諸国の危機感の表れと受け止めることもできる。

2.ボーイング新型宇宙船が無人飛行 ISSとドッキング成功

米ボーイングが開発した新型宇宙船「CST-100 Starliner」が打ち上げられ、5月20日にISS(国際宇宙ステーション)とのドッキングに成功した。この分野はイーロン・マスク氏率いるスペースXが先を進んでおり、コストも同社の宇宙船の方が圧倒的に低い。ただ、このような挑戦が歓迎されるのは、スペースシャトルが退役した際に米国がISSへ人を送る手段がなくなり、一時的にロシアに頼らざるを得なくなったという過去の教訓があるからだ。米国内でも1社だけでなく、2社あれば何かあった時に安心という「保険」の意味合いがあるのだろう。

3.宇宙でモノづくり 三菱電機が人工衛星アンテナを現地製造

三菱電機が宇宙空間において 3Dプリンターで人工衛星のアンテナを製造する技術を開発した。地球から運搬する部材が少なく済み、小型衛星にも大きなアンテナを搭載できるようになる。これまでもメイド・イン・スペースという米国のスタートアップ企業が、地上で設計したデータを宇宙上の3Dプリンターに送りモノづくりのデモンストレーションをするということがあった。こうした製造技術は将来必ず必要となるだろう。月の砂を使って様々なものに成型する研究開発も行われている。材料も宇宙で現地調達をする時代が来るかもしれない。

4.NASA火星探査機が「自撮り」 今年末に運用終了へ

米航空宇宙局(NASA)は、2018年に打ち上げた火星探査機「InSight(インサイト)」の「自撮り写真」を公開した。インサイトはソーラーパネルを搭載している。大量のチリが積もり発電量が減少したことから運用終了となるが、もともと設計上の寿命は2年だった。火星の地震を観測するなど、多くの貴重なデータを収集したことが最大の功績だ。インサイト自体はそのまま火星上に残るので、将来人類が地球と火星を往来できるようになった時には、遺産として観光地になっているかもしれない。

5.夢の「宇宙太陽光発電」 日本は2050年までの実用化目指す

宇宙空間に巨大な太陽光発電所をつくり、大量の電力を24時間地上に届けるという「宇宙太陽光発電」について、日本政府は2050年までの実用化を目指している。昼夜も天候も問わず発電できるのが大きな利点だが、膨大な建設コストがかかるほか、マイクロ波を使って電力を地球に届ける技術の確立など課題は多い。部材を届けるためにはロケットも必要となるが、打ち上げ時の環境負荷を低減させる技術開発も求められることになるだろう。

【スペシャルトーク】「New Space」の潮流

スペシャルトークでは、民間企業が推進する宇宙開発「New Space」の潮流について、JAXA(宇宙航空研究開発機構)にて20年間、地球観測分野に携わり、現在はさくらインターネットでフェローを務める松浦直人さんにお話を頂いた。

JAXAに入ってからずっと宇宙に関するビジネスに関わってきた。今はJAXAを離れ、主に3社を支援している。小型衛星を使って情報を得るアクセルスペース、収集した情報を分析・解析するリモート・センシング技術センター(RESTEC)、そしてそれらの情報の売買プラットフォーム「Tellus(テルース)」を展開するさくらインターネットの3社だ。3足のわらじを履くことで、上流から下流までの全てに関われている。

JAXAでは33年間働いていたが、うち20年間は地球観測分野に携わってきた。衛星データを防災、農林水産、地球環境保全などの様々な分野で利用してもらうよう尽力する中で、相手の求める情報を提供できていないという葛藤があった。JAXAは研究開発をする組織であり、新しいものを生み出すことには長けている。一方で、顧客が使いやすいように新しいものを提供するということには、なかなか意識が向けられにくい部分もあった。例えるなら、レストランでステーキが食べたいと言われたとき、JAXAは最高級の牛1頭を出す。顧客はサーロインやヒレを求めているのでアンマッチになってしまう。

そこで今は顧客が求めるデータを、顧客が使いやすい状態で渡すための仕組みを作ろうとしている。このような動きができるのも、宇宙開発が国から民間に移ろうとしているNew Spaceの潮流がきているからだ。民間企業が衛星を打ち上げ、独自のデータが大量に取得できるようになったことは大きい。これにより一気に宇宙が身近になったと思う。膨大な資金、優秀な人材がどんどん宇宙関連ビジネスに集まっており、昔では考えられないスピードで開発が進んでいるが、今後も加速度的に速まっていくことは間違いないだろう。

松浦直人(まつうら・なおと)さん経歴:慶應義塾大学工学研究科修了後、宇宙開発事業団(現JAXA)入社。人工衛星の追跡管制、地球資源衛星「ふよう1号」の開発業務等に携わる。世界気象機関(WMO)に派遣。その後、20年近く地球観測関連業務に従事した。2019年にJAXAを退職。同年8月よりさくらインターネットのフェローに就く。

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