ダイバーシティニュース 政治(4/26) 朝比奈一郎【5/31までの限定公開】

朝比奈一郎(あさひな・いちろう):青山社中株式会社 筆頭代表CEO
1973年生まれ。埼玉県出身。東京大学法学部卒業後、通商産業省(現経済産業省)入省。ハーバード大行政大学院修了(修士)。経済産業省ではエネルギー政策、インフラ輸出政策、経済協力政策、特殊法人・独立行政法人改革などに携わる。経産省退職後、2010年に青山社中株式会社を設立。政策支援・シンクタンク、コンサルティング業務、教育・リーダー育成を行う。著書に『やり過ぎる力 (ディスカヴァー・レボリューションズ) 』など。Twitter

朝比奈一郎さんのニュースピックアップ

1. 仏大統領選、決戦投票で現職マクロン氏が再選

前回大統領選に比べて、生活者に寄り添う政策を訴えたルペン氏に差を詰められたとの見方は多い。環境問題を含むグローバルイシューを重視して、良くも悪くも知的エリートの支持を集めるマクロン氏に対しては、エネルギー価格高騰による国民生活への悪影響などが懸念されるなかにあって、批判も多かった。生活第一かグローバルイシューか。この対立は今後世界的テーマになると感じる。

2. 日銀会合後も円安か 金融政策の微修正でも流れ不変の声

1ドル=130円台までのドル高/円安の進行は、すでに市場に織り込み済みで、140~150円まで円安が進むと予想する専門家もいる。背景には根本的な日本の国力という問題がある。ドル/円レートは20年前の円安水準とされるが、(貿易量や物価変動を考慮した)実質実効為替レートでは1970年代以来の低水準。70年代は経済が上り坂だったが今はどう見ても下り坂だ。短期的に円安を是正するにしても、日本の金利を上げると「国債が返せるのか」という懸念が出てくる。現在の円安の流れを変えるのは構造的に難しいと感じる。

3. 昨年度の貿易収支は2年ぶり赤字 原油価格上昇が影響

円は弱いわ、エネルギー価格は高騰するわで、輸出大国と言われていた20~30年前には想像もつかなかった貿易赤字を今は記録している。さらに深刻なのは投資配当などを含む経常収支が1月単月で1兆1,887億円の赤字になった点。年間では黒字になると思うが、今後も貿易赤字が膨らむ一方であるなら、こちらも心配だ。中長期的には今のようにオイルやガスを買わなくて済むようなエネルギー政策を議論する必要もあると思う。

4. 消費者物価が上昇傾向 4月以降も値上げの影響は拡大か

少し前まで日本経済はデフレで苦しんでいると言われていたのに、ようやく物価が上がると、それはそれで困った状況になった。皆の可処分所得が増えたうえでのインフレならハッピーだが、今は所得が増えず物価は上がるというコストプッシュ型。焼け石に水かもしれないが、輸入木材の価格高騰に対し国産材への転換を進めたり、小麦不足なら米粉でパンをつくるようにしたりと、ピンチをチャンスにする考え方もほしい。

5. 自民が公明に大幅譲歩 緊急補正予算案の編成で決着

補正予算を通したほうが国民は喜ぶはずだが、自民党とすれば7月の参院選前に補正予算を巡る国会審議を開くことで、政権にとって後ろ向きなニュースが流されるリスクを抑えておきたいという変な事情があった。日本の国会では、たとえば経済産業委員会では経済産業に関する質疑以外できないとされているが、予算審議では比較的なんでも聞いていいことになっている。野党のスキャンダル追及などを警戒し、今年度予算の予備費を活用する形とし、予算審議に時間をかけないようにするという決着になった。

【スペシャルトーク】ウクライナ情勢の中長期的展望

スペシャルトークでは、「ウクライナの状況は中長期的にどう推移していくのか?」というテーマで、朝比奈一郎さんに掘り下げていただいた。

ウクライナの状況を通して分かるのは、自分で自分を守る国には支援が集まるということ。降伏して自由を失い、ひどい暮らしをすることになっても「とにかく命」なのか。命を賭けて戦い、自分で自分のことを決めるという意味での「自決」を守るのか。大変難しい議論で、どちらとも言いにくいが。

ただ、今は大半のウクライナ人が自由のために戦うことを選んでいる。これは「生きるとはなんぞや」という問いに関わるし、コロナ禍での生き方についても同じだと思う。今、欧米の人々の多くはマスクを外し、外出して自由を謳歌しているが、日本人は「いや、大事なのは命でしょ」となっている。過去に戦争に負けたこともあり、今の日本人は命を守るという思いが特に強いのだと思う。

こうした問題を考えるうえで、私は今年の米アカデミー賞でノミネートされた3作品が示唆的だと感じた。『ウエスト・サイド・ストーリー』は復讐が復讐を生む負の連鎖が描かれている。今の世界情勢と同じだ。ロシアとすれば、冷戦後、ソ連はなくなったのに北大西洋条約機構(NATO)が拡大し続けることに長年恨みを募らせていた。当然、今はウクライナもロシアに恨み骨髄なわけだ。

一方、そうした負の連鎖にせず、問題を見過ごす力というか、恨みの感情に向き合わない人間を描いたのが『ドライブ・マイ・カー』だったと思う。妻の問題に対して主人公は大人の対応をしたというか、ある意味では向き合うことをしなかった。でも、それでなんでもハッピーになるかというと、人間は複雑で、向き合わないことによって負の感情が出たりもする。

恨みに恨みで返すのか、大人の対応をするのか。解はないが、作品賞を受賞した『コーダ あいのうた』は、前述した2作品のアウフヘーベンというか、相対する2つの問題をうまく昇華させた映画のように感じた。自身を除く家族全員がろうあ者という状況で、さまざまな軋轢が生まれるなかでも、主人公は恨みに恨みで返すことをしなかった。かといって、やり過ごすわけでもなく、徹底的に話し合い、向き合い、引き受けつつ、“次”を考える。国際社会も同じではないか。日本も世界もウクライナ情勢について見て見ぬふりするのでなく、きちんと向き合いながら、“次”はどう進むかという視点で国際政治の仕組みをつくっていく必要があるのだと考えている。

ダイバーシティニュース視聴方法

1.LuckyFM茨城放送のラジオ FM88.1/94.6MHz
2. YouTubeライブ配信(アーカイブでも視聴可能です)https://www.youtube.com/channel/UCOyTwjQoiUJXxJ8IjKNORmA
3. radikoでも聴取可能です

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