ダイバーシティニュース 社会(4/25)乙武洋匡【5/31までの限定公開】

乙武洋匡(おとたけ・ひろただ):作家
1976年生まれ。大学在学中に出版した『五体不満足』(講談社)がベストセラーに。卒業後はスポーツライターとして活躍したのち、新宿区教育委員会非常勤職員「子どもの生き方パートナー」、杉並区立杉並第四小学校教諭を経て、2013年には東京都教育委員に就任。『だから、僕は学校へ行く!』(講談社)、『オトことば。』(文藝春秋)、『オトタケ先生の3つの授業』(講談社)など著書多数。Twitter公式サイト

乙武洋匡さんのニュースピックアップ

1. 車いす使用者用駐車スペース、適正利用へ施策取りまとめ

最大の課題は健常者の不正利用だと考えているが、今回の国土交通省による中間とりまとめを伝える記事では、不正駐車に対する罰則導入には「課題が多いとしている」とあるのみ。15~20年前は横行していた飲酒運転も、厳罰化によって絶対許されないという空気に変わった。アメリカでも健常者の不正利用には高い罰金が課される。私は罰則を定めるほうがいいと考えているが、課題があるのならそれを具体的に深掘りして欲しい。

2. 電動キックボードと組み合わせた「ハイブリッド車いす」登場

電動車いすの制限速度は6km/hだが、2年後に公道を走れるようになる電動キックボードは20 km/h。また、今回開発された車いすは1回の充電で50km走れるとのことで、一気に行動範囲が広がりそうだ。今のルールでは車道しか走れないし、万一事故が起きれば「やはり障害者の利用は危ないのでは?」という方向になりがちだと想像する。ただ、それでも夢のある話なので、安全性もしっかり確保しつつ開発を続けていただきたい。

3. 週10時間以上20時間未満の労働も障害者雇用の対象へ

障害者雇用促進法は43.5人以上を雇用する企業に2.3%の障害者雇用率達成を定めているが、その対象となるのは週20時間以上働く方のみ。それが週10時間以上20時間未満の方も対象にする方向とのことで、多様性という意味では前向きに捉えている。ただ、今まで20時間以上働いていた方について、生産性の観点で「20時間未満に抑えたい」という思惑が企業で働く可能性もある。そのあたりに対する配慮や目配せも必要かと思う。

4. 刑務所での車いす貸与を拒まれた受刑者が国を提訴

刑務所の生活と一般社会での生活で、使って良いものと良くないものに差が出ること自体は分かる。問題はその線引きだ。たとえば受刑者にアクセサリーは不要と考える方が多いと思うが、もし屋外で活動できる時間があるのに炎天下のアスファルトでも靴を履くのがNGならどうだろう。果たして屋外活動が許されていると言えるのか。そうした話の延長線上に車いすがある。憲法が定める「健康で文化的な最低限度の生活」のために必要だと私は考えている。

5. 重度障害者が24時間介護サービスを求め行政訴訟

24時間付き添いがなければ生命維持すら危うい方がいる一方、現状では私を含め、24時間体制で介助サービスを受けるのはなかなか難しい。理由は自治体の予算だ。ここは国が自治体ごとのばらつきをなくすしかないと思う。ただ、深夜であっても誰かの自宅へ赴いて介護する人材を、適切な報酬で確保できるかというと、予算の上乗せだけでは難しい側面がある。皆でもう少し知恵を絞る必要があると思う。

【スペシャルトーク】東京レインボープライド2022

スペシャルトークでは、「東京レインボープライド(TRP)2022に参加して」と題して、乙武洋匡さんにお話を聞いた。

主催者の1人であり、当番組コメンテーターでもある杉山文野氏とは10数年来の友人で、私もTRPには初期の頃から参加している。近年は参加者も増えて社会的認知度が大いに高まってきた。ここ2年はコロナ禍でオンライン開催だったが、カミングアウトしていない当事者も素性を晒さず参加できたりと、オンラインによる思わぬメリットもあったようだ。新規感染者数が落ち着いてきたこともあって今年は3年ぶりのリアル開催になった。パレード中は多少雨も降ったが、それを吹き飛ばすほどリアルで集える嬉しさに溢れた時間になったと感じる。

初めて参加した10年ほど前、パレードで隣を歩いていた方が「ああ、こんな雰囲気のなかで陽の光を浴びれるなんて」と呟いていたのを覚えている。当時はカミングアウトする方はごく一部。楽しい雰囲気のなかで「当事者であると街中に訴えながらパレードできる日が来るなんて」という意味だったと思う。私自身はLGBTQ+フレドリーである「アライ」としてイベントに関わることができて楽しい気持ちだったが、当事者の方々はもっともっと、心の奥底から喜びを感じていたのだと思う。

現在LGBTQ+の方々にとっての障壁を考えてみると、大きくは3つあると考えている。1つは「婚姻」だ。先進国として、日本は同性婚を認めていない数少ない国。「婚姻は子どもを産み育てるための制度」と言う人はいるが、子どもを産んで育てるのが難しい80代の異性カップルも結婚できるわけで、同性婚を実現しても社会的になんら不利益はないはずだ。

2つ目は「仕事」。トランスジェンダーの方は更衣室やお手洗いの利用などで不利益を被っている。場合によっては裁判となるケースもあり、訴訟リスクを回避しようと採用に後ろ向きになる企業は多い。今後はLGBTQ+の方々を採用する企業の「グッドプラクティス」を社会でもっと共有していく必要があると思う。そして3つ目は「住まい」だ。同性カップルというだけで賃貸物件に入居するハードルが高くなる現実がいまだに存在する。

細かく挙げればほかにも解決すべき課題はまだまだ多い。だが、それらはLGBTQ+当事者でなく社会の側が解決すべきことという点は繰り返し主張しておきたい。カギは1人でも多くの方がそうした課題を知り、「それはおかしいね」と声をあげながら、LGBTQ+の方々が背負う理不尽な重荷を少しずつ軽くしていくことなのだと思う。

ダイバーシティニュース視聴方法

1.LuckyFM茨城放送のラジオ FM88.1/94.6MHz
2. YouTubeライブ配信(アーカイブでも視聴可能です)https://www.youtube.com/channel/UCOyTwjQoiUJXxJ8IjKNORmA
3. radikoでも聴取可能です

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